中編 桜ノ蕾ニ隠シテ
16歳
学園ではひっそりと人気な女子生徒
かつての仲間を失い、意気消沈している。
16歳
白髪、黄色の目をしている美少年の男子生徒
過去に何かがあったらしいが詳細は誰にも明かさない
16歳
生徒会に属する男子生徒、その実力は生徒会内でも頭一つ飛び抜けている
15歳
学園内の情報を制する男子生徒、不自然な敬語を使う。裏表がありそうで…?
17歳
現在の生徒会長。会長として歴代と比べ優れており、かなりの切れ者である
※途中兼任が追加されます
17歳
不思議な雰囲気を醸し出す女子生徒。
Nは→後のキャラ演者が読む
※キャラ設定一覧
同好会と称した罠を貼り、生徒を惨殺した男子生徒。
~っすといった特徴的な語尾の男子生徒
自由気ままな女子生徒
役表
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血桜ハ還リ咲ク 零章
「桜ノ蕾ニ隠シテ」
N→
桜が散る前の鮮やかな日々
今は透き通り消えていったあの頃の情景
まだ笑顔が溢れていた・・・・・幸せな一時
悲劇の記憶が頭に残ったまま
地を見下ろす少女の目は決意に染まる。
「
あの悲しい目、まるで泣いているのを隠しているみたいだった
でも、私は
私はどうすればいいの」
N→
あの惨劇から1週間後、現在は空き部屋となった元同好会の教室に
部屋の中には仲間の名残はなく、今は机と椅子だけが残されたまま放置されている。
「駄目ね…まだ立ち直れてないや
私って弱いな」
N→
この
その迎えに出向いた生徒会員数人が歩いていた。その中には生徒会の一員となった
遠くからでも見えるその目はかつての瞳と同じで冷たく、暗く、そして寂しげな色をしていた。
「………でも知りたい
どうしてみんなが犠牲にならなきゃいけなかったのか……
あの刀、
あれを
なんであの刀を探していたの…?
N→
顔を手で叩き再び目を開いた。
「こんなところで立ち止まっていられない
皆の犠牲を有耶無耶なままにしちゃいけない」
N→
次にここに戻る時は
そう決意を胸にしまい、歩みを進めた。
N→
その頃、生徒会室へ入った
ほとんどの生徒会役員はそのまま室内から立ち去っていく。
室内中央にある会議席には
そして重々しい空気が流れた後、会議が始まる。
「先日起きた事件…
残酷で悲しい事件の真相について
生徒会副会長代理を筆頭に監査を動員して調査させているが…
俺は帰ったばかりで話を正しく掴めているか確認を取りたい。
N→
生徒会室の最奥の席へと座する現生徒会長
そのすぐ右側の席には副会長
「前に話した通りです
学園内では生徒会の監視があるため、長い年月をかけ綿密に練られた悪質な事件です」
「今回の件、全ては私の不徳の致すところかが招いた結果です
会長がご不在の間、この企画を承認したのは紛れもなく私です
学園や生徒会の、そして会長自身の顔に泥を塗ってしまいました
如何なる罰則でも受ける所存です」
「
もしも俺がお前の立場であっても気づくことはできなかっただろう
どんな言葉で取り繕ったとしても
生徒会が一枚出し抜かれ、今回の一件をみすみす見逃してしまった。その事実は変わらない
その責任を問うのなら、それは全て生徒会を代表する俺が招いた失態だ
こちらこそ謝らねばならない」
N→
「会長!頭を上げてください!
私の失態である事もまた事実
罰を受けなければ私の犯した過ちへの示しが付きません
今回の事件はとても謝罪の言葉で収まるものではありません」
「だが何をしようと変わらない事実だ
今回の件はあいつを学園に入れた上層組織にも問題がある
この失態は反省し、二度と凄惨な事件を起こさないよう尽力すればいい
だが死体を処理した奴が他にいる…
あの一件は非常に残酷な事件だ
血痕は見つかったが肝心の生徒の遺体が一人も見つからない
そして
奴を見つけない限り、この事件は解決とは言えない」
「…
その欲望が奴の原動力となった
奴の言っていた話。どういう意味かわかりますか?
