後編 桜ガ散ル頃ニ

夢野 天ゆめのそら

16歳

学園ではひっそりと人気な女子生徒

かつての仲間を失い、意気消沈していたが

中編にて新しく生徒会に入る事になった




神蔵 修也かぐらしゅうや

16歳

白髪、黄色の目をしている美少年の男子生徒

御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有している

過去に何かがあったらしいが詳細は誰にも明かさない




城ヶ崎 健じょうがさきたける

16歳

生徒会に属する男子生徒、その実力は生徒会内でも頭一つ飛び抜けている




敷島 遥斗しきしまはると

17歳

現在の生徒会長。会長として歴代と比べかなりの切れ者である。

虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所有している。




畠中 祈里はたなかいのり

15歳

にゃ〜と語尾につくような猫口調で話す女子生徒

神出鬼没で掴みどころがない




Nは→後のキャラ演者が読む


※設定一覧



八木原旭やぎはらあさひ

同好会と称した罠を貼り、生徒を惨殺した男子生徒。

御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有していたが

修也しゅうやによって殺害された


岩城 定介いわきじょうすけ

~っすといった特徴的な語尾の男子生徒

八木原に殺され死亡


南雲 月夜なぐもつくよ

自由気ままな女子生徒

八木原に殺され死亡


二宮 達也にのみやたつや

不自然な敬語を使う男子生徒

学園内の勢力図を熟知している




役表


城ヶ崎 健じょうがさきたける ♂:


敷島 遥斗しきしまはると♂:


夢野 天ゆめのそら♀:


畠中 祈里はたなかいのり♀:


神蔵 修也かぐらしゅうや不問:






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      血桜ハ還リ咲ク 零章

       「桜ガ散ル頃ニ」




N→神蔵 修也かぐらしゅうや

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた・・・・・幸せな一時

決意を胸に抱いたまま

伸ばした手は空を切り少女の瞳が暗くにごっていく



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

桜が満開に咲き誇るある日の昼頃

眠たそうに屋上のベンチに寝そべりながら

校庭を眺めている畠中 祈里はたなかいのり

あくびをしながら伸びをした。



畠中 祈里はたなかいのり

「ふわぁあっ…にゃああっ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

畠中はたなかがひょいと飛び上がるように立ち上がると

目的もなくフラフラと歩き始めた。

階段の手すりに腰をかけて、滑るように下っていると

目の前から一人の男子生徒がこの男は怒りの形相を浮かべながら迫ってきている。

その男子生徒は二宮 達也にのみやたつやであった。



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃにゃっ!?これは危険にゃ予感だにゃ!!

逃げるのにゃあああ!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

畠中はたなかはそのままその場を離れた。

後ろからは殺気に満ちた気配と追いかけてくる足音が聞こえたが

なんとか逃げる事には成功したようで辺りに二宮にのみやが迫ってくる様子はなかった。

しかし気づかぬうちに普段人通りが少ない校舎へと続く渡り廊下へと逃げてきてしまったようだ。



畠中 祈里はたなかいのり

「危なかったにゃあああ

まためんど~にゃ話をされたら…たまらにゃい

でも…?ここどこにゃ〜

来たことにゃいのだけど……」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

畠中はたなかが辺りを見渡しながら廊下に顔をのぞかせると

そこには一人の少年が誰かと電話をしているのが見える。



畠中 祈里はなたかいのり

(誰……?てか凄い美少年だにゃあ!?)



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

携帯端末を耳に当て誰かと電話をしていたのは、生徒会監査の神蔵 修也かぐらしゅうやであった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…あぁ。問題ない

ゆっくりとあぶり出していく……

まだ所有者は刀を使いこなせていないようだ

………俺は直ぐに慣れる。心配はいらない」



畠中 祈里はたなかいのり

(何の話…にゃ〜んだろ?)



神蔵 修也かぐらしゅうや

「大丈夫だ

今月中にはそっちに戻るつもりだ

あと少しだけ頼むな

すまない、ありがとう」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは電話を切るとそのまま畠中はたなかのいる方へと歩いてきた。



畠中 祈里はたなかいのり

(にゃにゃにゃっ!?

めっちゃ迫って来てるにゃああ!!?)



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

畠中はたなか咄嗟とっさに忍び足で渡り廊下を超えた先の掃除用具室に忍び込んだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……ん?…気のせいか?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは不思議そうにキョロキョロと辺りを確認するも

畠中はたなかには気が付かなかったようで怪訝けげんな顔をしてそのまま歩き去っていった。



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃんと怪しい……

気ににゃるのにゃぁ〜?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

その頃、生徒会室にて

新しく生徒会に入った夢野 天ゆめのそらは生徒会副会長と共に事務作業を行っていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お手伝い頂きありがとうございます

他の役員でこういった作業をやれる者が少なく

会長のご不在時は私がやるしかないので

一人増えただけでも効率よく終わらせられます」



夢野 天ゆめのそら

「そうは言ってもまだ城ヶ崎じょうがさき君が進めた分の半分も終わってないんだけどね…

ゆっくりでしか出来なくてごめんなさいね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「何を謝っているのですか?

とても助かっていますと言ったでしょう?

監査は戦闘の実力だけを見て貴女を推薦したのでしょうが

夢野ゆめのさんが入ってきた時は

こういった事務作業までこなしてしまうとは思っていませんでした。

今の生徒会においてはとても貴重な人材です」



夢野 天ゆめのそら

「そう?他にできそうな人はいないの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「生徒会室外での仕事が多い役員には、この仕事を頼んでいないんです

本来の責務をおろそかにされても困りますからね」



夢野 天ゆめのそら

「そう…。生徒会も案外大変なのね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「いえ、いつもの事です

会長がおられる時は自分の仕事に専念できますが

ご不在の時は私が二人分請け負う訳ですから息をつく暇もありません」



夢野 天ゆめのそら

「会長はいつ学園に戻るの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今回の招集は定期会議ですので三日ほどで戻るかと思います」



夢野 天ゆめのそら

「そう……ねぇ城ヶ崎じょうがさき 君。

修也しゅうや君はこれからどうすると思う?まだ特に目立った動きはしてないみたいだけど」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「そのようですね

彼は会長が虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所持していると認知しているのでしょうか?

