第18話 人生(ゲーム)は甘くない
「雨、止まないなぁ……」
俺は曇天から降り注ぐ雨粒を見ながら、ため息混じりにそう呟いた。
「梅雨は基本こんなものです。気候に不満を述べても結果は変わりません」
確かに
別にアウトドアという訳でもないのだが……休日が訪れても
というか、主に
「誕生日のリベンジも兼ねて……」
「…………」
そんな彼女は午前中に家事を全て済ませ、今は読書に耽っている。
そういえば、
「…………」
しかしそれを話題にする空気感はそこにはなく、無常に時間だけが過ぎていく。
まあ静かに過ごす時間は嫌いではないのだが――折角楓夕といるなら、もっとキャッキャウフフと遊べることもしたいんだよな……。
「うーん――――あ、そうだ! 人生ゲームをしよう!」
「は?」
唐突な俺の発言に、楓夕は馬鹿なのかこいつはと言わんばかりの視線を飛ばしてくるが、人生ゲームとは文字通り己の人生を描くゲームである。
つまりボードの中とはいえ、俺は
なので俺はリビングを飛び出すと、子供の頃によく遊んでいた人生ゲームを押入れから取り出し、
「さあ
「また随分と懐かしいものを――」
「あ、勿論
「…………まあいいでしょう。偶には思い出に浸るのも悪くはない」
もしかしたら拒否するかと思ったが、予想に反して
「よし始めよう! じゃあまずは
「……2ですね、『宇宙人を助けて2000ドル貰う』……」
「宇宙人を助けたのに2000ドルって、意外に安いよな……」
「ごく一般的な家庭の宇宙人なのでしょう。貰えるだけ有り難い話です」
「宇宙人のごく一般とは」
「次は貴様の番です」
「あ、ええと……6だな。――教師になれる、給料は1万2千ドルかぁ」
「貴様が教師など学級崩壊確定なので止めた方がいいかと」
「あながち否定出来ない人生だからやめて……?」
とはいえ、人生ゲームにおいて職業は最重要事項。悪いが1万2千では到底幸せな生活など描けやしない。
「じゃあ教師は止めておこう、まだタレント、医師が残ってるしな」
「では私の番。5――タレントか、なっておきますかね」
「毒舌タレント――」
「あ?」
「なんでもないです」
「給料日は出た目――7、ということは7万ドルですか」
「へ? 7万……?」
まだ序盤なのにバリバリ稼いでません……? い、いかん、
「よし俺も行くぞ! 6! 医者か!? ……『バンジージャンプをする3000ドル払う』」
「しかも職業マスを抜けたのでフリーターですね」
「え」
嘘だろおい……フリーターの癖にバンジーをしたのか俺は……?
「フリーターも出た目が給料なので回して下さい」
「あ、はい。えっと…………1……」
「かける千倍なので給料1000ドルです」
「やっす……」
「なんじゃいこのゴミクズは……」
「さて私の番です――10。まずは給料日で――7万ドルですね」
「さっきから凄すぎません……?」
どう見ても帯番組とCMも手にしている次元で破竹の勢いである。まあ
「さてマスは――――! ……5000ドル払うですか」
「……ん?」
すると
「…………」
「人の駒を触らないで下さい、殺しますよ」
「ふ、フユーザ様……」
「い、いいから早く回せ、金額は間違ってはない」
「お、おう、分かったよ」
どうにも気になって仕方がないが、楓夕は頑なにマスを見せようとしないので無理に見る訳にもいかず、俺は仕方なくルーレットを回した。
「9か、んーと、俺もまずは給料日で――……3で3000ドル……まあまあまあ、それでマス目は……あ、
……『恋人とレストランで食事後ホテルへ、5000ドル払う』。
「…………」
「…………」
いやその……ホテルとかいう文言いる? 前半だけで済むよねどう考えても。
ま、まあね、本音を言えば
い、いや、普通のホテルでね? 寝るだけだからね? 別に何もないからね?
「コホン……ご、5000ドルだな。全く……この男は金もない癖に見栄ばかり張りやがって、少しはまともな職に――――あ」
悲報。湯朝安昼の人生、結婚を前にして借金生活へ突入した模様。
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