大人なパンティー



翌朝、僕は生徒会室へ向かった。


「雫先輩〜......」

「あら、蓮くんが進んで朝から生徒会に来るなんて珍しいわね」

「あのプリクラ酷いですよ!」

「乃愛さんに頼んだら、すぐに編集してくれたわ」

「ま、まぁ......それは一旦置いておきます。それより、不登校の理由が分かりましたよ」

「今回は、私に相談することなくやり遂げて見せなさい」

「そんな!」

「その代わり、蓮くんの考え通りに動いてあげるわ。蓮くんのやり方や戦略通りに生徒会が動く。蓮くんの生徒会としての実力を見せてちょうだい」


あぁ......いっそ僕が不登校になりたいよ。


「それより蓮くん。今日から夏服よ?」

「え......」


落ち着いて見ると、雫先輩はワイシャツ姿だった。

胸が目立って、ちょっとエロい。


「どこを見ているの?」

「いえ!教室戻ります!」

「ワイシャツにならないと、結愛さんに注意されるわよ」

「ぬ、脱ぎます!」

「シワにならないように、そこのソファーに置いておきなさい。生徒会の一員だから、特別に私がクリーニングに出しておくわ」

「あ、ありがとうございます!」


教室に戻ると、瑠奈が僕の席に座って顔を机につけていた。


「なにしてるの?」

「こうやって蓮を感じてるの♡」


瑠奈は気づいていない。

瑠奈の目の前に、瑠奈を笑顔で見下ろす梨央奈先輩が立っていることを......


「私の殺気は感じてるかな?♡」

「はぁー?なんで居るわけ?」

「彼氏の教室に来ちゃいけないの?カ.レ.シ.のね」

「なに。やんの?」

「いいよ?」


あぁ〜!止めなきゃ!


「蓮、来て」

「え?」


耳元で千華先輩の声がして、いきなり腕を引っ張られた。


「千華先輩?どこ行くんですか?」


と聞いた瞬間、僕の教室から机や椅子や鞄が飛び出してきた。


「えー⁉︎」

「瑠奈ちゃんと梨央奈でしょ?気にしない気にしない!」

「あれを気にしないの千華先輩だけですよ⁉︎」

「いいからいいから!不登校の件、アドバイスあげる!」

「本当ですか⁉︎」

「うん!」


そのまま屋上に連れてこられ、ベンチに座った。


「アドバイスって何ですか?」

「ん?ちょっと待ってね?」

「......なにしてるんですか?」

「大人しくしててねー」


千華先輩は僕の体を縄跳びを使ってベンチに縛り付けた。


「完成!」

「あのー......これは?」

「毎日弁当作ってるのに、最近全然食べてくれないし、毎日私から逃げるじゃん!」


千華先輩は頬をプクーっと膨らませて、可愛らしく僕を見つめた。


「いや、だって!」

「だからね!じゃーん!」


千華先輩はベンチの下から弁当を取り出して、僕に見せつけ、楽しそうにニコニコしている。


「口移しなら食べてくれるかなって!」

「口移し⁉︎」


そう言って千華先輩は春巻きを咥えると、僕に跨り、顔を近づけてきた。


「ち、千華先輩⁉︎ダメですよ!......え〜⁉︎⁉︎」


千華先輩は春巻きを咥えたせいで、また気絶してしまった。


「千華先輩⁉︎起きてください‼︎」


こんなとこ誰かに見られたら......そう思った時、ガチャっと屋上のドアが開き、雫先輩が現れた。


よりによって雫先輩だ〜‼︎‼︎‼︎


「校内で浮気?」

「見れば分かりますよね⁉︎」

「えぇ。千華さんに抱きつかれて幸せそうね」

「そうじゃなくって!ちょっと⁉︎携帯向けてなにする気ですか⁉︎」


パシャとカメラの音が鳴り、僕に絶望感が襲った。


「プリクラとこの写真で完璧ね」

「雫先輩!これ解いてください!」

「教室で瑠奈さんと梨央奈さんが暴れて、七草先生が怒っていたわよ?早く戻りなさい」


そう言って雫先輩は校内へ戻っていった。


「ほどかないんかーい!」


どうしたらいいんだ......


ガチャ


「なに......してるの?」


梨央奈先輩だ〜‼︎‼︎地獄‼︎‼︎‼︎


「違うんです!千華先輩が僕を無理矢理!」

「な、なんで縛られてるの⁉︎今解くからね!」


よかった......誤解と縄跳びは解けそう


「って、えー⁉︎」


梨央奈先輩は千華先輩の肩を掴み、地面に強く叩きつけるようにして僕から離した。


「大丈夫?怖かったよね、私が助けるからね!」


梨央奈先輩も色々と怖いよ......


