他編 奮イタツ色ノ移リユキ

城ヶ崎 健じょうがさきたける

17歳

月ノ都学園生徒会長、その実力は生徒会内でも頭一つ飛び抜けており

妖刀 虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所持している




志野原 雫しのはらしずく

16歳

生徒会役員の一人。

役職は第二学年生徒内風紀監査と会長補佐を兼任している

最近生徒会入りしたが役職柄よく城ヶ崎じょうがさきに引率していることが多く

城ヶ崎じょうがさきに対して尊敬の念を抱いている。






役表

城ヶ崎 健じょうがさきたける♂:

志野原 雫しのはらしずく♀:



※ナレーションを3人目にするのも可です

その場合はナレーションのみの担当でお願いします




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

      血桜ハ還リ咲ク 零章

    「 奮イタツ色ノ移リユキ」




学園で起きた無差別殺傷事件

数十名の生徒が死亡したこの件は同好会事件と呼ばれ、世間に大きく報道された。


数日後、生徒会が調査にあたっていたが

その最中、生徒会長 敷島 遥斗しきしまはるとが妖刀を使用し

生徒会役員を襲う事件が発生。

生徒会副会長の城ヶ崎 健じょうがさきたける敷島しきしまを鎮圧。

ここで事件は終息したかに思われた。


しかしその後、再度調査を行った際に再び生徒会内での事件が発生。

同好会事件の真犯人が生徒会内に現れ、生徒に襲撃を開始する。

その容疑者は同じく城ヶ崎 健じょうがさきたけるにより鎮圧、死亡することで事件は終息した。


だがそれにより、月ノ都つきのみやこ 学園の権威はかつてないほど失墜してしまう。

それから数か月を要し、新生徒会長となった城ヶ崎 健じょうがさきたけるは再発防止策として

在学生徒の管理方法を提案し、それが承認される事となる。



志野原 雫しのはらしずく

「えっと……それ以来の事件発生や兆候は確認できていないことを踏まえて

再発防止策に一定の効果あり……と」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

志野原しのはら。一度休憩に入りましょう」



志野原 雫しのはらしずく

「あ…か、会長!

はい…わかりました!

もうこんな時間なのに……まだ全然終わってない」



志野原しのはらは先の鹿苑寺ろくおんじとの交戦時の負傷により足元がおぼつかない状態になっていた。

それ以来、城ヶ崎じょうがさきと共に生徒会室でのみ行える実務をしていた。

だが、今までやったことのない作業であったため、苦戦を強いられていたのだ。



志野原 雫しのはらしずく

「ダメだなぁ…これじゃ私全然ダメだ……」



志野原しのはらはゆっくりと立ち上がり、一度生徒会室を出る。



志野原 雫しのはらしずく

「外の風にでも当たってこようかな」



コーヒーを自販機で買い、屋上へと志野原しのはらは向かう。

扉を開けると、ベンチの横に城ヶ崎じょうがさきがコップを片手に立っていた。



志野原 雫しのはらしずく

「か、会長!お疲れ様です!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お疲れ様です

………そんなところで立っていないで気にせず座ってください」



志野原 雫しのはらしずく

「で、でも…会長が先にいたので」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お気になさらず

まだ足が痛むのでしょう?

遠慮せずにどうぞ」



志野原 雫しのはらしずく

「で、では失礼します」



席に着くと、沈黙の時間が訪れる。

耐えきれずに志野原しのはらは口を開く。



志野原 雫しのはらしずく

「そ、その…会長はよく屋上にいらっしゃるんですか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今日は気まぐれです」



志野原 雫しのはらしずく

「そ、そうなんですね……

その…なんていうか、意外でした

会長はすごく…きっちりしているというか…何事も徹底している印象だったので」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「そうですか?」



志野原 雫しのはらしずく

「すみません、急に意外だなんて…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「いえ、お気になさらず」



志野原 雫しのはらしずく

「会長……その敷島しきしま さんや…鹿苑寺ろくおんじさんのこと……まさか…こんな事になるなんて…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「えぇ、想定外の事件でしたね」



志野原 雫しのはらしずく

「私はどちらも実務内容が違っていたのであまり話す機会はなかったのですが

会長はあの二人をどう思っていたんですか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島 遥斗しきしまはると鹿苑寺 浩介ろくおんじこうすけのどちらにも私は返しきれぬ恩義があります