今も監査として学園を巡回しているわけですが

彼が進んで外仕事を受けたのは

未だに所有者を特定できていないからではないでしょうか?」



夢野 天ゆめのそら

「…そうなのかな

修也しゅうや君……何が目的なの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「………夢野ゆめの さん

少し休憩しましょう

と言っても、お願いしたい事がありまして

宜しければ着いてきて貰えませんか?」



夢野 天ゆめのそら

「え…どうしたの?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そう尋ねるが城ヶ崎じょうがさきは無言のまま

生徒会の主催する演習でのみ使われる戦闘ホールへと向かっていた。



夢野 天ゆめのそら

「あそこに何の用事があるの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

夢野ゆめの さん

突然ですが一度私とお手合わせ願えませんか?」



夢野 天ゆめのそら

「え!?急になんで戦う事に…?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「新しく生徒会に入った貴女の強さを見てみたいだけです

他意はありません」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさきそら とホール内の武器庫へと入り

お互いに得意とする武器を手に持った。

そら は刀を、城ヶ崎じょうがさきは太刀を腰にさげるとステージ中央へと入っていく。

中は円形の更地が広がっており

その周りを取り囲むように観客席のある、コロシアムのような造りであった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「ルールは五本勝負にしましょう

先に三本取った方の勝利とします

夢野ゆめの さん。先に言っておきますが本気で来なければ意味がありませんので

遠慮せずに来てください」



夢野 天ゆめのそら

「う、うん…分かった」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら が刀を構えるのを合図に城ヶ崎じょうがさき は攻撃を開始する。

しなやかに太刀を振るい、鋭い一撃をそら へと向けて放つ。



夢野 天ゆめのそら

「な、早いっ!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさきの一撃で体勢を崩され、そら の胸の前で刀身がピタリと止まる。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…一本先取ですね」



夢野 天ゆめのそら

城ヶ崎じょうがさき君…あなた何者なの……?

強すぎる…もしかして修也しゅうや君よりも」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「まだまだ本気は出していません

それに夢野ゆめの さんも油断していましたから

次は真剣に来てください」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさきは再度距離を取り、そして再び太刀を素早く構える。



夢野 天ゆめのそら

(リーチが長い代わりに大振りになりがちな太刀を

まるで短刀のようにしなやかに…

それでいて大剣でなされたみたいな威力だった……)



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「行きます」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさきは再びそら へと斬りかかった。その一撃を刀で防ぐ天。

しかし圧倒的な威力で身体ごと押し返れてしまい、吹き飛ばされてしまった。



夢野 天ゆめのそら

「…くっ!!なんて速度と威力なの!!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらが態勢を整え、城ヶ崎じょうがさきを視界に捉えるため顔を上げようとした瞬間

顔の横に寸止めの状態で太刀が留まっていた。



夢野 天ゆめのそら

「いつの間に…?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴女が着地をした瞬間には既に斬れる状態でした

これで二本目です」



N→敷島 遥斗しきしまはると

再びゆっくりと城ヶ崎じょうがさき は距離を取る。



夢野 天ゆめのそら

「ねぇ…城ヶ崎じょうがさき 君!私はあなたには勝てないよ

…もうわかるでしょ?何のために戦うの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴女は神蔵 修也かぐらしゅうやを止めると言いました

その過程で恐らく彼と戦うことになるでしょう

結果、勝利を収めたとしてその後どうするんですか?

その先を考えていますか?

止めた後、彼にはどのような処置をするんですか」



夢野 天ゆめのそら

「え…えっと、その先はまだ何も…考えてなくて」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴女の中にあるその迷い

それがある限りは、神蔵 修也かぐらしゅうやを止めることはできないでしょう

彼は強いです。生徒会に急遽きゅうきょ抜擢ばってきされるほどの実力者です

我々を敵にしてでも勝つという覚悟すら感じるほどの威圧を持つ神蔵 修也

対して覚悟ができていない貴女では彼を止めることは愚か

何も目的を果たせないまま無駄足を踏むだけですよ

今一度考えてみてください」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさき が再び切先を向ける。

そら は深く深呼吸をすると刀をグッと握り、城ヶ崎じょうがさき へと斬りかかった。



夢野 天ゆめのそら

「はぁぁぁぁっ!!!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「これは、先ほどよりも早く鋭い…」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさきそら の攻撃を受け止める。

そら は斬撃を高速で繰り出していく。

城ヶ崎じょうがさき は最初は涼し気な顔で防いでいたが

次第に焦りの表情を浮かべていった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「急速な成長‥‥ではないですね

これは潜在的なものでしょうか?

それとも…?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そらが距離を取るように後方へと飛び下がり納刀する。

すると、ヒヤリと冷気が漂うような強烈な殺意が城ヶ崎を襲った。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それが…貴女の技ですか」



N→敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさき は太刀の切先を後方へ向け、必殺の構えを取った。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「失礼のないよう全霊を以て挑ませていただきます」

明鏡止水めいきょうしすい



夢野 天ゆめのそら

天日てんじつ

日神にちじん

白夜びゃくや



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら が抜刀すると三つの技を口にする。

その型は城ヶ崎じょうがさき も知らないものであった。

両者が同時に斬りかかる。

城ヶ崎じょうがさき に向けてそら が放った『天日てんじつ

俊足しゅんそくから繰り出される一閃。

それは音速に届くかの如き速度で城ヶ崎じょうがさき に繰り出された。

城ヶ崎じょうがさき はその一撃を防いだが、そこに『日神にちじん』が間髪入れずに繰り出される。

その攻撃は城ヶ崎じょうがさき の『明鏡止水めいきょうしすい』により行われた防御の構えを剥がすべく太刀へと三連撃が放たれた。

その三連撃を受けた城ヶ崎じょうがさきは防御の構えを崩す。

そこにそら の必殺の一刀『白夜びゃくや』が放たれた。

その横に薙いだ一閃が城ヶ崎じょうがさき へと迫る。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「早い………ですが、私の勝ちです」



N→敷島 遥斗しきしまはると

突如、そら の視界がぼやけ、同時にそら の意識が暗転した。




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夢野 天ゆめのそら

「うぅ…………えっと、あれ?どうなったの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「貴方の三つの技、それと私の明鏡止水めいきょうしすいがぶつかり合った結果

私が勝ちました。

みねうちでしたが、衝撃で意識を失ってしまったのでしょう」



夢野 天ゆめのそら

「そう、負けちゃったのね」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「三つ目の技、白夜びゃくやは音速に近い速度から放たれた一撃でした

天日てんじつ』まず威力の高い一撃で、私に防御の構えを取らせ

日神にちじん』その防御を剥がし

白夜びゃくや』持てる最速の必殺の一撃を浴びせる

かなり洗練され、完成された型ですね

その刀術、どこで習得したのですか?」



夢野 天ゆめのそら

「…覚えてないの

他界した父が使っていた技なんだけど

正式な型の名前は全くわからないし

他の習得者も見た事がない

何より教わった事なんてないはず…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「謎が深まりますね

では話を変えましょうか

神蔵 修也かぐらしゅうやは現在は所有者を断定できていない

しかしすぐに会長が所有者であることに気づくでしょう。

となれば次に会長が戻る時を狙うと予想します

私達にできる事は彼か会長を監視するくらいでしょうか」



夢野 天ゆめのそら

「そうよね…そうしてみるしかないわね」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

三日後、月ノ都つきのみやこ学園生徒会長が学園へと帰還した。

その後、生徒会室内で役員一同の集会の後

敷島 遥斗しきしまはると城ヶ崎 健じょうがさきたける は生徒会室内にて話をしていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お疲れ様でした

今日はお休みになられてもよろしいのでは?」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうもいかない…今この瞬間、世界が動こうとしている

