集編 桜ガ枯レ落ツ迄

夢野 天ゆめのそら

16歳

学園ではひっそりと人気な女子生徒

新しく生徒会に入った




神蔵 修也かぐらしゅうや

16歳

白髪、黄色の目をしている美少年の男子生徒

御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有している

過去に何かがあったらしいが詳細は誰にも明かさない

※白いコートを着た男兼任




城ヶ崎 健じょうがさきたける

16歳

生徒会に属する男子生徒、その実力は生徒会内でも頭一つ飛び抜けている

八木原 旭やぎはらあさひ兼任




敷島 遥斗しきしまはると

17歳

現在の生徒会長。会長として歴代と比べかなりの切れ者である。

虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所有している。

※黒いローブを着た男兼任

※書記兼任




蓮太郎れんたろう

15歳

白髪、黄色の目をしている美少年の男の子

若くしてVHAぶいえいちえー兵員になる

おどおどしているがかなりの実力者

夢野 天ゆめのそらの相棒

※監査兼任




Nは→後のキャラ演者が読む


※設定一覧



八木原 旭やぎはらあさひ

同好会と称した罠を貼り、生徒を惨殺した男子生徒。

御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有していたが

修也しゅうやによって殺害された



岩城 定介いわきじょうすけ

~っすといった特徴的な語尾の男子生徒

八木原やぎはらに殺され死亡



南雲 月夜なぐもつくよ

自由気ままな女子生徒

八木原やぎはらに殺され死亡



二宮 達也にのみやたつや

不自然な敬語を使う男子生徒

学園内の勢力図を熟知している



東郷 椎菜とうごうしいな

不思議な雰囲気を醸し出す少女

八木原やぎはらの事件に興味を示しそらに強力する






役表


城ヶ崎 健じょうがさきたける ♂:


敷島 遥斗しきしまはると♂:


夢野 天ゆめのそら♀:


神蔵 修也かぐらしゅうや不問:


蓮太郎れんたろう♀:




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      血桜ハ還リ咲ク 零章

       「桜ガ枯レ落ツ迄」




N→神蔵 修也かぐらしゅうや

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた・・・・・幸せなひと時

幸福な思い出は既に過ぎ去り

狼煙を上げた景色は絶望の色に染まっていた。



蓮太郎れんたろう

「ここは・・・・?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

目を覚ました蓮太郎れんたろうは小さく欠伸をする。

寝ぼけながら隣を見るとそこには共に戦う相棒の姿があった。



夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろう?寝ぼけてるの?」



蓮太郎れんたろう

「ごめん。寝てた」



夢野 天ゆめのそら

「昨日夜更かしでもしたの?」



蓮太郎れんたろう

「ううん。21時に寝たよ」



夢野 天ゆめのそら

「ちゃんと寝てて眠いの?

大事な任務なんだからしっかりしてよね」



蓮太郎れんたろう

「うん。この後の任務ってなんなの?」



夢野 天ゆめのそら

「これから向かう先に魔怪まかいが出現したらしいの

だから私達で倒しに行くのよ

結構強いみたいで私達は時間稼ぎをしつつ

支援を待つことになるわ

危ない敵だから気を付けてね」



蓮太郎れんたろう

「うん、わかった。気を付けるよ」



夢野 天ゆめのそら

「いい子ね。あと少しで着くからもうちょっと寝てなさい」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そらに頭を撫でられると蓮太郎れんたろうは静かに目を閉じようとする。



蓮太郎れんたろう

「ねぇ夢野ゆめの ?それなに?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

目を閉じる直前、そらが何かを握っているのに気がついた。



夢野 天ゆめのそら

「あぁ…これ?これはお守りよ」



蓮太郎れんたろう

「お守り?」



夢野 天ゆめのそら

「そう。前に学校に通ってた時にある人に渡しそびれちゃったものなの

もう一度会う宛もないのにずっと持ってるんだ」



蓮太郎れんたろう

「そうなんだ‥‥学校……

どんな所だったの?」



夢野 天ゆめのそら

「どんな所だった…かぁ

そうねぇ、何から話せばいいのかな」



蓮太郎れんたろう

「聞いてみたい」



夢野 天ゆめのそら

「そう?じゃあゆっくり話していくわね」






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N→蓮太郎れんたろう

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた頃の‥‥幸せなひと時

窓から漏れ出す風は心地よく

空を眺める少女の髪を優しく揺らす



そらはかつての日々を思い返す。

人類の害敵、魔怪まかいと戦う為、訓練を行う学校があった。

その中の三大有名校である月ノ都つきのみやこ学園にそらは在学していた。

あの頃の彼女はいたって普通の生徒で平凡な生活を送っていた。

しかし、とある少年との出会いをきっかけに思いがけない方向へと運命は進んでいく。



彼女はいつも授業を終えて、放課後になると

小さな教室へと向かい、集まった仲間たちと一緒にお茶をしながら談笑をする日々を過ごしていた。

そんな日々の中、そらが授業で使う資料を探していた時の事

資料室には既に先客がおり、少年はチラリとそらを見ると脚立から降りてくる。

その少年の容姿を見てそらは言葉をこぼした。



夢野 天ゆめのそら

「かわいい…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに?」



夢野 天ゆめのそら

「え!?…なんでもない!ごめんね?とっさに口からでちゃって…!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…まぁなんでもいいよ」



N→蓮太郎れんたろう

修也しゅうやはそのままきびすを返し立ち去ろうとする。



夢野 天ゆめのそら

「ねぇ名前なんて言うの?学年は?」



神蔵 修也かぐらしゅうや(被せて)

「…神蔵 修也かぐらしゅうや、第二学年」



N→蓮太郎れんたろう

そら は驚きの声をあげた。

まさか目の前の美少年と同い年だとは思わなかったのである。



夢野 天ゆめのそら

「え?同学年!?クラスが違うからわからなかった」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そっか…それで?」



夢野 天ゆめのそら

「えっと~?呼び方は神蔵かぐら君でいい?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…名字呼びは嫌いだ。修也しゅうやでいい」



夢野 天ゆめのそら

「そう?あのさ、修也しゅうや君は同好会って興味ない?」



神蔵 修也かぐらしゅうや(即答して)

「興味ない」



夢野 天ゆめのそら

「そ、そう?

あのね、私が入っている同好会があるんだけど

人が少なくてさ?修也しゅうや君に入って欲しいな~?なんて」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺が?」



夢野 天ゆめのそら

「え~?顔が可愛いから?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「理解に苦しむ」



夢野 天ゆめのそら

「そうかな?結構、賛同してくれる人は多いと思うけど?

じゃあ早速、明日の昼休み。C棟の4階に空き教室が何個かあるんだけど

その扉に同好会の看板がある教室にいつも集まってるんだ。

良かったら来てくれないかな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「もう行くつもりで話を進めるな

俺が行く必要性を感じないしな」



夢野 天ゆめのそら

「そんなこと言わないでよ~修也しゅうや君」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺が行く義理があるんだ

てかそもそも俺はお前の名前も知らないんだぞ」



夢野 天ゆめのそら

「そういえば名乗ってなかったね!

私は夢野 天ゆめのそら よ。

そら って呼んでくれると嬉しいな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺がお前を呼ぶ必要があるんだ」



夢野 天ゆめのそら

「むー…つれないな〜!

あっ、そろそろ戻らないとだ!

修也しゅうや君!明日絶対に来てね!」



N→蓮太郎れんたろう

そら は手を振りながら走り気味に去っていく。

取り残された修也しゅうやは深くため息をついた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…まったく、台風みたいなやつだな

でも、なんか嫌悪感はないな

温かさまで感じるような

なんだあいつ……夢野 天ゆめのそら ね」



N→蓮太郎れんたろう

こうして新たに神蔵 修也かぐらしゅうやが同好会に加わった。

修也しゅうやは愛想こそよくはないが

ほかのメンバーもすぐに溶け込んで行った。

同好会が主体で行う生徒同士の交流企画に向け、一同は作業を進めていく。

そして企画前日の放課後、同好会での作業を終え、修也しゅうや八木原やぎはらが教室に残っていた。



八木原 旭やぎはらあさひ

修也しゅうや。もうお前も帰ったらどうだ?

後は俺だけで十分終わるし、明日に備えてゆっくり休め」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「先輩は進路とか大丈夫なのか?もう三年だろ?

ほとんどは動いているみたいだが」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あぁ…俺は大丈夫だ。

特にどこに入りたいってのもないし、まだ学園でやる事もあるしな

それに…どうせ俺なんて使い物にはならねぇよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…野暮な事を聞いたか?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「お前だってそろそろ考えておけよ

そら定介じょうすけたちもそうだ

気がついたらすぐにその時期が迫ってくるからな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あぁ…わかった。そうするよ」



N→蓮太郎れんたろう

修也しゅうやは教室を後にした。

足音が聞こえなくなった瞬間、八木原やぎはらは思い切り椅子を蹴飛ばすと高笑いをし始めた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「ククク…ハハハハハ!!お前らに来年なんて…未来なんて来ねぇよ

馬鹿どもが…!

俺はもうすでに準備万端だってぇの!!

