終編 桜ヲ枯ラス呪イ

不知火 響輝しらぬいひびき

27歳?

昔、いろそらの面倒を見ていたという青年。

見た目は若いが、数年経っても見た目が変わっていないらしい。

謎の力を扱う、どうやら魔法の類ではないみたいだが…




神蔵 修也かぐらしゅうや

18歳

白髪、黄色の目をしている美青年。

御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有している。

敷島しきしまに敗れたのち行方不明。

以前怪我をした際の血の色が…?




神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

15歳

白髪、黄色の目をしている美少年の男の子

若くしてV.H.A.ぶいえいちえー兵員になる

普段はパッとしないがかなりの実力者

夢野 天ゆめのそらの相棒




敷島 遥斗しきしまはると

19歳

月ノ都つきのみやこ 学園生徒会長。

学園での生徒殺傷事件の後、輸送中テロリストの襲撃を受け、行方不明となった。




夢野 天ゆめのそら

18歳

学園ではひっそりと人気な女子生徒

生徒会となり、敷島しきしまを倒す功績を得た為、生徒会副会長にまで成り上がった。

その後、直接のスカウトが来たことにより学園を特例卒業し、V.H.A.ぶいえいちえー兵員となった。









Nは→後のキャラ演者が読む


※設定一覧



八木原 旭やぎはらあさひ

同好会と称した罠を貼り、生徒を惨殺した男子生徒。

御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有していたが

修也しゅうやによって殺害された



岩城 定介いわきじょうすけ

~っすといった特徴的な語尾の男子生徒

八木原に殺され死亡



南雲 月夜なぐもつくよ

自由気ままな女子生徒

八木原に殺され死亡



二宮 達也にのみやたつや

不自然な敬語を使う男子生徒

学園内の勢力図を熟知している






設定


V.H.A.ぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称V.H.A.ぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

民間軍事会社(People Military company)通称PMCに分類される組織。

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができ

その戦うV.H.A.ぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている



魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしている。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴している宗教まで現れている。



CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている



・妖刀

人智を超えた力を持つ妖刀。

その御力は人の成せる領域を超えており、多種多様な技を扱う。

複数ある妖刀はいずれも人間の深層心理に影響を及ぼし

身を滅ぼす者やその命を刈り取られていく者も現れている。

現在 存在が確認されている二つ

御影ノ邪刀みかげのやつるぎ神蔵 修也かぐらしゅうやが所持し

虚無ノ御刀うつなしのみつるぎは月ノ都学園が保管している。




役表


不知火 響輝しらぬいひびき ♂:


敷島 遥斗しきしまはると♂:


夢野 天ゆめのそら♀:


神蔵 修也かぐらしゅうや不問:


神蔵 蓮太郎かぐられんたろう不問:


※黒ローブは誰も演じない、誰かと喋っているように間を空ける




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      血桜ハ還リ咲ク 零章

      「桜ヲ枯ラス呪イ」




N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

既に笑顔は崩れている………残酷な現実

自らに課された鎖はその手を遮り、明光を閉ざす






N→敷島 遥斗しきしまはると

月ノ都つきのみやこ学園で起きた凄惨な事件からおよそ1年が経過した頃。

夢野 天ゆめのそらは対魔怪まかい殲滅を目的とした民間軍事会社 V.H.A.ぶいえいちえーへと抜擢されていた。


本来、V.H.A.ぶいえいちえーは18歳以上および実力を所有した者

もしくは学園を卒業した者のみが入兵することができる。


しかし、既に卓越した実力を所持しており

上層部が認可した者は特例で入兵することができる事がある。

夢野 天ゆめのそらの場合はV.H.A.ぶいえいちえー側が直接勧誘に出向くという非常に稀なケースであった。


その誘いを承諾した夢野 天ゆめのそらは3か月の間

数人の兵員で構成される班へ仮入隊をし、そこで戦果をあげていった。

その功績が認められスピード昇進すると、そらをリーダーとする班の設立をするよう命令が言い渡される。


上司から班を作るように言い渡された夢野 天ゆめのそらに1人の所属候補者の通知が届く。

その資料を見てそらは驚きの声をあげる。



夢野 天ゆめのそら

「…これは、どういう運命なの?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらの手元にある資料に載っている自分の部下となる人物


神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

V.H.A.ぶいえいちえー特例認可兵員

年齢:15

階級:三等兵員

所属班:現在設立申請中


神蔵 修也かぐらしゅうやと容姿がとても似た少年であった。

髪は白みがかり、黄色い瞳をしており

哀愁漂う雰囲気を持つ少年はどことなく修也しゅうやを連想させる。



夢野 天ゆめのそら

「うーん…気になるけど

とりあえず会ってみない事にはわからないわね

よし!まずは会ってみよう」



N→敷島 遥斗しきしまはると

上司へと連絡をすると話が通り、蓮太郎れんたろうが待機している部屋へと案内される。

中では少年が椅子に座ったまま、静かにただ一点を見つめ続けていた。



夢野 天ゆめのそら

「君が蓮太郎れんたろう…君だね?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

静かに座っていた少年は顔を小さく縦に動かす。

その表情は虚ろで、暗く、寂し気であった。

そんな瞳をそらは知っていた。




神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…うん」



夢野 天ゆめのそら

「私は夢野 天ゆめのそら

これから貴方の班長になるかもしれないんだけど

その前に直接本人と話してみたくて来たの」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「……そうなんだ」



夢野 天ゆめのそら

「そうなんだ……って上司からなにも聞いてないの?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「僕は…ただ言われたから……来ただけ…」



夢野 天ゆめのそら

「そう…?

…そうだ!今回私の所に来る前に2つの班を行き来してたって聞いたんだけど

どうして班を移動することになったの?

実は私もあまり話を聞いてないの」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「……」



N→敷島 遥斗しきしまはると

蓮太郎れんたろうは一切そらへと目を合わせずに黙りこくる。

少しの間の後、ゆっくり口を開く。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「全滅…したから」



夢野 天ゆめのそら

「え………?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…僕以外は殺された

Bビー-Classクラスって言ってた…かも」



N→敷島 遥斗しきしまはると

上司たちから聞いた話だと仲間を全滅させられた人間はこのように心を失う者もいると聞いたが、この少年もそうなのかもしれない。



夢野 天ゆめのそら

「そうなの…ね

ごめんね?あんまり言いたくなかったよね」



N→敷島 遥斗しきしまはると

申し訳なさそうに俯くそら

しかしあまり気にしてないのか蓮太郎れんたろうは表情を変えずに再び口を開いた。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「……大丈夫」



夢野 天ゆめのそら

「そう?それなら聞いてもいいかな?

Bビー-Classクラスのその魔怪まかいはどうなったの?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「……………倒した」



夢野 天ゆめのそら

「倒したって…蓮太郎れんたろう君が?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

蓮太郎は小さく頷く。

そらは驚きながら蓮太郎れんたろうを見た。

蓮太郎れんたろうは自分よりも年下だ。

見たかぎり女の子のような華奢な身体からはとても戦えるようには思えない。



夢野 天ゆめのそら

(この子が…一人で?

Bビー-Classクラスは私は一度も応戦したことがないけど

相当な危険度だって…確か脅威度基準は複数の隊が合同で挑まなければ討伐ができないくらいのはず

私が戦ったCシー-Classクラス魔怪まかいですらかなり苦戦していた。

その一つ上のランクをこの子一人で倒したっていうの…?)



夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろう君。よかったら私の班に来ない?