CARDIEDカディドと名乗る勢力の存在が確認された

現れた時期や目的…もしかしたら八木原と何か関連があるかもしれん

ゆっくり休んでなんていられない」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

CARDIEDカディド…聞いた事がありません

目的や正体について一切が不明瞭なのでしょうか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁ。わかっているのは奴らは黒いローブで姿を隠していること

人を殺すのに躊躇いのない集団であること

そして…人類にとって害となる存在であることだけだ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

突然、生徒会室の扉がノックされる。

中に入ったきたのは生徒会の証である白い制服を纏った夢野 天ゆめのそら であった。



夢野 天ゆめのそら

「失礼します

何かお話を?」



敷島 遥斗しきしまはると

「この話はお前も聞いていた方がいいな

そういえば…どうだ?城ヶ崎じょうがさき

そら はいい人材だろ?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「はい。とても優秀な方です

役員の中で事務作業もこなせる人材は少ないですから

直ぐにでも私の補佐に欲しいくらいです」



夢野 天ゆめのそら

城ヶ崎じょうがさき 君ほど早くはないけどね

それより生徒会長

修也しゅうや君が話しかけてきたりしましたか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「いや、接触すらしてこないな

今も監査として学園の巡回をしているのだろうが…

何をしているんだろうか」



夢野 天ゆめのそら

「そうですか…それと先ほどはどんな話を?」



敷島 遥斗しきしまはると

「今回の招集で議題となった謎の組織

CARDIEDカディドについてだ

その存在が人類を脅かす勢力になるやもしれん

引き続き政府が目を光らせているが…全く奴らの尻尾を掴めていないようだ」



夢野 天ゆめのそら

CARDIEDカディド…」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら が何か悩む素振りを見せたのを城ヶ崎じょうがさき は見逃さなかった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「何かご存じで?」



夢野 天ゆめのそら

「いえ、なんでもないわ」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前らは通常通りの業務をこなしてくれ

俺は俺でやれることをする

自らの役目を果たせ

城ヶ崎じょうがさき夢野ゆめの





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N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

その頃、神蔵 修也かぐらしゅうやは屋上から演習授業をしている生徒を観察し

先日襲撃してきた、虚無ノ御刀うつなしのみつるぎの所持者と同一の癖を持つ人間を探していた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「どこだ…?誰も似たような動きをしていない……

何者だったんだ?あいつは確かな実力を有する人間だ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは今日までの間に実力を確認していない生徒を頭に浮かべる。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「他の生徒会役員…まだ見ていない者が多い

あいつらの中で…優れた実力者…

敷島 遥斗しきしまはると ……

調べてみるか」





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N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

生徒会室にて敷島しきしまは会長席に静かに座していると

少しして、室内に神蔵 修也かぐらしゅうやが入ってきた。



敷島 遥斗しきしまはると

神蔵かぐらか」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はい。ただいま戻りました」



敷島 遥斗しきしまはると

神蔵かぐら…少し話いいか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥かまいません」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまはアタッシュケースを持つと、そのまま修也しゅうやを連れ人通りの少ない校舎裏へと移動していった。

そこで敷島しきしまは立ち止まり背を向けたまま修也しゅうやへと話しかける。



神蔵 修也かぐらしゅうや

(気づいているのか…?だが何故背を向ける…?)



敷島 遥斗しきしまはると

神蔵かぐら

前の事件について、何か隠している事があるんだろ?

詳しく話してくれないか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「会長に話した内容が全て真実でーーー」



敷島 遥斗しきしまはると (被せ)

「俺に嘘をつくのは良い判断だとは思えないぞ

この学園で一番の権力者を前に、虚偽の話をする事は処罰対象となる

わかっているな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………貴方が御刀みつるぎを?」



敷島 遥斗しきしまはると

「月ノつきのみやこ学園の生徒会役員にしか教えられない機密情報の一つだ

月ノ都つきのみやこ学園生徒会長となる者は虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを所有することになる

その者には初代会長から受け継がれるアタッシュケース内に御刀みつるぎを入れて、各々の判断で使用することができる

これがそのアタッシュケースだ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまはアタッシュケースの持ち手に端末を翳すとピピッと電子ロックが外れた音が鳴った。



敷島 遥斗しきしまはると

「この端末は初代会長の持っていた端末だ

これが無ければこのアタッシュケースは開かない

ロックがかかってる状態で何らかの強い力で無理やり空けようとすれば、ケース内の爆弾が起動する仕組みになっている。

その威力はこの学園の半分が吹き飛ぶほどのものだ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

アタッシュケースを地に落とすと刀を空にかざす。

表情は伺えないが、敷島しきしまの雰囲気が突如変化した事に修也しゅうやは気がついた。



敷島 遥斗しきしまはると

「お前の持つ刀‥‥それも見せてくれよ?

俺の刀とどちらが強いか…比べ合いをしないか?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

振り返った敷島しきしまの目は暗く、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

そして刀を振りかぶり、そのまま修也しゅうやへと斬りかかる。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ修也しゅうや御影ノ邪刀みかげのやつるぎの刀身を当てて、弾き返す。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前…誰だ?敷島 遥斗しきしまはるとなのか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「おやおや?察しがいいね?

オレは敷島 遥斗しきしまはると が己の中に抱える劣等感から生み出された別人格だ

前にお前と戦ったときはオレの意識はまだ虚ろだったが

今ではこんなにはっきりしている…オレは存在している」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前も俺を待ってたみたいだな」



敷島 遥斗しきしまはると

「待ってたぜ…その邪刀やつるぎを奪うためにず~っと待ちわびてたぜ

恋焦がれたような気分だった…な?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「気が合うようだな

俺もお前の刀が欲しかった」



敷島 遥斗しきしまはると

「相思相愛だったかオレら?

じゃあプレゼント交換会といこうぜ

いや、違うか?盗り合うわけだから、強奪会だったなぁ!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしま虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを構える。



敷島 遥斗しきしまはると

「この前とは違う、今度こそ…使えるぜ」

影斬かげきり



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまの刀身にゆらゆらと煙のようなものが立ち込める。

その黒い煙は薄暗く、まるで御刀みつるぎに宿る影のようであった。



敷島 遥斗しきしまはると

「よっと!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまが刀を振ると、その影は斬撃の形のまま飛翔ひしょう修也しゅうやへと迫った。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なにっ!?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

まるで可視化された鎌鼬かまいたちのように飛ばされた刃の影が修也しゅうやへと迫ってきたが、それを修也しゅうや邪刀やつるぎで弾く。

その影は近くの校舎へと当たり、その校舎の壁が斬撃によって斬られ、風穴が空いた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんて威力だ…」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島はそのまま修也しゅうやへと斬りかかる。

二人の斬撃はお互いに当たる事なく、斬り合いを繰り返していた。



敷島 遥斗しきしまはると

「やるねぇっ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そりゃどうも」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

先に動いたのは修也しゅうやだった。刀を構えたまま技名をそっと呟く。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天幻象まてんげんしょう



