第38話 ミー

蘇った父さんの顔が思いのほか優しくて驚いた。いつの間にか嫌うようになっていた父さん、私はまだまだ思春期の娘に過ぎない。

「嘘つき」

「由美、大丈夫か?いきなりだんまりしちゃって」

「うん、大丈夫。昔の事を思い出しちゃって、でもありがとう」

東が心配気に顔を覗き込もうとしている一方、寺田は地下を歩き回っている。特に何もない部屋に隠しものがあるか探している。適当な調査。ただ気をそらそうとしている。

柳がそっと近づいた。

「由希雄の奴、まだよくわからないじゃないか。俺は誘われたけど、オカルト部に入った覚えはないぞ」

「仕組みがどこかに書かれていないか?」

「いや、ストーリーだけだった」

「そうか、仕方ないな...」


外で猫の鳴く音がした。子猫が数匹家の隙間で隣同士寄り添っている。母の帰りを待っている子猫達はもうそろそろ自分でネズミを捕るようにならないといけないが、今日はまだその日ではない。母がネズミを銜えて戻ってきた。白黒の毛は、子供と同じように影の下で銀色に変わった。


「引き上げるぞ。また来るかは、その時決めよう」

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