第25話 血液魔法体得(1)

「まず、アイナ。お前は魔法を体得しているのか?」


 血液魔法を売る店前でブラッドはアイナに問うた。


 アイナは申し訳なさそうに小声で話した。


「私、実は血液魔法を全く使えないのです。本国ではアイサット王国みたいに血液魔法が主流とは違い古の高度な機械文明を研究して再現する動きが強くて、機械に任せた文化が特徴なのです。だから、私がアイサット王国に来てこんなにも広く血液魔法が浸透している文化に驚いたのです」


「良く道中、山賊とかはぐれ魔物に遭わないでアイサット王国まで来られたね! 凄い強運をしているよ! 僕たちみたいに体術とかを習っていたの?」


「ヴァンさんみたいない圧倒的な力は持っていませんし、体術も護身術もほとんど知識はありません。私にできることは治める術と戦術を知っている程度です。皇居内でも学問ばかり習っていました」


 話の内容想像したヴァンは頭を両手で押さえて「ブー君、学問ばっかりだって! 僕なら死ぬよ!」と大袈裟にショックを受けていた。


 ブラッドは場を明るくするヴァンを見てカラカラと笑うともう一人のお伴、アガーテに質問した。


「阿呆王子、お前は何かしらの魔法が使えて当然だな。何が使える?」


 アガーテは腰に手を当てて尊大な態度を採ると自信一杯に言い放った。


「血統血液魔法以外何も使えない! 自慢ではないが、僕の好きな言葉は『怠惰』だ! 血液魔法の体得からも逃げた輝かしい経験が自慢だぞ!」


 アガーテが堂々と言い放った言葉に全員が頭を抱えた。


 アガーテは本当にボンクラ王子だった。


 ヴァンが沈みかけた空気を満面の笑顔で明るく変えた。


「とりあえず二人の血液型を聞いておこうか! 因みに僕は半人半魔だから血液型異常を起こしているんだってさ。だから魔法は使えないけど、体力だけはブー君よりも自身があるから安心してね!」


 ヴァンの自己紹介を含めた話しを受けて、アイナは笑顔で「私の血液型はO型です!」と手を挙げて答えた。


 アガーテは乗り気ではなかったがブラッドに首根っこを掴まれていたので仕方がなさそうに「A型だよ」と答えた。


 二人の血液型を聞いたブラッドは店主に今ある血液型の中から基礎下級血液魔法を選んでもらった。


 ブラッドが「ゼニは王宮に請求してくれ」と店主に言ってアイナとアガーテに差し出した物は紙コップ一杯に入った血に甘味料を加えた液体だった。


 ブラッドが右手人差し指を立てて簡単に説明した。


「この血を飲めば、アイナは「炎の球」と「治癒(ヒール)の(・)光(ライト)」を体得

出来る。阿呆王子は「炎の球」、「水の龍」、「風(ウインド)の(・)刃(セイバー)」を体得出来る。使いかたは自然と頭が理解して身体が覚えてくれる。騙されたと思って飲んでみろ」


 アイナとアガーテは紙コップに入った血を唇に当てると傾けた。


 全て飲み終わった後、二人は一瞬だけ固まった。


 固まったのはほんの数秒で元に戻った。


 アイナが自身の身に起きた不思議な出来事について話した。


「私、本当に魔法が使えるんだって解ります! 生まれた時から知っていたような感覚ですね。例えようがありませんが、身体がいつでも魔法を放てる準備が出来ているって感覚です!」


 アガーテも「少しだけ感動を覚えた」と言いたげな表情で言葉を紡いだ。

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