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまはその場に立ち止まった修也しゅうやへと斬撃を浴びせたが、まるで元からそこにいなかったかの様に刀がすり抜けてしまった。



敷島 遥斗しきしまはると

「なにっ?確かに斬った‥‥はずだぜ?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

気がつくと、目の前から修也しゅうやの姿が消えていた。

驚きながら辺りを注視する敷島しきしまの頭上から声が聞こえてきた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「残念だったな

俺はそこには居ないぞ」



敷島 遥斗しきしまはると

「あ!?どういう…?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

声がした方に視線を向けると、先ほど風穴が空いた校舎の三階から修也しゅうやが見下ろしていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「いつの間にっ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「来いよ…こっちの方が人目につかないぜ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

校舎の奥へと修也しゅうやは歩いていく。

敷島しきしまはパルクールのように校舎の出っ張りを掴みながら飛び上がり、校舎内へと入った。



敷島 遥斗しきしまはると

「どこだ…?隠れてないで出て来いよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「焦るなよ…もっとゆっくり戦おうぜ」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまの眼先には三つの扉があり、全て扉が閉まっていた。

どこかに潜んでいる事を予想し、扉の前に立ち斬り倒す。

そうして中を確認した後、二つ目の扉の前に立った。



敷島 遥斗しきしまはると

「オレはかくれんぼって嫌いなんだよな?

なんでかって?ウズウズするからだ

見つかった時の焦った顔‥‥‥早くそれが見たくてな

だから焦らすことなくさっさと見つけたくなる

わかるか?こういう事だよ!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまは扉を斬る動作をしながら真後ろへとターンし、何もない空間へと御刀みつるぎを振り下ろした。

するとガキンと金属同士がぶつかりあう音が響く。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに…!?なぜわかった?」



敷島 遥斗しきしまはると

「理由は簡単だ

お前の殺気を感じ取ったんだよ

わかりにくく隠してやがるな?

摩天幻象まてんげんしょう…その技

気配をその場に残して自らは好きに動けるのか

視覚頼りで戦う者には効果がないが

五感を駆使する敵の混乱を招く技

感覚全てを注視していたら気がつかない…

すげぇなその技」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまがそのまま力を上げていくと修也しゅうやは焦りの顔を浮かべた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「強い…なんだこの力!?」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは後方へと飛び下がる。そして再び刀を構えた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「まだまだ技があるんだ

色々見せてやるよ」

摩天躁突まてんそうとつ



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは刀をまるでレイピアのように刃先を突き出して構え直す。

そして足を強く大きく踏み出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁっ!!」



敷島 遥斗しきしまはると

「ちっ!うらっ!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやの突き攻撃を弾いたが

その後、連続で繰り出された突きにより体勢を崩され、間髪入れずに放たれた一撃を受け、敷島しきしまは肩を貫かれた。



敷島 遥斗しきしまはると

「ぐっ!!痛ってぇ…でも

戦ってる感じがするな

酔いしいれそうだなこの感覚っ!!」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまがそのまま見た事のない構えを取った。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なにっ!?」

摩天幻象まてんげんしょう



敷島 遥斗しきしまはると(被せ)

夜陰やいん



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしまが放った二発の斬撃は摩天幻象まてんげんしょうを使った修也しゅうやの片目をかすめ取った。

辺りに血が飛び散る。



敷島 遥斗しきしまはると

「あ…?いいねぇ~こりゃ強い技だ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐっ…!!うぁあっ‥‥」



N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

よろめきながら修也しゅうやは片目を手で押さえた。



敷島 遥斗しきしまはると

「…当たったねぇ?そろそろ決着?つけようか」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ…!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




N→敷島 遥斗しきしまはると

その頃、そら は授業を終え、生徒会棟へと向かい歩いていた。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君を説得して…どうするつもりだったんだろう

ただ私はそれしか考えてなかった

何も見えてなかったのね

馬鹿ね…私

まだ全然見えてなかったわね」



N→敷島 遥斗しきしまはると

頬を両手で叩き、再び目を開く。

その瞳には決意が籠っていた。



夢野 天ゆめのそら

「まずは話を聞いてみない事には始まらないわね

それに約束したから…ちゃんと想いを伝えるって」



畠中 祈里はたなかいのり (被せ)

「わあ!!」



夢野 天ゆめのそら

「きゃあっ!!なになに…!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

その時、後ろから急に大声が聞こえた。

そら は驚きのあまり身体ごと飛び上がる。



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃんて嬉しい反応!

驚かし甲斐があって楽しいにゃあ」



夢野 天ゆめのそら

「貴女…は?」



畠中 祈里はたなかいのり

「私は…畠中 祈里はたなかいのり だにゃ

貴女は夢野 天ゆめのそら ちゃんだったかにゃあ?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

畠中はたなか と名乗った低身長の少女はまるで猫のように辺りをぐるぐると回りながらすり寄るように見渡していた。



夢野 天ゆめのそら

「私を知ってるの?」



畠中 祈里はたなかいのり

「逆に知らにゃい人にゃんて〜いにゃい気がするにゃあ~?

生徒会に突如入った美男子とマドンナ!

ってでっかく学園ニュースで見たのにゃあ~」



夢野 天ゆめのそら

「急にびっくりさせるなんてやめてよね!」



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃははは

それより普段のそら ちゃんの話し方…

あれは素にゃの?」



夢野 天ゆめのそら

「えっ?どういうこと?」



畠中 祈里はたなかいのり

「前に生徒ニュースでインタビュー受けてた時

なんかいかにもなお姉さんって感じの雰囲気があったのにゃ

でも今は可愛い少女って感じだにゃ~?って」



夢野 天ゆめのそら

「えっと‥‥‥うーん?

癖…なのかな?

今は違うんだけど昔一緒に住んでた双子の姉がいるの

でもお姉ちゃんは全然家事とかできなくてさ

私がやってて…なんかしっかりしないと!って意識してて

それが残ってるのかも」



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃるほどねぇ~」



N→敷島 遥斗しきしまはると

畠中はたなか は笑みを崩し立ち止まると、真剣な顔をした。



畠中 祈里はたなかいのり

「肩の力抜かないと疲れちゃうよ」



夢野 天ゆめのそら

「え?」



畠中 祈里はたなかいのり

「たまには自然体でいるのも大事だにゃ~って言いたいだけにゃあ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

またもや口元に笑みを浮かべて、再び辺りを回り始めた。



夢野 天ゆめのそら

「…そうかな?」



畠中 祈里はたなかいのり

「そうにゃ~…にゃっ!?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

突如として畠中はたなか が声をあげた。

そら畠中はたなか の視線の先を見るとそこには、以前情報をくれた二宮達也が何かを探していた。



夢野 天ゆめのそら

「そういえば畠中はたなか …って二宮君が言ってたー」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら が振り返るとそこに畠中はたなか の姿はなかった。



夢野 天ゆめのそら

「あ、あれ?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら の近くへと歩いてきた二宮は目のまえで立ち止まると一礼をして去っていった。



夢野 天ゆめのそら

「あの子…なんだったの?