「はい!解けたよ!あっ......腕が跡になってる......大丈夫?」

「これくらいなら大丈夫です。ありがとうございました」

「蓮くんが傷つくのは許せないから」


梨央奈先輩は恐ろしい目つきで千華先輩を見下ろした。


「り、梨央奈先輩?」

「ガムテープ持ってきて」

「なんでですか?」

「持ってきて」

「は、はーい.......」


なにあの雰囲気‼︎怖いよ‼︎


急いで教室にガムテープを取りに行くと、クラスメイトは全員で机を直していた。


「涼風くん!どこ行ってたの?」


うわー......本当に七草先生怒ってる......こうしちゃいられない!


「瑠奈!ガムテープ持ってない?」


気絶してる〜‼︎‼︎


「林太郎くん!」

「ガムテープなら、ロッカーの上にあるだろ」

「本当だ!ありがとう!」

「こら!無視しないの!」

「後で謝りますから!」

「ちょっとー⁉︎」


ガムテープを持って屋上に行くと、千華先輩は気絶したまま縄跳びでベンチに縛られていた。


「ガ、ガムテープ持ってきましたけど」

「ありがとう!」


梨央奈先輩は、いきなり千華先輩のスカートをめくり上げ、パンツが丸見えなるようにスカートをガムテープで貼り付け始めた。


「パンツ丸見えですよ⁉︎」


千華先輩って意外と白なんだ.....


「......蓮くん?なんでパンツを見たの?」

「梨央奈先輩がスカートめくるからですよ⁉︎」


そして僕の方を振り向いた梨央奈先輩は、何故か恥ずかしそうな表情をしていた。


「目の消毒だからね......」

「なー⁉︎⁉︎」


梨央奈先輩は恥ずかしそうに自分のスカートをめくり上げ、僕にパンツを見せてきたのだ。


「ど、どうかな......いつ蓮くんに見られてもいいように、いつも勝負パンツ履いてるの」


黒‼︎意外すぎるよ‼︎大人っぽすぎるよ‼︎そしてめちゃくちゃエロいよ‼︎


「な、なんか言ってよ」

「エ、エロいです......」

「も、もっと近くで見ていいんだよ?」


思わずゆっくり近づくと、近くから乃愛先輩の声が聞こえてきた。


「蓮〜、なんで前かがみなの〜」

「乃愛先輩⁉︎」


乃愛先輩は屋上の物陰から出てきて、梨央奈先輩は慌ててスカートを戻した。


「な、なんで乃愛がいるの⁉︎」

「寝てた〜」

「そ、そうなんだ!おはよう!」

「梨央奈〜、見て見て〜」


乃愛先輩は携帯で一つの動画を見せてきた。

それは、梨央奈先輩がスカートをめくって僕を誘うシーンだった。


「け、消して!」

「梨央奈の慌てた顔初めて見たかも〜」

「そんなのいいから!」

「雫に見せてくる〜」

「やめて!」


乃愛先輩は小走りで校内に戻って行き、梨央奈先輩も慌てて校内に戻っていった。


千華先輩はどうしよう......まぁいいか。


僕も教室に戻って、七草先生に注意されている時、校内放送で生徒会室に呼び出された。


「せ、先生、行っていいですか?」

「生徒会の呼び出しならしょうがないわね。行きなさい」

「はい」


生徒会室に行くと、梨央奈先輩が床に正座させられていて、雫先輩は腕を組んで梨央奈先輩を見下ろしていた。


「蓮くん、梨央奈さんの横に正座しなさい」

「は、はい......」


正座をすると、雫先輩は僕達の周りをゆっくり回り始めた。


「さて、変態カップルさん?校内でなにをしようとしていたのかしら」

「れ、蓮くんは悪くないの!罰を与えるなら私に!」

「この社会は差別を無くせと叫ぶくせに、何故か性に関しては男性が悪くなりがちよね。本当に悪くなくてもよ?だから蓮くん、今回は貴方に罰を与えるわ」

「え、差別って分かってるのに僕ですか?」

「そうよ。私はそういう考えに反対だけれど、蓮くんもそういう社会で生きていかなきゃいけないの。これは社会勉強よ」

「な、なるほど......それじゃ、罰は......」

「不登校の生徒を今日から三日以内に登校させなさい。できなければ退学よ」

「退学⁉︎」

「待って雫‼︎」

「これが会社ならクビなのよ?当然のことよ。それじゃ、蓮くんは教室に戻りなさい」

「はい.......」


蓮が生徒会室を出て行くと、梨央奈は雫に頭を下げた。


「お願い!蓮くんを退学にしないで!」

「蓮くん、あの人はやってみせるわ」

「え?」

「生徒会室を出る時、一瞬だけど、なにか閃いたような顔をしたの」

(それにしても梨央奈さん......たまにだけど、本当にいろんな表情を見せてくれるようになった......)