ただ、それとこれとは別です

あのような事件を起こす者たちにかける恩情はありません」



志野原 雫しのはらしずく

「そう…なんですね

そういえば敷島しきしま さんは現在は行方不明になっているんでしたね

一体どこに行ったのでしょう?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「おそらくはCARDIEDカディドが関係しているはずです

ただ捕らえられたとは思えない

もしかしたら既に組織に入っており、今も裏で動いているかもしれません」



志野原 雫しのはらしずく

「もし、またここを襲撃をしてきたら…私たちはどうすればいいんでしょうか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「確かに、その可能性は十分にありますね

その中でいずれは敷島 遥斗しきしまはるとと相対することがあるかもしれません

ですが、その時は私が迷うことなく斬ります

今は私は生徒会長としてこの学園を護らなければなりません」



志野原 雫しのはらしずく

「あの……実は私、とても怖いんです

急にこんな事ばかり続いて…何か悪い事が起こる前触れのようで」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「その予感は正しいかもしれません

闇の手が迫ってきていて

それはすぐ近くまで来ているのかもしれません」



志野原 雫しのはらしずく

「闇の手……もしそうなったら私たちはどうすればいいんでしょうか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「その時は私が全て斬り伏せます

この学園を脅かす存在は…一つ残らず殲滅してみせます」



志野原 雫しのはらしずく

「会長は…本当にすごいです

それに比べて私は何もできない…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……休憩時間が終わりますね

志野原しのはらはまだ休んでいて構いませんよ

では、失礼します」



城ヶ崎じょうがさきは階段を下りていった。



志野原 雫しのはらしずく

「…………会長

私はなんでこんなに何もできないんだろう…

復帰してもう1週間が経つのにまだ何も挽回できてない…」



切られた足を見る。

現在は繋がっており、神経も戻ってきている。

完全に馴染むまでは激しい運動はせず日常を過ごしつつ身体を慣らしていく方法を取っていた。



志野原 雫しのはらしずく

「こんな…失態を犯して……なんでこんな弱い私が…生徒会に入れたんだろう」



それから2週間が経ち、軽い演習に耐えられるほどまで足が回復してきた。

彼女は早朝に演習スペースを借りて武器を振るっていた。



志野原 雫しのはらしずく

「はぁああっつ!でぃっ!!せいっ!!!」



呼吸を整えながら再び武器を構えた。



志野原 雫しのはらしずく

「はぁっ…はぁっ……まだまだっ!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「こんな朝早くから修練とは精が出ますね」



志野原 雫しのはらしずく

「か、か、会長っ!?お、おはようございます!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「おはようございます

足はもう痛みませんか?」



志野原 雫しのはらしずく

「は、はい!もう大丈夫です!

それより会長、もう起きていたんですね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「少し気になることがあって起きていました」



志野原 雫しのはらしずく

「気になる事?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「大した事ではないのでお気になさらず

それよりも宜しければ私も修練お手伝いしますよ」



志野原 雫しのはらしずく

「え?会長がですか!!?

で、ですが私では相手になりませんよ!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

志野原しのはらは病み上がりですし

私は防御のみに専念します

ですので遠慮せず私に攻撃を仕掛けてきてください」



志野原 雫しのはらしずく

「で、ですが会長を攻撃するなんて…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「前会長の敷島 遥斗しきしまはると も時間が空いていた時に私に修練を付けてくれていました

過去の生徒会長もやっていたとの事なので伝統は受け継ぎたいんですよ」



志野原 雫しのはらしずく

「そうなんですね…ではお願いします」



志野原しのはらは武器を城ヶ崎じょうがさきに向けて構える。

城ヶ崎じょうがさきは演習用の木刀を持ち防御するために金剛の構えを取った。



志野原 雫しのはらしずく

「それでは…行きます!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「遠慮せずに来てください」



志野原 雫しのはらしずく

「はぁぁぁっつ!!でぃっ!!!

どりゃああつ!!はぁぁあっ!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「‥‥‥‥」



志野原 雫しのはらしずく

「はぁっ……はぁっ!!