·····自然体か」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら が考え事をしていると、端末に着信がかかってきた。



夢野 天ゆめのそら

「もしもしー」



城ヶ崎 健じょうがさきたける (被せ)

夢野ゆめの さんですか?

会長が生徒会室にいないんです

神蔵かぐら君も消息がわかりません

もしかしたら…」



夢野 天ゆめのそら

「まさか!?私も探してみる!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お願いします

私も他の役員を招集し、事態の説明したのち捜索を始めます」



夢野 天ゆめのそら

「わかったわ!」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「もしも、妖刀を相手するのならば

まずは情報を探ってください

不用意に相対すれば不利になるのはこちら側です」



夢野 天ゆめのそら

「え?でも!……いえ、そうするわ!」



N→敷島 遥斗しきしまはると

通話を切るとそら は走り出した。



夢野 天ゆめのそら

(修也しゅうや君!どこにいるの!!)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




N→畠中 祈里はたなかいのり

校舎内で息を潜めながら修也しゅうやは片目を押さえていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

(くそっ…なんだあの技

太刀筋が視えなかった‥‥‥

摩天幻象まてんげんしょうの残像を見せる技を応用した…!?)



敷島 遥斗しきしまはると

「どこだー?神蔵かぐら

この中かーい?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやの隠れていた科学作業室へと敷島しきしまが入ってきた。

そこは科学作業の授業を行うための大きな机がいくつもあり

立ち上がらない限りは机の影によって死角となっている。



神蔵 修也かぐらしゅうや

(摩天楼まてんろうは…命中が難しい技だ

片目が見えないまま発動しても

…当てられるかわからない

ならば‥‥他の技か)



N→畠中 祈里はたなかいのり

奥に隠れた修也しゅうやにジリジリと敷島しきしまが迫っていた。

後がない修也しゅうや敷島しきしまの目の前にばっと飛び出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天斬まてんざん!』



敷島 遥斗しきしまはると

「みーつけた!」

影斬かげきり!!』



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやは横から摩天斬まてんざんを浴びせる。

しかしその一撃は軽く弾かれ、影が修也しゅうやを弾き飛ばした。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「うぐっ!?…がはっ!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

吹き飛ばされ、壁に背中を打ち付けられた修也しゅうやは咳き込んだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ゴホゴホッ…」



敷島 遥斗しきしまはると

「片目を潰したからな~?思った通りに身体が動かないんじゃないの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…どうだかな

こんなのすぐに慣れるさ」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうかいっ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐっ!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまは フラフラと立ち上がった修也しゅうやへと蹴りを浴びせた。

修也しゅうやは力なく吹き飛ばされ、そのままの勢いで廊下へと飛ばされてしまう。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「うぅ…くそっ

力が出ない‥‥なぜだ!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「教えてやろうか?

虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを食らったものは生気を一気に奪われる

弱い人間なら一撃でもかすめただけで死に至る程だが‥‥

力が抜けるくらいで済んでるのはお前が相当な手練れであるのを物語ってるな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なるほどな‥‥そんな力が」



敷島 遥斗しきしまはると

「そのポーカーフェイスがいつまで持つか気になる?なぁっ!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

立ち上がろうと脚に力を入れた修也しゅうやに近寄ると

その脚に蹴りを入れた。

再び膝をついた修也しゅうやは痛みに悶える。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐっ!!?がぁあ!!」



敷島 遥斗しきしまはると

「痛いだろぉ?そりゃそうだ!

思い切り蹴ってるんだからなぁ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天…幻象まてんげんしょう



敷島 遥斗しきしまはると

「いつまでも通用するわけねぇだろ!!?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまは目の前の修也しゅうやの残像のさらに奥へと踏み込み回し蹴りを放つ。

修也しゅうやは蹴りをまともに受け、窓を割りながら落下していった。



敷島 遥斗しきしまはると

「あれ?落ちちゃったなぁ!?大丈夫かー!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまは割れた窓に向かって体当たりをするように飛び上がる。

そして地面に向かって膝蹴りの体制を取りながら降りていく。

地面に衝突する直前に修也しゅうやが視界に現れた。



敷島 遥斗しきしまはると

「あーーらよっと!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ごはっ!!!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

腹部に三階から勢いよく放たれた膝蹴りを食らった修也しゅうやは血を吐き出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「摩天…幻‥‥象が‥‥‥‥通じない!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁ~オレはな

まだ不完全なままなのか

色覚に異常があってな

世界が白黒にしか見えてないんだ

ただ代わりに普段見えないものが見えやすいんだよな

例えば視線の向きだったり

その強弱だったり

それを辿ってお前の意識を判別したんだ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「クソがっ……」



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまは地にもがいていた修也しゅうやの腹を思い切り足で踏みつけた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「があぁあぁぁっ…」



敷島 遥斗しきしまはると

「さぁて?そろそろトドメ?刺そうかなぁ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「くっ…そ!!」




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N→畠中 祈里はたなかいのり

その頃、そら は一つ一つ急ぎ足で校舎を確認していた。

目撃情報がない事を視野にいれ

やがて、特別授業が行われる以外で普段使われない校舎へとたどり着いた。



夢野 天ゆめのそら

「ここ…かな」



N→畠中 祈里はたなかいのり

校舎に入ろうとすると校舎裏から窓が割れる音が響くと

すぐに何かドスッと重いものが落ちる音がした。



夢野 天ゆめのそら

「まさか…!?戦って?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら は急いで校舎裏へと向かい、物陰に隠れて様子を伺った。

そこには背を向けていて正体がわからない男子生徒が修也しゅうやを踏みつけていた。

その男子生徒は白い制服を着ており、その姿がそらの目に映った。



夢野 天ゆめのそら

「修也君と……あれは会長?」



敷島 遥斗しきしまはると

「死ね‥‥神蔵かぐら



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ふざけんなっ!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

その瞬間勢いよく敷島しきしまが吹き飛ばされた。



敷島 遥斗しきしまはると

「っつ!!?何しやがった?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

ゆっくりと修也しゅうやは立ち上がった。



敷島 遥斗しきしまはると

「なんかまだ…隠してるな?

どうでもいい!殺してやるよぉ!!」



夢野 天ゆめのそら

「あれが…生徒会長!?

違うっ!あれは誰!!?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしま は刀を構えた。



敷島 遥斗しきしまはると

虚侵影きょしんえい!!!』



神蔵 修也かぐらしゅうや

「があああああっ!!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやへと強烈な斬撃が繰り出された。

修也しゅうやは咄嗟に攻撃を邪刀やつるぎで防いでいたがその衝撃波により

かなりの勢いで校舎の壁へと叩きつけられる。



夢野 天ゆめのそら

「妖刀…なんなの今の力!

あれが本当の力…!?

どうすれば‥‥」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら の脳裏に修也しゅうやの言葉がよぎった。




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夢野 天ゆめのそら

「なんですぐに助けにこなかったの!