ピンポンパンポーン


「ほら、始まるわよ」

「え、えーと、生徒会の涼風蓮です!全生徒、今すぐ体育館に集まってください!えっと、あの、お願いします!」


ピンポンパンポーン


「梨央奈さん、行くわよ」

「う、うん」


僕は体育館のステージで全校生徒を待ったが、僕からの呼び出しだったから、みんなノロノロとゆっくり体育館に入ってきた。

生徒会のみんなは体育館の1番後ろで僕を見ている。


千華先輩はスカートをモゾモゾしながら、顔を真っ赤にして体育館に入ってきた。


誰かに助けてもらったのかな。

......よし、全校生徒集まったかな。


「集まってくれてありがとうございます。今回は集まってもらったのは、三年一組の山本先輩のことです!」


三年一組の生徒はざわついたが、僕は話を続けた。


「山本先輩は長い間学校を休んでいて、そろそろ学校に来ないと卒業できなくなってしまいます。そこで、三年一組の先輩方は、山本先輩に、生徒会は無くなって、平和な学校になったって嘘を伝えてほしいです!絶対バレないようにです!」


三年一組の担任教師、本田先生が手を挙げた。


「本田先生、どうぞ」

「山本が学校に来てくれるのは嬉しいが、その嘘に何の意味があるんだ?」

「山本先輩が学校に来ないのは、生徒会が怖いからです。まずは嘘をついて学校に登校してもらって、その日に全校集会を開き、生徒会が脅して嘘をつかせたと、堂々と告げます」

「それじゃ、また来なくなるんじゃないか?」

「いえ、そこで山本先輩に与えるのは恐怖ではなく怒りです!学校に来るための原動力はなんでもいいんです!生徒会、いや、僕に怒りを持たせ、学校に来る理由を作ります!」


瑠奈は立ち上がり、背伸びをしながら手を挙げた。


「る、瑠奈......どうぞ」

「それだと蓮が危ない目に合う!反対!」

「そこで梨央奈先輩、千華先輩、そして瑠奈!この三人にお願いがあります!僕を守ってください!」


これは僕のことが好きという事実を使った作戦‼︎僕、最高にカッコ悪いぜ‼︎


「もし、本当になにか起きた時、実際に助けてくれた人は、僕と一日中デートできる券を与えます!」


それ聞いた瑠奈と千華先輩は恐ろしい目つきで睨み合い、梨央奈先輩は......ニコニコしながら僕を見て、手を挙げた。


「り、梨央奈先輩どうぞ......」

「蓮くんは、浮気する気満々なのかな?どうなのかな?」

「僕は!梨央奈先輩が助けてくれると信じています!」


完璧な回答だ‼︎


すると、梨央奈先輩は一瞬嬉しそうな表情をした後、千華先輩と瑠奈に混じり、睨み合いを始めた。


「それで、三年一組の先輩方は、山本先輩が学校に来るという情報が入り次第、急ぎで生徒会室に報告をお願いします!そ、それでは解散!です!」


生徒達が教室に戻って行く中、結愛は雫の横でボソッと呟いた。


「問題を解決して問題を起こすねー」

「蓮くんにしては考えた方ね。問題を解決するために問題を起こしたら、またそれを解決しなければいけないけれど」


僕が教室に戻ると、瑠奈は堂々と僕に抱きついてきた。


「ありがとう♡」

「な、なに⁉︎」

「デート券♡梨央奈先輩と別れるために、私にチャンスをくれたんだよね♡私、すぐに分かったよ♡」

「え、あー......さすがだね......」

「だって、私は蓮の幼馴染みだもん♡」

「あ、あははー......」

「私が絶対に守るから!」

「あ、ありがとう」


瑠奈は上機嫌で自分の席に着いた。


その瞬間、生徒会のグループ通話の着信音が鳴った。


「もしもし」

「私を屋上のベンチに縛り付けた人がいる。しかもパンツ丸見えで‼︎」


千華先輩がイライラした声でそう言うと、梨央奈先輩はすぐに電話を切った。


「......梨央奈......お前かー‼︎‼︎」


その声は電話越しどころか、僕の教室まで聞こえてきた。


「違うわよ」

「雫、なんか知ってるの?」

「蓮くんが縛ったのよ。パンツに顔を埋めて、幸せそうだったわよ」

「雫先輩⁉︎」

「え♡れ、蓮ってそういうのが好きなんだ♡い、いいよ!蓮がしたいなら、いつでも縛られてあげる!」

「違うんです!」

「切っていい?」

「結愛先輩!助けてください!」


結愛先輩は電話を切ってしまった。


「私も見た〜。蓮がね〜、パンツをクンクンしてた〜」

「乃愛先輩⁉︎乃愛先輩は真実を知ってますよね⁉︎」

「え♡どうしよう♡朝もシャワー浴びればよかった♡」

「千華先輩!僕して」


な〜‼︎‼︎‼︎充電切れた〜‼︎‼︎‼︎

この学校は問題が起きない日がないの⁉︎

呪われてるよ‼︎‼︎


「蓮くん」


何故か、三年生の男子生徒が僕の教室にやってきた。


「どうしました?」

「生徒会室よりこっちの方が早いかと思って、山本、明日学校来るって」

「本当ですか⁉︎」

「うん!」


よし、これで退学は回避できた。

あとは明日、どうやって僕に怒りを持たせるか......そうだ......心苦しいけど、あれしかない。

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