第22話 今夜は星空が綺麗ですね
楽しい時間というのはあっという間に過ぎるものだ。
大暴走を繰り返す
慌てた俺達は駆け足で三毛猫のキャラクターグッズを購入すると、『にゃんにゃん大作戦』を後にし科学館へと向うのだった。
「ふう……年甲斐もなくはしゃいでしまいました」
「でも可愛かったな、正直猫を飼いたいと思ってしまったぜ」
「ええ、いつか猫を飼える家に引っ越したいものです」
うむ、そうなれるように俺も頑張らないといけないなぁ……まあ今は
そんなことをぼんやり思いながら電車に乗り辿り着いた科学館で、俺と
「プラネタリウムって子供の時以来見てなかったけど、基本的にあまり変わっていないんだな……ただ、その――」
俺は少し気まずさを覚えながらチラリと
決して怒った様子はないが、よくよく見ると僅かに身体が硬直している……まあそれも無理はない――
「リラクゼーションシートとは……」
何せ俺と
無論ワザとではない、下心がないと言えば嘘になるけども……。
「まあ別に――気にする程のことでもないでしょう」
「え?」
だが、予想に反した
「い、いいのか……?」
「私と貴様は許嫁なのでしょう。ならば一つもおかしなことはありません」
「…………」
今のはシートの意味を勘違いした俺への配慮だったのだろうか、それとも――
いや、楓夕がいいと言っているのだし、余計なことを考えるのは止めよう。俺は雑念を振り払いながらシートに座ると、一緒になって仰向けになった。
いざ座ってみるとベッドというよりは柔らかいクッションのような構造であり、思いの外心地が良い、これは寝落ちしないよう気をつけないと……。
「――それにしても、私が星が好きだとよく覚えていましたね」
「ああそれは――昔はキャンプに行ったり、それこそプラネタリウムも見に行っただろ? その時に
「昔はそうでも今は違うかもしれないでしょう」
「でもニュースで宇宙の話題になるとちょっと前のめりになるし」
「…………目ざとい主だ」
なんて話をしているといつの間にか客席は埋まっており、それを合図に開場を告げるアナウンスが流れる。
そこから先は、あっという間に星空の空間へ。
穏やかなBGMと共に流れる解説は形式張っていて少し退屈だったが、
――なかったのだが、よく見ると
「……
「い、いえ……ね、寝てなどいません……せっかく連れてきて下さったのに、寝るなんて無礼千万な真似は……」
楓夕は必死に抵抗を続けるが、しかしこのままでは首が取れそうな勢いだ。
普段大人しい
「
「そんなことは――……も、申し訳ありません……」
それでも抗う
「おっと……まあこれは、幸運と考えるべきかな」
とはいえ、またしても思い描いた形とは違うのだが……、あくまで
はしゃいで疲れて寝る
○
「――ん、あれは……」
そんな一時もあっという間に終わりを告げ、後は帰宅するだけとなったのだが、俺は出口に向かう一組の男女を見てさっと身を隠した。
「もしかして二宮さんと……噂の彼氏?」
「ん――……どうかしたのですか」
目をこすりながら起き上がった
笑顔で手を繋ぎ歩く二人は妙に眩しく、あれが本当のデートなのかという気持ちにさせられるが、隠れた理由はバレたくなかったからではない。
何というか……俺は二宮さんに
今だって本当の意味で俺達はデートをしていない。だから変な勘違いをされて楓夕に迷惑をかけたくないと、身を隠したのだが――
「貴様、どうして隠れる必要があるのですか」
「えっ、いや、それは……その――」
本当の事を言い出せず、つい口籠ってしまってしまう。駄目だ……こんな調子ではいつまで経っても前進などしないというのに――
しかし。
そう思った瞬間、
「? え、ええと……?」
「まずは一つ、私の自己管理不足で寝てしまい、申し訳ありませんでした」
「あ、ああ、それは別に気にしなくて――」
「いえ、本来なら私はあってはならないことをしたのです。なのでそこはちゃんと謝罪をさせて下さい、ですが――」
「?」
「もう一つ、貴様は大きな勘違いをしています」
「……はい?」
でも、耳が仄かに赤いのは――多分気のせいではない。
「私は苦手な食べ物を除いて、嫌な事ははっきりと言う性分です。故に例え猫で釣られようとも嫌な相手なら即座に断ります、ですから――」
「楓夕……?」
「く、口下手なのは申し訳ないですが、どうか私という許嫁を信じて下さい」
「え――」
それは……もしかして――
と思わず質問してしまいそうになる言葉を、俺はぐっと飲み込む。
正直、いきなりのことに頭が混乱しっぱなしだが――でもこれだけは分かる。
その先の言葉は、彼女に言わせてはいけない。
だから――俺は伸べられた手に自分の手を重ねると、優しくそっと、握りしめる。
すると
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