第46話 入学

憎しみに埋もれていくのを感じる。全神経が麻痺しているようで、立っているのか座っているのかが分からなくなってきた。王座の少女が霞んだ。

バットをもった男性が、膝を抱いている由美を見て止まった。頭に流れている記憶が変わり始めて、由美にピントが合わなくなっている。走馬灯の由美はもう甘い誘惑ではなかった。新たな力でバットを振りかざし、自分の頭が割れるまで顔面を打った。隣の男が小型のナイフを取り出して、首に突き刺しては、それをめぐりみんなが一斉に動き出した。ナイフが、順番を待つ汗だくの追っ手達の首を戸惑いなく割いていく。気付けば、動いている者はもういなかった。

あたりが沈黙に落ちる。由美はゆっくりと目を開け、ふらつきながらも立った。無表情で階段を上り、車に向かった。感情の超過で脳が破綻しているのが分かる。何も入ってこない。車のドアを開け、長い間、こない迎え待った。

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