ハハハハ!!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

花見当日、校外にある大きな公園に生徒が集まり花見企画が始まった。

そら修也しゅうやは離れた位置へと向かっていた。

橋の上に二人が並ぶ。

そらは秘めた想いを告げるため口を開こうとする

しかし、その時‥‥



神蔵 修也かぐらしゅうや

「様子が変だ…誰もこっちに来る気配がない」



夢野 天ゆめのそら

「どうしたの修也しゅうや君?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「嫌な予感がする…声の数が少なくなってる」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは突如走り出した。

そら は驚きながらも走って後を追いかける。

途中見失ってしまい、八木原やぎはらの元へ戻ろうとスタート地点へと向かう。

その途中、付近の木々に赤い血が付着しているのにそら は気がついた。



夢野 天ゆめのそら

「え、これは…血!?なんで…!!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

そら !大丈夫か!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

八木原やぎはらそら に向かって呼びかけた。

酷く焦った様子で息を切らしながらそら へと走って近づく。



夢野 天ゆめのそら

「これって…!!何が起きてるの!?

他のみんなはどこなの!?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「わからない!あの後ゲームを始めるために開始の合図を出したんだ

少ししたら先行したグループの方から悲鳴が聞こえてきた…

何かあったのかと思って見に来てみたら誰もいないんだ

それで辺りを探していたら、この血の痕跡を見つけたんだ

そうだ!それよりそら 、武器を構えておけ!

何が起きているかわからない!もしかしたら何者かに襲われたのかもしれない…

最悪な場合、相手が人間とは限らない」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら は持ってきていた腰袋から刀を取り出す。

左手に鞘を右手を束に添え銀色の刀身をしならせるように抜刀し、構えた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「くそ…何が起きてるんだ!」



夢野 天ゆめのそら

「待って!あそこにいるの月夜 つくよちゃんじゃない?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

月夜 つくよがこちらに走りながら焦った様子で何かを叫んでいた。

そら は背中に突如として激痛を感じる。

視界の端に鮮血が飛び散るのが映った。



夢野 天ゆめのそら

「うっ…!!!なんで!!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら がゆっくりと振り返ると目の前の男は笑いながら腹部へと蹴りを入れた。



夢野 天ゆめのそら

「があっ!!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

強烈な一撃を受けてそら は地面に転がる。

その衝撃で自らの刀を吹き飛ばしてしまい、口から血を吐き出すとキッと八木原やぎはらを見上げる。



夢野 天ゆめのそら

「どうして!?なんで…あさひ君が!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「さぁーてと…馬鹿を罠に嵌めることにも成功したわけだな

何故俺がお前らを殺そうとしてるか教えてやろう

俺の持つこの刀の名は御影ノ邪刀みかげのやつるぎ

この刀は人の命と絶望を食らい、その持ち主が本来持ちえぬ力を与える

全部前から仕組んでいたんだ

その為にお前らを学園から離れさせ、殺す機会を作った

我ながら完璧な作戦だったよ

さ〜て、じゃあそろそろお前らを殺すとするかな」



N→敷島 遥斗しきしまはると

横から槍を持った定介じょうすけが走ってきた。

定介じょうすけは地面から槍を抜き、怒りに任せ激しい刺突を繰り出した

その攻撃を刀で軽く往なしながら八木原やぎはらは不敵に笑う。



八木原 旭やぎはらあさひ

「お前じゃ俺には勝てないんだよ!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

八木原やぎはらは深く足を踏み込み定介じょうすけの腹部をいとも簡単に切り裂く。

地面に倒れ伏した定介じょうすけは苦痛の声をあげていた。



夢野 天ゆめのそら

定介じょうすけ君!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

月夜 つくよは雄叫びをあげて走り出し、落ちていたそら の刀を拾うと八木原やぎはらへと斬りかかった。

その斬撃を八木原やぎはらは軽く上体を反らし回避し月夜つくよの背中へと三発の斬撃を浴びせる。

そして同時に定介じょうすけ月夜 つくよに刃を突き刺す。

二人の身体は徐々に色を失っていき、灰のようになり風に飛ばされ崩れていった。



夢野 天ゆめのそら

「最低…!人間じゃない!!悪魔!!

お前なんて地獄に落ちればいい!!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「地獄に…ね~?

いつかそこに行くことになるんだろうが

残念だったな。まだ行く気はない

お前には俺を断罪する権利はねぇんだよ

裁く権利があるのはいつだって強い者だ

ここで死ぬのは俺じゃなくお前だ!

クックック…ハハハハハ!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

八木原やぎはらが狂気に満ちた笑いをあげていた。

しかしその瞬間、八木原やぎはらの腹部から勢いよく刀が飛び出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「強者にはそんな権利があるのか

つまり貴様を断罪する権利は俺が持っているということになるな

ならば言葉通り貴様の生死は俺が決めよう」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは刀を素早く抜き、もう一撃を浴びせるも八木原やぎはらはとっさに御影ノ邪刀みかげのやつるぎの刀身をぶつけ、攻撃を弾いた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「てめぇ…!!どこに潜んでやがった!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「その刀の力が不確定だったからな

様子をうかがっていた」



八木原 旭やぎはらあさひ

「くそいてええ…ぶっ殺してやる!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

八木原やぎはら御影ノ邪刀みかげのやつるぎを構える。

対して修也しゅうやは見たことのない持ち方をした。



八木原 旭やぎはらあさひ

「死ねえええ!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………摩天流刀術 攻ノ型 其の参まてんりゅうとうじゅつせめのかたそのさん

摩天楼まてんろう!!!』



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやが刀を振り下ろした瞬間、離れたそら の周りに冷たい風が駆け巡る。

それは斬撃が生み出した衝撃波であった。

その一撃をまともに受けた八木原やぎはらの両腕は両腕が肘の近くで綺麗に断ち切れ

両手で握っていた御影ノ邪刀みかげのやつるぎごと腕を地に落とす。

目を大きく見開き、口と腕の切断面から思いきり血を噴き出しながら八木原やぎはらは倒れる。

地に伏した八木原やぎはらの腹部には深い斬撃が斬り込まれていた。

八木原やぎはらは自身が倒れていることに未だ気づけないようで

立ち上がろうとするも脚に力が入らず

上体を起こすだけで精一杯の様子であった。

そして斬られた事に時間差で気づいたのかワナワナと修也しゅうやを凝視する。



八木原 旭やぎはらあさひ

「え…………はぁ?何が起きた!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……お前への断罪は、俺が執行しよう。」



八木原 旭やぎはらあさひ

「待て…待ってくれ!!たすけ…たすけてくれ!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……お前は幾度その言葉を聞き捨てた」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうや御影ノ邪刀みかげのやつるぎを拾い

八木原やぎはらのものであった腕を引きはがし投げ捨てた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それ決めるのは俺だ。お前は甘んじて運命を受け入れろ

地獄行き…だ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

八木原やぎはらの頭部に御影ノ邪刀みかげのやつるぎを突き刺した。



八木原 旭やぎはらあさひ

「あ…あっ‥‥ぁ‥ぁああぁぁああぁあぁああぁ!!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

八木原やぎはらの姿が灰のようになり、バラバラになっていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…絶望したか?自分が餌になった気分はどうだ?

何が楽しかったんだ?少なくとも俺は酷い気分だ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは灰になった残骸を眺めた後、そら に近づくと手を差し出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「立てるか?」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…なんですぐに助けにこなかったの!

先に向かった貴方の方が到着は早かったはず!

どうして見てたの…!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………あの刀の詳細が不明瞭すぎた。

不意を突いた一撃の際、奴の反撃で返された時も先に刀の力を見ていて警戒していたからその後の追撃を受けなかった。

もし無知であったのならそのまま、まともに受けて斬られていたのは俺だった」



夢野 天ゆめのそら

「…あの刀を知ってたの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…あぁ。最初から俺の目的はこの御影ノ邪刀みかげのやつるぎだ。

そのために八木原やぎはらの所属するこの同好会に入り、奴を調べていた。

全ては俺の為、自分勝手な目的だ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは今まで見せたことのない冷たい視線をそら に向けていた。

その瞳は暗く、深く、そして寂しげであった。

修也しゅうやは踵を返し立ち去っていく。

その後、何者かが学園に送った知らせを受け、生徒会の面々が到着した。

今回の事件は生徒会が処理することとなり、結果、同好会は解散。

神蔵 修也かぐらしゅうやは今回の一件を受け、その実力が認められ生徒会へと抜擢された。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…貴方がどんな事を抱えてるのかわからないけど……

あの悲しい目、まるで泣いているのを隠しているみたいだった

修也しゅうや君は私には関係ないって…そう言った

でも、私は修也しゅうや君を助けてあげたい

定介じょうすけ君……月夜つくよちゃん……

私はどうすればいいの」






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蓮太郎れんたろう

「みんな殺されちゃったの…?」



夢野 天ゆめのそら

「そうなの…私にはどうにもできなかった

あの場に居たのに、足が動かなかった…

信じたくなかったのかもしれないわね

私は見てることしかできなかった……」



蓮太郎れんたろう

「で、でも…仕方ない‥‥んじゃないかな」



夢野 天ゆめのそら

「ううん‥‥私はあの時彼を責めたけど

でも…見殺しにしたのは私自身

彼を責める権利なんて…なかったのに」



蓮太郎れんたろう

夢野ゆめの…?大丈夫?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そらがグッと拳を握りしめていたのに気がついた蓮太郎れんたろうは心配そうに表情を伺っていた。



