第16話 作戦会議
夕方17時――。
ジュノの街を堪能したアイナはブラッドとヴァンが働いたお金で大量に買い物した荷物を二人に持たせては自分が宿泊している民宿へと案内してくれた。
アイナはぶっきらぼうのブラッドより人懐っこいヴァンに懐いていた。
「二人共遅いですよ! 私の民宿はここです!」
最初に会った時の思い詰めた表情は消え去っていた。
今は十七歳の女の子相応の態度とお転婆っぷりを発揮していた。
ヴァンは前が見えないほど積み上げられた服を持ってはブラッドに話しかけた。
「ブー君、少しはアイナさんに慣れた? まだ、過去を重ねてる?」
「心配要らない。俺はそんな凡ミスを犯す素人とは違うぜ。ヴァンこそそんなに懐かれて大変だろう?」
「僕は懐かれるのは嬉しいな! 嫌われるのは慣れているけど、僕のことを知ったらきっとアイナさんは直ぐに僕を嫌いになる。考えたらショックが大きいな」
語尾に元気がないヴァンにブラッドは優しく話しかけた。
「どんなに周りがお前を嫌いになろうが、俺は違う。俺とお前がいれば最強だ。その定義は変わらない。だから、心配するな」
ヴァンはブラッドの言葉を受けて元気よく「うん!」と答えた。
アイナの荷物を宿屋に届けた後、三人はアイナの泊まっている部屋で作戦について話をした。
アイナの泊っていた部屋は一人向けの部屋だった。入口正面にシングルベッドと窓があった。左側には鏡と木製の椅子が一脚置いてあった。右側は簡易式のシャワー室になっていた。トイレは共通のトイレを使う仕組みになっていた。
アイナはベッドに腰かけて話を聞いていた。
ヴァンは左側に設置された一脚の椅子の背もたれを前に座って気楽に作戦内容を聞いていた。
今回の作戦の立案者はブラッドだった。ブラッドは過去、稼ぎ口として王宮の掃除もしていた経験があり、王宮の構造に明るかった。
ブラッドの提案した内容は簡単だった。
役割を二つに分けて事に当たる誘導作戦を提案した。
近接格闘が強く前衛向けのヴァンが王宮前で暴れる。
騎士団がヴァンを取り押さえに総結集してくるのは目にみえていた。
だが、ヴァンは騎士団が総結集しても簡単には捕まらない。
時間はじゅうぶんに稼げる。
混乱に乗じてブラッドとアイナが王宮内に侵入し、国王が寝込んでいる寝室まで迅速に向かう。
かく乱と隠密行動を同時に行う作戦だった。
作戦内容を説明してから、アイナが心配そうにブラッドに話しかけた。
「ブラッドさん、ヴァンさんは本当に大丈夫なのですか? アイサット王国騎士団は屈強で魔物退治も行う精鋭部隊と聞いています。そんな屈強な戦士たちにヴァンさん一人で対応するなんて不可能です」
「大丈夫だ。俺とヴァンだけが可能にできる実力を持っている。ヴァンは普段は明るいが戦闘になると凄いぜ。近接戦では俺も勝てない。だから、絶対の自信を持ってこの作戦の鍵を任せられる。アイナさんは俺と一緒に王宮内を駆け回る。足に自信はあるか?」
「馬鹿にしないで下さい! 私は駆けるのは大得意なんです! こう見えて兄妹たちの中で一番運動神経が良いのですよ!」
アイナは見事な胸を張っては「エッヘン」と言わんが如く自慢した。
自信があるアイナだが、ヴァンが優しくフォローした。
「アイナさん、もし疲れたら素直にブー君に言うんだよ。必ず助けてくれるからね。僕は今晩、派手に暴れる役割だから、立ち合えないけど、国王に会えることを祈っているよ!」
アイナはヴァンの言葉を受けて感謝の意を示した。
話が纏まったところでブラッドが威勢よく立ち上がっては話した。
「では、アイナさんを国王の元にお連れする華麗なる作戦を開始するぜ!」
「ブー君、僕が大暴れする時点で華麗とは違うよ。流血沙汰必死だよ……」
ブラッドは一言多いヴァンの頭に黙って拳骨を叩きこんだ。
アイナはそんな二人を見てケラケラと腹を抱えて笑った。
ブラッドはこの笑顔が見えただけでこの面倒事を引き受けた甲斐があったと心底思った。
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