第28話 EX3 怖がりじゃないと困る
「…………」
夏休みも中盤へと差し掛かったある日、
いや、別に怒っているとか、そういう話ではないのだが、実は彼女がこうなってしまったのには事故とも言える理由があるのだ。
「
「何がだ。私の何に対して大丈夫なのか5文字以内で答えてみろ」
「国語マウント……」
まあ5文字以内で答えることは出来るんだけど……しかし強がっている
「ふん、答えられないのならあまり余計なことは言わないことだな」
「なんか……すいません……」
「分かればいい」
因みに読んでいる本はギャグセンスの光るコメディ調の人気作品らしいのだが、果たして頭に入っているのやら……。
「ううん……どうしたものかな」
さて、この時点で何故
そう――実は今日の夕食時に見ていたテレビがホラー番組だったのである。
とはいえ番組も前半はよくある爆笑動画集を放送してたのだが、後半は一転まさかの夏の特別企画と称してホラー動画集に。
別にホラーは苦手じゃないのだが、
『安昼、あまり私を見くびるな』
という謎の強がりをされた結果がこれ、番組が終わって3時間が経った今でもこの調子なので流石に俺も心配になっていたのだった。
「でもなぁ――って、ん? もう0時か」
「……おや、もうそんな時間ですか。では私は先に寝るので、安昼もあまり夜ふかしをしないで早く寝て下さい」
「え、あ、ああ……おやすみ、
「おやすみなさい」
しかし結局
「いやー……あれは大丈夫じゃないだろう……」
何せ
というのも、俺はその昔イタズラで楓夕を驚かせたことがあったのだが、その際彼女は激昂した挙げ句抱き枕にしがみついて一歩も動かないという事件があった。
それはもう来る日も俺は
だから俺は二度と
「でも……やっぱり恋人として、このままにする訳にはいかないよな」
なので俺はソファから立ち上がると
「
「……断ると言ったら」
「無理やりにでも入る」
「な――!」
珍しく反抗的な俺に
両手で三毛猫のキャラクターの抱き枕を抱え込みながら。
「お、お前……! こ、これを見たからには生かしては――」
「
「は…………はぁ!?」
俺の間髪入れない発言の連続に、
「というか一緒に寝たいですね、ええ」
「そんな馬鹿丸出しのコメンテーターな言い方をするな――って、近い! なんでそこまで近づく必要がある!」
「そりゃだって……恋人だから」
「だ、だとしても今近づく理由にはならないだろ」
「でも一緒に寝たいし」
「私は安昼と寝たいとは思っていない」
「ええー……じゃあしょうがない、
「!」
そこでようやく、と言うべきなのか、自分の行動理由が筒抜けだったことに気づいた
「ぐ……そうか――やはり安昼にはお見通しだったか」
「まあね、何で強がったのかは分からないけど」
「う、そ、それは……」
言い淀む
「安昼の彼女として、欠点があるべきではないから……」
「……へ?」
想定していたのとはまるで違う発言に俺は思わず間の抜けた声を上げてしまう。け、欠点があるべきではない……?
一体何故? と思ったが、ふと冷静に考えると最近の
俺はそれを頑張っているなぁという程度にしか思ってなかったが……まさかそんな理由だったなんて……。
ふむ……そうか、だがそういうことだったら――
「楓夕」
「な、なんだ」
「別にさ、頑張らなくてもいいことまで頑張る必要はないと思うぞ」
「え?」
「確かに勉強とかは将来を助けるものだし、俺も頑張らないといけないことではあるだけど――怖がりは直しても何の役にも立たないだろ?」
「そ、それは……そうでもないだろう……」
「でもほら、恐怖は人間の防衛本能から生まれるものっていうし、それなのに慣れちゃったらただの無鉄砲なだけじゃないか」
「む……い、言われてみれば……」
「というか
「は――? な、何でだ?」
「だって怖がりじゃないと、俺が
「!!」
今のは完全に狙い澄ました台詞なのだが、効果覿面だったのか
その可愛さに思わず顔がニヤけそうになるが、何とか寸前で抑え込んだ。
「お、おおお前はそういうことを――!」
「でも
「あ――……分かった、安昼がそこまで言うなら」
すると――そんな会話をしていたお陰か、いつの間にか
良かった、これならもう大丈夫だろうと、俺は
その膝を、ぐいと押さえつける者が現れた。
「ふ、
「――……安昼はそんな無責任な男なのか?」
「へ?」
「守りたいと言うのなら――ちゃ、ちゃんと最後まで側にいてみせろ」
「! ――……まさかそのつもりじゃなかったとでも?」
「なら早く行動で示すんだな」
まあ。
とはいえ流石に一緒に寝ることはなかったのだけども――
俺と抱き枕で楓夕を挟む形で、気づけば朝まで語り明かしたとさ。
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