夢野 天ゆめのそら

「ごめんね?蓮太郎れんたろう

心配しないで?もう…目を背けないって決めたの

だから大丈夫よ」



蓮太郎れんたろう

「う、うん…ならよかった」



夢野 天ゆめのそら

「それじゃあまた話を続けるわね?」



蓮太郎れんたろう

「うん」






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N→蓮太郎れんたろう

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた・・・・・幸せなひと時

悲劇の記憶が頭に残ったまま

地を見下ろす少女の目は決意に染まる。




あの惨劇から1週間後、現在は空き部屋となった元同好会の教室にそら は毎日昼休みの度に訪れていた。

部屋の中には仲間の名残はなく、今は机と椅子だけが残されたまま放置されていた。

そら は椅子に座り、かつての仲間を思い返していた。



夢野 天ゆめのそら

「どうしてみんなが犠牲にならなきゃいけなかったのか……知りたい

あの刀、御影ノ邪刀みかげのやつるぎ八木原やぎはらが持ってて…

あれを修也しゅうや君が探してた……

なんであの刀を探していたの…?」



N→蓮太郎れんたろう

そら は立ち上がると、目を擦り涙を拭った。

顔を手で叩き再び目を開く。



夢野 天ゆめのそら

「こんなところで立ち止まっていられない

皆の犠牲を有耶無耶うやむや なままにしちゃいけない」



N→蓮太郎れんたろう

そら は教室を後にする。

次にここに戻る時は修也しゅうやと二人で…

そう決意を胸にしまい、歩みを進めた。



その頃、生徒会室へ入った神蔵 修也かぐらしゅうやは室内の自席へと腰を下ろす。

ほとんどの生徒会員はそのまま室内から立ち去っていった。

室内中央にある会議席に修也しゅうやを含め三人の生徒が座っており

重々しい空気が流れた後、会議が始まる。



敷島 遥斗しきしまはると

「先日起きた事件…

残酷で悲しい事件の真相について

生徒会副会長代理を筆頭に監査を動員して調査させているが…

俺は帰ったばかりで話を正しく掴めているか確認を取りたい

神蔵かぐら。その時の話を詳しく聞いてもいいか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「前に話した通りです

八木原やぎはらが企画した花見イベントはカモフラージュでした

学園内では生徒会の監視があるため、長い年月をかけ綿密に練られた悪質な事件です」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今回の件、全ては私の不徳の致すところが招いた事です

会長がご不在の間、この企画を承認したのは紛れもなく私です。

学園や生徒会の、そして会長自身の顔に泥を塗ってしまいました

如何なる罰則でも受ける所存です」



敷島 遥斗しきしまはると

「とても巧妙かつ完璧な作戦だ。

もしも俺がお前の立場であっても気づくことはできなかっただろう

どんな言葉で取り繕ったとしても

生徒会が一枚出し抜かれ、今回の一件をみすみす見逃してしまった。

その事実は変わらない

その責任を問うのなら、それは全て生徒会を代表する俺が招いた失態だ

こちらこそ謝らねばならない」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしま が頭を下げる。

城ヶ崎じょうがさき は驚きながらも口を開いた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長!頭を上げてください!

私の失態である事もまた事実

罰を受けなければ私の犯した過ちへの示しが付きません

今回の事件はとても謝罪の言葉で収まるものではありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「だが何をしようと変わらない事実だ

今回の件はあいつを学園に入れた上層組織にも問題がある

この失態は反省し、二度と凄惨な事件を起こさないよう尽力すればいい

城ヶ崎じょうがさき 。お前と神蔵かぐらで今回の一件について調べてくれ

八木原やぎはらの犯行は単独犯であったはず

だが死体を処理した奴が他にいる…

あの一件は非常に残酷な事件だ

血痕は見つかったが肝心の生徒の遺体が一人も見つからない

そして八木原やぎはら本人も両腕を斬られたのちに逃亡…

奴を見つけない限り、この事件は解決とは言えない」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「わかりました。私達でも情報を洗います」



敷島 遥斗しきしまはると

「頼んだぞ… 城ヶ崎じょうがさき神蔵かぐら



N→蓮太郎れんたろう

その頃、夢野 天ゆめのそら八木原やぎはらの情報を知っていると語る東郷 椎菜とうごうしいなや学園の裏社会に精通する二宮 達也にのみやたつやの協力を得て、妖刀の存在を知る事となる。

それから少ししてそらは1人生徒会棟へと向かっていた。



夢野 天ゆめのそら

「ここが生徒会棟…初めてくるけど

確かに緊張するわね……」



N→蓮太郎れんたろう

そらが生徒会棟に入ろうとするが、許可証のないものには出入口の電子扉が開かない仕様になっていた。



夢野 天ゆめのそら

「これじゃあ…話もできなさそう

どうしたらいいのかな…生徒会の人と会う機会なんてあんまりないから…」



N→蓮太郎れんたろう

扉の前でウロウロとしていると、そこに一人の男子生徒が歩いてくる。



敷島 遥斗しきしまはると

「生徒会棟に何か用か?」



N→蓮太郎れんたろう

そらは振り返り、話しかけてきた男子生徒を見ると驚きの声をあげた。

その生徒は第三学年 敷島 遥斗しきしまはると

現生徒会長本人であった。



夢野 天ゆめのそら

「せ、生徒会長!!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「何か要件があるなら聞いておこうか?」



夢野 天ゆめのそら

「あ、あの!!この前の事件…について

話したいことがあるんです」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしまはその言葉を聞くと表情を変えた。



敷島 遥斗しきしまはると

「君があの事件の生き残りの夢野 天ゆめのそら

わかった、着いてこい」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしまに連れられるまま二人は生徒会棟に入っていき、生徒会室へと通される。

生徒会室の中には全員が円状に座れるように机が配置されており、そこからいくつか扉のない部屋に繋がっており、そこには机と椅子、棚等が置いてあった。

その最奥に唯一扉のある部屋の前に二人は立つ。

扉にはドアノブが付いておらず、本来ドアノブがある部分に黒い電子プレートがついていた。

敷島しきしま はそこに学園支給の携帯端末を翳すとロックが解除される電子音が鳴る。



敷島 遥斗しきしまはると

「ここが俺の部屋だ

生徒会以外の生徒を入れたのはお前らが初めてだ」



敷島 遥斗しきしまはると

「さてと…一体どんな話があってきたのか聞かせてもらおうか」



N→蓮太郎れんたろう

そら敷島しきしま の表情が変わるのを察する。

生徒会長の貫禄を前に委縮してしまい、そら は言葉を上手く出せずにいた。



夢野 天ゆめのそら

「あの事件…について

実は真実ではない事が多いんです…隠している事があって‥‥」



敷島 遥斗しきしまはると

「続けてくれ」



夢野 天ゆめのそら

「今回の事件の首謀者

八木原やぎはらは既に死んでいます…

八木原やぎはらが持っていた刀には人智を超えた力がありました

その刀は殺した人をまるで飲み込むように消してしまうんです…

八木原やぎはらはそれで生徒たちを次々に殺しました

その後、私に刃を向けた…

助けに来た修也しゅうや君が八木原やぎはらを倒して、その刀で同じように八木原やぎはらを殺しました

その刀はまだ修也しゅうや君が持っているはずです

信じてもらえないと思いますが…全て事実です」



敷島 遥斗しきしまはると

「信じるよ

というより今の話で合点がいった部分もある

今回の件には不可解な事が多い

犠牲者と首謀者が消失した事件

生徒会が到着するまでの時間に両者が発見できなかったのは

まるで本当にそこから消えたとしか思えない

ただ虚偽の情報を告げたのは何故なんだ?」



夢野 天ゆめのそら

「信じてもらえないかと思いました」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうか…生徒会がそんなに信じられなかったのか」



夢野 天ゆめのそら

「すみません‥‥でも修也しゅうや君はもしかしたらほかの妖刀を探してるのかもしれません

何か心当たりはありませんか?」



N→蓮太郎れんたろう

そこで敷島しきしま はゆっくりと目を瞑った。



敷島 遥斗しきしまはると

「今から見せるものについては他言無用で頼む」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしま は本棚の横に手を置く。

二人が覗き込むように手元を見ると

そこには隠すように黒い電子パネルが設置されてあった。

敷島 しきしま は自らの携帯端末を翳すと、壁の一部が引き出しのようになり

その中から横長のアタッシュケースを取り出す。

ケースの開口部には扉のものに似た黒い電子パネルが付いており

敷島しきしま はポケットからもう一つの年季の入った携帯端末を取り出し翳した。

するとアタッシュケースが自動で開いていく。

その中には一つの刀が入っていた。



夢野 天ゆめのそら

「刀…!?これって!!

八木原やぎはらの刀と同じ妖刀!!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「この刀は代々この学園の生徒会長が所持を許される虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ

人智を超えた力を持つこの刀は才能を有する者に更なる力を与える

もしも刀に見合わぬ力の者がこの刀に触れるとそいつはまるで鏡が砕ける様に消滅する

生徒会長は学園の長として例外なく実力ある者が選ばれる

故にこの刀は所持出来る事が多い

だが神蔵かぐらがこれを狙っているのか…

神蔵かぐらの強さはわかっている

普通に戦ったのならば勝ち目はない

この刀を使えば…あるいは勝てるだろう

だがこの刀は緊急時以外は使わないようにしているんだ

先ほども言ったが触れただけで人を消しかねない刀だ

恐ろしくもなる」



夢野 天ゆめのそら

八木原やぎはらが持っていたのは御影ノ邪刀みかげのやつるぎ って呼んでた

才能のない人間に力を与える…

人が絶望したときに殺すと力を増す

そんな事を言っていました

でも修也しゅうや君はなんで妖刀を集めているんだろう…?」



敷島 遥斗しきしまはると

「生徒会としてもあんな惨劇が再び起こるような事は防がねばならない

機会があれば本人に直接聞いてみるしかないだろう

今はそれしかできる事はない」



夢野 天ゆめのそら

「で、でも…!修也しゅうや君になんて聞くんですか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「それは俺に任せておけ

俺の質問ならば少なからず耳を傾けるだろう」



夢野 天ゆめのそら

「わかりました‥‥それではこの辺で失礼します」



敷島 遥斗しきしまはると

「…神蔵かぐら

何が狙いなんだ?」



N→蓮太郎れんたろう

数分後。城ヶ崎じょうがさきが生徒会室へと戻ってきた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長。もうお休みになっては?

