第46話 できごと

 朝食を済ませた後、ブラッドたちはアイサット王宮に向かった。


 ブラッドの時計で時刻は午前十時を指していた。


 王宮内は大騒ぎになっていた。


 騎士団員が武器を抱えて走り回っていた。術士部隊員が錬金術の本を持ってはあくせくと荷物を搬入していた。従者たちは非常食として使える食べ物を厨房から持って出ると馬車に積み込んでいた。


「戦争が始まる」と全員が雰囲気で語っていた。


 そんな中、アイナは人を避けながら王宮の中に入って行った。


 ブラッドとヴァンもアイナに続く。


 アイナが向かった先はアイサット王宮の謁見の間だった。


 中に入ると、そこは威厳のある玉座があり、礼儀を守る形式ばった場所とは違っていた。武器や防具が煩雑に置かれ、赤色の絨毯の上には数人のレジスタンス構成員が横になって眠っていた。そんな中、玉座の前には木製の大机が置かれており、アガーテとレックスが目の下に大きな隈を作っては話し合いをしていた。


「お助け屋の二人、来てくれると信じていたよ」


 声に全く力がないアガーテがブラッドたちを見て右手をヨロヨロと挙げた。


 レックスは眠そうな目を擦りながら、アイナに話しかけた。


「姫様、二人は協力してくれるのか?」


「はい、勿論です!」とアイナが笑顔で答えるとレックスは安堵の声をあげた。


「帝国には相応の戦力が必要だからね。二人の存在は凄い励みになるよ。ところでどちらか戦術論に詳しい者はいるかい?」


 ブラッドが面倒臭そうに挙手した。


「一応、一通りの学問は修めている。魔物たちの戦術論だが、人間に対して使えるかどうか解らないが、師から叩きこまれた戦術論はあるぜ」


「それは是非に教えを乞いたいものだ。王子、ブラッド君の戦術を聞かせてもらったほうが良いのでは?」


「そうだね。ブラッド、是非、僕たちに戦術を教えて欲しい」


 ブラッドが話に参加した。


 暇なヴァンは「何をしよう?」と腕組みをして思案していた。


 すると、アイナがヴァンに近寄っては小声で話しかけた。


「ヴァンさん、お時間があるなら少し、ご相談があります。よろしいですか?」


「何だろう? ここでは話ができない話なの?」


「そうです。場所を変えましょうか」


 アイナが謁見の間を出た。


 ヴァンはブラッドが真剣に戦術を語っている姿を見て、「ブー君、少し行って来ます」と内心語るとアイナの後を追った。

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