将来の確約…これについての説明を求めます」
「生徒会はこの
生徒会員は例外なく成績優秀者として学園の単位等が全て満点として計算され
本来受けるべき授業への参加は任意となり、生徒会役員として学園の運営に当たるのがしきたりです
そして、生徒会役員はこの先の進路において、格別の待遇を受けます」
「その優遇処置に対しての嫉妬ですか…」
「恐らくそうだろう
実力のある優秀な生徒のみで構成されている生徒会役員は他生徒から羨望の眼差しを受けることが多い。
だが同時に妬み嫉みの籠った目で見られることもある
まさかここまでの事件を起こすとは思わなかったが…確かに嫉妬心を抱くのも仕方の無いことなのかもしれない」
「くだらない事だと思っています
ですが、それをきっかけに二十人以上の生徒が殺害されました…」
「そこでお前らに頼みたい事がある
今の副会長代理と監査を普段の仕事に戻らせる。
そろそろ流石に生徒会の運営に手がつかなくなるだろうからな。
その代わりに次に俺が離れる時までの間だけ、お前らには事件の調査を優先して貰いたい」
「わかりました。私達でも色々と情報を洗います」
「頼んだぞ…
N→
そして数日後
しかし、あまり有益な情報は得られず、
「…何も手がかりがない
あの刀についても、
どうすればいいの……
何から探せば…」
N→
「最近ずっと色々な人に話をしてる名探偵さん?
どう?調査は進んでる?」
「えっと、貴女は?」
N→
笑顔で話しかけてきた少女、
その目を見た途端、
その瞳は無機質なほど静かな目をしていた。
かつてこの目に似たものを見た事があった。
それは修也の瞳に映った色と非常に似た闇を宿していたのだ。
しかし再びその瞳を見ると闇の色は嘘のように消えていた。
「
彼、人を沢山殺したんだってね
最近、その噂でクラスは持ち切り
そんな中、その
楽しそうだったから気になったの
話を聞いてもいい?」
N→
その途中、
「私達…二週間前に
イベントの企画者だったのが
その企画は罠だった…皆あいつに騙されて…皆殺された…
それが今噂になってることなの
私はその事件が何故起きたのか知りたいの」
「へぇー面白そうね
最近とても退屈なのよ
手伝ってあげるから仲間に入れてくれない?」
「仲間って…遊びじゃないのよ!!?
そんな気持ちなら邪魔になるだけ…
助けなんていらないわ」
「人数は多いに越したことはないと思うけどね?
それに私は
何より彼とは何回か話したことがあるの
どう?気にならない?」
「何か知ってるの!!?」
「私は協力者以外に情報は漏らさないわ」
N→
「わかったわ
協力をお願いする…それで
「よろしくね。私は
それで
実はあまり彼の事知らないのよね」
「話が違うじゃない!!」
「落ちついて?なにも当てが全くないわけじゃないの
そういうのに詳しい人が知り合いにいてね
紹介してほしい?」
N→
中庭には既に二人の生徒がおり話をしていた。
その男子生徒と女子生徒は何か言い争いをしているようで声を荒らげている。
「
「はい…?私に御用ですか?今はとても忙しくてそれどころじゃないのですよ
この
目を逸らしてしまいましたからね
…気を抜きました
とても面倒ですね…また見つけるのはいつになります事か
まぁ…いいでしょう
お待たせしました
N→
目の前で不自然な敬語とニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている男子生徒。
「
「もしも何か知ってたら教えてほしいの!」
「はい?それは
貸しが二つありましたから…返済の意を込めてお力添えしたいのですが
隣の方は確か、
N→
目の前の男子生徒は
「私を知っているの?」
「はい。存じ上げておりますよ。
学園の美少女ランキングTOP5に入る女子生徒。
戦闘の実力は記録に残る限りは平均的。
しかし、座学に置いて非凡な才能を有する優秀な生徒だと…
そんな方が
「話が早くて助かるわ
それだけじゃなくて学園の派閥や交友関係までをも熟知している
とても切れ者の異常者よ」
「異常とはかなり酷いご紹介ですね
とてもとても不愉快な言われようですが、まぁ良いとしましょう
それで
どんなことを知りたいんです?
