第6話 犬のお手紙

 今日は、念じてみた後で大学とその近くにある駅やスーパーにも行ってみたけれど困っている人って、中々、居ないわね。

 犬のお手紙を書くを選択してみましょう。

  ぐるぐる、ぐるぐる、目が回る💦

畳の部屋に囲炉裏と茶箪笥、姿鏡、昔の古いテレビ、卓袱台ちゃぶだいの上には、紙とペンが置いてあります。姿鏡を見ると、生前の姿で赤茶色の短髪でボーイッシュな女の子が写っています。

『やったー、生き返ったわ♪』 

『残念ですが、違います。ここは、生と死の狭間の空間なので、魂が貴方の形を保っているだけです。』 犬神の声が頭に響いた。 

『手紙を書いてくれるのを待ってたよ。おいらは、柴犬のリッキーだ。小学生のななちゃんにお手紙をお願いしたいワン。』

『分かったわ、ななちゃんね。』


 おいらとななちゃんね、一緒にいた時間は少ないけど、お礼を言いたいんだ。最初の飼い主は、ななちゃんのお爺さんでね、田舎に遊びに来たときは、大好きなボール遊びをしてくれたんだ。でも、お爺ちゃんが、死んじゃってから、保護施設に入れるって話が出てたけど、ななちゃんのお陰で都会のお家にお引っ越ししたんだ。でもね、車の交通量や人はとっても多いし毎日ガヤガヤとお外が騒がしくって環境に慣れなかったんだ。そんな、おいらと一緒に寝てくれたりしたお陰で直ぐに慣れたんだ。お医者さんに成りたいって夢を教えてくれたんだ。後ね、僕に遠慮せずに新しい子犬迎えてあげてほしんだ。お爺ちゃんと一緒に見守っているって書いて欲しいんだワン。


大好きな、ななちゃんへ

 一緒にいた時間は、少なかったけど君が居てくれて僕は幸せでした。僕と一緒に寝てくれたり、大好きなボール遊びをしてくれてありがとう。ななちゃんなら、きっとお医者さんになれるよ。僕がいた田舎とななちゃんのお家は、大違いで最初は戸惑っていたんだ。だけどね僕は、ななちゃんのお陰で直ぐに都会にも慣れる事が出来たよ。お爺ちゃんが、居なくなったけど全然寂しくなかったよ。保護施設なんかより、ななちゃんのお家に行けて本当に良かったよ。お爺ちゃんに再び会う事もで来て、二人で家族を見守っています。新しい犬を迎えても、僕に悪いとか思わないで愛情一杯注いであげてほしいよ。

              柴犬のリッキーより


『こんな感じでどおかしら?』

『うん、ありがとう、気に入った♪』

『リッキーが世話になったな、判子をするのは、まだダメじゃよ。ワシがお餅を焼いてるからもう少し待っておれ。』

少年は、いがぐり頭で水兵さんの様な服を着ています。

『ありがとう♪ワシって、子供なのにお爺ちゃん口調ね。』

『ワシはリッキーの飼い主だった、お爺ちゃんじゃあよ。』

『えっ、子供姿のお爺ちゃんが居るならお手紙書いてあげれば良かったんじゃないの!?』

『ワシは寿命を全うして死んだからのう、お前さんと違い、犬神様の加護を受けた特殊な力は、ないんじゃよ。』

『そうなのね、ここはお爺ちゃんの思い出の風景って事なの?』

『そうじゃよ、懐かしの子供の頃の風景じゃよ。』

引き戸を開けてみると、田んぼの畦道が広がっています。風通しがよく、古き良き日本の風景です。

『さあ、焼き上がったぞ。召し上がれ!』

『いただきます♪』

ふっくらと膨らんだお餅を醤油と砂糖を混ぜたお皿に浸けて食べました。

『囲炉裏で焼いたお餅美味しいわ♪』

『そうじゃろう、これが美味しい食べ方じゃよ。』

『ご馳走さまでした。じゃあ、そろそろ帰るね。』

『もう、帰っちゃうんだ。会うことは、もうないけど元気でね。』

『ええ、リッキー、お爺ちゃんさようなら』


 リッキーが封筒の表にインクまみれの肉球で判子を押すといつもの部屋に戻って犬神も来ていました。すっかり夕暮れ時です。

『お手紙書くのお疲れ様でした。』

『思ったより、時間経っているのね。』

『ええ、現世と同じ時間の流れですが、日が少しずつ傾く何て現象がないですからね。』 

『ねえ、何でこんな惨状になっているのかしら?』

枕は、咬み破ったらしく綿毛が出ていて、オシッコもウンチも適当な所にしています💧

『最初に注意事項として、手紙を書く間や人助け最中は、年相応の犬の反応をするって言いませんでしたか?』

 試練の説明の記憶をたどると…

『言ってたけど、これはあまりにも酷いんじゃない?』 

『歯がむずむず痒いのでは、ありませんか?』

『ええ、確かに歯が痒いわ💧』

『おトイレが出来なくっても、ここへ来て1ヶ月も経ってないので、出来なくっても仕方ありません。』

『そうなのね💧』

『現在26ポイントです。引き続き頑張って下さい。』

『やったー、13ポイントも追加されてるわ♪』

生き返れるまで後、74ポイントです。


 夜ご飯を持ってきた黒田さんは、ドアの前にあった物体を踏んで転んでしまいました。

『どって~ん 』

 『ぎゃーあ、くっせー』

『わふっ』(あっ、滑って転んで頭からウンチをかぶってしかも、宙に舞った餌入れが頭の上に直撃💦)

 大きな声が響いたので斗真君達と近くにいた執事とメイドが集まり大爆笑です。枕とオシッコをしていたベッドシーツは、新しいのに変えられました。

『チョコ、オシッコとウンチはここだよ。』

『く~ん』(今の私じゃないけれども、ごめんなさい。)

 餌箱は綺麗に洗われて、新しい餌を食べる事が出来ました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る