第8話 源平無双
左門が旅芸人風情の男と林に消えたのを、目の端で捉えながら
源平は残り二人の男達と対峙した。
商人に扮装した男は両方の袖口から、鉄製の長い鉤爪の様な
武器を取り出し姿勢を低くして半身に構える。
もう一人の農夫の男は鎖鎌を手に、分銅の付いている方の鎖
をブンブンと手元で回し始めた。
「やれやれ、忍びというよりも大道芸人といった手合いじゃな」
源平はため息をつくと、自身も長槍を頭の上で豪快に回し始め
た。
「ふははは、どうだ!儂のこの
客を集めるぞい」
源平は得意顔で槍を回しながらも、二人の動きを
慎重に間合いを詰める。
先に動いたのは、源平の読み通り鎖鎌の男だった。
男は源平の槍を封じるべく鎖の分銅を放つ。手元に伸びて来た
それを敢えて源平は己れの槍の先に絡みつかせる。
すぐさま商人風の男が、鉤爪で源平に襲い掛かる。
「ぬおおー」源平は力に任せ槍を横に大きくなぎ払う。
耐え兼ねた農夫姿の男の足がグラリとよろめく。
源平の振り払った槍が途中から別れ、柄の中から細身の刀が
現れた。
「何!?」
驚いたのは得物を封じたと踏んで、襲い掛かった鉤爪の男だった。
源平の刃が、目にも止まらぬ速さで男の脇腹を薙ぐ。
「ぐっ‥‥はぁっ」
男の脇腹から潜血が溢れ出し、ガクリと膝をつく。
「おのれぇぇ」
鎖鎌の男が反撃するべく鎌を振り上げようとするが、その先には
先程絡め取った源平の槍の半分が引っかかっている。諦めた男は腰の
短刀を引き抜くと、刺し違えを覚悟に源平に向かって来た。
源平はフッと軽く息を吐き、滑るような足捌きで男の突きを躱し
振り向きざまに男の首元を袈裟斬りにした。
「近頃の若いもんは派手な武器の扱いに固執するあまり、基本がなっ
ておらんわ!」
源平は嘆かわしいとばかりに首を振り、刀の血を払うとそれを治める
槍の片割れを拾い上げ、元の長槍に復元した。
「さて、若の方はどうなったかの」
源平は長槍を肩に担ぐと、左門が消えた林の中へ分け入った。
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