一日中休まず実務をこなされています

休息を取ろうとも誰も文句は言わないでしょう

今回の事件を気に病んでいるのはわかりますが、会長が倒れては元も子もありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「すまないな」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今回の一件は私の監督不行き届きが招いた結果です

会長には何の非もありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前に非を作ったのは間違いなく俺だ……

いずれお前は生徒会長を継ぐ人材だ

そんなお前の顔に泥を塗ってしまった

城ヶ崎じょうがさき …お前は歴代の会長、俺をも凌ぐ逸材になるとみている………

そんなお前に失態を犯させた事は一生悔いが残るだろう

すまない…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「いえ、お気になさらず

私如きの顔、立てるまでもありません

それでは今日のところは私も失礼します

会長も無理をなさらぬようお休みください」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきはそのまま生徒会室を出て行く。

敷島しきしま は席に戻ると城ヶ崎じょうがさきが行った実務の完了書が置かれていた。

今日の仕事が終わっているだけではなく、会長がこの後、本来やるべき仕事を全て代わりに終えていたのだ。



敷島 遥斗しきしまはると

「ふっ…流石だな

本当にあいつは凄い奴だ

俺のような無能とは違う

まさしく学園を背負って立つ天才だ…

戦闘に置いても奢る事なく、鍛錬を極めている

…ハハッ。勝てないな

生徒会として…人として…

あいつが導く学園を早く見てみたい」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしま は部屋を後にしようと後ろを振り返ると急に酷い目眩に襲われた。

倒れそうになるも咄嗟に机に手をかけ、倒れるのを阻止する。



敷島 遥斗しきしまはると

「っ!!?…頭が痛い

…疲れているみたいだな

今日は休もう……」



N→蓮太郎れんたろう

再び立ち上がり足を踏み出そうとした瞬間、彼の頭の中から声が響いてきた。



敷島 遥斗しきしまはると

(エモノ…マサカ‥‥‥‥こんなに…近クニ

…オレに任セロ)



敷島 遥斗しきしまはると

「…誰だ?どこにいる!?」



敷島 遥斗しきしまはると

(オレハ…お前ダ)



敷島 遥斗しきしまはると

「どういうことだ!!俺の中から!出ていけ!

ぐわああああああっ!!!」



N→蓮太郎れんたろう

その頃、生徒会棟付近では城ヶ崎じょうがさき が寮へと戻る道を歩いていた。

そこに後ろからこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……会長?」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさき はその足音が敷島しきしま のものであると判別し足を止めた。

暗闇から敷島しきしま が頭を抑えながら苦痛の表情を浮かべて歩いてきていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長!大丈夫ですか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「……大丈夫だ

っ…少し頭痛がする…だけだ

それよりお前はまだ帰っていなかったのか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「戸締りの確認をしていました

他の生徒会役員が閉めていたのでしょう

問題はありませんでした」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうか…なら良かった

すまないが城ヶ崎じょうがさき

この後寮まで着いてきてくれ……

俺が大丈夫か監視しておいてくれ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「勿論、着いていきます

どうぞ、肩をお貸ししましょう」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさき の肩に掴まり敷島しきしま はゆっくりと寮へと向かっていった。



敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさき …少し話そう

黙って歩くのも暇だろ?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お気になさらず」



敷島 遥斗しきしまはると

「いや、その方が気が紛れる」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「ご無理をなさらぬようお願いしますね」



敷島 遥斗しきしまはると

「俺の仕事……代わりにやってくれたんだな…いつも悪いな

学園にいる時は俺がやらないといけないのに」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「不在時にやっているのと変わりません

他の仕事に差支えも無いので問題ないかと」



敷島 遥斗しきしまはると

「…………城ヶ崎 じょうがさき



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「はい」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前は間違いなく学園を…いや

世界を導く人間だ

お前はいずれ魔怪まかいをも滅ぼすいしずえとなる

俺はそう確信している…

この長い人類絶滅の危機を……闇を払う英雄となる…………

そう、確信があるんだ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長は買い被りすぎです

私はそんな大層な人間ではありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「俺はお前を信じている……

そんなお前に頼みたいことがある

この刀…… 虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ だ…」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしま はロックの外れたアタッシュケースから虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ を取り出すと城ヶ崎じょうがさき へと見せた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「持ち歩いていたのですか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前も知っているだろ

この刀は人が持つにはあまりにも強大な力がある

弱い者にはこの刀を扱えない…

故に強い者が所持する事になる……

しかし、俺にはこれを持つ精神を持ち合わせていない

怖いんだ……この力を持つ事が

これから何が起きるかわからない…

二つの妖刀

それを狙う者…

それを守る者…

今両者は対立している……

決着が着く時…世界が動く

俺には責任が重すぎる……

俺というちっぽけな器に収まるほどのものじゃない…

城ヶ崎じょうがさき ………お前にこれを持っていて欲しい

お前ならば力に溺れることはないだろう

この刀はお前の強力な武器となる

世界を正しい方向へと導くことが出来る…

無理を承知で聞く…頼めないか…?」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさき は少し考えたのち、虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを差し出す敷島しきしま の手を押し返す。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「この刀は生徒会長以外の所持は禁止されています。

規則を破る訳には行きません」



敷島 遥斗しきしまはると

「ならば…城ヶ崎じょうがさき

お前が今から生徒会長になってくれないか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それもお断りします

会長選挙は年に一度

年度内に緊急で変わる時は会長が退任、死亡等の場合のみ

不在時期から二ヶ月後に緊急生徒会長選挙が開始され

そこで決める。そう校則で定められております」



敷島 遥斗しきしまはると

「だが…俺はこの刀にいつ操られるかわからない。正直、自信が無い…不安だ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長!」



N→蓮太郎れんたろう

俯く敷島しきしま城ヶ崎じょうがさき は強く呼びかけた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長ならば大丈夫です

貴方が私を世界を導く人間というならば

それを育てたのは紛うことなき会長ご自身です。

しかし、もし会長が校則や人道に背く行為をしているのならば私が会長を斬ります」



敷島 遥斗しきしまはると

「励ましているんだか脅しているんだか…

ハハ……

少し安心したよ

ありがとな」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長。着きましたよ」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしま はゆっくりと寮へと入っていく。

城ヶ崎じょうがさき は寮の外から敷島しきしま が見えなくなるまで見送っていた。


その頃、夢野 天ゆめのそら は寮の自室の椅子に腰をかけて考え事をしていた。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君が虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを狙っている

生徒会長を狙うならどのタイミング…?

会長が一人になる時……生徒会室の中で?」



夢野 天ゆめのそら

「生徒会室にはもう入れる機会はない…

どうすれば……」



夢野 天ゆめのそら

「生徒会に入れれば……まだチャンスはある」



N→蓮太郎れんたろう

そして二週間後

生徒会書記と監査が夢野 天ゆめのそら の実力に目をつけ、生徒会主催での模擬戦を行う事となった。

選手の控え室にて模擬戦用の刀を手に取ったそらの瞳には決意が満ち満ちていた。

選手が入場し、書記と監査を同時に相手することとなった。



書記 (敷島 遥斗しきしまはると兼任)

「二人同時に戦うと申されていたので

監査と私がお相手させていただきます」



監査 (蓮太郎れんたろう兼任)

「本当に大丈夫なんでしょうね?

簡単に負けられたらまるで生徒会役員のいじめに捉われかねないから辞めて欲しいんだけど」



夢野 天ゆめのそら

「いえ、このままでお願いします」



N→蓮太郎れんたろう

戦闘開始のゴングが鳴り響いた。

書記は片手用持ちのハンマー、監査は片手剣を手にそらへと攻撃を開始した。

そらは束に手を添え、ゆっくり空を見上げた。



夢野 天ゆめのそら

天日てんじつ



N→蓮太郎れんたろう

その瞬間、目にもとまらぬ速さの居合斬りが二人の武器を弾き飛ばした。

時間差で気がついた書記と監査は驚愕の表情を浮かべ、ただそらを恐れるように見つめていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「これは‥‥これほどとはな」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「この実力です…

特例の人員補充に一切の異論はありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「そういうことだ。夢野ゆめの

お前を生徒会役員に任命する

これから与えられる勤めを全霊を以て果たせ 」



夢野 天ゆめのそら

「はい」



N→蓮太郎れんたろう

そらは納刀し、踵を返す。

瞳に映るもの、それはまるで覚悟を表した鏡のようであった。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君……私は貴方を止める」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



夢野 天ゆめのそら

「そうして生徒会に私は入ったの

あの時は少しでも強くなりたいって思ってたんだけど

不思議と力が沸いてきたの

そしたら急に力を使えるようになってた」



蓮太郎れんたろう

「それで‥‥?何かわかったの?」



夢野 天ゆめのそら

「いいえ、生徒会には入ったんだけど

すぐに彼が近づいてこなくて

まだ何も掴めてなかったのは変わりなかったの

それから少ししてまた‥‥状況が動きだしたの」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→蓮太郎れんたろう

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた・・・・・幸せなひと時

決意を胸に抱いたまま

伸ばした手は空を切り少女の瞳が暗くにごっていく。


あれから二週間後、生徒会室にて

新しく生徒会に入った夢野 天ゆめのそらは生徒会副会長城ヶ崎じょうがさきと共に事務作業を行っていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お手伝い頂きありがとうございます

他の役員でこういった作業をやれる者が少なく

会長のご不在時は私がやるしかないので

一人増えただけでも効率よく終わらせられます」



夢野 天ゆめのそら

「そうは言ってもまだ城ヶ崎じょうがさき君が進めた分の半分も終わってないんだけどね…

ゆっくりでしか出来なくてごめんなさいね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「何を謝っているのですか?