なんて固い構え…硬い壁でも打ち付けてるみたい……」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「大丈夫ですか?無理はなさらないように――――」



志野原 雫しのはらしずく

「まだ大丈夫です!!行きます…!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「いつでもどうぞ」



志野原 雫しのはらしずく

「はぁぁぁぁあっつ!!!」



踏み込んだ強い一撃も完全に弾かれてしまう。

どれだけの攻撃を浴びせても全てを完璧に受け止められてその威力を相殺される。



志野原 雫しのはらしずく

「会長っ……ここまで強いなんて……

実際に戦ってみたらわかりました

会長と私にはすごい差があります…

会長はどうやってここまでの強さを手に入れられたんですか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「その質問は少々答えづらいですね

私もどうやってと言われても正直わかっていません

ある日、修練を行っていた際に全てがクリアになった感覚がありました

その時に相手の行動、視線、思惑そしてその軌跡が視えるようになりました

その感覚を忘れぬように鍛錬を行っていたらそれを身に着けることができました」



志野原 雫しのはらしずく

「すべてがクリアに?

それはどんな感覚なんですか?あまり想像もできなくて」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「そうですね

正確に言えば、何かを考えていたわけではありません

全ての情報が完璧な形で頭に入ってきたんです

後に知ったのですがそれを【極地】と一部の人間は呼ぶそうです」



志野原 雫しのはらしずく

「【極地】……!!それはどうしたら習得できるんですか!?

私もそれができたら…きっと会長の足を引っ張ることもなくなる!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「人づてで聞いただけですがそれを習得している者はこの世にも数少ないそうです

剛鬼と呼ばれた防衛隊の英雄や

V.H.A.ぶいえいちえーでも指折りの実力者達も完全ではありませんが持っている者がいるそうです

それらの人物は全て名の知れた者ばかりですが

その中でも完成するのは難しいとされています

私の使う明鏡止水めいきょうしすいはそれを日常に落とし込む事で常時発動を可能とする技ですが

常日頃から解くことを許されぬ絶技

それは簡単な事ではありません

精神状態を常に保たねばならない為、再現性が低く持続性も薄い

敷島 遥斗しきしまはると ですら未完成のまま最高到達点までは辿り着いていませんでした

私は偶然にもそれが可能でしたが

彼にも難しいとなると出来る人間はあまりに少ないでしょう」



志野原 雫しのはらしずく

「そうなんですか……私には出来ないものでしょうか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それは私にもわかりません

ですが、可能性は誰しも持っていると私は思います

どんな人間でも強くなれると」



志野原 雫しのはらしずく

「…意外です

会長はあまりに雲の上の存在だと思っていました

そんな考えを持っているなんて知りませんでした」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「あまり心情を話す機会もないですから

誤解されるのも仕方がありませんね」



志野原 雫しのはらしずく

「私は…会長に追いつきたいと思っていました

でも今のを聞いて、自信を失いました…

私には無理な話だったんです!

会長と同じぐらい強くなるなんて…

こんな無能な私じゃ出来ない話だったんですよ!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「そこまで卑下するものではありませんよ

私は志野原しのはらを無能だと思ったことは一度もありません」



志野原 雫しのはらしずく

「そう…なんでしょうか……

でも私が凄いところなんて…ないんですよ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……あまり思い詰めてはいけませんよ

同じことを思った人物が二人います

1人は自身の実力に悩み、妖刀の魔力に溺れてしました

もう1人は優秀がゆえに自身の部下との差に恐れてしまい

妖刀の魔力に手を出してしまいました

前者は結果、命を落とし

後者は堕ちるところまで堕ちてしまいました

どちらも私は良い結果だったとは思えません」



志野原 雫しのはらしずく

「で、ですが…!!私はこうして生徒会役員に選ばれたからには

使命を果たしたいんです!!

会長のように…完璧だったら私はどれだけよかったか…!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…私も完璧ではありません

得意不得意があります」



志野原 雫しのはらしずく

「そんな…会長が?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「えぇ、そうです

私は会長の身体を気に掛けるあまり

会長の考えていたことまで読めませんでした

もしかしたら気づくこともできたかもしれません」



志野原 雫しのはらしずく

敷島しきしまさんの事ですか…?

でも…それは私たち役員もそうです

会長だけの責任ではありません…!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それに同好会事件も同好会の結成を承認したのは私です

未然に防ぐことができるとすればそこしかありませんでした

内容に不自然さもなかったので気づくことができませんでした

それは鹿苑寺 浩介ろくおんじこうすけによる隠蔽を見抜くことのできなかった事から起因しています」



志野原 雫しのはらしずく

「で、ですが…それも私たちも気づかなかったんです」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

鹿苑寺ろくおんじの件も早い段階から気がついていたのにも関わらず

断定に遅れ志野原しのはらや他の役員たちに被害を出す事になってしまいました」



志野原 雫しのはらしずく

「こ…この怪我は私の実力不足からです!

