第5話 女の子の物、男の子の物

 母は私にキャンディキャンディやピンクレディのものを良く買い与えた。

 靴はもちろん、キャンディキャンディのキャラクターが付いたものだった。


 他の子どもなら、そういう靴を喜ぶのかもしれないが、好きでもないキャラクターの物をはかされても嬉しく無かった。


 キョーダインやアクマイザーのレコードを聴くのが大好きで、もちろんゴレンジャーも好きだった。


 だからモモレンジャーのヘルメットを買ってくれたのは、まぁ嬉しかったが、本当は私が好きなのはアオレンジャーやアカレンジャーだった。


 なのに何故か母は、私がピンクレディが好きだと思い込み、ピンクレディが出る番組を見せたがったのだ。


 ピンクレディさんたちには申し訳ないけれど、その頃の事があって私はいまだにピンクレディが苦手です。


 昭和の時代だからしょうがないのかもしれないけど、女の子には女の子っぽいものをとかなり押し付けられたように感じています。


 色ですら、ピンクなんて大嫌いだとある程度大きくなるまで思っていました。


 母親の友達の関連で、私が遊ぶ友達は8割ぐらいが男の子でした。

 だから尚の事、私は女の子っぽい物より一緒に遊ぶ男の子たちと意気投合出来るような特撮ものやロボットアニメを見たがりました。


 けれど母親は「ピューレラちゃんはキャンディキャンディ好きだもんねぇ」と決めつけるのです。


 大人になってからも、私が子どもの頃にキャンディキャンディやピンクレディが好きだったんだよと思い出したように言いました。


 どうして母の中ではそういう事になっているのだろう。


 私、キョーダインばかり見てたじゃないか。


 母は私が女の子らしいものを好み、男の子が好きなものを好む事を思い出ですら認めたくないようでした。


 だけど矛盾したこともあったのです。


 それがマンガです。


 母は何故か、マンガは少年マンガや青年マンガを私に与えました。


 小学校低学年の頃から、永井豪先生の『あばしり一家』を与えられ、私はハマっていきます。


 あばしり一家はあの有名なハレンチ学園のようにエッチなマンガです。

 でもそれだけじゃなく、こちらはとんでもない暴力的なシーンも多いマンガです。


 何故母はそのあばしり一家を私に与えたのか、それはいまだに謎です。


 そして母が与えてくれたマンガは、あばしり一家以外にもキン肉マンやアラレちゃん、がきデカやマカロニほうれん荘と少女マンガは一つもありませんでした。


 母はマンガを読まない人だったので、母の好みというわけでも無さそうです。


 女の子の物を与え続けたはずなのに、母のしたいことは本当に分かりません。

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