とても助かっていますと言ったでしょう?

監査は戦闘の実力だけを見て貴女を推薦したのでしょうが

夢野ゆめのさんが入ってきた時は

こういった事務作業までこなしてしまうとは思っていませんでした。

今の生徒会においてはとても貴重な人材です」



夢野 天ゆめのそら

「そう…。生徒会も案外大変なのね

そういえば会長はいつ学園に戻るの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今回の招集は定期会議ですので三日ほどで戻るかと思います」



夢野 天ゆめのそら

「そう……ねぇ城ヶ崎じょうがさき 君。

修也しゅうや君はこれからどうすると思う?まだ特に目立った動きはしてないみたいだけど」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「そのようですね

彼は会長が虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所持していると認知しているのでしょうか?

今も監査として学園を巡回しているわけですが

彼が進んで外仕事を受けたのは

未だに所有者を特定できていないからではないでしょうか?」



夢野 天ゆめのそら

「…そうなのかな

修也しゅうや君……何が目的なの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「………夢野ゆめの さん

少し休憩しましょう

と言っても、お願いしたい事がありまして

宜しければ着いてきて貰えませんか?」



夢野 天ゆめのそら

「え…どうしたの?」



N→蓮太郎れんたろう

そう尋ねるが城ヶ崎じょうがさきは無言のまま

生徒会の主催する演習でのみ使われる戦闘ホールへと向かっていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

夢野ゆめの さん

突然ですが一度私とお手合わせ願えませんか?」



夢野 天ゆめのそら

「え!?急になんで戦う事に…?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「新しく生徒会に入った貴女の強さを見てみたいだけです

他意はありません」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきそら とホール内の武器庫へと入り

お互いに得意とする武器を手に持った。

そら は刀を、城ヶ崎じょうがさきは太刀を腰にさげるとステージ中央へと入っていった。

中は円形の更地が広がっており

その周りを取り囲むように観客席のある、コロシアムのような造りであった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「ルールは五本勝負にしましょう

先に三本取った方の勝利とします

夢野ゆめの さん。先に言っておきますが本気で来なければ意味がありませんので

遠慮せずに来てください」



N→蓮太郎れんたろう

そら が刀を構えるのを合図に城ヶ崎じょうがさき は攻撃を開始した。

しなやかに太刀を振るい、鋭い一撃をそら へと向けて放った。



夢野 天ゆめのそら

「な、早いっ!?」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきの一撃で体勢を崩され、そら の胸の前で刀身がピタリと止まった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…一本先取ですね」



夢野 天ゆめのそら

城ヶ崎じょうがさき君…あなた何者なの……?

強すぎる…もしかして修也しゅうや君よりも」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「まだまだ本気は出していません

それに夢野ゆめの さんも油断していましたから

次は真剣に来てください」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきは再度距離を取り、そして再び太刀を素早く構える。



夢野 天ゆめのそら

(リーチが長い代わりに大振りになりがちな太刀を

まるで短刀のようにしなやかに…

それでいて大剣でなされたみたいな威力だった……)



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「行きます」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきは再び斬りかかったが、その一撃をそらは刀で防ぐ。

しかし圧倒的な力で身体ごと押し返れてしまい。吹き飛ばされてしまった。



夢野 天ゆめのそら

「…くっ!!なんて速度と威力なの!!?」



N→蓮太郎れんたろう

そらが態勢を整え、城ヶ崎じょうがさきを視界に捉えるため顔を上げようとした瞬間

顔の横に寸止めの状態で太刀が留まっていた。



夢野 天ゆめのそら

「いつの間に…?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴女が着地をした瞬間には既に斬れる状態でした

これで二本目です」



N→蓮太郎れんたろう

再びゆっくりと城ヶ崎じょうがさき は距離を取る。



夢野 天ゆめのそら

「ねぇ…城ヶ崎じょうがさき 君!私はあなたには勝てないよ

…もうわかるでしょ?何のために戦うの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴女は神蔵 修也かぐらしゅうやを止めると言いました

その過程で恐らく彼と戦うことになるでしょう

結果、勝利を収めたとしてその後どうするのですか?

その先を考えていますか?

止めた後、彼にはどのような処置をするのでしょうか?

貴女の中にあるその迷い

それがある限りは、神蔵 修也かぐらしゅうやを止めることはできないでしょう

彼は強いです。生徒会に急遽きゅうきょ抜擢ばってきされるほどの実力者です

我々を敵にしてでも勝つという覚悟すら感じるほどの威圧を持つ神蔵 修也かぐらしゅうや

対して覚悟ができていない貴女では彼を止めることは愚か

何も目的を果たせないまま無駄足を踏むだけですよ

今一度考えてみてください」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさき が再び切先きっさきを向ける。

そら は深く深呼吸をすると刀をグッと握り、城ヶ崎じょうがさき へと斬りかかった。



夢野 天ゆめのそら

「はぁぁぁぁっ!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「これは、先ほどよりも早く鋭い…」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきそら の攻撃を受け止める。

そら は斬撃を高速で繰り出していく。

城ヶ崎じょうがさき は最初は涼し気な顔で防いでいたが

次第に焦りの表情を浮かべていった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「急速な成長‥‥ではないですね

これは潜在的なものでしょうか?

それとも…?」



N→蓮太郎れんたろう

そらが距離を取るように後方へと飛び下がり納刀する。

すると、ヒヤリと冷気が漂うような強烈な殺意が城ヶ崎じょうがさきを襲った。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それが…貴女の技ですか」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさき は太刀の切先きっさきを後方へ向け、必殺の構えを取った。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「失礼のないよう全霊を以て挑ませていただきます」

明鏡止水めいきょうしすい



夢野 天ゆめのそら

天日てんじつ

日神にちじん

白夜びゃくや



N→蓮太郎れんたろう

そら が抜刀すると三つの技を口にする。その型は城ヶ崎じょうがさき も知らないものであった。

両者が同時に斬りかかる。城ヶ崎じょうがさき に向けてそら が放った『天日てんじつ

俊足しゅんそくから繰り出される一閃。

それは音速に届くかの如き速度で城ヶ崎じょうがさき に繰り出される。

城ヶ崎じょうがさき はその一撃を防いだが、そこに『日神にちじん』が間髪入れずに繰り出された。

その攻撃は城ヶ崎じょうがさき の『明鏡止水めいきょうしすい』により行われた防御の構えを剥がすべく太刀へと三連撃が放たれた。

その三連撃を受けた城ヶ崎じょうがさきは防御の構えを崩す。

そこにそら の必殺の一刀『白夜びゃくや』が放たれた。

その横に薙いだ一閃が城ヶ崎じょうがさき へと迫る。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「早い………ですが、私の勝ちです」



N→蓮太郎れんたろう

突如、そら の視界がぼやけ、同時にそら の意識が暗転した。



夢野 天ゆめのそら

「うぅ…………えっと、あれ?どうなったの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴方の三つの技、それと私の明鏡止水めいきょうしすいがぶつかり合った結果、私が勝ちました。

みねうちでしたが、衝撃で意識を失ってしまったのでしょう」



夢野 天ゆめのそら

「そう、負けちゃったのね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「かなり洗練され、完成された型ですね

その刀術、どこで習得したのですか?」



夢野 天ゆめのそら

「…覚えてないの

他界した父が使っていた技なんだけど

正式な型の名前は全くわからないし

他の習得者も見た事がない

何より教わった事なんてないはず…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「謎が深まりますね

では話を変えましょうか

神蔵 修也かぐらしゅうやは現在は所有者を断定できていない

しかしすぐに会長が所有者であることに気づくでしょう。

となれば次に会長が戻る時を狙うと予想します

私達にできる事は彼か会長を監視するくらいでしょうか」



夢野 天ゆめのそら

「そうよね…そうしてみるしかないわね」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

三日後、月ノ都つきのみやこ学園生徒会長が学園へと帰還した。

生徒会室内で役員一同の集会の後

修也しゅうやを連れ敷島しきしまはアタッシュケースを持ち、そのまま人通りの少ない校舎裏へと移動していった。

そこで敷島しきしまは立ち止まり背を向けたまま修也しゅうやへと話しかける。



神蔵 修也かぐらしゅうや

(気づいているのか…?だが何故背を向ける…?)



敷島 遥斗しきしまはると

神蔵かぐら

前の事件について、何か隠している事があるんだろ?