それに会長でなければあの事件を鎮圧することもできませんでした」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「ですが、あれらの件は全て私に責任があります

このように私にも苦手なことがあります

私は人の心を読むのが不得意です

私なりに考えているつもりなのですが、戦闘や勉学のように上手くいくものではありません」



志野原 雫しのはらしずく

「……それでも会長は凄い人です!!

私は会長よりも完璧に人を見たことがありません!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

志野原しのはら……私が貴方を誘ったときの事覚えていますか?」



志野原 雫しのはらしずく

「え…?はい、覚えてます」



あれは志野原しのはらが学園に入ってまだ間もない頃

生徒会副会長補佐となっていた城ヶ崎じょうがさき志野原しのはらに目を付けていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

志野原しのはらさん、少しお話をいいですか?」



志野原 雫しのはらしずく

「え…!?生徒会が…!?

は、はい!なんでしょうか!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴方の成績を見させていただきました

その結果を元に私は貴方を生徒会役員へと推薦しようかと思っています」



志野原 雫しのはらしずく

「私が…生徒会に!?

で、でも私は別に…そんな優秀では…!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴方のデータを見た際に気になったことがありました

それは―――――――――の事です」



志野原しのはらはその言葉を思い出していた。



志野原 雫しのはらしずく

「そうだった…私は会長に推薦されて……でもどうして私なんかを……」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴方の買っているところ

それは一言で言えば真面目さです

貴方は一つのミスを徹底的に分析し、反省し

それを次に活かす

そして結果は必ず実っていた」



志野原 雫しのはらしずく

「ど、どういうことですか?真面目さって…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「私が推薦する際に言っていた

成績の上昇率の事

それは貴方の全ての成績において

貴方は間違った点を次に必ず修正する

その結果は必ず良い方向へと進んでいた

それは私ともまた違う才覚です

それを人は努力と呼びます」



志野原 雫しのはらしずく

「努力……」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それでは…一つ稽古を付けましょう

私は貴方に一つの技を伝授します

向きあってその技の発動に集中してください

失敗した場合は私の1本先取とします

それを初撃の際に真似た後

3回以内に修正し、発動してください」



志野原 雫しのはらしずく

「そ、そんな!!無理ですよ!!

いきなり会長の技を真似るなんて…!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「違う点、直すべき点を私は貴方に伝えます

それを元に分析し、修正してみてください」



志野原 雫しのはらしずく

「え……そんなことできるわけ……」



城ヶ崎じょうがさき志野原しのはらに見せるように横向きになった。

そして構えを取る。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

秋水しゅうすい



志野原 雫しのはらしずく

「うっ!!!す、すごい…!!!



城ヶ崎じょうがさきが空を切ったその斬撃。

まるで自分が斬られたかのように錯覚するほどの一撃は志野原しのはらに鳥肌が逆立つ感覚を与えた。



志野原 雫しのはらしずく

「今の技を私が使うなんて無理ですよ!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「同じ威力とは言いません

ですが、この技を習得することは出来ると思っています

少なくとも私が評価している志野原しのはらなら確実にやってみせます」



志野原 雫しのはらしずく

「そ、そこまで……わかりました

やってみます…!」



城ヶ崎じょうがさき志野原しのはらは向きあった。

先ほどの城ヶ崎じょうがさきの構え、動き、刀の握り方

それらを思い出しながら構えを取った。



志野原 雫しのはらしずく

「はぁぁああっ!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……」



その斬撃は完璧に受け止められた。

先ほどの城ヶ崎じょうがさきのものと比べて威力が圧倒的に違う。



志野原 雫しのはらしずく

「違う…全然できてない……」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「この攻撃に大事なのは心を一定に保つこと

冷静さを持ちつつ、水を切るように落ち着いてください

さぁ、それでは1本目です」



志野原 雫しのはらしずく

「落ち着いて……わかりました

はぁ……………いきます」



志野原 雫しのはらしずく

「っつ!!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……」



その一撃は先ほどよりも弱々しい斬撃になってしまった。

城ヶ崎じょうがさきの構えをずらすどころか、刀がぶつかる音も先ほどよりも弱くなっていた。



志野原 雫しのはらしずく

「違う…今のじゃない……何が違うの…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「落ち着いたところまではいいですが

斬撃を放つ際に一気に心が乱れました

それでは剣先が荒れてしまいます」



志野原 雫しのはらしずく

「斬る際も落ち着く………はい!