無理にとは言わないけど…どう?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらはこの少年をなぜか放っておけず

気が付けば勧誘の言葉を漏らしていた。

蓮太郎れんたろうは少し悩む様子を見せたあとゆっくりと頷く。



夢野 天ゆめのそら

「よろしくね、蓮太郎れんたろう君」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「うん…」



N→敷島 遥斗しきしまはると

その後、上司へと申請を出し、正式に夢野ゆめの班に蓮太郎れんたろうが所属する事となった。



夢野 天ゆめのそら

(蓮太郎れんたろう君が慣れるまでは他に人を入れない方がよさそうね

この子はあまり他人に慣れてないみたいだし

そこは私が班長として頑張らないと…)



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら蓮太郎れんたろうを班へと迎え入れる事となり

数回の任務を行いながら、蓮太郎れんたろうとぎこちないが少しずつ会話をすることで打ち解けていく。

最初は任務時に見せるとてつもない実力に驚いていたが、それよりも話してみると普通の大人しい少年であることがわかった。

蓮太郎れんたろうはどこか天然っぽさもあり、年相応の我儘な一面も見れ、そらはまるで弟のように可愛がるようになっていた。



夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろう。そろそろ起きて」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「う、うん……」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらは十数名のV.H.A.ぶいえいちえー兵員と共に極秘任務を命じられていた。

護送車の中で蓮太郎れんたろうそらに膝枕をされながら寝息を立てており、目的地に近づくとそらは優しく声をかける。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…ふわぁあ。まだ眠い……」



夢野 天ゆめのそら

「まだ眠いの?でもこの後は大事な任務だから今だけは頑張ってね」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら蓮太郎れんたろうは途中で下車し

目的地から少し離れた建物の周りで立ち止まった。

空は既に真っ暗になっており、近くに人気はまったくない。

現在は周囲一帯の建物はすべて使われておらず

今回のように定期的に場所を変えて使用することで

監視や盗聴をさせない特別な会議の場として使われていた。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「そういえば、どんな任務なの?」



夢野 天ゆめのそら

「えっとね…ちょっと待って」



夢野 天ゆめのそら

(これも…また数奇な運命ね……)



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

任務時に支給される特別な処理が施されている端末で内容を確認する。

蓮太郎れんたろうはそこに記載されていた名前には見覚えがあった。



夢野 天ゆめのそら

「今回の任務は国会議員であり防衛隊長官を務める井之上いのうえさん

V.H.A.ぶいえいちえー防衛隊副長官の二宮 和鷹にのみやかずたかさん

この政府御用人が緊急で特別会議を行うことになったの

その周辺警備と護衛だって

私たちは付近の建物で誰か怪しい人が来ないかを監視するのが仕事ね」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「え………二宮にのみや!?」



夢野 天ゆめのそら

「知ってるの?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「いや…なんでもない……」



夢野 天ゆめのそら

「よくある護衛任務らしいんだけど

こんなに人数が居るものなのかな?

まるで襲撃されるのがわかってるみたい…」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そうして話をしている時、何か足音が近づいてきているのに蓮太郎れんたろうは気がついた。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

夢野ゆめの…誰かこっちに来る」



夢野 天ゆめのそら

「え…?ほかの人と配置が被ることはないはずだけど…!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そらは刀を抜き、蓮太郎れんたろうの警戒する方へ即座に構えた。

足音の方を二人は注視する。

暗がりから1人の男が姿を現わす

その顔にそらは見覚えがあった。



夢野 天ゆめのそら

「え、貴方は……もしかして不知火しらぬい さん!!?」



不知火 響輝しらぬいひびき

そら・・・・久しぶりだな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

不知火しらぬいそらを見ると安堵の息を漏らした。



不知火 響輝しらぬいひびき

「まだ無事だったようだな…よかった

そら、俺に着いてくるんだ」



夢野 天ゆめのそら

「え…着いていくって?

急に…そんなことを言われても無理ですよ

今は私たちは任務中なので…ここを離れられないんです」



不知火 響輝しらぬいひびき

「急を要することなんだ

あとで必ず詳しく説明する

だから今は黙って俺についてきてくれ」



夢野 天ゆめのそら

「…そう言われてもーーー」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

夢野ゆめの・・・・この人は誰?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

焦った様子の不知火しらぬい と困惑の表情を浮かべるそら蓮太郎れんたろうの声で我に返った。



夢野 天ゆめのそら

「えっと…この不知火しらぬい さんは子供の頃

親を失って身寄りがなかった私とお姉ちゃんを引き取ってくれて

ずっと面倒を見てくれてたの

私たちが学園の寮に入ってからは全く会えてなかったんだけど…

それより、不知火しらぬい さんがどうしてここに?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「…わかった。少しだけ説明する

今からこの任務の護衛対象がテロリストに襲撃されると情報が入った

奴らはすべての関係者や目撃者をも見境なく殺すつもりだ

人数もお前らより多いだけでなく個々の実力にも差がある

いくらお前でも多勢に無勢だろう…

だから俺はお前をここから逃がすために来た」



夢野 天ゆめのそら

「でも…もしそれが本当だとしても余計にここから離れるわけにはいかない

テロリストが私の仲間たちを殺そうとするのなら見過ごせないし

なにより…そんなときに私だけ逃げ出すなんておかしいです」



不知火 響輝しらぬいひびき

「…お前はこんなところで死んではならないんだ

理由はここでは話せないが、お前の命は他の者とは違う

たとえ他の命を犠牲にしてでもお前を失うわけにはいかないんだ

俺が居ればここからお前を逃がすくらいはできる」



夢野 天ゆめのそら

「それじゃ納得できないです……

私一人が助かるためにみんなを置いていくなんてできません」



不知火 響輝しらぬいひびき

「…今はわからなくていい

お前といろだけは殺させるわけにはいかない…

俺と…お前の親父さんとの約束なんだ」



夢野 天ゆめのそら

「…私の、お父さんが?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「あぁ…お前の親父さんは俺にたのーーーー」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

突如、けたたましい爆発音と共にそらの端末に通信が入る。

一同は驚き、その音の先を見ると黒煙が上がっているのが見えた。



夢野 天ゆめのそら

夢野ゆめのです!!!

今の爆発音は…!!?

はい…わかりました!今すぐそちらへ向かいます

蓮太郎れんたろう…!ほんとにテロリストの襲撃があったの!

今すぐ護衛対象のところまで行きましょう!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「う、うん…」



夢野 天ゆめのそら

「相手は私たちを容赦なく殺そうとしてくるわ

絶対に油断しないでね…」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「うん…でも相手と戦ってどうしたらいいの?」



夢野 天ゆめのそら

「なるべくは殺さないで確保したい……けどそう上手くいかないかもしれない

もし危険だと思ったら逃げる

…それだけは約束して蓮太郎れんたろう



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「うん…わかった」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

急に周りの建物が爆発を起こし、一同はその爆撃を回避する。

そら不知火しらぬい は同じ方向へと飛び上がったが、蓮太郎れんたろうだけは別方向へ避けてしまい立ち込める煙で姿を目視できなくなってしまった。



夢野 天ゆめのそら

「ゴホッゴホッ……蓮太郎れんたろう!!?どこにいるの!!

……いえ、あの子ならきっと大丈夫

私は目的地へと向かわないと」



不知火 響輝しらぬいひびき

「待つんだそら!お前はどうするつもりだ」



夢野 天ゆめのそら

「私は…私の任務を全うします」



不知火 響輝しらぬいひびき

「そう…か……わかった

大きくなったなそら…」



夢野 天ゆめのそら

不知火しらぬい さんは…あんまり変わってないですね」



不知火 響輝しらぬいひびき

「ふっ…わかった

無事に戻ってこい

その時はすべてを話そう

お前に託した…華照かしょう流の本質を」



夢野 天ゆめのそら

不知火しらぬい さんも気を付けて」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そらは急ぎその場を離れる。

残された不知火しらぬい は深くため息をつく。



不知火 響輝しらぬいひびき

「まったく…あいつの我儘には弱いな

無理やりにでも連れていくべきだったか……

情が移りすぎた…な」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そんな不知火しらぬい 目掛けて何者かが攻撃を仕掛け飛び上がってきていた。



不知火 響輝しらぬいひびき

「…今の爆発はお前がやったみたいだな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その攻撃を後ろへ数歩下がり回避した。

煙が晴れてきて、その姿が視界に映る。

黒いローブを見に纏ったその男はニヤニヤ笑いながら十字型の短剣をくるくると回していた。



不知火 響輝しらぬいひびき

「その顔…見覚えがあるな

確か…月ノ都つきのみやこ学園元生徒会長

敷島 遥斗しきしまはるとだな…?」



敷島 遥斗しきしまはると

「お~~~??オレを知ってるってかぁ?

オレも有名人になっちまったみたいだなぁ!」



不知火 響輝しらぬいひびき

「あれだけデカく報道されてれば嫌でも耳に入ってくるものだ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは両手に短剣を持ち、クルクルと手で回しながら不知火しらぬい を睨む。



敷島 遥斗しきしまはると

「オレたちが今日ここで起こしたことはお世間様にバレるわけにゃ行かねぇからなぁ?

とくにオレの正体を知っちまったお前は尚更生かしちゃおけねぇ

ここにいるやつらはみ~んな死んでもらうぜぇ!!」



不知火 響輝しらぬいひびき

「やれやれ…元生徒会長というからには

多少は話が通じるものかと期待したが…

ただの狂人だったようだな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまが剣を向けるが、不知火しらぬい は一向に武器を出す素振りをみせない。

敵視していないかのようなその姿勢に敷島しきしまは激しい苛立ちを覚える。



敷島 遥斗しきしまはると

「あ?…おいおい、さっさと武器を出せよ?