詳しく話してくれないか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「会長に話した内容が全て真実でーーー」



敷島 遥斗しきしまはると (被せ)

「俺に嘘をつくのは良い判断だとは思えないぞ

この学園で一番の権力者を前に、虚偽の話をする事は処罰対象となる

わかっているな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………貴方が御刀みつるぎを?」



敷島 遥斗しきしまはると

「月ノつきのみやこ学園の生徒会役員にしか教えられない機密情報の一つだ

生徒会長となる者は虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所持することになる

その者は初代会長から代々受け継がれるアタッシュケース内に御刀みつるぎを入れて、各々の判断で使用することができる

これがそのアタッシュケースだ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまはアタッシュケースの持ち手に端末をかざすとピピッと電子ロックが外れた音が鳴った。



敷島 遥斗しきしまはると

「この端末はその初代会長の持っていた端末だ

これが無ければこのアタッシュケースは開かない

強い力で無理やり空けようとすればケース内の爆弾が起動する仕組みになっている。その威力はこの学園が吹き飛ぶほどのものだ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

アタッシュケースを地に落とすと刀を空にかざした。

表情は伺えないが、敷島しきしまの雰囲気が突如変化した事に修也しゅうやは気がついた。



敷島 遥斗しきしまはると

「お前の持つ刀‥‥それも見せてくれよ?

オレの刀とどちらが強いか…比べ合いをしないか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前…誰だ?敷島 遥斗しきしまはるとなのか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「おやおや?察しがいいね?

オレは敷島 遥斗しきしまはると が己の中に抱える劣等感から生み出された別人格だ

前にお前と戦ったときはオレの意識はまだ虚ろだったが

今ではこんなにはっきりしている…オレは存在している」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前も俺を待ってたみたいだな」



敷島 遥斗しきしまはると

「待ってたぜ…その邪刀やつるぎを奪うためにず~っと待ちわびてたぜ

恋焦がれたような気分だった…な?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ちょうどよかった

俺もお前の刀が欲しかった」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまの目は暗く、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

対して修也しゅうやは持っていた刀袋に手を入れる。

中には御影ノ邪刀みかげのやつるぎ が納刀された状態で入っており

その柄に手を添え、抜刀した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「この刀……あいつの後に使うのはお前が初めてになる

今の所有者は俺だ……さぁ、お前の力を見せてみろ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやの言葉に呼応するように刀から深緑色の光が輝く。

辺りを照らしていた光はやがて刀に飲み込まれるように消えていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なるほど…才能の無い者に力を与える刀…

常人が使えば力に耐えられず溺れていく

だが俺は大丈夫なようだ

触れられる…力も問題なく使えそうだ…」



敷島 遥斗しきしまはると

「じゃあプレゼント交換会といこうぜ

いや、違うか?互いに取り合うだけだから、強奪会だったなぁ!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしま虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを構える。



敷島 遥斗しきしまはると

「さぁ!早速これを受け取りな!!」

影斬かげきり



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまの刀身にゆらゆらと煙のようなものが立ち込める。

その黒い煙は薄暗く、まるで御刀みつるぎに宿る影のようであった。



敷島 遥斗しきしまはると

「よっと!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまが刀を振ると、その影は斬撃の形のまま飛翔ひしょう修也しゅうやへと迫った。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……過度な欲は人を喰らうか

刀にそれを言われるとは何とも頭が痛いな」

朧雲おぼろぐも



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうや御影ノ邪刀みかげのやつるぎ を背中に沿うように構えた。

迫る影に向けて一閃、抜刀する。

影はその斬撃によって切断され、そのまま溶ける様に消滅していった。



敷島 遥斗しきしまはると

「やるねぇっ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そりゃどうも」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天幻象まてんげんしょう



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまはその場に立ち止まった修也しゅうやへと斬撃を浴びせたが、まるで元からそこにいなかったかの様に刀がすり抜ける。



敷島 遥斗しきしまはると

「なにっ?確かに斬った‥‥」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「残念だったな

俺はそこには居ないぞ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまは辺りを適当に斬るような動作をする。

しかし急速に真後ろへとターンし、何もない空間へと御刀みつるぎを振り下ろした。

するとガキンと金属同士がぶつかりあう音が響く。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに…?なぜわかった?」



敷島 遥斗しきしまはると

「理由は簡単だ

お前の殺気を感じ取ったんだよ

わかりにくく隠してやがるな?

摩天幻象まてんげんしょう…その技

気配をその場に残して自らは動けるのか

視覚頼りで戦う者には効果がないが

五感を駆使する敵の混乱を招く技

感覚全てを注視していたら気がつかない…

すげぇなその技!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまがそのまま力を上げていくと修也しゅうやは焦りの顔を浮かべた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「強い…なんだこの力!?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは後方へと飛び下がる。そして再び刀を構えた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「まだまだ技があるんだ

色々見せてやるよ」

摩天空翔まてんくうしょう



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやの身体が宙に浮かぶ。

まるで羽が生えたかのように、修也しゅうやは高い位置で停止した。



敷島 遥斗しきしまはると

「へぇ!そんな事もできんのか!!

おもしれぇなぁ!!もっと見せてくれよ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「いつまでその余裕が続くかな」



敷島 遥斗しきしまはると

「余裕なんかねぇよ!

オレは今とてつもなく高揚してんだ!!

この戦いを長く楽しみたいって身体がうずいてるんだよぉ!!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは空中で身を翻し、敷島しきしまに斬撃を繰り出す。

敷島しきしまはすんでの所で攻撃を往なすが、空中に居る敵に対して有効打が少ないのか、イライラした様子であった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁっ!!」



敷島 遥斗しきしまはると

「ちっ…!うらっ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天斬まてんざん!!』



敷島 遥斗しきしまはると

夜陰やいん



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

二人の技は激しくぶつかり合い、凄まじい衝撃波を辺りに放つ。

空中に未だ飛ぶ修也しゅうやは息一つ切らしている様子はないが

対して地上に立つ敷島しきしまは息切れを起こしていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「流石に強いな、生徒会長として最強と名高いわけだ」



敷島 遥斗しきしまはると

「ハァハァ……最強ならよかったんだがな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…どういうことだ?」



敷島 遥斗しきしまはると

「ハッ!!てめぇには関係ねぇよ!!

そろそろ頭来たぜ…面白いもん見せてやる」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしま御刀みつるぎを地面に向けて刺すように構える。

その刀身から凄まじいオーラが立っているのに修也しゅうやは気がついた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なにを…!?」



敷島 遥斗しきしまはると

絶影球ぜつえいきゅう!!!』



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまは空中に居る修也しゅうやの周りに向けて空振りの斬撃を乱発する。

その刀身から先ほどのような影は飛ばず、ただ空を切ったように見えていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…これだけなはずがない

なにをした!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「光と影の境界線…

隔絶かくぜつされたお前を包み込む影そのもの…

この絶影ぜつえいはお前の希望をも削ぎ落す」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「まさか…!!?」

摩天障壁まてんしょうへき!!!』



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまが刀を地に突き刺した瞬間

修也しゅうやの周りの光がぐにゃりと曲った。

曲折きょくせつした影が球状になり、修也しゅうやを飲み込む。

その内部で高速に影が動き、内部にいる修也しゅうやを切り刻んだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「があぁぁぁああぁああぁぁああぁあっつ!!!」



N→蓮太郎れんたろう

その頃、そら城ヶ崎じょうがさき敷島しきしまを探していた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長は…どこに?」



夢野 天ゆめのそら

「もしかして修也しゅうや君と…」



N→蓮太郎れんたろう

そらは突如走り出した。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「夢野さん!一人では危険です!!」



N→蓮太郎れんたろう

しかし制止する声はそらには届かず、そのまま走り去ってしまった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「二人は戦っている‥‥会長に限って…ありえません

いえ、あってほしくないです‥‥」



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさきは他の生徒会役員との合流を急いだ。

そらが人があまり立ち入らない離れた校舎に近づいた瞬間、修也しゅうやの叫び声が聞こえてきた。



夢野 天ゆめのそら

「この声、修也しゅうや君!!?」



N→蓮太郎れんたろう

そらは声のした方へと急ぐ。

その時、修也しゅうや絶影球ぜつえいきゅうを受け、地に膝をついていた。

修也しゅうやに目立つ外傷はないが、立ち上がれないようであった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「この技は‥‥なんだ!?」



敷島 遥斗しきしまはると

絶影球ぜつえいきゅうが斬るのは魂そのものだ

生命力の薄れた今のお前は脅威ではない」



N→蓮太郎れんたろう

ジリジリと敷島しきしまが距離を詰める。

修也しゅうやは立ち上がり、邪刀やつるぎを構え直した。



敷島 遥斗しきしまはると

「よくもまぁ立ち上がれるもんだ

普通の人間ならそのまま魂を斬り落とされて即死なんだが

流石に強いな…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「く、くそっ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

(こいつに勝つには…これしかない)



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁはぁ……」

摩天まてんろー』



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうやくん!!?」



N→蓮太郎れんたろう

突如校舎の影からそらが姿を現した。



敷島 遥斗しきしまはると

「邪魔だ!!」

虚侵影きょしんえい!!!』



夢野 天ゆめのそら

「キャアッ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

そらッ!!!」



N→蓮太郎れんたろう

そらに向けて放たれた飛翔する大きな影の斬撃から庇うように

修也しゅうやが前に飛び出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はああああっ!!」



N→蓮太郎れんたろう

修也しゅうや邪刀やつるぎの刀身をぶつけて弾き返そうとする。

しかしその威力は想像を上回るほどのもので

修也しゅうやは身体ごと押されていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

(巻き込むわけには!!)