次、お願いします!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「では2本目です」



志野原 雫しのはらしずく

「はっつ!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「………やはり」



城ヶ崎じょうがさきは軽く受け止めたが

先の1回目よりぶつかり合う音が激しくなっていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「惜しいところまで来ています

最後に大事なことを伝えましょう

技は真似する意識ではなく

自分のものとすることです

私が教えた技ではなく、志野原しのはら自身の技として昇格してみせてください」



志野原 雫しのはらしずく

「私自身の技…?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「人は体格、癖、センスにより同じ武器でもスタイルを変えます

私の持つものと志野原しのはらの持つもの

その差を考えてみてください」



志野原 雫しのはらしずく

「私と会長の違い……」



志野原 雫しのはらしずく

(会長の技は全て柔軟かつ高精度

寸分の狂いもない的確な一撃を持っている

対して私の技は基本に忠実すぎる

教えられたものをそのままの形で使うだけ……

私の持つもの……)



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……」



志野原 雫しのはらしずく

(私が持つものなんて………)



城ヶ崎 健じょうがさきたける

(貴女の中で特に私が買っている部分

それは一言で言えば真面目さです

貴方は一つのミスを徹底的に分析し、反省し

そしてそれを次に活かす

そして結果それは必ず実っていた)



志野原 雫しのはらしずく

(会長は私をここまで評価してくれている…

なのに私は…全然自分を信じれてない……

信じて………こんな自分を……?

自分……を信じる……)



志野原 雫しのはらしずく

「会長……もしかして」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……気づいたみたいですね」



志野原 雫しのはらしずく

(そうか…そんな簡単なことだったなんて‥…)



志野原 雫しのはらしずく

「会長はやっぱりすごいです……最初からわかってたんですね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「さぁ、3本目です」



志野原 雫しのはらしずく

(私の足りなかったもの…それは単純なものだった

多分八木原やぎはら敷島しきしま さんも持っていなかったもの…

これだったんだ…)



志野原 雫しのはらしずく

「私に足りないもの…それは……自信だったんですね!!

いきます、会長!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「いつでもどうぞ」



志野原 雫しのはらしずく

「はぁぁぁぁあああっ!!!」



志野原 雫しのはらしずく

秋水しゅうすい!』



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「!!」



城ヶ崎じょうがさきの放った技と同じもの

否、城ヶ崎じょうがさきの放ったものよりも威力はない

だが、しかしそれは城ヶ崎じょうがさきの放ったものよりも速い一撃であった。



志野原 雫しのはらしずく

「今の……っ!!でき…た……?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「はい、成功です」



志野原 雫しのはらしずく

「会長……自分でも何が起きたのか…わからなくて…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「私のこれは敷島 遥斗しきしまはるとから継承されたものです

彼や私のものは精度を重視しています

ですが今のは私のものよりも一撃の速さが出ていました

居合の速度、これが志野原しのはらの本来の特性なのでしょう」



志野原 雫しのはらしずく

「…これが、私の技……」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「おめでとうございます

技の習得は貴女の武器になります

誇っていいんですよ」



志野原 雫しのはらしずく

「か、会長……ありがとうございます!

会長がいなければ…完成できませんでした」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「私はただ後押しをしただけです」



志野原 雫しのはらしずく

「それでも…自分では気づけませんでした……

本当に、ありがとうございました!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「よかったです

これで生徒会も元通りになりましたね」



志野原 雫しのはらしずく

「もしかして……会長はこれを言うために……」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

志野原しのはら、そろそろ時間です

実務を始めねばなりませんよ」



志野原 雫しのはらしずく

「あ、もうこんな時間だったんですね!!

わかりました!急いで向かいましょう!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「えぇ、それではよろしくお願いします」



M→志野原 雫しのはらしずく

こうして私の心に刺さっていた棘が外れていった。

奮いたつこの心は移り行き

新たな力と共に私を後押ししていく。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



利用規約

ミクロさん台本を動画、配信で使用するのは全てご自由にどうぞ



・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください

しかし作風に合わないものはご遠慮ください


・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます


・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

作者のTwitter

https://twitter.com/kaguratizakura

のDMにてご連絡ください

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

血桜ハ還リ咲ク 零章 ミクロさん/kagura @micronears

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