先に向かった貴方の方が到着は早かったはず!

どうして見てたの…!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………あの刀の詳細が不明瞭すぎた。

不意を突いた一撃の際

奴の反撃で返された時も先に刀の力を見ていて警戒していたから

その後の追撃を受けなかった。

もし無知であったのならそのまま、まともに受けて斬られていたのは俺だった」






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夢野 天ゆめのそら

「…そうだ。妖刀の情報がないんだ」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら の脳裏に敷島しきしまの言葉がよぎった。




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敷島 遥斗しきしまはると

「この刀は代々この学園の生徒会長が所持を許される虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ

人智を超えた力を持つこの刀は才能を有する者に更なる力を与える」






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夢野 天ゆめのそら

「そうよ‥‥私の理解を超えている刀

危険‥‥よね」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら の脳裏に城ヶ崎じょうがさき の言葉がよぎった。




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城ヶ崎 健じょうがさきたける

「もしも、妖刀を相手するのならば

まずは情報を探ってください

不用意に相対するのならば不利になるのはこちら側です」






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夢野 天ゆめのそら

「わかってる…まともに戦ったら負けてしまう」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら の脳裏に二人の姿がよぎった。



夢野 天ゆめのそら

「そうだよ……二人は情報を見るために見捨てられた

私も今…同じことをしている

もし‥‥定介じょうすけくんと月夜つくよちゃんが私の立場なら

多分、迷わないで助けにいく」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら は目を閉じる。

そら の脳裏に二人の言葉がよぎった。





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城ヶ崎 健じょうがさきたける  → 岩城 定介いわきじょうすけ

畠中 祈里はたなかいのり  → 南雲 月夜なぐもつくよ






南雲 月夜なぐもつくよ

「先輩ならできますよ」



岩城 定介いわきじょうすけ

そら ちゃん!自分を信じるっす!!」






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N→畠中 祈里はたなかいのり

二人に背中を押されたかのようにそら は走り出した。



敷島 遥斗しきしまはると

「食らえ!!」

影斬かげきり!!』



N→畠中 祈里はたなかいのり

ガキンと大きな金属音が響く。

修也しゅうやに振り下ろされた刀を押さえる様にそら が刀で受け止めていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁ?お前は…夢野?

なぜここにぃ?」



夢野 天ゆめのそら

「なぜって‥‥修也しゅうや君を守るためよ

貴方…会長じゃないわね

誰なの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「オレは…こいつの二つ目の人格だ

こいつの劣等感や不安、そんな暗い感情が生み出した人格だ

人はそれを解離性同一性障害かいりせいどういつせいしょうがいと呼ぶのか?」



夢野 天ゆめのそら

「じゃあ‥‥本来の会長はどうなったの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「眠ったままだ

きっかけは会議の時だ

学園を守れず、色々言われてねぇその重責に耐えられず

オレが出てきてしまったぁってわけ?」



夢野 天ゆめのそら

「…そう

なら貴方は、なんのために今戦ってるの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「もう一つの妖刀が欲しくなった

それとオレを知っちまったお前らを殺すだけだ

生徒会に二人が忍び込み、オレを殺そうと画策し

八木原の情報を偽って伝えて…?オレを騙そうとしたってのでどうだ?

生徒会長がこれを言えば嘘でも真実になっちまう」



夢野 天ゆめのそら

「そんなのが通るわけーーー」



敷島 遥斗しきしまはると

「それが通っちまうんだなあぁ!

なんせオレは生徒会長だっ!

ここではオレの発言の一つ一つが絶対なんだよ!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまは刀を弾いて少し後ろに下がった。

そら敷島しきしまから目を離さずに修也しゅうやへと話しかける。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君、大丈夫?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら ‥‥‥‥なぜ?」



夢野 天ゆめのそら

「話は後よ

今は逃げなさい」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやはそれを聞くと立ち上がり

ヨロヨロと覚束ない足取りで離れていった。



敷島 遥斗しきしまはると

「おい?逃げるのかあぁ!?」



夢野 天ゆめのそら

「貴方の相手は私よ」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら を凝視する敷島しきしま。睨みながら敷島しきしまへと刀を向けるそら

敷島しきしまは首をゴキゴキと慣らし、舌打ちをすると深いため息をつく。



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁあ~~~まぁいいや

お前を殺して追いかけても間に合うだろ?」



夢野 天ゆめのそら

「そうはさせないわ」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら は戦う覚悟を決めた。



敷島 遥斗しきしまはると

「オレを倒せるってかぁ?アァン!!?」



夢野 天ゆめのそら

「来なさい…」



敷島 遥斗しきしまはると

「その態度…うざってぇなああああ!

望み通りあっさりと殺してやるよ?」

影斬かげきり!!!』



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら に放たれた斬撃の影は一太刀で軽く弾かれる。

否、かき消されたのだ。

弾くように刀で斬り落とされた影はそのまま消滅していった。



敷島 遥斗しきしまはると

「あぁ?…どうなってんだ?

これは…どういうことだああぁぁぁ!!?」

影斬かげきり!!』



N→畠中 祈里はたなかいのり

再び三連続で放たれた影は全てそら を斬る事なく、かき消されていった。



敷島 遥斗しきしまはると

「どうなってんだ?てめぇのその刀…?妖刀か?」



夢野 天ゆめのそら

「違うわ

これは私のお父さんが使ってた刀

名は碧青刀へきせいとう

私の使う流派は華照流かしょうりゅう

一刀に込めた力は太陽が如く闇を払う!

思い出したわ。これが私の力の正体よ」



敷島 遥斗しきしまはると

華照流かしょうりゅう?聞いた事ないなぁ?

だがよ?それがどうだってんだああぁぁっ!

ただの刀とわけわかんねぇ流派如きが

妖刀に勝てるわけねぇーんだよ!!

これでてめぇをぶち殺してやるぜ!!?」

虚侵影きょしんえい



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまが横一閃に思い切り、振り払う。

その刀は影をまとっていく。

その影は今までの影斬かげきりや先の虚侵影きょしんえいの量を遥かに超えていた。



敷島 遥斗しきしまはると

「おおおおお!?ここまで力が出るとは…!

たぎるこの感情に乗ったかぁ!?

くらいなぁあああ!

おらあああああああ!!!」



夢野 天ゆめのそら

白夜びゃくや!!』



N→畠中 祈里はたなかいのり

敷島しきしまが放った虚侵影きょしんえいはいとも簡単にそら の斬撃によりかき消された。



敷島 遥斗しきしまはると

「なんだと…ここまでの力を以てしても貴様が上だと!?」



夢野 天ゆめのそら

「甘かったわね」

日衣ひごろも



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら碧青刀へきせいとうを手で撫でたのち、一閃。

敷島しきしまに振り下ろされた。

その高速の一撃は帯電していた静電気を刀身に宿すと、敷島しきしまへと流れていく。



敷島 遥斗しきしまはると

「ぐがあああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

刀を下ろし、地に膝をつけた敷島しきしまは斬られた箇所から血を噴き出した。



敷島 遥斗しきしまはると

「ふ、ふざけ…んじゃねぇ!!