神蔵 修也かぐらしゅうや

「グガアアァァッツ!!!」



N→蓮太郎れんたろう

修也しゅうや咆哮ほうこうを上げる。

するとなぜか影は修也の目の前で爆散し消滅した。



敷島 遥斗しきしまはると

「なんだ!?なぜ消えた?

お前今なにを…した?」



夢野 天ゆめのそら

「助かった…?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「邪魔…だ……早く…逃げろ‥‥」



N→蓮太郎れんたろう

しかし既に限界に近いのか

表情も虚ろな修也しゅうやはそのまま正面に倒れ込んでしまった。



敷島 遥斗しきしまはると

「すでに限界だったみたいだな

勝った‥‥ぜ

これでオレが最強だ!!ハハハハハ!!」



夢野 天ゆめのそら

「…生徒会長じゃないわね

あなたは誰なの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「どいつもこいつも察しがいいな

オレは…こいつの、いや敷島 遥斗しきしまはるとの二つ目の人格だ

こいつの劣等感や不安、そんな暗い感情が生み出した人格

人はそれを解離性障害かいりせいしょうがいと呼ぶのか?」



夢野 天ゆめのそら

「じゃあ‥‥本来の会長はどうなったの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「眠ったままだ

きっかけは会議の時だ

学園を守れず、色々言われてねぇその重責に耐えられず

オレが出てきてしまったぁってわけ?」



夢野 天ゆめのそら

「…そう

なら貴方は、なんのために今戦ってるの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「もう一つの妖刀が欲しくなった

それとオレを知っちまったお前らを殺す

それが戦う理由だ

そうだな・・・・生徒会に二人が忍び込み、オレを殺そうと画策かくさく

八木原やぎはら の情報を偽って伝えて…?オレを騙そうとしたってのでどうだ?

生徒会長がこれを言えば嘘でも真実になっちまう」



夢野 天ゆめのそら

「そんなのが通るわけーーー」



敷島 遥斗しきしまはると

「それが通っちまうんだなあぁ!

なんせオレは生徒会長だっ!

ここではオレの発言の一つ一つが絶対なんだよ!!」



夢野 天ゆめのそら

「そうはさせないわ」



N→蓮太郎れんたろう

そら は戦う覚悟を決め、刀を抜いた。



敷島 遥斗しきしまはると

「オレを倒せるってかぁ?アァン!!?

妖刀も持たないお前如きに!!?」



夢野 天ゆめのそら

「来なさい…」



敷島 遥斗しきしまはると

「その態度…うざってぇなああああ!!

望み通り殺してやるよ?」

影斬かげきり!!!』



N→蓮太郎れんたろう

そら に放たれた斬撃の影は一太刀で軽く弾かれた。

否、かき消されたのだ。

弾くように刀で斬り落とされた影はそのまま消滅していった。



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁ?どうなってんだ?

どういうことだああぁぁぁ!!?」

影斬かげきり!!』



N→蓮太郎れんたろう

再び三連続で放たれた影は全てそら を斬る事なく、かき消されていった。



敷島 遥斗しきしまはると

「どうなってんだ?てめぇのその刀…?妖刀か?」



夢野 天ゆめのそら

「違うわ

これは私のお父さんが使ってた刀

名は碧青刀へきせいとう

私の使う流派は華照流かしょうりゅう

一刀に込めた力が太陽が如く闇を払う!

思い出したわ。これが私の力の正体よ」



敷島 遥斗しきしまはると

華照流かしょうりゅう?聞いた事ないなぁ?

だがよ?それがどうだってんだああぁぁっ!

てめぇ如きがいくら粋がったところで俺には勝てねぇんだよ!」



N→蓮太郎れんたろう

再度、敷島しきしま絶影球ぜつえいきゅう の構えを取る。

その御刀みつるぎから漏れるオーラは次第に敷島しきしまの身体全体にまで流れ出ていき、まるで敷島しきしま自身から漏れ出ているようであった。



敷島 遥斗しきしまはると

「おおおおお!?ここまで力が出るとは…なぁ!

たぎるこの感情に乗ったかぁ!?

お前程度の雑魚には!!世界の真相を知る権利なんかねぇ!

さっさとくたばれよぉ!!!!」

絶影球ぜつえいきゅう!!!!!!』



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしまが連続でそらの周りに向けて斬撃を放つ。

そらの周りの光が曲折きょくせつし始める。

それを見たそらは静かに目を閉じた。

碧青刀へきせいとうを手で撫でたのち、一閃。

その瞬間、周りでうごめいていた影が突如消滅した。



敷島 遥斗しきしまはると

「は…?どうなってんだ…!!?

かき消され‥‥て?

は、はあっ!!?ふ、ふざけ…んじゃねぇ!!

これすらも…消せるのかよ…

ふざけんなあああ!!」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしま御刀みつるぎそらに向けて振りかぶった。



夢野 天ゆめのそら

「‥‥哀れね」

白日青天はくじつせいてん‥‥』



N→蓮太郎れんたろう

斬りかかろうとした敷島しきしまは途端に後ずさりをし始める。

たったの一撃だった。

横一閃に繰り出された一刀は敷島を完全に下したのだ。

驚愕きょうがくの表情を浮かべながら敷島しきしまは崩れ落ちるように倒れる。



夢野 天ゆめのそら

「終わった‥‥のね

修也しゅうや君…大丈夫?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そ、そら‥‥」



夢野 天ゆめのそら

「生徒会長‥‥いえ敷島 遥斗しきしまはるとは倒したわ

とは言っても峰打ちだけど

多分すぐには目を覚まさないわ

もう大丈夫よ…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「油断…するな‥‥」



敷島 遥斗しきしまはると

「馬鹿がああ!!!」



N→蓮太郎れんたろう

いつの間にか立ち上がった敷島しきしま御刀みつるぎを二人に向けて振り下ろそうとしていた。

その瞬間、ガキンという金属音が鳴り響き、二人の前に立ちはだかった男子生徒は御刀みつるぎを思い切り跳ね返した。



敷島 遥斗しきしまはると

「て、てめぇ!!!城ヶ崎じょうがさきっ!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「ここまでの証拠があれば‥‥状況はわかります

会長‥‥どうしてこんなことを」



敷島 遥斗しきしまはると

「ハハハハハ。お前が、居なきゃよかった

オレは…おれは…俺は…!

惨めな思いをすることもなかったんだああっ!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「あの事件の責任の事ですか?それは私に非があるとー」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうじゃねぇ!俺はお前に対していつもこう思ってたんだ!

俺がお前だったらって…

お前になれたらって…

お前くらい強ければって!!!

なのに…お前はっ!!いつもいつもいつもいつもぉっ!!!

俺なんかを庇いやがって!!!

お前は一体…!何様のつもりなんだっ!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「私は…会長の指導の下ここまで来れました

今の私があるのは会長あってこそ‥‥」



敷島 遥斗しきしまはると

「同情が欲しいんじゃねぇ!!

俺にとってお前は‥‥お前はあああ!!」



N→蓮太郎れんたろう

敷島しきしまは刀を構える。

その構えを城ヶ崎じょうがさきは知っていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それは‥‥明鏡止水めいきょうしすい

初代生徒会長が考案し、代々受け継がれてきた絶技

かつて会長が私に伝授してくださいましたね

ですが‥‥お分かりのはずです

その技は常日頃より集中力を保つことで発動できる一刀

今の会長には……」



敷島 遥斗しきしまはると

「うるせええぇっつ!!さっさとかかってこい!

さもなくばここの生徒を皆殺しにするぞ!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長‥‥!そこまで行ってしまわれたのですね

・・・・・あの日の約束を果たします」

明鏡止水めいきょうしすい-逆対ぎゃくつい-』



N→蓮太郎れんたろう

城ヶ崎じょうがさき敷島しきしまに向けて走り出す。

それを返すように敷島しきしまも斬撃を放つ。

そして決着はついた。



敷島 遥斗しきしまはると

「は‥‥ははは

ま、まけた‥‥んだな‥‥」



N→蓮太郎れんたろう

肩から腰にかけて一刀のもとに斬られ、血を流しながら倒れる敷島しきしま

その様子を眺める城ヶ崎じょうがさき

二人は静かに見つめあっていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「ぐ‥‥がはっ‥‥

随分と、容赦…ねぇじゃねぇか

城ヶ崎じょうがさき ‥‥‥‥」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長…」



敷島 遥斗しきしまはると

「…ハハ

お前に実力も劣ってるとは…どこまでも‥‥妬ましいやつだ

そういう所が…俺をえぐ るんだよ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「私に対するその想い…妬みが憎悪へと変わる」



敷島 遥斗しきしまはると

「………お前さえ居なければ自分をここまで卑下ひげ する事もなかった」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長…………

敷島 遥斗しきしまはると

貴方を現時刻を持ちまして、生徒資格を剥奪はくだつ

重犯罪者と判定し

警察へと身柄を引き渡します

よろしいですね?」



敷島 遥斗しきしまはると

「…あぁ。異論はない

さっさとやってくれ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「‥‥‥これまでのご指導ありがとうございました」



敷島 遥斗しきしまはると

「……………城ヶ崎じょうがさき



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…はい」



敷島 遥斗しきしまはると

「これで終わってない……からな

まだ闇は払い切れてねぇ……

懐はしっかりと正しておく事だ…」



N→蓮太郎れんたろう

少しして駆けつけた他生徒会役員が警察へと連絡を入れる。

それから、一時間も経たぬうちに、武装した警察隊が敷島しきしまを連行していく。

その姿を生徒会役員一同が静かに眺めていた。

突如、まるで戦いの痕跡こんせきを洗い流すように強い雨が降り注いだ。



校舎内に入ったそら修也しゅうや

二人は言葉を交わすことなく、静かに隣り合わせに座っていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら …何で助けた!!?