三つまで答えましょう」
「
…まずあいつが事件を起こす前にその話をしていたとか、準備をしていたとか
そういうのはない??」
「いいえ、そのような姿勢は表では見せていないでしょう
他の生徒も気づいていないのでは?」
「あいつが良く行ってた特定の場所とか…何か知らない?」
「特にありませんかね
強いて言うならその同好会の教室ではないですか?」
「あいつはずっと偽りの仮面を被って嘘をついていたのね…
「おっしゃる通り、ずっと嘘の仮面を被り自身を偽って生きてきたのでしょうね
それと重要な事かわかりませんが、些細な事なら知っています」
「じゃあ…あいつは何が目的だったの」
「それは四つ目の質問ですので
お答えできません」
「え、待ってよ!まだ何も聞けてないのに!」
「ですが三つ質問をお答えすると最初に提示したはずですが?」
「…私の貸しの残り一つを使うわ」
N→
ニヤリと
「先日の件は助かりました。とても感謝しています
では、あと二つ質問を受けつけましょう」
「あと二つ………
…
「はい。知っています
ですが情報がかなり虫食いになっていますので、不完全な情報ですがそれでもよろしいですか?」
N→
「本当にその存在があるのか知りませんが
人の力を超えた妖刀が幾つか存在しているという伝説は聞いたことがあります
知っているうちの三つが
1つは魔と怪を切り裂く刀
1つは欲を切り裂く刀
1つは
それ以外については知りませんが、妖刀は実在するだとか?
持ち主は不明ですが、その刀には人智を超えた力を与える
そんな言い伝えがあります
果たして事実かどうかはわかりませんがね」
N→
腕を組んで話を聞いていた
「
どうせ貴方は色々知ってるんでしょ
本当の事を言いなさいよ?
その妖刀は存在してると思うの?」
N→
「はい。全て事実だと思っております。
今回の
犠牲者の死体が無くなっている事
生徒会の到着までの数十分であの数を失踪させるのは不可能に近いでしょう。
そして
「大量の死体が急に消えた」というのと「妖刀が実在する」
の二択でしたらどちらも対して信憑性は変わらないように思えます」
「……そうなのね
それがきっと
「その様子だと何か知っているようですね?
気になるところではありますが、今回の質問者はお二人ですから黙っておきましょう
それでは私はすぐ見つかるとは思えませんが
そうでした……最後に一つ
どんな完璧な人間であっても内に秘めた闇は強い。その強さがあまりにも深い場合、それは具現化し、願いを食い尽くす…
では、失礼します」
N→
うなだれながら考え事をする
「水でも飲んで一旦落ち着きなさい。
考え事を沢山巡らせても絡まってほどけなくなるだけよ」
N→
「貴女。最近ろくに栄養のあるもの食べてないんじゃない?
