第3話 楓夕の手作りお弁当
さて、今日も今日とてレッツ
とはいえまだこれといった完璧な作戦は思いついていないので、雨夜先生のアドバイスに従って
「しかし前回はあんまり上手くいかなかったからなぁ……」
だが大事なのは積み重ねである。何でもいきなり成功するほど甘い話ではないのだ、一目惚れされている訳じゃないのだし。
「さて……そろそろか」
俺は机の上に散らばっていた教科書をしまい込むと視線をちらりと楓夕に向ける。
すると丁度彼女も椅子から立ち上がり俺の方に向かって来る所だった。
「飯だ、食え」
「そんな囚人みたいに言わんでも……」
そんな相変わらずの澄まし顔でずいっと手渡してきたのは弁当である。
これもまた許嫁としての、という奴だと思うが、彼女は2年生になってから休日以外は毎日のように弁当を作ってきてくれている。
あまりにも当然の如く渡してくるものだから当初は周囲にいじられてしまい、それ以来俺は若干ぶっきらぼうな態度を取っていたのだが――
それでも毎日作ってきてくれる彼女にぞんざいな態度を取り続けるのは全く以て良くない。こういう所からだぞ、俺よ。
「
「…………」
「いや、その、今まで感謝とか言ったことなかったから、ちゃんと伝えないとと思っただけで……他意とかそんなのは無いからな?」
「……今日は釘が締まっているので止めておくのが懸命かと」
「いやパチンコの軍資金の話はしてねえわ」
そんなダメ男みたいな口ぶりだったかね俺……そこまで裏がある言い方をしていると思われていると少しショックではあるが……。
というか何で釘の情報とか知ってるんですかね……。
「――まあどうでもいいですが。食事が済んだら空箱はいつも通り机の上に置いておいて下さい、では」
「ああちょっと待ってくれ」
「? 貴様と話すことはもうないのですが」
「あー、いや、さ……たまには一緒に食べないか? と思って……」
「…………」
そう恐る恐る口にした瞬間、
ま、まずい……これは踏み込み過ぎだったか……? この様子では如何にもな罵詈雑言を受けそうだと思った俺はぐっと身構えてしまう。
――のだが、
「貴様と机を合わせて食事など生産性を感じませんが、いいでしょう」
「お、おお……! さ、サンキューな
「で、私は何をすればいいですか、咀嚼して口移しですか」
「赤ちゃんではないんですよ……」
いや赤ちゃんでもせんわ、ただの変態プレイじゃねえか。
ふっ……だ、だがこれで弁当を口実に
なので早速俺は弁当の蓋を開けると、歓喜の声をあげる。
「お、今日も美味しそうな弁当だな! 流石
「全部冷凍食品ですが何か」
「――じゃなくたっていい。朝は忙しいからな、余計な手間は省くべきだ」
「は?」
そうだろう? 時を戻そう。――――じゃなくて。
おいおい……
こうなると最早米しかないのだが、米の褒める点って何だよ……。
「ぐうう……なんてこったい……」
「頭を抱えながら食事をしないで貰えますか、黙って食うかそのキモい顔のまま死ぬかはっきりして下さい」
「イートオアデッド……」
し……仕方あるまい、ここは二人で昼食を取れているだけ進歩したと思おう。
第一このまま会話をしていればまだチャンスとなる時はあるかもしれない、一つ作戦が失敗したぐらいで挫けているようでは到底――
「……ん? そういえば冷凍食品という割には随分と種類も豊富だし、一品一品結構拘った感じになっているんだな」
「……貴様のような人間は弁当など作ったことがないでしょうが、最近の冷凍食品は昔より種類も多く豪華なものが多いので」
「へえ、そうなのか――――……ほんとだ美味い、冷凍とは思えん味だ」
「………………そうか」
「それに野菜や魚も入ってて栄養バランスも良いし、冷凍でもちゃんと考えてくれているんだな、有り難いなぁ――……って、
「…………」
別に変なことをいった覚えはない(というより思っていたことを口にした)だけなのだが、何故か
え? ま、まさか今ので怒らせてしまったのか……?
「あ、あのー……」
「おい」
「はい」
「食事の時は黙って食えと親から習わなかったのか」
「すいません、今後は口を凧糸で結ってから食べます」
いやそれだと飯が食えんけどね。
だが
「……はーぁ」
どうやら今回もまた失敗である。分かってはいたが、彼女に好きになって貰うというのは一朝一夕で行くほど甘くない……。
しかしまさか耳が赤くなるほど怒ってしまうとは……ううむ……気持ちを伝えるっていうのは中々難しいもんだな……。
「…………ふふ」
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