それとも、まさかこんなところに丸腰で来やがった愚か者だってのかぁ?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「お前ごときに武器を使うまでもない…」



敷島 遥斗しきしまはると

「ちっ…調子乗りやがってこのおっさんがよぉ!

なら望み通りぶっ殺してやるよぉぉぉ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

強烈な殺意を浮かび上がらせた敷島しきしまは思い切り突進を仕掛けてくる。

走りながら、左右に細かいステップをしており、どこから攻撃を仕掛けるのかをわかりづらくしていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「ほら行くぜぇっ!!」



不知火 響輝しらぬいひびき

「血気盛んな若者だな…少し落ち着きを覚えた方がいい」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

激しい刺突の連撃を不知火しらぬい は軽々と避ける。

動きを最小限に抑えて回避しているため、細かいテクニックを使用している敷島しきしまの方が一方的にスタミナを消費し続けていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「テメェ…!!避けてばっかで!!うっぜぇえなああぁ!!

攻撃してこいよ腰抜けがぁ!!」



不知火 響輝しらぬいひびき

「…あえて挑発に乗ってやる」



敷島 遥斗しきしまはると

「はっ!馬鹿がっ!もらったぁあ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

立ち止まった不知火しらぬい へ向けて大きく刺突を繰り出した。

避ける素振りを見せず足を止めると、不知火しらぬい は指を鳴らす。

その刺突は深く身体へと突き刺さり、一撃で心臓を貫いた…はずなのだがその短剣の突きは大きく空を切った。



敷島 遥斗しきしまはると

「な、なに!!?今のを外した…?ありえねぇ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

顔を上げると少し離れた位置に不知火しらぬい は立っていた。

今の一瞬でどうやって移動したのかが敷島しきしまには理解できないようで苛立ちを隠せず舌打ちを連続でし続ける。



敷島 遥斗しきしまはると

「どうやって…そこまで逃げやがったッ!?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「さぁな…俺もよくはわかってない

この力の根源については俺も知りたいところだ」

六輪縛鎖ろくりんばくさ



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

不知火しらぬい の翳した腕の袖口から六つの鈍く光る鎖が飛び出し、敷島の手足へと巻き付く。



敷島 遥斗しきしまはると

「な!!?なんだこれ!!

どうなって…やがる!魔法かなんかかよ!!」



不知火 響輝しらぬいひびき

「惜しいと言っておこう

…炎や雷でも起こせるのならいいんだが

魔法ってほどユニークなことはできないもんでな」

四方鏡発壁しほうきょうはつへき



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

周りの地面から薄い灰色に光る鏡のようなものが四方から飛び出す。

それは敷島しきしまの周りを隙間なく囲うように浮かび上がると檻の中に閉じ込めるように隔離した。



敷島 遥斗しきしまはると

「なんだこれはあぁああ!?離っしやがれぇ!!」



不知火 響輝しらぬいひびき

「その結界にお前を封じ込める

しばらくは解けないようにしてあるからそこで大人しくしてろ」



敷島 遥斗しきしまはると

「てめぇえええぇ!!ふざけんじゃねええぇ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

叫びながら壁に向けて刺突を繰り出しているが、穴が空くどころか傷一つ付かず逃げることができないようであった。



不知火 響輝しらぬいひびき

「お前らにもリーダー格がいるはずだ

そいつを倒せば撤退させられるかもしれない

急いで探さないとな・・・・」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

不知火しらぬい敷島しきしまを意に介さぬ様子でぶつぶつ呟く。

表情が少しだけ青冷めているようで、ゆっくりと深呼吸をしてからその場を去っていった。



敷島 遥斗しきしまはると

「くそがああ!待ちやがれええぇぇ!

出しやがれぇ!!くそくそくそくそっ!!!!」



N→夢野 天ゆめのそら

目の前に張られた半透明の結界に向けてナイフをぶつけているが、びくともせず

なすすべもなく攻撃を続けていた。

そこに白いコートを着た男がゆっくりと歩いてくる。

その男は結界の目の前で刀を抜き、結界を一撃で切裂いた。

結界は割れた鏡のように粉々に砕け、消滅していく。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「苦戦しているようだから…助けてやる」



敷島 遥斗しきしまはると

「てめぇ・・・・Aエース

余計なお世話だクソ野郎!

あまり調子に乗ってるとぶち殺すぞ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……妖刀を持たないお前など相手じゃない」



敷島 遥斗しきしまはると

「ぁああ!!?てめぇ…調子乗んなよ?

オレを倒せるってか!?できるならやってみろよ??

なんならここで今すぐお前とやり合ってもいいんだぜ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「後でならいくらでも付き合ってやる

それより状況はどうだ?

第一目標と第二目標…

どういう手筈になって動いている?」



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁ?第一の方はとりあえず周りの見張りを狩りながら包囲網を張ってる

逃げようってもここからじゃオレらを倒して突破する以外ないだろうからな?

一人も逃がさねぇための囲い漁…ってやつか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なるほど…作戦は上々のようだな

それで…第二の方は?」



敷島 遥斗しきしまはると

「あ?知らねぇよ

どこの配置についてんだか知らねぇが今のところ目立って強いやつはいねぇ

つーかお前が第二を捕らえるってあんだけ粋がってたよな?

オレらは第一で忙しいんだよ

自分の任務くらい自分で消化しやがれバーカ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あぁ。無能なお前らに任せるより俺が動いた方が確実だからな」



敷島 遥斗しきしまはると

「…今回の任務は死人が出ても仕方ないほどの大規模戦闘だ

間違ってうっかり後ろから刺しちまっても恨むなよ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「できるならやってみろ

大口叩く暇があったら行動に移してみたらどうだ?」



敷島 遥斗しきしまはると

「ぁ?……てめぇ?後で覚えてやがれよ?

今は大事な大事なお仕事が最優先だ

運がよかったなぁ…?」



N→夢野 天ゆめのそら

敷島しきしまは最後まで憎悪に満ちた目で睨み続けながら走り去っていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら……どこにいる?」



N→夢野 天ゆめのそら

同刻、蓮太郎れんたろうそらを探しながら辺りを彷徨っていた。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「どこ…?夢野ゆめの…無事なの?」



N→夢野 天ゆめのそら

遠くで金属音がぶつかり合う音が耳に入る。

蓮太郎れんたろうは音の先へと歩みを進めていく。

その途中、仲間が倒れているのを発見し足を止める。

心臓は動いていないようで、完全に息の根を絶たれているようだ。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「この人、死んでる・・・・

夢野ゆめのは・・・・大丈夫だよ…ね」



N→夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろうの背後で不意に物音がする。

急いで刀を向け、振り返るとそこに立っていたのは不知火しらぬい であった。



不知火 響輝しらぬいひびき

「まだ無事だったのか…」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「えっと……さっきの人…」



不知火 響輝しらぬいひびき

不知火しらぬい

君は何をしているんだ?

戦っていたようには見えないが…」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「わからない・・・・僕はどうしたらいいのかな?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「それを俺に言ってどうする?

お前はどうしたんだ?

逃げたいのか?戦いたいのか?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「えっと・・・・わかんない」



不知火 響輝しらぬいひびき

「話にならないな・・・・

ちょっと待った。君…名前は?」



N→夢野 天ゆめのそら

蓮太郎れんたろうは少し悩んだ後、小さく口を開く。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

神蔵 蓮太郎かぐられんたろう…です」



不知火 響輝しらぬいひびき

「今・・・・神蔵かぐらといったか?」



N→夢野 天ゆめのそら

不知火しらぬい は突如驚いた表情を見せる。

蓮太郎れんたろうをジロジロと眺めて独り言のように声を出す。



不知火 響輝しらぬいひびき

「…まさか、奴らはこの少年が居るのを知らない?

こいつすら殺してしまおうというのか?」



N→夢野 天ゆめのそら

不知火しらぬい は何かを考えながら黙りこくった。

その間蓮太郎れんたろうは全く動かずそれをただ静かに待ち続ける。



不知火 響輝しらぬいひびき

「そんなわけがない・・・あいつらにとってこの少年の存在は必要不可欠なはずだ」



N→夢野 天ゆめのそら

突如、数本の刃物が不知火しらぬい蓮太郎れんたろう目掛けて投擲された。



不知火 響輝しらぬいひびき

「危ないぞ!!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「っつ!」



N→夢野 天ゆめのそら

二人は咄嗟に近くにある障害物へと隠れて投擲ナイフを回避した。

ナイフを投げた者がゆっくり近づいてくる。



敷島 遥斗しきしまはると

「生存者は~っけん。

お前ら二人…ここでデッドエンドだ」



不知火 響輝しらぬいひびき

「…しつこいやつだな

よくあそこから出られたな

強く張ったつもりだったんだがな」



敷島 遥斗しきしまはると

「そ~んなことはど~~だっていい!