目の下のクマを見ればわかるわ
喉を通らなくても食べれるときに食べないと頭も働かないわよ?」
「あんなことがあって…ゆっくりご飯なんて食べられないよ
あの子達は………」
N→
口元を抑え、必死に泣き声を堪えようと俯いている。
自らの不甲斐なさを恨めしく思い、涙を止めることができなかった。
そんな
そして頭をゆっくりと撫でながらただ静かに
「多分‥‥その妖刀を使って
でもその刀…何かまた別の力を感じた………
あれは危ないものだって、なんとなくわかった」
「妖刀‥‥実在しているのね
でも今までの話を聞く限りは大して凄いものに思えない
何か特殊な力があるの?」
「その刀で刺された人がまるで崩れるように消えたの…だから死体が残ってない
「消えた?その刀は今どこに?」
「多分、生徒会の
「
N→
「
「それもそうだけど
まずは食堂に行ってお腹いっぱい食べなさい」
「うん…」
N→
二人は少しの休憩の後、食堂へと向かうことにした。
時刻はちょうど夕方頃になっていた。
一方その頃…
「
「三つの学園機構の生徒会長は、国会の緊急会議に合わせ
数日前から召集されて出席する義務があります
会長不在の間は原則として副会長がその仕事を引き継ぐ決まりになっています」
「なるほどな
それでその間に担当していたのがお前で
今回の企画を承認した…というわけか」
「…悔しいですが、全く気がつきませんでした。
私が今回の事件を引き起こしたと言ってもいいでしょう」
「そんな事を言っても仕方ない
過去に犯した罪を嘆くのは悪い事ではない
だがそれは同時に後悔という逃げ道を作る事にもなる
俯く事と同時に目を逸らすことになる
それは逃げる事と変わらない」
「一理ありますね
私が犯した失態は学園へのこれからの貢献で償うとしましょう」
「そこまで学園にかける想いはなんだ?」
「理由など…簡単なことですよ
高貴な学園の生徒会副会長として任を与えられた以上に、その名に恥じぬよう全身全霊を込めて勤めているだけです」
「なるほどな
お前は堅物だと噂は聞いていたがここまでとはな」
「そんなつもりはないですがー」
N→
「この辺りで今日の調査は終了しましょう
生徒もそろそろ寮に戻り始めます
これ以上の聞き込みはあまり効率的ではないでしょう」
N→
「………有益な情報なんて出てきやしない
あと一つ………どこにあるんだ」
N→
かなり小さな音であり、まるで隠密行動をしている際のような怪しい音だった。
「この時間に生徒会棟の周りで…?」
N→
その頃、
日は既に沈み始めており、学園の生徒は一定の時刻までには校舎から外へ出なければならない校則が定められている。
「生徒会棟に入るなんてダメだよ?
それにこんな時間じゃ…」
「真面目ちゃんねー
そんなんじゃ潜入調査なんて出来ないわよ?」
「でも、校則違反をしてまで何のために潜入するの?」
「生徒会室よ
そっちの方が間違いなく情報はあるでしょ?
どんな生徒の噂より生徒会の持つデータの方が信用できるわ」
「そうかもしれないけど…」
N→
突如、二人に向かって何者かが高速で接近してきた。
何者かは
「きゃっ!!?」
「…なぜここにいる?」
「とりあえずその刀を下ろしてもらえる?」
N→
スタンガンの電気ショックを銃弾のように飛ばすことができる武器を向ける。
「二人とも!一回落ち着いて!!
まずは武器を下ろして?」
「ならまずはお前が下ろせ」
「わかったわ」
N→
それに合わせ
その瞬間、
銃口からは、はっきりと見える稲妻が発射される。
それを
着地すると再び足を踏み込み
「待って!二人とも何で戦うの!!?」
「コソコソと生徒会棟に入ろうとしてたのが生徒会にバレたら
ここで謝罪して無罪放免なんて行かないでしょ?
それとも、少年は私たちを見逃してくれたりする?」
「先に構えたのはお前だ
攻撃をしなかったなら今この場では追及はしなかった」
「でも、他の生徒会の生徒に報告されたら結果的に私達が罰を食らうのは確定じゃない
どの道同じことよ」
「そうかもしれないな」
N→
対して
一瞬の睨み合いが行われる。そこに強い風が吹いた。
それを合図に二人は攻撃を開始した。
「二人とも!!」
N→
しかし
近づいては距離を離すのを繰り返していた。
「逃げてばかりじゃ終わらないわよ?」
「それもそうだな…」
N→
その速度は目で追うのがやっとの俊足であった。
校舎の真横に立つと校舎を蹴り身体を浮かせ、一瞬にして
「危ないっ!!」
N→
その時、
「やっと間合いに入ってくれた」
N→
そして二発の銃弾を発射する。その二つの稲妻が重なり合い、大きくなると
咄嗟に回避した
「っ!!」
N→
「……チェックメイト」
『
N→
ショックガンのトリガーを長押しした。
すると二丁の銃頭の先端が変形し、先端の銃口が収縮する。
そのまま
そして銃を
銃口からは先ほどとは違い、細かくなった小さな電撃の弾丸が機関銃のように高速発射される。
雨のように降り注ぐ電撃は無残にも
「やった…かしら?」
『
N→
先ほどまで地上で
「なっ!!?」
N→
それを咄嗟に振り返り両腕で防御した
代わりに着地の際に蹴りの反動を受けたため腕を使えずに背中から地面に叩きつけられた。
「がぁっ!!」
N→
そして刀を振り下ろした。
カキンと辺りに鉄同士が勢いよくぶつかり合う甲高い音が響く。
倒れた
「…次はお前か?」
「戦うつもりなんてないけど‥‥
引かないっていうなら反撃するわ」
N→
その目はとても涼し気であり、敵を相手にしたときに向けるような敵意に満ちた視線ではなかった。
「‥‥
「そこまでだ。お前ら」
N→
三人のもとに一人の生徒が歩いてきていた。
その顔は天も
歴代会長の中でも有数の頭脳と戦闘センスを持ち、その非の打ちどころの無さから学園最強と謳われる存在であった。
「
「しかしーーー」
「下がれと言っている」
N→
それを見ると
「おいおい。これ以上、二人に危害を加えるつもりはない
それよりも三人とも怪我はないか?」
N→
「怪我って程でもないわ
刀で斬られてたら大怪我だったでしょうけどね
強いて言うなら制服が汚れたくらい?」
「生徒会長‥‥ありがとうございます
会長が来なければ私たちはまだ戦っていたでしょうから」
「お前ら二人も逃げ場がなかったわけだ
戦わざるを得なかったのだろう
生徒自身に最善を判断させ行動させるよう学園が教えてきている
だが生徒会へと攻撃を仕掛けたお前ら二人の弁解など本来聞く義理はない
不良生徒を執行するのは生徒会の仕事だ
お前らもそれは理解してくれ
そもそも生徒会棟に忍び込む事自体、校則違反だ
ルールを守れない奴に言い訳をする資格はない
わかるな?」
「…そうですね
すみませんでした」
「お前らの処分について…だが
今回は一方的に怪我をさせてしまった生徒会にも非がある
女性に手を出した事も恰好がつかない…
という事でお前ら二人は今から生徒会室でお説教だ。
「任せます」
「なら、
時間も遅い
今日は色々頼み事をしてしまったからな」
「いえ、仕事ですから
それでは失礼します」
N→
「着いてこい」
N→
三人は生徒会棟に入っていき、生徒会室へと通される。
生徒会室の中には全員が円状に座れるように机が配置されており、部屋の各所からいくつか扉のない部屋に繋がっており、そこには机と椅子、棚等が置いてあった。
その最奥に唯一扉のある部屋があり一同はその前に立つ。
「ここが生徒会室だ。見た事ないだろ?
ここを見る事ができるのは生徒会役員や教員以外ではそこまで多くないだろうからな」
N→
扉にはドアノブが付いておらず、本来ドアノブがある部分に黒い電子プレートがついていた。
「ここが俺の部屋だ
生徒会役員以外の生徒を入れたのはお前らが初めてだ」
N→
「おっと、すまんな。立って聞けってのも酷だろう
適当な椅子ですまんが座ってくれ」
N→
「いえ、大丈夫ですよ!!
…申し訳ないでー」
「女性を立たせて話すなんて罪悪感が勝って話ができん
良いから座ってくれ。俺の顔を立てるってことでな」
N→
二人は
「さてと…まず初めにこんな時間に立ち入り禁止の棟に侵入しようとした訳を聞こうか?
先に言っておくが嘘はつかない方が身のためだ」
N→
生徒会長の貫禄を前に委縮してしまい、
「侵入した目的はこの部屋に入る事よ」
「ほう?それは何の為だ?」
「学園一の権力者である生徒会長
一般教員や特別教師よりも地位が高く、学園全体では学園長の次に座している
…そんな人の部屋にはかなりの情報があるはずと思ったのよ」
「なるほどな
なら少し質問してもいいだろうか?
お前らは何を調べようとしている?」
「‥‥同好会の件についてよ
ここの方が生徒の噂よりも信憑性があると思ってね」
「………なるほどな」
「貴方はあの事件についてどう思ってるの?」
「今回の事件は未然に防ぐことのできなかった我々生徒会の至らぬところが引き起こした惨劇だ
巧妙に仕組まれた作戦だったのだろうな
何も出来ぬまま最悪の事態を招いてしまった
早急に今回の犯人である
「……あの!」
「なんだ?」
N→
「あの事件…について
真実ではない事が多いんです…
隠している事があって」
「どういうこと?隠しているってのは」
「今回の事件の首謀者
あいつが持っていた刀には人智を超えた力がありました
その刀は殺した人をまるで飲み込むように消してしまうんです…
その後、私に刃を向けました…
助けに来た
その刀はまだ
「どういうこと?
人智を超える力を持つ刀…妖刀……?」
「信じてもらえないと思いますが…全て事実です」
「信じるよ
というより今の話で合点がいった部分もある
今回の件には不可解な事が多い
犠牲者と首謀者が消失した事件
生徒会が到着するまでの時間に両者が発見できなかったのは
まるで本当にそこから消えたとしか思えない
ただ虚偽の情報を告げたのは何故なんだ?」
「信じてもらえないかと思いました」
「そうか…生徒会がそんなに信じられなかったのか」
「その刀‥‥さっき
魔と怪を切り裂く刀
欲を切り裂く刀
この三つのうちの一つと見るべきね」
「多分
「
…となるとまだこの学園に目的があるのかしら?」
「きっとまだ妖刀があるんじゃないかな…
って事は
「妖刀…」
N→
そこで
「今から見せるものについては他言無用で頼む」
N→
二人が覗き込むように手元を見ると
そこには隠すように黒い電子パネルが設置されてあった。
その中から横長のアタッシュケースを取り出す。
ケースの開口部には扉のものに似た黒い電子パネルが付いてあった。
するとアタッシュケースが自動で開いていく。
その中には一つの刀が入っていた。
「刀…!?これって!!
「この刀は代々この学園の生徒会長が所持を許される
人智を超えた力を持つこの刀は才能を有する者に更なる力を与える
もしも刀に見合わぬ力の者がこの刀に触れるとそいつはまるで鏡が砕ける様に消滅する。
生徒会長は学園の長として例外なく実力ある者が選ばれる
故にこの刀は所持出来る事が多い。」
「これが…?」
「触ったら消えちゃうんだよ!!気を付けて!」
「私に才能がないって言いたいの?」
「えっと、そういうことじゃ」
「ちょっとからかっただけよ
つまり、
「これが目標となると…
みすみす生徒会へと入れてしまったわけだ
俺を狙う機会ならいつでも訪れるだろう
奴を引き入れたのは俺だからな
俺よりも圧倒的に強いのはわかっている
普通に戦ったのならば勝ち目はない
この刀を使えば…あるいは勝てるだろう
だがこの刀は緊急時以外は使わないようにしているんだ
先ほども言ったが触れただけで人を消しかねない刀だ
恐ろしくもなる」
「
才能のない人間に力を与える…
人が絶望したときに殺すと力を増す
そんな事を言っていました」
「この刀は才能のある人間しか使えない
対照に
彼はお世辞にも強いとは言えなかった
生徒会になんて入れる器ではないほどに
そこで妖刀の力を得て生徒会を超えようとしたのね」
「生徒会への妬みが積まれていく中で
自らも強くなりたいと膨れ上がった欲望が奴を変えてしまったのだろう
元々どんなやつだったのか知らないが
もしかしたらその力に狂わされた被害者の1人なのかもしれないのかもしれないな
まぁ、今となってそれを言っても仕方ない
生徒会としてもあんな惨劇が再び起こるような事は防がねばならない」
「でも
「それは本人に直接聞いてみるしかないだろう。今はそれしかできる事はない」
N→
突如、扉がノックされる。
扉の外には
「会長。もうこんな時間です。
続きは明日以降にして、そろそろ二人を帰さなければ生徒内で噂になるでしょう」
「そうだな…
お前ら、今日はもう帰れ
充分説教はしたからな
行け」
「で、でも…!
「それは俺に任せておけ
俺の質問ならば少なからず耳を傾けるだろう
「かしこまりました」
N→
そう言うとまだ何か言いたげな
「…
何が狙いなんだ?」
N→
数分後。
「会長。もうお休みになっては?
一日中休まず職務をこなされています
休息を取ろうとも誰も文句は言わないでしょう
今回の事件を気に病んでいるのはわかりますが、会長が倒れては元も子もありません」
「すまないな」
「今回の一件は私の監督不行き届きが招いた結果です
会長には何の非もありません」
「お前に非を作ったのは間違いなく俺だ……
いずれお前は生徒会長を継ぐ人材だ
そんなお前の顔に泥を塗ってしまった
そんなお前に失態を犯させた事は一生悔いが残るだろう
すまない…」
「いえ、お気になさらず
私如きの顔、立てるまでもありません
それでは今日のところは私も失礼します
会長もご無理をなさらぬようお休みください」
N→
今日の仕事が終わっているだけではなく、会長がこの後、本来やるべき仕事を全て代わりに終えていたのだ。
「ふっ…流石だな
本当にあいつは凄い奴だ
俺のような無能とは違う
まさしく学園を背負って立つ天才だ…
戦闘に置いても奢る事なく、鍛錬を極めている
…ハハッ。勝てないな
生徒会として…人として…
あいつが導く学園を早く見てみたい」
N→
倒れそうになるも咄嗟に机に手をかけ、倒れるのを阻止した。
「っ!!?…頭が痛い
…疲れているみたいだ
今日は休もう……」
N→
その頃、
空を見上げると既に日は落ち暗くなっており、街灯の明かりがないと道が見えにくくなっている。
「…足音?」
N→
後ろから跡を付けるように足音が近づいてきていたのに
振り返るも姿は見えなかったが確かに何者かが来ていた。
「…いるのはわかってる
出てこい」
N→
何者かは
謎の男(
「…ミツケタ」
N→
謎の男は突如として
しかしーーー
謎の男(
『
「強いっ!?」
N→
謎の男の重い攻撃に体勢を崩されぬようバランスを保ちながら下がっていく。
その刀は鈍く深い蒼色に輝いており、刀が黒い影を纏うように黒くなっていた。
「……この刀、この影は一体…?
まさか、これは…
N→
辺りに街灯はひとつしかないため、非常に暗く、声と体格以外が判別できず、その謎の男の正体がわからなかった。
謎の男(
「オマエ……ナニモノ
ヤツルギ………ドコダ」
「お前もこれをお探しだったようだな」
N→
中には
その柄に手を添え、抜刀する。
「この刀……あいつの後に使うのはお前が初めてになる
今の所有者は俺だ……さぁ、お前の力を見せてみろ」
N→
辺りを照らしていた光はやがて刀に飲み込まれるように消えていった。
「なるほど…才能の無い者に力を与える刀…
常人が使えば力に耐えられず溺れていく
だが俺は大丈夫なようだ
触れられる…力も問題なく使えそうだ…」
N→
そして正面から思い切り斬りかかった。
「……過度な欲は人を喰らうか
刀にそれを言われるとは何とも頭が痛いな」
『
N→
そして思い切り真横を通り過ぎる。
その後、背面に立つ謎の男に向かって一閃、抜刀する。
その斬撃は謎の男を確実に捉えていた。
だがーーー
謎の男(
「…コレハ?」
「流石に慣れない技は成功しないか…案外難しいものだな」
N→
謎の男はその一撃を
そして刀身を
それを見ると
「…その刀は確か才能を有するものに更なる力を与える妖刀
相当な手練であるのはわかる
お前の構えは特殊だからな
ここで戦わずとも正体は掴める…」
N→
謎の男は辺りを探し回ったが見つけることができなかった。
謎の男(
「ドコダ……ヤツルギ」
N→
その頃、生徒会棟付近では
そこに後ろからこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえる。
「……会長?」
N→
暗闇から
「会長!大丈夫ですか?」
「……大丈夫だ
っ…少し頭痛がする…だけだ
それよりお前はまだ帰っていなかったのか?」
「戸締りの確認をしていました
他の生徒会員が閉めていたのでしょう
問題はありませんでした」
「そうか…なら良かった
すまないが…
寮まで着いてきてくれ……
俺が大丈夫か監視しておいてくれ」
「…勿論、着いていきます
どうぞ、肩をお貸ししましょう」
N→
「
黙って歩くのも暇だろ?」
「お気になさらずとも…」
「いや、その方が気が紛れる」
「ご無理をなさらぬようお願いします」
「俺の仕事……代わりにやってくれたんだな…いつも悪いな
学園にいる時は俺がやらないといけないのに」
「不在時にやっているのと変わりません
他の仕事に差支えも無いので問題ありません」
「…………
「はい」
「お前は間違いなく学園を…いや
世界を背負って立つ人間だ
お前はいずれ
俺はそう確信している…
この長い人類絶滅の危機を……闇を払う英雄となる…………
そう、確信があるんだ」
「会長は買い被りすぎです
私はそんな大層な人間ではありません」
「俺はお前を信じている……
そんなお前に頼みたいことがある
この刀……わかるか?
N→
「持ち歩いていたのですか?」
「お前も知っているだろ?
この刀は人が持つにはあまりにも強大な力を秘めている
弱き者はこの刀を扱えない…
故に強き者が所持する事になる……
しかし、俺は…これを扱えるような精神力を持ち合わせていないんだ
怖いんだ……この力を持つ事が
これから何が起きるかわからない…
二つの妖刀が迫っている
それを狙う者…それを守る者…
今、両者は対立している……
決着が着く時……何かが起こる
事の重大さはわかっている…
だが…俺には責任が重すぎる……
こんな俺というちっぽけな器に収まるほどのものじゃない…
お前ならば力に溺れることはないだろう
この刀はお前の強力な武器となる
お前ならこの力の使い方を違えず世界を正しい方向へと導くことが出来る…
無理を承知で聞く…頼めないか…?」
N→
「この刀は生徒会長以外の所持は禁止されています。
規則を破る訳には行きません」
「ならば…
お前が今から生徒会長になってくれないか?」
「それもお断りします
会長選挙は年に一度
年度内に緊急で変わる時は会長が退任、死亡等の場合のみ
不在時期から二ヶ月後に緊急生徒会長選挙が開始され
そこで決める。そう校則で定められております」
「だが…俺はこの刀にいつ操られるかわからない。
正直、自信が無い…不安なんだ」
「…会長!」
N→
俯く
「会長ならば大丈夫です
貴方が私を『世界を背負う人間』というならば
それを育てたのは紛うことなき会長ご自身です。
しかし、もしも会長が校則や人道に背く行為をしているのならば私が会長を斬ると約束しましょう」
「励ましているんだか脅しているんだか…
ハハ……少し安心したよ
ありがとう」
「……会長。着きましたよ」
N→
その二人を遠くから隠れるように見る
「そういう事ね…大体わかったわ
N→
その頃、寮へと戻った
「
生徒会長を狙うならどのタイミング…?
会長が一人になる時……生徒会室の中で?」
「生徒会室にはもう入れる機会はない…
どうすれば……」
「生徒会に入れれば……まだチャンスはある」
N→
そして二週間後
その生徒は監査により実力を買われ、その力を試すべく行われた非公式戦において生徒会監査の二人を同時に相手にし、尚、圧倒し、勝利を収める。
その生徒の名は………
少女は刀を納刀し空を見上げる。
その目には決意が満ち満ちていた。
「
次回
桜ガ散ル頃ニ
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この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています
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特殊な行為をするものは認めていません
流石に読み込んで普通に演技してください
多分そうじゃないとこの台本は演じれないです
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