第6話 料理下手
母は料理が下手でした。
けれど自分では上手で、手の込んだ料理を作っていると思っているようでした。
レトルトや冷凍食品はごちそうだと思っていて、こんな美味しいのを出してあげているんだからありがたく食べなさいという感じなのです。
キムチの素を買ってきて混ぜただけの物を一から作ったキムチだと思い、人におすそ分けまでしていました。
『料理下手』なのに下手だと思っていないも毒親あるあるの一つのようです。
そんな母だったので、私は母から料理を教わりたいとは思わず、レシピ本を読んで独学で料理をするようになりました。
そして「私の作るものの方がずっと美味しいわ、母にも作ってあげよう」と思い私が料理しようとすると嫌がられました。
食べさせていないのに、母は私の作るものを食べるのを避けました。
大人になってから、帰省した時にたまには母の代わりに私が料理しようとすると、それも嫌がられました。
私は、「台所はその家の女主人の大事な場所だから、その女主人以外は使っちゃいけないんだな」とそれが世間でも普通の事なんだろうなと母の態度からずっと思ってきました。
けれど結婚して、夫の実家に行った時に私があまりに料理に積極的にならない事に呆れられた事から、やっと私は母の態度が特殊だった事を悟りました。
母は私が作った料理を認めてくれませんでした。
下手過ぎて食べれたものじゃないぐらいの感じに言ってきました。
あんまり食べてくれたこと無いのに。
でも落ち込みませんでした。
私は自分の舌を信じていたし、母より自分の料理の方が上手いと思っていたから。
私の料理を作らせないくせに、母の料理は手伝わせる事はありました。
私なりの味付けをしようものなら、「そんなんじゃダメ」と怒られ
不味くなると分かっているやり方や味付けをしなくてはいけない苦痛が、母の料理の手伝いにはありました。
なので私にとっておふくろの味は、たいして懐かしいものでは無いのです。
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