やられてたまるか…よお!!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら は再び刀を構えるも、そこに敷島しきしまの姿はなかった。



夢野 天ゆめのそら

「…逃げた?修也しゅうや君を追ったわけじゃなさそうね

修也しゅうや君はどこ…?それともあいつを追う…?

いや、会長は城ヶ崎じょうがさき 君に任せましょう」



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城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長‥‥一体どこへ?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

城ヶ崎じょうがさき敷島しきしまを探しに各校舎を回っていた。



畠中 祈里はたなかいのり

「おやおや~?生徒会副会長さんじゃにゃいですか~」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

突如、真上から声がした。視線を上げると、木の上に一人の女子生徒が昇っていた。

ぴょんと城ヶ崎じょうがさきの前に飛び降りてきた。



畠中 祈里はたなかいのり

「会長さんをお探しにゃの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

畠中 祈里はたなかいのり………どうしてそれを?」



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃんと!?私の名前も知ってるにゃ~んて」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「月ノ都学園在学生の名前は全て把握しています

それより、なぜその情報を?

まだ生徒会内でしか知られていないはずですが?」



畠中 祈里はたなかいのり

「ん~~?それは内緒

でも、会長の場所なら教えてあげれるよ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「‥‥情報料はいかほどがお望みですか?

金銭でしたらポイントでお支払い致します」



畠中 祈里はたなかいのり

「そんにゃのいらにゃ~~い

それより、聞きたいことがあるにゃ~」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「何なりとご質問ください」



畠中 祈里はたなかいのり

「会長がもし学園にとってマナー違反な事したらどうするの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「どういう意味でしょうか?」



畠中 祈里はたなかいのり

「貴方にとってどっちが大事にゃのかな~って

自分の恩師ともいえる存在が大事にゃのか

学園の規律が大事にゃのか」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「愚問ですね

学園の規律こそ第一

その為ならば私は会長であろうとも斬ります」



畠中 祈里はたなかいのり

「にゃははは

すごい覚悟だこと

貴方の学園への忠節はにゃにから来てるの?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それが私がここに居る理由。それだけの事です」



畠中 祈里はたなかいのり

「ふ~ん。まぁいいや

早くいかにゃいと~」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「失礼します」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

城ヶ崎じょうがさきはそのまま急ぎ足で去っていった。

畠中はたなかは携帯端末を取り出し、電話をかける。



畠中 祈里はたなかいのり

「もしもし~達也たつや。言われた通りやったよ~

にゃんだか、面白くにゃりそ~ね」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは刀を手離さぬまま逃げていた。

ただひたすらにその場から離れていく。



敷島 遥斗しきしまはると

「なんだってんだ…?あの野郎!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

目の前に一人の生徒が立ちふさがる。

それは生徒会副会長 城ヶ崎じょうがさき であった。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長…?その傷は?」



敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさき ‥‥?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは突如、城ヶ崎じょうがさき へと斬りかかった。

御刀みつるぎ城ヶ崎じょうがさき は所持していた太刀で防いだ。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長っ!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「きさまがぁ!?城ヶ崎じょうがさき …!?

ハハハハハ。お前が、居なきゃよかった

オレは…おれは…俺は…!

惨めな思いをすることもなかったあぁつ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島は御刀みつるぎを構えた。

城ヶ崎じょうがさき は驚きの表情を浮かべるもゆっくりと構え返す。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長‥‥そこまで行ってしまわれたのですね」



敷島 遥斗しきしまはると

影斬かげきり!!!』



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

城ヶ崎じょうがさき は飛来した影を避けると、静かに敷島しきしまを見つめた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「生徒…への無意味な攻撃活動‥‥

会長としてあるまじき行為です

約束通り私が止めさせていただきます」

明鏡止水めいきょうしすい



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

防御の構えを取った城ヶ崎じょうがさき へと敷島しきしまは斬りかかる。



敷島 遥斗しきしまはると

「ふざけんじゃねええええ!!」

虚侵影きょしんえい!!!』



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「っ…会長!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

虚侵影きょしんえいが放たれるよりも早く、一閃。

城ヶ崎じょうがさき の一撃が敷島しきしまを切り裂いた。



敷島 遥斗しきしまはると

「がああぁっ…!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまは刀を落とし、その場に倒れる。

城ヶ崎じょうがさき はすぐに敷島しきしまへと駆け寄った。



敷島 遥斗しきしまはると

「ぐ‥‥がはっ‥‥

随分と、容赦…ねぇじゃねぇか

城ヶ崎じょうがさき ‥‥‥‥」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長…」



敷島 遥斗しきしまはると

「…ハハ

お前に実力も劣ってるとは…どこまでも‥‥妬ましいやつだ

そういう所が…俺を抉るんだよ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「私に対するその想い

八木原やぎはらと似ていますね。妬みが憎悪へと変わる」



敷島 遥斗しきしまはると

「………お前さえ居なければ自分をここまで卑下する事もなかった」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長…………

敷島 遥斗しきしまはると

貴方を現時刻を持ちまして、生徒資格を剥奪し

重犯罪者と判定

警察へと身柄を引き渡します」



敷島 遥斗しきしまはると

「…あぁ。異論はない

さっさとやってくれ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「‥‥‥会長

今までありがとうございました」



敷島 遥斗しきしまはると

「……………礼を言われる覚えはない」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

少しして駆けつけた他生徒会役員が警察へと連絡を入れた。

それから、一時間も経たぬうちに、武装した警察隊が敷島しきしまを連行していった。

その姿を生徒会役員一同は誰も言葉を発することもなく

ただ静かに立ち尽くしながら、呆然と眺めていた。






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N→畠中 祈里はたなかいのり

その頃、修也しゅうやは校舎内へと逃げ込んでいた。

屋上に続く階段の途中で座りながら片目を押さえている。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っつ‥‥そら

なぜ…?

俺は…あいつらを見捨てたんだ

なぜだ…なぜ俺を助けた‥‥‥?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやはあの事件の時を思い出していた。




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敷島 遥斗しきしまはると  → 黒ローブの男





神蔵 修也かぐらしゅうや

「様子が変だ…誰もこっちに来る気配がない」



夢野 天ゆめのそら

「どうしたの修也しゅうや君?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「嫌な予感がする…声の数が少なくなってる」




N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやは突如走り出した。

その視界の端に黒いローブを着た不審な男を捉える。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんだ…あいつ?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやはその黒いローブを追いかける。

途中で見失ったかと思ったその時

黒いローブの男が桜の木の陰に隠れたまま話しかけてきた。



黒ローブの男

「お前は‥‥‥‥の者か?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「何者だ?それをどこで知った?」



黒ローブの男

「我らが頭領とうりょう‥‥JOKERは全てを知っている

お前の‥‥目的も、過去も全て」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんだと…?」



黒ローブの男

「我らはCARDIEDカディド

この世に終幕を齎すもたらす一枚だ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

CARDIEDカディド

ちっ…お前らに構っている暇などない」



黒ローブの男

「今…起きているのは八木原やぎはら…という者が起こしたショーだ

他の人間を抹殺する余興…

我らに…入るための‥‥条件」



神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはらが…?どういうことだ?」



黒ローブの男

「お前も知っているだろう?