それよりオレはお前の死体に用があるんだよ!

まぁどうせその辺に捨てておくけどな!」



不知火 響輝しらぬいひびき

蓮太郎れんたろう君…戦えるかい?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「えっ……う、うん」



不知火 響輝しらぬいひびき

「聞きたいことがある。なるべく殺さないようにしてくれ」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…うん」



敷島 遥斗しきしまはると

「てめぇら・・・・あ?

そのガキ…まさか?

あ~あ~あ~そういうことね

お前と同じような見た目の奴は気に食わねぇなホントによ!!」



N→夢野 天ゆめのそら

敷島しきしま蓮太郎れんたろうへと攻撃を仕掛けた。



敷島 遥斗しきしまはると

「死ねぇクソガキがあああ!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

再び視点移り

会議の場所近くにて多数の黒いローブの集団に兵員が襲われていた。

そらはそこに合流し、兵員を助けながら戦いを続けている。

しかし、予想以上に敵が手ごわく数を減らすことができなかった。



夢野 天ゆめのそら

「…殺し慣れている相手がここまで手強いなんて

どうしたらいいの…」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

他の配置から合流してきた兵員の加勢により、周りの敵が一時撤退していった。



夢野 天ゆめのそら

「今のうちに負傷者の救護を!

私は…テロリストを追撃します」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

そらは周囲を確認し、テロリストの逃げていく方向を知るため、高台へと昇った。

遠目ながら路地を隈なく見ていると、白いコートを着た男が視界に映る。

その正体はよく見えなかったが、なぜか口から一人の名前が零れた。



夢野 天ゆめのそら

「あれって……まさか……!?修也しゅうや君……」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

白いコートの男、神蔵 修也かぐらしゅうやは路地裏へと入り端末を確認していた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……ここなら話せるか?」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうやがそう呟くと物影から黒いローブの男が姿を現した。



黒ローブの男

「あぁ………問題ない…

それより‥‥奴の…居場所は‥‥

わかったのか‥‥?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「今敷島しきしま…いやXテンが逃がさないように見ている

あいつらならば問題ないだろう

唯一の障害である夢野 天ゆめのそら

あいつはこちらに引き入れるために説得するか、もしくは捕獲すればいい」



黒ローブの男

「わかった‥‥そのままで構わない

だが…お前は夢野 天ゆめのそらを‥‥捕獲するのを‥‥最優先で動け

例え誰を‥‥逃がそうとも‥‥‥‥

‥‥そいつを‥‥無理やりにでも捕らえろ‥‥」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに…?メインはあのお偉いさんじゃないのか?

少なくとも俺はそう聞いたぞ」



黒ローブの男

「作戦‥‥変更だ‥‥‥‥指示に‥‥従え‥‥‥‥」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…わかった

俺が必ずそらを捕まえよう」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君・・・・」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!!?なぜここが!?」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

突如現れたそらを見て驚きながら武器を構える。

その刀はかつて見た妖刀 御影ノ邪刀みかげのやつるぎであった。



夢野 天ゆめのそら

「…修也しゅうや君。今、誰と話してたの?」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうやは黒ローブの男が居た場所をチラリとみるが既にそこに姿はない。

修也しゅうやは最後にあった時よりも成長していたのか、顔つきや体格が少し男らしくなっており、髪もかなり伸びていて

あの時に斬られたはずの片目が傷一つなくなっていた。



夢野 天ゆめのそら

「目は大丈夫だったの?なんともなさそうだけど…

あんなに深い傷じゃあ…視えるはずないと思ってた」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……そら、話がある」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

二人は刃先を向け合いながら静かに対話を始めた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「俺に着いてこい・・・・」



夢野 天ゆめのそら

「着いていくって…どこに?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それは・・・・後で話してやる

だが今は黙って従え」



夢野 天ゆめのそら

「断ったらどうするの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「無理やりでも連れていく」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

瞳を閉じて静かに考え、そして返答する。



夢野 天ゆめのそら

「従うわけにはいかないわ」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうやは構えを変える。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天幻肖まてんげんしょう



N→不知火 響輝しらぬいひびき

突如、修也しゅうやの気配が察知できなくなる。

気がつくと目の前から忽然と姿が消えていた。



夢野 天ゆめのそら

「これは…!?」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

そらの背後から突如、斬撃が繰り出される。

その瞬間、刃のぶつかり合う音が鳴り響くと修也しゅうやが姿を現した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「最近は破られることが多いな・・・・」

摩天まてんざ・・・・』



夢野 天ゆめのそら

「くっ!!!…修也しゅうや君!待って!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「戦いに待ったはない!」

摩天斬まてんざん!!!』



夢野 天ゆめのそら

「っ!どうして皆なにも言ってくれないの!」

天日てんじつ!』



N→不知火 響輝しらぬいひびき

二人の技がぶつかり合う。

その鍔迫つばぜり合いを制したのはそらであった。

衝撃に押し負け軽く吹き飛ばされる修也しゅうや

予想外の強さに驚愕するもすぐに向き直る。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…!やめて…!

私は貴方と戦いたくない!

ここに戦いに来たわけじゃないの!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前はそうでも俺は違う!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうや邪刀やつるぎの刀身を横向きに構え直す。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天衝打まてんしょうだ!!』



N→不知火 響輝しらぬいひびき

刀身を横に持ち地面を叩きつける。

それはまるでハンマーで殴りつけるかのように、強い衝撃を放っていた。

しかし、それもそらはひらりと躱し距離を離される。



夢野 天ゆめのそら

「すごい…威力!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「くそ・・・・これも避けるのか

ならば…これでどうだ!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうやは見たことのある構えをとる。

あの日、同好会事件の時に構えたものと同じであった。



夢野 天ゆめのそら

「それってあの時の!!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天楼まてんろう



N→不知火 響輝しらぬいひびき

あの時の斬撃を覚えている。

辺りに寒気が走るような一撃。

半端な覚悟で当たろうとすれば自分が斬られてしまう。

そらは覚悟を決めて、刀を構える。



夢野 天ゆめのそら

「やるしかないのね……!」

白日青天はくじつせいてん!』



N→不知火 響輝しらぬいひびき

二人の技がぶつかり合う。

その衝撃は凄まじく、辺りに積み上げられたごみ箱や自転車を枯れ葉のように吹き飛ばす。

お互いに一歩も引かずに刃を押し込みあう。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君!私は貴方と戦いたくないの!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「だったら!!黙って着いてくればいいだろ!!

それができないなら・・・・!戦うしかない!!」



夢野 天ゆめのそら

「・・・・でも!!あそこにはまだ他の仲間がいるの!!

見捨ててなんていけないよ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「どうせ・・・・!!ここに居た奴らは!!

お前を除きすべて殺す予定だ!!!」



夢野 天ゆめのそら

「そ、そんな…どうしてそんなことを!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「何度いわせりゃわかる!お前には関係ない!

さっさと倒れてくれよ!

こんなところで力を割いてられないんだ!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうやの信念が籠った表情を見てたじろいでしまう。

その一瞬の隙に修也しゅうやそらを吹き飛ばす。

態勢を崩したそらへと間髪入れず追撃を行う。

修也しゅうやは連続でそらへ斬りかかった。

そらはそれを受け止めながら、後方へ徐々に下がって行く。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前は!!何も知らなくていいんだ!

いちいち知ろうとするな!!俺の中にズケズケと入り込んでくるな!」



夢野 天ゆめのそら

「・・・どうして何も言ってくれないの!!

言ってくれないと何もわからないのに…!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「最初から理解なんて求めてない!!余計なお世話だ!

いつも…いつもお前はそうだ!

初めて出会ったときから…ずっと!!!」



夢野 天ゆめのそら

「私は…それでも!修也しゅうや君を…!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前がどうしたところでこうなる定めなんだ!!

ずっと前から決められてた物語を沿っているだけなんだよっ!!!」



夢野 天ゆめのそら

「でも!ここには・・・・あなたの」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前にはわからーーー」



夢野 天ゆめのそら

「あそこには!!蓮太郎れんたろうもいるのよ!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

その言葉が耳に入った瞬間、修也しゅうやの刃が止まった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「な、なんて言った・・・・?」



夢野 天ゆめのそら

「あそこには私の部下・・・・神蔵 蓮太郎かぐられんたろうが居るの

多分…今もどこかで戦ってる」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ここに蓮太郎れんたろうが……?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そして同時刻、不知火しらぬい蓮太郎れんたろう敷島しきしまと戦いを開始していた。



敷島 遥斗しきしまはると

「死ねぇぇっ!!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…っ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうは刀でナイフでの刺突を防いでいた。



敷島 遥斗しきしまはると

「へぇ~?強いねぇ?

