第14話『修学旅行・2』
銀河太平記・002
『修学旅行・2』
展望デッキに居合わせた旅行客や見学者やらトランジットやら空港スタッフやらが、揃って四番ポートに目を向けた。
ゴーーーーーーーーーーーーーーーー
ついさっき火星からの修学旅行生五百人を乗せてきたパルスシャトルが飛び立った四番ポート前のカーゴロードを滑走路にして、十二機のゼロ戦を始め三百年前の日米軍用機百機余りが着陸しようとしているのだ。
「すごいな……」
彦が短い言葉で感動する。
日ごろクールな彦が「すごいな」などと感動を言葉にすることは無い、たいてい「へー」「ほー」「うん」で済ます優等生が、平仮名にして四文字も口にすることは珍しい。
日ごろ、何かにつけ正直に感情や想いを口にする空(そら)は、逆に言葉も出ないし、入学以来感情が薄いと教師から言われている未来(みく)は教師の言葉通りシレっとした顔をしておるが、よく見ると薄く口と瞳孔が開いて、幼なじみである空が正面から見ていたら「どうした未来!?」と詰め寄るくらいに感動している。
児玉戦争と別名で呼ばれることが多い満州戦争終結二十五周年と今上陛下御在位二十五年を記念して行われるページェントのために集められたクラシックたちだ。
東京を皮切りに日本各地で展示飛行などが行われる。それが、たった今到着したのだ。
「すごい、プロペラで空気かき回して飛ぶんだぜ」
「ここまで振動が伝わって来る……」
「待った甲斐があったな」
空たち四人はページェント参加機の到着が、自分たちのパルスシャトル到着の一時間後であることを知って、羽田空港の展望デッキで待っていたのだ。
「あ、えと、テルもそろそろなんじゃない?」
未来が時計を気にする。
「そうだな……」
「ダメよ」
右手の人差し指を振ってインタフェイスを出そうとした空を未来がたしなめる。
「そうだな、修学旅行中はアナログでいこうって決まりだぞ」
「あ、わりいわりい(^_^;)」
「下りてまってみる?」
「あ、もうちょっと……」
「あとはVRでダイブすればいいじゃない」
「やっぱ、ライブで見るのは違うからなあ……」
「ん、あれは?」
未来が指差した方向にはエプロンに入って来るパルストランスポーターの車列が見える。
「一部の機体は、あれに載せてキャンペーン会場に持っていくんだ」
「火星までは持ってきてくれないだろうなあ……」
「当たり前でしょ、いくらパルスでも火星は遠すぎる」
「あ……」
彦が小さく驚いた。
未来と空が目を向けると、エプロンにタイヤを軋ませてアナログ車が侵入してくるところだ。
トランスポーターに接触しそうになってスピンして運転席に見えた姿は……
「「「テルだ!」」」
空 未来 彦 テル 四人の修学旅行が始まった。
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