妖刀の…存在……

奴は所有者」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんだと…?」



黒ローブの男

「お前…奴に代わって‥‥

妖刀‥‥手に入れ‥‥

こちら側に来い‥‥

貴様の目的は…我らが野望と道を共にしている」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「何の話だ?説明しろ!!」



黒ローブの男

「あわてるな…まずは

八木原やぎはらを殺し、妖刀を奪え」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そう言い残し、いきなり黒ローブの男の気配が消えてしまう。

急いで桜の裏側に回ったが、そこに男の姿はなくなっていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんだ…?っ!急がないと!」



N→畠中 祈里はたなかいのり

神蔵 修也かぐらしゅうやが辿り着いた時、

八木原やぎはら定介じょうすけ月夜つくよ邪刀やつるぎを突き刺し

二人はまるで灰のように散りぢりに消滅していった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あれは…妖刀!?あの男の言ってた通りあいつが持っていたのか!

クソっ…間に合わなかった

そら …!」

摩天幻象まてんげんしょう



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうや八木原やぎはらの後ろに回って刀を突き刺した。

そして妖刀を奪うと、腕を失った八木原やぎはらへと刃先を向ける。




神蔵 修也かぐらしゅうや

「強者にはそんな権利があるのか

つまり貴様を断罪する権利は俺が持っているということになるな

ならば言葉通り貴様の生死は俺が決めよう」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうや邪刀やつるぎを八木原に突き刺した。

その修也しゅうやに向け、そら が叫んだ。



夢野 天ゆめのそら

「なんですぐに助けにこなかったの!

先に向かった貴方の方が到着は早かったはず!

どうして見てたの…!?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやの心にその言葉が突き刺さった。

しかし彼は真実を胸に秘めてしまう。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それはお前には関係ない…」



N→畠中 祈里はたなかいのり

これ以上、そら を巻き込むわけにはいかなかった

この先に来てはいけなかった

既に幾つもの命を奪ってきた

やり直せるのならばやり直したい

しかし、そう口にしてはいけない

そんな事を言っても仕方ない

罪を嘆くのは逃げ道だ

自らの過ちから目を逸らす

その逃避行は罪を背負う彼には通る事の許されない道であった



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥‥‥‥‥たとえ

どれだけの犠牲を払っても‥‥

それは…俺のしてきた事だ

数え切れないほど花びらを散らせた…

その上に俺は立っている……

目を背けるつもりは…ない‥‥

そのはずだろ…」



N→畠中 祈里はたなかいのり

階段を駆け上がる足音が聞こえてくる。

身構えた修也しゅうやの目の前には夢野 天ゆめのそら が心配そうな顔で現れた。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…!大丈夫!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら …なぜ?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そら はハンカチを修也しゅうやへと無理やり手渡した。



夢野 天ゆめのそら

「目を斬られたの?

今から医療室に行かないと!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

そら !なぜだ!!俺を何で助けた!!?

俺は定介じょうすけ月夜つくよを見捨てたんだ…

それなのにっ!」



夢野 天ゆめのそら

「…えぇそうかもしれない

でも貴方は私を救ってくれた

今はその借りを返しているつもりよ」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやには返す言葉がなかった。

後悔や疑念といった感情が混ざり合い、その行き場もないまま俯く。

そらはそんな修也しゅうやの横に座り、自身の肩に頭を乗せるように抱えた。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…貴方は私に関係ないって言ったけど

私は貴方を友達だと思ってたわ

それでも関係ない?友達だから助けたい

そう思うのは変かな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………いや」



夢野 天ゆめのそら

「貴方が何を抱えてるのかわからない

だけど、もし私を友達だと思ってくれてるなら

いつか話してほしい

頼りないかもしれないけど

私は修也しゅうや君を助けたい」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君。私ね

今までずっとしっかりしないとって

ずっと無理してた

だからかもしれない

今自分がやりたい事とか

全部後回しにしてて‥‥

何がしたいかわかってなかった」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥‥」



夢野 天ゆめのそら

「多分ね。友達が欲しかったんだと思う

それで信じて欲しかった。

誰かの傍に居たかったんだと思う

一人って誰でも寂しいもの…

私だってそう

でも、二人なら寂しさを分け合えると思うの

修也しゅうや君…貴方を一人にしたくない

私じゃ力にならないかな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「‥‥もう遅いんだよ

もう俺に関わらないでくれ」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやはゆっくりと立ち上がり、階段を下っていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…立ち止まることはできない」



N→畠中 祈里はたなかいのり

修也しゅうやはそのまま階段を下っていった。

そら は去っていく修也しゅうやの背中を見続けた。

差し伸べた手は払われたのだ。

彼に拒絶された後、自らの不甲斐なさを憎むように握りしめたハンカチには緑色の血がこびり付いていた。



夢野 天ゆめのそら

「今も修也しゅうや君は戦っているんだ

なにと…?一体、修也しゅうや君に何があったの?」



N→畠中 祈里はたなかいのり

そして次の日、神蔵 修也かぐらしゅうやは学園から姿を消してしまう。

生徒会長が不在の間、副会長が代理でその任を担当する事となった。

そしてその後行われた会長選挙の末、城ヶ崎 健じょうがさきたける が正式に会長に就任することとなる。



N→畠中 祈里はたなかいのり

それから半年以上、時が過ぎた頃

夢野 天ゆめのそらVHAブイエイチエーから特例兵員として抜擢された。

VHAブイエイチエーの兵員になる資格は本来、18歳以上尚且つ、学園卒業の人材と決まっているが

若くして学園のカリキュラムを超えた実力を所有し

それを自在に扱える者は特例で、年齢を問わず

国の認可が下りた場合、兵員となる事ができるのである。

夢野 天ゆめのそら はもう一人の特例兵員と二人組の班を担当することとなった。

その特例兵員の名前を聞き、夢野 天ゆめのそらは驚きの声をあげる。



神蔵 蓮太郎かぐられんたろう

VHAブイエイチエー特例認可兵員

年齢:16

階級:三等兵員

所属班:現在設立申請中




次回

終編 桜ヲ枯ラス呪イ

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裏設定


敷島しきしまの裏人格の言葉全てはたどたどしく疑問形になっている

夢野 天ゆめのそら には双子の姉、夢野 彩ゆめのいろという存在が学園にいます。

 しかし二人が触れる事も、話す事もないため

 生徒内で口にしてはならない学園内の謎になっている

・妖刀は持ち主によって力を変える。

畠中はたなか の猫口調は小さい頃、家の周りにいた野良猫とじゃれあっていたら猫の特徴や仕草、猫口調が移ってしまった。



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この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

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多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


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