さーすがだよ!だが…っ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは少し後方へと飛び下がりながらナイフを投げる。

蓮太郎れんたろうはそれをすべて弾くと再び構え直す。



敷島 遥斗しきしまはると

「てめぇからは攻撃しねぇってつもりか?

舐めやがってよぉ?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「そんなつもりじゃ…ない」



敷島 遥斗しきしまはると

「驚いたよ・・・・まさかここまでの実力だとはな

だが…どうして自分から仕掛けない?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「だって…殺さないようにって言われたから」



敷島 遥斗しきしまはると

「てめぇも!!オレをコケにするのかクソガキ!!

本気を見せてみろよ!じゃないと俺は倒せねぇぜ!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…わかった」

摩天斬まてんざん



敷島 遥斗しきしまはると

「なにっ!!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろう摩天流まてんりゅう刀術の一つ、摩天斬まてんざんを繰り出す。

その一撃を寸でのところで回避した敷島しきしまへと追撃を放つ。



敷島 遥斗しきしまはると

「ぐっ!!てめぇ!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

摩天躁突まてんそうとつ



敷島 遥斗しきしまはると

「くっ、があぁっ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは追撃の刺突を回避できず、脇腹へと攻撃を受けてしまう。

憎悪に満ちた視線を蓮太郎れんたろうへと向けながら激しく息を切らしていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「ハァ…はぁっ……あの野郎と同じ技でも…こんなに違うもんか

キレも威力も段違いじゃねぇか……!なんだこいつ

だが貴様には…こいつを見せてやる…!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは武器を投げ捨て、指を這わすように細かく動かす。

にやりと笑うと小声で何かを呟く。



敷島 遥斗しきしまはると

傀儡舞踊マリオネット・ダンス…』




N→神蔵 修也かぐらしゅうや

言い終わる直前、遠くで甲高い爆発音が鳴り響く。

敷島しきしまは急に手を止めてその方向へと目をやると、舌打ちしながら何かをローブから取り出す。

それは手持ちサイズの手榴弾だった。



敷島 遥斗しきしまはると

「時間切れ…だ…!だが、どうせ後で殺しにいく

死ぬまでの時間が少し伸びてよかったなぁ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうへと手榴弾を投擲する。

その爆弾は蓮太郎れんたろうへ届く前に爆発を起こした。



不知火 響輝しらぬいひびき

「な・・・・・・・・!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうの前で起爆した爆弾は強烈な光を起こしたあと

煙幕を起こすだけのものであった。

しかし煙が晴れるとそこに敷島しきしまの姿はなく

頭を抱えた蓮太郎れんたろうだけが残っており、辺りに静けさが戻る。



不知火 響輝しらぬいひびき

「逃げたのか…?なぜ退いた?

いやに引き際がいい・・・・

さっきの音、何かの合図か?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

不知火しらぬい が考え事をしていると、蓮太郎れんたろうは周りを確認する素振りを見せる。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「・・・・集まってきてる?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「なにか聞こえるのか?

俺には何も聞こえないが・・・・

いや、そういえば君は神蔵かぐらの子だったな

少し聞いてもいいか?

君は幼少期の間はどこに暮らしていたんだ?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「・・・・昔

家族に捨てられてから・・・・

ずっと・・・・一人だった」



不知火 響輝しらぬいひびき

「家族に捨てられた・・・・か

お前も俺やあの姉妹と似たような境遇なんだな」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…あの、僕も・・・・一個聞きたい」



不知火 響輝しらぬいひびき

「なんだ?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

夢野ゆめのとは……どういう関係?

さっき・・・・のだと・・・・・・・・よくわからなくて」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

不知火しらぬい は思い出すように視線を逸らす。



不知火 響輝しらぬいひびき

「あいつも昔は身寄りがなくてな

俺が引き取って学園に入るまで育てたんだ

昔、とある事があってあいつの親父さんに借りができてな

とはいえ、人を育てるなんてしたことないし面倒みられねぇと思ってたが…

子供二人を見捨てれるほど人を捨ててなかったみたいでな

処世術としてあいつらに戦う技術を教えてやったが・・・・

まさかそれがこんな形で狙われるようになるなんて」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「なんで・・・・狙われてるの?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「詳しいことは言えない…

というより、俺もその実わかってないことが多い

あいつらがどうしてそらを狙うのかはわからないが

俺はそれを阻止しに来た」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…そうなんだ」



不知火 響輝しらぬいひびき

「俺はあいつらのリーダー格を倒しにいく

そうすれば作戦を中止し、撤退するかもしれない

お前はどうする?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「えっと・・・・・・・・わかんない」



不知火 響輝しらぬいひびき

「意思がないのは構わない

だがここは戦場だ

迷いは命取りになるぞ

・・・・お前はそらを探してきてくれ

それなら動けるか?」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「う、うん…」



不知火 響輝しらぬいひびき

「頼んだぞ、神蔵 蓮太郎かぐられんたろう



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうはそれを聞くとそのまま建物の壁を飛び上がるように登っていった。



不知火 響輝しらぬいひびき

「俺は俺で動き始めるか…」



N→敷島 遥斗しきしまはると

再び場面変わり

修也しゅうや蓮太郎れんたろうの名前を聞いた瞬間、動きを止めていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なぜ・・・・ここに?」



夢野 天ゆめのそら

「あの子は今V.H.A.ぶいえいちえー兵員として私の部下になっているの

確証はなかったんだけど・・・・きっと知ってると思ったの」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・蓮太郎れんたろうは俺の・・・・弟だ」



夢野 天ゆめのそら

「やっぱり・・・・そうだったのね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

蓮太郎れんたろうはどこにいる…?」



夢野 天ゆめのそら

「わからない・・・・けどまだ無事だと思う

あの子は・・・・強いから」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうか・・・・力をつけていたのか

・・・・っ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは視線を逸らす。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「だが・・・・それでも目的は変わらない!!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは突然、刃をそらへと振りかざす。

しかしその斬撃は先ほどのものとは違い、弱々しくキレがない。

まるで本人の迷いを現しているようであった。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君!!?どうしてそこまで・・・・

貴方は一体なにに縛られているの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「前にも言ったはずだ!お前には関係ない!!」

摩天斬まてんざん!!』



夢野 天ゆめのそら

日輪にちりん!』



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやの技はそら日輪にちりんにいとも簡単に弾かれ、その斬撃は修也しゅうやの頬を掠めた。

鮮血が飛び散り、修也しゅうやの頬から血が垂れ流れる。

しかしその血は赤黒い色ではなく、緑色をしていた。



夢野 天ゆめのそら

「え……その色って・・・・

魔怪まかいのと・・・・そっくり…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・・・・・・・・・・・・・」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは頬の血を手で拭う。

傷口は徐々に塞がっていき、いつの間にか傷はなくなっていた。



夢野 天ゆめのそら

「もう治った…?あり得ない…そんな早くに

ねぇ・・・修也しゅうや君って…蓮太郎れんたろうもそう…

一体何者なの…!?

神蔵家かぐらけって…なんなの?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

その言葉を聞き、修也しゅうやは目を閉じる。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・・・・・」



夢野 天ゆめのそら

「貴方だけじゃなく、蓮太郎れんたろうも人とは離れたところがある

・・・・・・・・貴方は人間なの?

なんとなくだけど…貴方の家系に関わりがあるんじゃないの?

何か秘密があるのは証拠はないけど…確信してる」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・・・・・・・・・」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは表情を見せないように振り返った。

少しの間の沈黙が訪れる。

修也しゅうやは再び深く息を吸ってから再度斬りかかった。

二人は刀身をぶつけ合い、鍔迫り合いを行う。



夢野 天ゆめのそら

「くっ…!!それも話してくれないの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………襲撃目標は二つ

一人目は防衛隊副長官 二宮 和鷹にのみやかずたかの捕獲

もしくは殺害

奴は我々CARDIEDカディドについて詳しく知る人物の一人

ここで手を打たねば後々邪魔になる!」



夢野 天ゆめのそら

「それで…今回の警備が手薄な時を狙ったのね

防衛隊も今は居ない…絶好の機会ね!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「二人目の目標は…そら、お前だ!!

お前だけは確実に生け捕りにしろとの指示が出ている」



夢野 天ゆめのそら

「え、私を………どうして!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「理由はわからない・・・・だが、それが命令だ!

そして…最終目標は

それ以外の兵員すべて殺害することだ!!」



夢野 天ゆめのそら

「そ、そんな…!それじゃ蓮太郎れんたろうもその対象ってことなの!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・・・そうだ!!!」



夢野 天ゆめのそら

「それって・・・・・・・・

修也しゅうや君はそれでいいの!!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらは思い切り力を込めて修也しゅうやを吹き飛ばす。

姿勢を崩した修也しゅうやに向けて語り掛ける。



夢野 天ゆめのそら

「貴方は・・・・弟を・・・・

蓮太郎れんたろうまで犠牲にするの!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「!!!!」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君は・・・・弟が殺されてもいいの・・・・?

そうなってもいいって言うの・・・・・・・・」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやはその言葉を聞くと激しく声を荒げる。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「良いはずがないだろ!!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは叫びながら斬撃を再度繰り出す。

その斬撃はそらを倒すために仕掛けたものではなく

怒りに任せて周囲に八つ当たりのように繰り出した一撃だった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「だが・・・・・・・・こうするしかないんだ!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは動揺を隠しきれない様子だった。

先ほどとは違い、荒々しく力を込めており技をぶつけるわけでもなく

ただただこちらに向けて無意味に突撃を繰り返している。



夢野 天ゆめのそら

「……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「俺には!これしか!!!」

摩天まてんれーー』



N→敷島 遥斗しきしまはると

刺突をそらに繰り出す。

そらはその一撃を回避することなく

そして防ぐこともなくその身に受けた。



夢野 天ゆめのそら

「ぐっっ!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なっ!!!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらの腹部を刃が貫く。

血を口から吐き出すと、痛みに悶える表情を浮かべた。



夢野 天ゆめのそら

「ぐっ…!!しゅ…修也しゅうや…君……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「な、なぜ…!よけなかった…」



N→敷島 遥斗しきしまはると

今の一撃は修也しゅうやの使う摩天流まてんりゅうの技ではなかった。

混乱した修也しゅうやの苦し紛れに放っただけの突き

それをそらは身体で受け止めたのだ。



夢野 天ゆめのそら

「わたし……修也しゅうや君と…戦いたくないよ…

だって……修也しゅうや君は…私の……友達だもん」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そ……そら……なんで……」



N→敷島 遥斗しきしまはると

刀をゆっくりと抜き、手から邪刀やつるぎを落とす。

驚愕と困惑で動けない修也しゅうやへと徐々にそらは近づいていく。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前なら…簡単に避けれたはずだ……なぜ避けない…」



夢野 天ゆめのそら

「ねぇ…修也しゅうやくん……

私ね…蓮太郎れんたろうと一緒の班にいるんだけど…さ

あの子ね…すごい頑固で……でも私の為に頑張ってくれる

そんな子でさ…なんかね……修也しゅうや君みたいだな…って

そう…思ってたの……

……二人が兄弟なんだって…一目みてわかったよ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら修也しゅうやに辿りつく前に膝をつく。

咄嗟に修也しゅうやは傍へと駆け寄るとその身体を支えた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら…!!大丈夫か!!?

どうして……避けなかった!

お前なら…あんな攻撃、訳ないはずだ…

どうして…そこまで……俺に関わろうとする」



夢野 天ゆめのそら

「わかんない…でも放っておけないんだ……

修也しゅうや君も…蓮太郎れんたろうも…

二人とも…守りたいって……本気でそう思うんだ…

その為なら…なんでもできる…そんな気がするんだ……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………」



夢野 天ゆめのそら

「ねぇ‥‥修也君

聞いてくれる?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・なんだ?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらを抱えた修也しゅうやは真っすぐにそらの目を見ていた。

微笑みながらそらは言葉を続ける。



夢野 天ゆめのそら

「私を生け捕りにできなかったら……どうなるの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・どういうことだ?」



夢野 天ゆめのそら

「私がもし・・・・ここで死んだら、どう?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それ・・・・は・・・・・・・・

お前が死んだら俺らは目的を達成できない・・・・

撤退するかも…しれないが、正直言うと予想もつかない

もし俺が…兵員たちを逃がすのに加担したのがバレれば

俺もただでは済まないだろう・・・・

だが・・・・何もかも先延ばしになるだけだ

何も解決はしない

俺たちはまだ数も力も足りてないテロ集団だ

だが、必ずCARDIEDカディドV.H.A.ぶいえいちえーを…人類を滅ぼしにかかる」



夢野 天ゆめのそら

「そう…よね……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「たとえお前が逃げたとしても……

蓮太郎れんたろうを殺せるのは俺ぐらいだ

俺が手を下さなければならなくなる…

従わねば俺や他の者まで殺される……

それぐらい…CARDIEDカディドのボスは…

あいつはそれほど強大な存在なんだ…」



夢野 天ゆめのそら

「・・・・修也しゅうや君」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・なんだ?」



夢野 天ゆめのそら

「貴方が私を殺して…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・なにを・・・・言ってるんだ?」



夢野 天ゆめのそら

「貴方が手違いで私を殺した事にして……

きっと私が死ねば…不知火しらぬい さんはここを離れる…

あの人が付いていれば…蓮太郎れんたろうもここから逃げれる」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・待て!

お前…自分が何を言ってるのかわかっているのか?

それはお前が・・・・死ぬってことなんだぞ」



夢野 天ゆめのそら

「えぇ…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前は・・・・俺に殺されるんだぞ」



夢野 天ゆめのそら

「えぇ…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「覚悟のうえ…だっていうのか」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやはぐっと唇を噛みしめて俯く。

その表情は今までと違い、悲しみに満ち溢れていた。

涙一つ流していなかったが、彼の表情が物語るその絶望を見て

そらはニコリと微笑んだ。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君と蓮太郎れんたろうを守るためなら…

私は死んでもいいよ……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「どうして・・・・そこまで…」



夢野 天ゆめのそら

「私は貴方が好きだから…

それに蓮太郎れんたろうも…守りたい

ただ…貴方たち二人を守りたい……

それにさ・・・・兄弟で殺し合うなんて…

そんなのってないよ………」



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら・・・・」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやはその言葉を聞くと、顔を歪ませる。

涙は流していなかったがその目には色々な感情が籠っていた。

今まで自分に封じ込めていた黒い感情

その蓋が今解き放たれ、その全てがあふれ出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「俺は…今まで何人もの命を奪ってきた・・・・

もう…迷いはないはずだった…

………だけど、俺は弟を…見殺しにするなんて・・・・できない

蓮太郎れんたろうは‥‥‥‥俺のたった一人の家族だ

あいつのために…俺はここまで一人で戦ってきた

それだけはできない・・・・

だが…俺はお前も…死んでほしくない・・・・

…………どうしたらいいんだ……」



夢野 天ゆめのそら

「そう……だったのね」



N→敷島 遥斗しきしまはると

ゆっくりとそら修也しゅうやに近づく。

修也しゅうやを胸に抱きよせ静かに頭を撫でる。



夢野 天ゆめのそら

「ありがとう…話してくれて……

辛かったのね・・・・ずっと」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そ・・・・そら・・・・

・・・・俺には・・・・できない!

どうして・・・・お前は・・・・・・・・俺なんかを!

俺はこんなにもお前を突き放したのに・・・・!」




N→敷島 遥斗しきしまはると

そら修也しゅうやの唇に自分の唇をそっと重ねた。

驚愕する修也しゅうやの目を真っすぐ見て、安心させるように微笑む。



夢野 天ゆめのそら

「ごめんね・・・・正直言うとちょっと怖い…だけどね、私は今ので十分だよ…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……っ!!」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君………

私の最後の我儘聞いてくれない…?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやそらが出会ったある日のこと。

強く勧誘されたため、しぶしぶ入った同好会。

あの日々は修也しゅうやにとって使命とは関係なく動いた人生でも数少ない時間だった。

仲間たちに囲まれ、ただ普通の学園生活を謳歌した。

そんな彼の中の幸せな時間。

いつからかその日々が、冷え切った修也しゅうやの心に光を与えていたのだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「・・・・・・・・・・・・

ハハ・・・・・・・・相変わらず

お前の我儘には、弱いみたいだな・・・・」



夢野 天ゆめのそら

「そうね…私たちの出会いもそうだったもんね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前は俺を無理やり勧誘して…

面倒だって言ったのに…花見まで誘ってきて

楽しいって……思わせて…

勝手に現れて勝手に俺を揺さぶって…

ほんと…台風みたいなやつだよ……お前は」



N→敷島 遥斗しきしまはると

修也しゅうやは目を瞑ると答えを出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………わかった」



N→夢野 天ゆめのそら

それから少し時は戻る。

見晴らしのいいマンションの屋上で不知火しらぬい は目を瞑りながら近くの人間を探っていた。

特定の場所を中心に囲うように移動する者、その中で戦う者

その中で一人、その囲いから離れたところで不自然に動く者が居るのを捉える。



不知火 響輝しらぬいひびき

「こいつ…一人だけ戦いに参戦しない?

ずっと見ているだけだ

指示を出しているとすればこいつが長か?」



N→夢野 天ゆめのそら

一刻の猶予もないため急ぎその場へと向かう。

相手は気配を上手く隠しながら動いているが、不知火しらぬい の力の前には無意味だった。

その者が立ち去る道を遮るように地面へと降り立つ。



不知火 響輝しらぬいひびき

「お前があいつらを指示しているのか?」



黒ローブの男

「・・・・お前は・・・・・・・・あの血統の者だな?

・・・・なんの・・・・・・・・用だ?」



不知火 響輝しらぬいひびき

「お前らの襲撃計画について教えてくれた奴が居たんだ

心当たりはあるか?俺もその正体が気になる」



N→敷島 遥斗しきしまはると

先ほどの爆発と同じ音が響き渡る。



不知火 響輝しらぬいひびき

「お前らと腐れ縁になるのは御免でな

ここで倒すつもりでいかせてもらう」



黒ローブの男

「そろそろ、チェックメイト……お前に…出来ることなどない」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

そらは一人、爆発のした場所

護衛対象のいるビルへと向かっていた。

壁に手を突きながら歩いているが

その足取りは重く、覚束ない。

身体に力が入らず、意識も朦朧としている。

そんな中、先の修也しゅうやとのやり取りを思い返していた。



夢野 天ゆめのそら

「……これでよかったんだよね」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

刀を杖代わりにしながらゆっくりと歩みを進める。

そらは突如、口から血を噴き出す。

その拍子に膝を突いてしまい、立ち上がることができなかった。



夢野 天ゆめのそら

「ぐっゴホッゴホッ…!!

ぁぁあ…痛ぃ……!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

そらは腹部に手をあてがう。

その手にはおびただしい量の血が付いており、振り返ると自分の歩いてきた道に線が引かれているかのような血がこびりついている。

薄れゆく意識を必死に保ちながら、自らの死を薄っすらと感じ取っていた。

恐怖の感情が溢れだしそうになりつつも必死に力を出して立ち上がる。



夢野 天ゆめのそら

「ぁぁ‥力が…入らない

怖い……つらい…

でも、こんな傷じゃ…もう助からないよね…」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

あとほんの少し、次の道を曲がれば目的地だ。

そして、そこが彼女の最後の地となるだろう。

そらの脳内には一人の人物が浮かぶ。

それは唯一彼女に残っていた肉親の姿であった。



夢野 天ゆめのそら

「お姉ちゃん…一人にしちゃうけど……

きっと、傍に居てくれる人が…現れるから……さ

許して…ね

…ふふ

多分お姉ちゃんなら…あんまり気にしないか…ガハッ!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

口から噴き出す血を袖で拭い、最後の力を振り絞って死の門へと飛び出す。

恐怖心を押し殺し、ただ守りたいものの為にすべてを賭けた。

哀れな少女の最期の瞬間へと……




そして同刻、仲間に連絡を送っていた敷島しきしまの元に修也しゅうやが到着する。



敷島 遥斗しきしまはると

「おやおや?第二目標はどうしたのかな~?

あんだけオレに大口叩いておいてまだ出来てないってのか!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…」



敷島 遥斗しきしまはると

「おいおい無視かよ?

まさかオレに図星つかれて拗ねちゃったか??

ごめんな~?お前にみたいな弱い精神のやつのあやし方を知らないもんでな~」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「無駄口叩いてる前に状況を教えろ」



敷島 遥斗しきしまはると

「ちっ…包囲網は完璧だ

オレらの居る部分以外に漏れたやつはいねえ

あとはこの円を狭めていけば、メイン様がご登場するぜ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「わかった」



敷島 遥斗しきしまはると

「は?お前の方はどうなんだ?

わかったじゃねぇよ

てめぇの方もさっさと情報共有しやがれよ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「逃げられた

だがこの包囲網の中に居る

同時に攻撃すればどちらも炙りだせる」



敷島 遥斗しきしまはると

「じゃあ、協力といかせてもらおうか?

そうそう、背後には注意しておけよ?グサリとナイフが刺さってもしらねぇぜ」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

敷島しきしまが仲間へと再度指示を出す。

それは包囲網の縮小合図だった。

その行動に合わせてV.H.A.ぶいえいちえー兵員も反撃のため突撃を開始するが、疲弊しきった兵員は徐々に攻撃を受けてトドメを刺されていく。



敷島 遥斗しきしまはると

「作戦通りだね~さてとそろそろオレらも行きま…あ?」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

その陣形の中で一箇所だけ進行に手間取っている場所があった。

無線から得られた情報によると一人の少年に苦戦し、進行できない状況だという。

少年の正体が先の蓮太郎れんたろうである事を察した敷島しきしまはそこへ向かおうとするが、修也しゅうやに止められる。



敷島 遥斗しきしまはると

「あ?なんだ??邪魔すんじゃねぇよ

あいつはオレの獲物だ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…俺もいく」



敷島 遥斗しきしまはると

「ぁあ?まぁ、着いてきてもいいが邪魔だけはすんじゃねぇぞ」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

同刻、蓮太郎れんたろうCARDIEDカディドの刺客二人を相手に圧倒していた。

二人の刺客が同時に両側から攻撃を仕掛けるのだが、華麗にそれを回避して一撃を与える。

その場に敷島しきしまが到着し蓮太郎れんたろうと向き合った。



敷島 遥斗しきしまはると

「おいクソガキ!第二回戦といこうぜ!!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…また同じ人」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

蓮太郎れんたろうは構えをとる。

敷島しきしまは二人の刺客に作戦を伝えると、同時に三人で攻撃を始めた。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「くっ!三人…!」



敷島 遥斗しきしまはると

「大人げねぇ自覚はあるが、これも仕事なんでな

悪く思うなよ!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

しかし、蓮太郎れんたろうは空中で三回転して蹴りを二人の刺客に放つと

蹴とばしたその反動で敷島しきしまへと斬りかかる。



敷島 遥斗しきしまはると

「なにっ!!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

敷島しきしまは後ろへと下がりその攻撃を寸でのところで回避した。

斬撃は敷島しきしまの服を掠めており、偶然回避できたことに安堵する。



敷島 遥斗しきしまはると

「あぶねぇな…!」



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

摩天斬まてんざん!』



N→不知火 響輝しらぬいひびき

蓮太郎れんたろうの放つ斬撃が敷島しきしまへと辿り着く前に二人の刺客が間に割って入る。

斬られるのを覚悟で一人が身体で受け止めると、もう一人が蓮太郎れんたろうの腕と肩を持ち押さえつける。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「え!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「もらったぜ!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

敷島しきしまは仕込んでおいたマシンガンを取り出すと刺客ごと乱射した。

刺客を貫いた銃弾は、その懐に入れてあった手榴弾を撃ち抜き起爆させる。

蓮太郎れんたろうと刺客を巻き込む大きな爆発が起こり、三人は辺りへと吹き飛ばされる。



敷島 遥斗しきしまはると

「ハハハ!!ざまぁみやがれ!!

オレに立てつくとこうなるって最期に知れてよかったなぁ!!

ハッハハハハハハ!!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

下品に笑う敷島しきしまの周囲には爆発による煙が立ち込める。

視界が悪くなったため、一度その場から離れることにした。

その爆発の中では蓮太郎れんたろうがうつ伏せに倒れており

爆発の衝撃で頭を強く打ったため視界がぼやけていた。

近くには先ほどの刺客が自爆した残骸が散らばっている。

それに気づかない敷島しきしまは少し離れた建物の屋根で見ていた修也しゅうやの近くへと駆け寄った。



敷島 遥斗しきしまはると

「見たか!オレの大勝利だぜ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ……あれで勝ったとよく言えたものだな」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうや敷島しきしまを睨みつける。



敷島 遥斗しきしまはると

「ああ!?作戦勝ちだよ馬鹿が!

綺麗ごとなんてなんの役にも立ちゃしねぇんだ!

どんな手を使っても勝てばいいんだよ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「だが…奴はまだ生きてる

俺がトドメを刺す」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

突如修也しゅうやは黒煙の中へと入って行った。



敷島 遥斗しきしまはると

「てめぇ!!なに人の獲物横取りしようとしてんだ!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

しかし、こんな煙の中では下手に動けず敷島しきしまはその場に待機した。

倒れている蓮太郎れんたろう修也しゅうやは発見する。

久しぶりに見た蓮太郎れんたろうの顔

最後の記憶と比べると格段に成長しているのがわかる。

しかし、再会を喜ぶ暇はない

修也しゅうやは刀を構えた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁぁああ!!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

斬撃が蓮太郎れんたろうへと当たる直前

二人の間に飛び出す者がいた。

それが誰なのかは知っている。

その一撃は夢野 天ゆめのそらを切り裂く。

血が飛散し、修也しゅうやの顔に返り血がかかった。



夢野 天ゆめのそら

「……修也しゅうや…くん

蓮太郎れんたろう……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…!!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

そらが倒れる前に修也しゅうやはその身体を抱きとめた。

互いに表情が見えず、ひっそりと二人だけに聞こえるように話しかける。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや…くん……

あとは‥‥お願い……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あぁ…わかった」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

そらの身体がふと軽くなる。

それに気づいた修也しゅうやはその身体を優しく地面に倒す。

少しだけ目を見開いたまま動かなくなるそら

その顔に手をあて、静かに瞳を閉じさせた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら……ありがとう

俺も……お前が…好きだった

……さよならだ」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

蓮太郎れんたろうが再度意識を取り戻す。

その視界に映るのは倒れたまま動かなくなる夢野 天ゆめのそら

それを見下ろすように立っている白いコートの男だった。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「……ゆめ…の……」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

這うようにそらへと近づく蓮太郎れんたろう

そらの手を掴む。

そして残酷にも気づいてしまうのだ。

もう、心臓の鼓動が止まっていることに。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「…え」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

蓮太郎れんたろうの心臓がドクンと大きな鼓動を響かせる。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「なんで……」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

更に心臓の鼓動が早くなった。

それはヒートアップするようにテンポを上げていき、そして…

蓮太郎れんたろうの周囲に緑色の煙のようなモヤが出る。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

「うぁぁぁぁぁぁ!!!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

突如、蓮太郎れんたろうを中心に妖刀の輝きのようなものが眩く光り始めた。

謎の風が走る。すると黒煙が一瞬で払われ、辺りを照らす。

それを見ていた敷島しきしまは驚愕し、震え始める。



敷島 遥斗しきしまはると

「な、なんだよ!あれは!!!?

何が起こったんだ!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

倒れている蓮太郎れんたろうから発せられたその光は次第に何かの形を作って行く。

そして、それは触手のように変わっていき近くへ駆け寄っていた刺客三人を叩き潰した。



敷島 遥斗しきしまはると

「はあぁあ!?なにが起こってんだよおお!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

取り乱す敷島しきしまの元へと一瞬で飛び上がってきた修也しゅうやは怒りに震えた様子で叫んだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「撤退しろ!!!」



敷島 遥斗しきしまはると

「ぁあ!?撤退だ…!?目標はどうすんだよ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「撤退だと言ってるだろ!!俺に従え!!」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

いつにもなく声を荒げた修也しゅうやに驚いた敷島しきしまは無線で刺客全員に指示を出した。

敷島しきしまは急いでその場から立ち去っていく。

残った修也しゅうや蓮太郎れんたろうを見ると独り言を零す。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「まさか…そら

最初から…これを狙って?」



N→不知火 響輝しらぬいひびき

修也しゅうやは近くの壁を殴ると撤退を始める。



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

同刻、黒ローブの男と戦う不知火しらぬい蓮太郎れんたろうの出した光に気がついていた。

近づきながら次第に見えていくこの世のものではない光景に目をみはる。



不知火 響輝しらぬいひびき

「なんだ…!?この光!

まさかそらが…!!?」



黒ローブの男

「…よもや、こうなるとは…」



不知火 響輝しらぬいひびき

「なにが起こってる!答えろ!!」



黒ローブの男

「我々は…撤退する」



不知火 響輝しらぬいひびき

「なに…待て!!」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

黒ローブの男は煙幕を張るとその場から姿を消した。

それを追いかけようとするも不知火しらぬい は踏みとどまり、光の元へと向かっていった。

そこに辿り着くと、その中心にいる蓮太郎れんたろうに気がつく。



不知火 響輝しらぬいひびき

「やはり…神蔵かぐらの者は…人ではないということか……」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

蓮太郎れんたろうの近くに転がっているそらに目がいく。

一目みて既に息絶えていることを察した不知火しらぬい は拳を強く握りしめる。



不知火 響輝しらぬいひびき

そら……!!

くそっ!!!」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

手から血がでるほどまで握りしめていたが、一息ついて蓮太郎れんたろうを見るとため息をついた。



不知火 響輝しらぬいひびき

「お前は…あいつを守ったんだな

わかったよ…そら



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

不知火しらぬい は手で空に字を書く。

ふっと息を吹きかけると目の前に札のような模様が浮かび上がる。



不知火 響輝しらぬいひびき

封魔十戒ふうまじっかい…!!!!』



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

光を放ち続ける蓮太郎れんたろうに覆いかぶさるように札がその光ごと封じ込める。

その札から出ようとしているように先ほどより濃くなった光が漏れ出す。



不知火 響輝しらぬいひびき

「ぐっ!!はぁぁぁあああ!!」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

不知火しらぬい は気合をあげる。

鼻から血が垂れ、手の血管が強く浮かび上がった。



不知火 響輝しらぬいひびき

「はあぁっ!!!」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

手の平を重ね合わせ、強く握りしめる。

すると蓮太郎れんたろうの周りに漂っていた光が消えていく。

片足をついた不知火しらぬい は鼻血を拭うとそらへと駆け寄った。



不知火 響輝しらぬいひびき

「………すまない

お前を守れなかった

いずれ…罰を受けるだろう……」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

不知火しらぬい はその場からゆっくりと去っていく。

その場に残った蓮太郎れんたろうの元に数台の自動車の音が聞こえてくる。

蓮太郎れんたろうは閉じかけた視界にそらを捉えながら静かに意識を閉ざした。











N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

数時間後、辺りに大雨が降り始める。

修也しゅうやはビルの屋上に立っていた。

少しして黒ローブの男が近づくと修也しゅうやへとボソボソと話し出す。



黒ローブの男

「捕獲……失敗したな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なぜ…俺にやらせたんだ……

お前がやればよかったじゃないか…

俺よりもよっぽどお前の方が強い!

そんなに大事ならお前が動けばよかっただろ!」



黒ローブの男

「それは…お前が……決めることじゃない」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ふざけるな…!!俺はっ…!!!この手で!!」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

黒ローブの男に思い切り掴みかかる。

修也しゅうやは怒りの形相をしており、いつその拳を振るってもおかしくなかった。



黒ローブの男

「…私の命令に……従えないのならば………この場で死ぬことになる…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「脅しのつも……がっ!!」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

黒ローブの男の掌底を胸に受けて吹き飛ばされる修也しゅうや

強い衝撃を受けて、屋上のフェンスへと叩きつけられる。

ゆっくりと黒ローブの男は修也しゅうやの首を掴み、身体を宙に浮かす。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐっ…!!」



黒ローブの男

「お前に…選択肢はない……次は…ない」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

修也しゅうやは屋上の中心に投げ飛ばされる。

雨に全身で打たれながら、静かに空を眺めていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「覚悟……したはずなんだけどなぁ…」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

雨の音がやみ、暗い空間の中

どこからか声がする。



夢野 天ゆめのそら

「ひどいわ

私は貴方を信じていたのに…殺すなんて」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……」



夢野 天ゆめのそら

「周りの姿が見える?

修也しゅうや君が今まで殺していった人達よ

ずっと修也しゅうや君を見ていたの

そして…私もその一人になった

絶対に貴方を許さないからね」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

周りを見ると今まで妖刀の犠牲になった人たちが立ち尽くしていた。

何十人、何百人という人々が修也しゅうやを非難の目で見つめ続けている。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…わかってる

俺は進み続ける…たとえどれだけのものを犠牲にしようと…

進んでいく…俺が進むのは修羅の道だ

心なんて………もう、捨てる」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

修也しゅうやはゆっくりと立ち上がると御影ノ邪刀みかげのやつるぎを抜刀する。

そして刀身をゆっくり眺めると決意を込めて拳を握りしめた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……そうだ

俺は…後戻りしない」



N→神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

夜空に浮かぶ月を背に修也しゅうやは刀を納刀した。



N→夢野 天ゆめのそら

この襲撃事件は防衛隊の到着により終息した。

防衛隊副長官 二宮 和貴にのみやかずたかを狙ったテロリスト CARDIEDカディドの襲撃の生存者は副長官と護衛に回っていた兵員4名のみであった。


事件の詳細はその生存者の証言で語られたが、テロリストの死体は一人も発見することができなかった。


この件は情報規制され一部の兵員に噂が広がるだけに留まり、民間へと報道されず闇に葬られることとなる。























次回 血桜ハ還リ咲ク


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