俺は定介じょうすけ月夜つくよを見捨てたんだ…」



夢野 天ゆめのそら

「…えぇそうかもしれない

でも貴方は私を二度も救ってくれた

今はその借りを返しているつもりよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なぜ俺に‥‥付き纏う

どうして放っておいてくれないんだ‥‥」



夢野 天ゆめのそら

「放っておけるわけないでしょ‥‥」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なぜ…なんだ!どうして俺を」



夢野 天ゆめのそら

「貴方を好きだから

それじゃ不十分?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そんな‥‥それだけの事で?」



夢野 天ゆめのそら

「でもそれが私の自分勝手な目的よ

それ以上もそれ以下もない

貴方が好きで心配だから…守りたいんだよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!‥‥‥‥‥‥」



N→蓮太郎れんたろう

修也しゅうやは静かに唇を噛みしめた。

混ざり合う複数の感情の整理が追い付かずただ苦しむ他なかった。



夢野 天ゆめのそら

「貴方が何を抱えてるのかわからない

だけど、もし私を友達だと思ってくれてるなら

いつか話してほしい

頼りないかもしれないけど

私は修也しゅうや君を助けたい

修也しゅうや君…貴方を一人にしたくない

私じゃ力にならないかな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥‥‥俺は」



N→蓮太郎れんたろう

しかし修也しゅうやの中に過去の情景が蘇る。

幾度もフラッシュバックした光景がまぶたの裏に照り付け離れない。

修也しゅうやは真実を再び飲み込んだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥もう遅いんだよ

もう俺に関わらないでくれ」



N→蓮太郎れんたろう

修也しゅうやはゆっくりと立ち上がり、外へ出ていった。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君‥‥‥‥いつかは絶対…その手をとってみせるから」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



夢野 天ゆめのそら

「結局私は彼の力になる事はできなかった

私じゃ…誰も救えないのかなって、悲しくなったの

でも、前を向かないといけないって

居なくなった彼にまた会ったときに、今度こそ力になってあげたい」



蓮太郎れんたろう

「でも‥‥さ

助けたんだし…夢野ゆめのは凄いと思う…」



夢野 天ゆめのそら

「ありがとう

蓮太郎れんたろうは優しいのね」



蓮太郎れんたろう

「そんな事ないよ…僕は全然だめだから」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

少しして車がゆっくりと止まった。

運転手から目的地に着いたことを聴き、二人は護送車から降りていく。

民間人は避難済みのようで周りには人気がなく

不自然なほどの静寂が辺りを漂っていた。



蓮太郎れんたろう

「この辺りにいるの?」



夢野 天ゆめのそら

「おそらくは、この辺りだと思うんだけど

まだ細かい位置は掴めてないから慎重に周りを確認して

いつ現れるかわからないから武器を構えておきなさい」



蓮太郎れんたろう

「‥‥わかった」



夢野 天ゆめのそら

「まずは援軍が来るまで様子を伺いましょう

…もし倒せるならいいんだけど、無理はしないでね」



蓮太郎れんたろう

夢野ゆめの…!こっちに来てる…!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうが刀を構える先を見るが一向に敵が来る様子はなかった。

しかし以前として警戒を解かない蓮太郎れんたろうを見てそらも刀を構える。



夢野 天ゆめのそら

「どこにいるの?見えないけど…?」



蓮太郎れんたろう

「でかい気配がする……

こっちに気づいてる…と思う」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

すると突然、遠くからでかい衝撃音が鳴ると同時に巨大な影がそら達へと飛び上がってきていた。



夢野 天ゆめのそら

「避けて!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

巨大な影が二人の近くへと落下する。

その衝撃波はすさまじく、辺りの民家を倒壊させるほどのものであった。

そらは衝撃に備え飛び下がっていたが、その風圧を受けて、体勢をよろめかせた。



夢野 天ゆめのそら

「な、なにが!!?まさか…魔怪まかいが!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

こちらを押しつぶそうとした巨大な影はうさぎ魔怪まかいであった。

民家一軒分の大きさにもなるうさぎ魔怪まかいの身体は異常な形をしており

脚が太く、頭がでかいいびつな形状であった。



夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろう!!大丈夫!!!!??」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そらは咄嗟に蓮太郎れんたろうに呼びかける。

その瞬間、魔怪まかいの真上から蓮太郎れんたろうの声が聞こえてきた。



蓮太郎れんたろう

「大丈夫だよ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうは依然として倒れている魔怪まかいの上に乗るように立っていた。その刀には魔怪まかい特有の緑色の血を滴らせており、蓮太郎れんたろうは不思議そうにこちらを眺めていた。



夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろう‥‥!それ…倒したの!?」



蓮太郎れんたろう

「う、うん…倒してもいいんだよね…?

だめだった?」



夢野 天ゆめのそら

「そうじゃ…ないんだけど‥‥」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その瞬間、うさぎ魔怪まかい蓮太郎れんたろうを噛み砕こうと首を伸ばした。



夢野 天ゆめのそら

「危ない!!」



蓮太郎れんたろう

「!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうは咄嗟に上へと飛び上がり、刀を空中で構え直した。

そして一言、静かに技名をつぶやいた。



蓮太郎れんたろう

摩天斬まてんざん



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうが放った刀の一閃は、うさぎ魔怪まかいを一刀のもとに斬り捨てる。

噴き出した魔怪まかい鮮血せんけつが雨のようにあたりに降り注ぐ。

空中から着地し、ゆっくりと刀をしまう蓮太郎れんたろうを見ながら

夢野 天ゆめのそらは恐れと疑問を抱いていた。



夢野 天ゆめのそら

(やっぱり‥‥強すぎる‥‥

この子は…何者なの‥‥?

修也しゅうや君…この神蔵 蓮太郎かぐられんたろうと貴方は一体…

何の関係があるの‥‥?)






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


黒いローブを着た男→敷島 遥斗しきしまはると兼任

白いコートを着た男→神蔵 修也かぐらしゅうや兼任



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

それから数ヶ月後

どこかの建物の屋上にて

白いコートを着た男が風に吹かれながら空を見上げていた。

そこに黒いローブを着た男があお るように笑いながら歩いて近づいてくる。



黒いローブを着た男

「お仕事お疲れさまだなぁ?

さすがは我らがエース様!しっかりと任務をこなしてかっこいいぜほんとよ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

白いコートを着た男は黒いローブの男の方を向かずに静かに声を返していた。



白いコートを着た男

「・・・・当然だ、失敗など許されない」



黒いローブを着た男

「おーおー?ますます憧れるねぇ?

でもよぉ?お前も心ないやつだな?

あんなに沢山の人を無残にも殺しちまうんだからなぁ」



白いコートを着た男

「・・・・あお りに来ただけか?」



黒いローブを着た男

「そんなわけないだろぉ?オレはねぎらってやろうって善意で来てやってんのにな?」



白いコートを着た男

「そんなものは不要だ

用が済んだなら消えろ」



黒いローブを着た男

「ひっでぇな

仲間なんだぜオレら?仲良くしようぜ?」



白いコートを着た男

「お前らと馴れ合うつもりはない

ただ目的が同じというだけ

お前らが邪魔をするならば容赦なく全員殺す」



黒いローブを着た男

「おーおー?惨忍な奴だねぇ

でもまさかなぁ?あいつまでも殺しちまうなんてな?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

白いコートを着た男はその言葉に反応する。

それに気づいた黒いローブの男はニヤリと笑い、ゆっくりと近づきながら言葉を続けた。



黒いローブを着た男

「あんなにお前を助けようとしてくれたのになぁ?」



白いコートを着た男

「……黙れ」



黒いローブを着た男

「お前を助けた事だってあったのにな

邪魔者は誰であろうと切り捨てるとは…冷酷極まりないことで」



白いコートを着た男

「・・・・黙れ!」



黒いローブを着た男

「馬鹿なやつだよなぁ!

助けようとした相手に足をすくわれて・・・・ねぇ~?

あの女を殺しちまうなんてなぁ!!

可哀そうになぁ~!!ハハハハ

どうだった??感想を聞かせてくれよぉ?

なぁ、神蔵 修也かぐらしゅうやさんよぉ~?」



白いコートを着た男

「黙れと言っただろ!!!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

白いコートを着た男

その正体である神蔵 修也かぐらしゅうやは勢いよく刀を抜き、黒いローブの男の首に寸止めをする。



黒いローブを着た男

「なっ!!!!

おーこわいこわい…!

軽いジョークだろぉ?許してくれよ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「前とは違う…

御刀みつるぎのないお前程度・・・・殺すのは容易だ

身の程を弁えろよ…?敷島 遥斗しきしまはると



敷島 遥斗しきしまはると

「・・・・はいはい

悪かったなぁ?エース様をからかってしまってね」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

刀を納刀し、修也しゅうや敷島しきしまを睨んだ後、階段を下りていく。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…わかってる

俺は進み続ける…たとえどれだけのものを犠牲にしようと…

進んでいく…俺が進むのは修羅の道だ

心なんて………もう、捨てる」






集編 桜ガ枯レ落ツ迄 完


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



利用規約

ミクロさん台本を動画、配信で使用するのは全てご自由にどうぞ



・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください

しかし作風に合わないものはご遠慮ください


・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます


・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

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