第15話『修学旅行・3・羽田宇宙港・2』
銀河太平記・003
『修学旅行・3・羽田宇宙港・2』
羽田宇宙港は大騒ぎになった。
セキュリティー厳重なエプロンにアナログ車で突っ込んで、危うくトランスポーターに衝突というところで停車したのだ。ただちに保安部のロボット隊が駆けつけてきて、テルは車ごと包囲された。
「手を挙げて出てきなさい」
フェーザーを構えた小隊長が車に向かって声をかけ、部下のロボットたちも一斉にフェーザーを構えレーザーポイントをアナログ車の運転席に……当てようとしたが、赤い照準ポイントは無人の運転席のあたりを彷徨う。
「アナログ車だろ?」
「車籍はコトブキレンタカー、ニ十分前に貸し出されたトヨタです。借主は火星の高校生……」
瞬時に車籍から履歴を検索し、検索情報は宇宙港保安部と警視庁で共有された。
「それなら、運転席に……フェイクかもしれん! 下がれ!」
警備小隊のロボットたちは一斉に十メートルの距離をとって身を伏せた。
第三級アンノウンの警戒情報は日本中の警察、国防省、内閣情報局と共有の範囲が広げられ、国防相とリンクしている米軍とイギリス軍にも同時に送られ、二秒後には、いずれも該当事項無しのアンサーが返されてきた。
カチャリ
ドアが開く気配がして、警備小隊は蟹のような匍匐でさらに十メートルの距離をとった。
「両手を頭の上に置いて出てこい!」
カチャカチャ
「R4パルス核の起動音に近似!」
R4パルス核というのは東アジアのテロリストに出回っている携帯核で、爆発すれば羽田宇宙港の半分が吹き飛んでしまう近似でなく確定ならば、小隊長は車ごとの破壊を命じていただろう。
カチャッ!
勢いよくドアが開いて、まろび出てきたのは小学生!?
「やっと開いたわよ。ちょっと、あんたたち、物騒なものはちまってほしいのよさ!」
「こ、子どもか……?」
「しつえいね! こえでも、高校二年生なのよさ!」
テルは手を挙げたまま頭上にインターフェースを開いた。テルの身分に関する情報がテロップのような流れる。
「星府立第三高校二年……平賀・エレキ・テル……10歳……オールマースグランプリ優勝、地球国際免許保持……」
「隊長、取りあえず連行しましょう」
「そうだな、今から身柄を拘束する。手錠をかけるから抵抗しないように」
女性型警備ロボットが、マニュアル通りに表情を緩めてテルに近づことした。
「まちなさいよ! 拘束さえうようなファクターは、なにもないのよさ!」
「大人しく従ってちょうだい、おねえさんたち、ひどいことはしませんからねえ」
「隊長、きちんと照合しやさいよ! レンタカー借りたのも合法りゃし、宇宙港のゲートも普通車(パルス車)しか進入禁止になってなかったし、アナオグ車にはナビオートちゅいてないし、ここに入ってきたのは不可抗力にゃし、ここまで分かった?」
「え、ああ、その通りだが、宇宙港に無断で侵入したら逮捕は当たり前だ」
「あんたたち、ゲートのセキュリティー抜けてゆのよさ。本来なや『道間違ってますよ』と注意があるべきれしょーが! わたし、そーゆーの聞いてないわよ、いきなり拘束って、ひよいと思うわよさ」
小隊長は保安部のPCを通して、リンクしている警視庁のPCにも答えを求め『法令通りに手順を踏め』という回答を得て「ここは進入禁止です」と、改めて言った。
「まあ、そうにゃの!? ごめんなしゃい、直ぐにバックするわよさ」
車に乗り込むと、静かにバックして、切り返すこともなくゲートからバックのまま出ていき、宇宙港正面のロータリーに車を着けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます