中編 桜ノ蕾ニ隠シテ

夢野 天ゆめのそら

16歳

学園ではひっそりと人気な女子生徒

かつての仲間を失い、意気消沈している。




神蔵 修也かぐらしゅうや

16歳

白髪、黄色の目をしている美少年の男子生徒

過去に何かがあったらしいが詳細は誰にも明かさない




城ヶ崎 健じょうがさきたける

16歳

生徒会に属する男子生徒、その実力は生徒会内でも頭一つ飛び抜けている




二宮 達也にのみやたつや

15歳

学園内の情報を制する男子生徒、不自然な敬語を使う。裏表がありそうで…?




敷島 遥斗しきしまはると

17歳

現在の生徒会長。会長として歴代と比べ優れており、かなりの切れ者である

※途中兼任が追加されます




東郷 椎菜とうごうしいな

17歳

不思議な雰囲気を醸し出す女子生徒。そらに興味を持ち、今回の事件を共にする




Nは→後のキャラ演者が読む




※キャラ設定一覧

八木原 旭やぎはらあさひ

同好会と称した罠を貼り、生徒を惨殺した男子生徒。御影ノ邪刀みかげのやつるぎを所有していた

修也しゅうやによって殺害された


岩城 定介いわきじょうすけ

~っすといった特徴的な語尾の男子生徒

八木原やぎはらに殺され死亡


南雲 月夜なぐもつくよ

自由気ままな女子生徒

八木原やぎはらに殺され死亡






役表


城ヶ崎 健じょうがさきたける ♂:


敷島 遥斗しきしまはると二宮 達也にのみやたつや ♂:


夢野 天ゆめのそら ♀:


東郷 椎菜とうごうしいな ♀:


神蔵 修也かぐらしゅうや不問:




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      血桜ハ還リ咲ク 零章

       「桜ノ蕾ニ隠シテ」






N→神蔵 修也かぐらしゅうや

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた・・・・・幸せな一時

悲劇の記憶が頭に残ったまま

地を見下ろす少女の目は決意に染まる。




夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…貴方がどんな事を抱えてるのかわからないけど……

あの悲しい目、まるで泣いているのを隠しているみたいだった

修也しゅうや君は私には関係ないって…そう言った

でも、私は修也しゅうや君を助けてあげたい

定介じょうすけ君……月夜つくよちゃん……

私はどうすればいいの」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

あの惨劇から1週間後、現在は空き部屋となった元同好会の教室にそら は毎日昼休みの度に訪れていた。

部屋の中には仲間の名残はなく、今は机と椅子だけが残されたまま放置されている。

そら は椅子に座り、かつての仲間を思い返していた。



夢野 天ゆめのそら

「駄目ね…まだ立ち直れてないや

私って弱いな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら が外を眺めると遠くから生徒会の証である白い制服を着た生徒数人が生徒会棟へと歩いていくのが見える。

この月ノ都つきのみやこ学園、生徒会長の帰還。

その迎えに出向いた生徒会員数人が歩いていた。その中には生徒会の一員となった神蔵 修也かぐらしゅうやもいた。

遠くからでも見えるその目はかつての瞳と同じで冷たく、暗く、そして寂しげな色をしていた。



夢野 天ゆめのそら

「………でも知りたい

どうしてみんなが犠牲にならなきゃいけなかったのか……

あの刀、御影ノ邪刀みかげのやつるぎ八木原やぎはらが持ってて…

あれを修也しゅうや君が探してた……

なんであの刀を探していたの…?

八木原やぎはらを調べればわかるかも」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら は立ち上がると、目を擦り涙を拭う。

顔を手で叩き再び目を開いた。



夢野 天ゆめのそら

「こんなところで立ち止まっていられない

皆の犠牲を有耶無耶なままにしちゃいけない」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら は教室を後にする。

次にここに戻る時は修也しゅうやと二人で…

そう決意を胸にしまい、歩みを進めた。



N→夢野 天ゆめのそら

その頃、生徒会室へ入った神蔵 修也かぐらしゅうやは室内の自席へと腰を下ろす。

ほとんどの生徒会役員はそのまま室内から立ち去っていく。

室内中央にある会議席には修也しゅうやを含め三人の生徒が座っていた。

そして重々しい空気が流れた後、会議が始まる。



敷島 遥斗しきしまはると

「先日起きた事件…

残酷で悲しい事件の真相について

生徒会副会長代理を筆頭に監査を動員して調査させているが…

俺は帰ったばかりで話を正しく掴めているか確認を取りたい。

神蔵かぐら。その時の話を詳しく聞いてもいいか?」



N→夢野 天ゆめのそら

生徒会室の最奥の席へと座する現生徒会長 敷島 遥斗しきしまはると は両手を顔の前で組み、修也しゅうやを凝視する。

そのすぐ右側の席には副会長 城ヶ崎 健じょうがさきたける が姿勢よく静かに座っていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「前に話した通りです

八木原やぎはらが企画した花見イベントは事件を起こすために貼られたカモフラージュでした

学園内では生徒会の監視があるため、長い年月をかけ綿密に練られた悪質な事件です」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今回の件、全ては私の不徳の致すところかが招いた結果です

会長がご不在の間、この企画を承認したのは紛れもなく私です

学園や生徒会の、そして会長自身の顔に泥を塗ってしまいました

如何なる罰則でも受ける所存です」



敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさき …あまり気を重くするな

神蔵かぐらの言う通り、とても巧妙かつ完璧な作戦だ。

もしも俺がお前の立場であっても気づくことはできなかっただろう

どんな言葉で取り繕ったとしても

生徒会が一枚出し抜かれ、今回の一件をみすみす見逃してしまった。その事実は変わらない

その責任を問うのなら、それは全て生徒会を代表する俺が招いた失態だ

こちらこそ謝らねばならない」



N→夢野 天ゆめのそら

敷島しきしま が頭を下げる。

城ヶ崎じょうがさき は驚きながらも口を開いた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長!頭を上げてください!

私の失態である事もまた事実

罰を受けなければ私の犯した過ちへの示しが付きません

今回の事件はとても謝罪の言葉で収まるものではありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「だが何をしようと変わらない事実だ

今回の件はあいつを学園に入れた上層組織にも問題がある

この失態は反省し、二度と凄惨な事件を起こさないよう尽力すればいい

城ヶ崎じょうがさき 。お前と神蔵かぐらで今回の一件について調べてくれ

八木原やぎはらの犯行は単独犯であったはず

だが死体を処理した奴が他にいる…

あの一件は非常に残酷な事件だ

血痕は見つかったが肝心の生徒の遺体が一人も見つからない

そして八木原やぎはら本人も両腕を斬られたのちに逃亡…

奴を見つけない限り、この事件は解決とは言えない」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…八木原やぎはらが口にしていた生徒会への妬み

その欲望が奴の原動力となった

奴の言っていた話。どういう意味かわかりますか?

将来の確約…これについての説明を求めます」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「生徒会はこの月ノ都つきのみやこ 学園に所属する生徒の中でも学園の認可が下りた実力者のみで構成される組織です。

生徒会員は例外なく成績優秀者として学園の単位等が全て満点として計算され

本来受けるべき授業への参加は任意となり、生徒会役員として学園の運営に当たるのがしきたりです

そして、生徒会役員はこの先の進路において、格別の待遇を受けます」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「その優遇処置に対しての嫉妬ですか…」



敷島 遥斗しきしまはると

「恐らくそうだろう

実力のある優秀な生徒のみで構成されている生徒会役員は他生徒から羨望の眼差しを受けることが多い。

だが同時に妬み嫉みの籠った目で見られることもある

まさかここまでの事件を起こすとは思わなかったが…確かに嫉妬心を抱くのも仕方の無いことなのかもしれない」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「くだらない事だと思っています

ですが、それをきっかけに二十人以上の生徒が殺害されました…」



敷島 遥斗しきしまはると

「そこでお前らに頼みたい事がある

今の副会長代理と監査を普段の仕事に戻らせる。

そろそろ流石に生徒会の運営に手がつかなくなるだろうからな。

その代わりに次に俺が離れる時までの間だけ、お前らには事件の調査を優先して貰いたい」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「わかりました。私達でも色々と情報を洗います」



敷島 遥斗しきしまはると

「頼んだぞ… 城ヶ崎じょうがさき神蔵かぐら



N→敷島 遥斗しきしまはると

そして数日後

そら八木原やぎはらのクラスへと単身聞き込みを行っていた。

しかし、あまり有益な情報は得られず、八木原やぎはらの演技には誰も気がついていなかったようだ。



夢野 天ゆめのそら

「…何も手がかりがない

あの刀についても、八木原やぎはらについても

どうすればいいの……

何から探せば…」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら が頭を悩ませながら、考え事をしていると誰かが話しかけてきた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「最近ずっと色々な人に話をしてる名探偵さん?

どう?調査は進んでる?」



夢野 天ゆめのそら

「えっと、貴女は?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

笑顔で話しかけてきた少女、東郷 椎菜とうごうしいなそら の顔を覗き込んだ。

その目を見た途端、そら の背中に寒気が走る。

その瞳は無機質なほど静かな目をしていた。

かつてこの目に似たものを見た事があった。

それは修也の瞳に映った色と非常に似た闇を宿していたのだ。

しかし再びその瞳を見ると闇の色は嘘のように消えていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

八木原やぎはら君について聞きこんでいるのよね?

彼、人を沢山殺したんだってね

最近、その噂でクラスは持ち切り

そんな中、その八木原やぎはら君について話を聞く探偵さんが見えてね

楽しそうだったから気になったの

話を聞いてもいい?」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら東郷とうごう と共に移動しながら人通りの少ない廊下へと歩いていった。

その途中、そら東郷とうごう に話を始めた。



夢野 天ゆめのそら

「私達…二週間前に八木原やぎはらや他の同好会の皆で花見イベントを主催したの

イベントの企画者だったのが八木原やぎはらだったんだけど

その企画は罠だった…皆あいつに騙されて…皆殺された…

それが今噂になってることなの

私はその事件が何故起きたのか知りたいの」



東郷 椎菜とうごうしいな

「へぇー面白そうね

最近とても退屈なのよ

手伝ってあげるから仲間に入れてくれない?」



夢野 天ゆめのそら

「仲間って…遊びじゃないのよ!!?

そんな気持ちなら邪魔になるだけ…

助けなんていらないわ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「人数は多いに越したことはないと思うけどね?

それに私は八木原やぎはらと同じクラスだったし

何より彼とは何回か話したことがあるの

どう?気にならない?」



夢野 天ゆめのそら

「何か知ってるの!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私は協力者以外に情報は漏らさないわ」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そら東郷とうごう の軽い態度が不快であり、とても不本意ではあったが、現状手がかりの一つも掴めていないため、東郷とうごう の話を聞くことにした。



夢野 天ゆめのそら

「わかったわ

協力をお願いする…それで八木原やぎはらについて何を知ってるの?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「よろしくね。私は東郷 椎菜とうごうしいな

それで八木原やぎはら君について…そうねぇ?

実はあまり彼の事知らないのよね」



夢野 天ゆめのそら

「話が違うじゃない!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「落ちついて?なにも当てが全くないわけじゃないの

そういうのに詳しい人が知り合いにいてね

紹介してほしい?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごうそら を連れて、C棟の中庭へと移動する。

中庭には既に二人の生徒がおり話をしていた。

その男子生徒と女子生徒は何か言い争いをしているようで声を荒らげている。



東郷 椎菜とうごうしいな

二宮にのみや 君。ちょっと貴方の力を借りたいの」



二宮 達也にのみやたつや

「はい…?私に御用ですか?今はとても忙しくてそれどころじゃないのですよ

この畠中はたなか が‥‥‥…ってまた居なくなってしまいました

目を逸らしてしまいましたからね

…気を抜きました

とても面倒ですね…また見つけるのはいつになります事か

まぁ…いいでしょう

お待たせしました東郷とうごう さん。御用をお聞きしてもいいですか?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

目の前で不自然な敬語とニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている男子生徒。

二宮 達也にのみやたつや はとても不思議そうな顔をして二人を交互に見ている。



東郷 椎菜とうごうしいな

八木原旭やぎはらあさひについて教えーーー」



夢野 天ゆめのそら

「もしも何か知ってたら教えてほしいの!」



二宮 達也にのみやたつや

「はい?それは東郷とうごう さんの頼みとあらば

貸しが二つありましたから…返済の意を込めてお力添えしたいのですが

隣の方は確か、夢野 天ゆめのそら さんでしたね」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

そら は驚きの声をあげる。

目の前の男子生徒はそら を知っているようであった。



夢野 天ゆめのそら

「私を知っているの?」



二宮 達也にのみやたつや

「はい。存じ上げておりますよ。

学園の美少女ランキングTOP5に入る女子生徒。

戦闘の実力は記録に残る限りは平均的。

しかし、座学に置いて非凡な才能を有する優秀な生徒だと…

そんな方が八木原 旭やぎはらあさひについて知りたいといいますのは、あの事件の関係者だからでしょうか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「話が早くて助かるわ

二宮にのみや 君はこんな感じであらゆる生徒について詳しい情報を持っているの

それだけじゃなくて学園の派閥や交友関係までをも熟知している

とても切れ者の異常者よ」



二宮 達也にのみやたつや

「異常とはかなり酷いご紹介ですね

とてもとても不愉快な言われようですが、まぁ良いとしましょう

それで八木原やぎはら君についてでしたね

どんなことを知りたいんです?

東郷とうごう さんの頼みです

三つまで答えましょう」



夢野 天ゆめのそら

八木原 旭やぎはらあさひについて…

…まずあいつが事件を起こす前にその話をしていたとか、準備をしていたとか

そういうのはない??」



二宮 達也にのみやたつや

「いいえ、そのような姿勢は表では見せていないでしょう

他の生徒も気づいていないのでは?」



夢野 天ゆめのそら

「あいつが良く行ってた特定の場所とか…何か知らない?」



二宮 達也にのみやたつや

「特にありませんかね

強いて言うならその同好会の教室ではないですか?」



夢野 天ゆめのそら

「あいつはずっと偽りの仮面を被って嘘をついていたのね…

二宮にのみや 君も何か重要な事とか些細な事でいいなら知っていることはない?」



二宮 達也にのみやたつや

「おっしゃる通り、ずっと嘘の仮面を被り自身を偽って生きてきたのでしょうね

それと重要な事かわかりませんが、些細な事なら知っています」



夢野 天ゆめのそら

「じゃあ…あいつは何が目的だったの」



二宮 達也にのみやたつや

「それは四つ目の質問ですので

お答えできません」



夢野 天ゆめのそら

「え、待ってよ!まだ何も聞けてないのに!」



二宮 達也にのみやたつや

「ですが三つ質問をお答えすると最初に提示したはずですが?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「…私の貸しの残り一つを使うわ」




N→城ヶ崎 健じょうがさきたける

ニヤリと二宮にのみや は笑う。




二宮 達也にのみやたつや

「先日の件は助かりました。とても感謝しています

では、あと二つ質問を受けつけましょう」



夢野 天ゆめのそら

「あと二つ………

二宮にのみや 君。何か奇妙な刀とかって知らない?知ってたら教えて欲しい」



二宮 達也にのみやたつや

「はい。知っています

ですが情報がかなり虫食いになっていますので、不完全な情報ですがそれでもよろしいですか?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

そら はゆっくりと頷いた。



二宮 達也にのみやたつや

「本当にその存在があるのか知りませんが

人の力を超えた妖刀が幾つか存在しているという伝説は聞いたことがあります

知っているうちの三つが

1つは魔と怪を切り裂く刀

1つは欲を切り裂く刀

1つはのぞみを切り裂く刀

それ以外については知りませんが、妖刀は実在するだとか?

持ち主は不明ですが、その刀には人智を超えた力を与える御力みちから が宿っている

そんな言い伝えがあります

果たして事実かどうかはわかりませんがね」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

腕を組んで話を聞いていた東郷とうごう が突如、口を開いた。



東郷 椎菜とうごうしいな

そら ちゃん…あと質問一つ貰っていい?

どうせ貴方は色々知ってるんでしょ

本当の事を言いなさいよ?

その妖刀は存在してると思うの?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

二宮にのみや はにやりと不気味な笑みを浮かべる。



二宮 達也にのみやたつや

「はい。全て事実だと思っております。

今回の八木原やぎはらの事件。

犠牲者の死体が無くなっている事

生徒会の到着までの数十分であの数を失踪させるのは不可能に近いでしょう。

そして八木原やぎはらが逃亡したという情報。私は事実ではないと睨んでいます

「大量の死体が急に消えた」というのと「妖刀が実在する」

の二択でしたらどちらも対して信憑性は変わらないように思えます」



夢野 天ゆめのそら

「……そうなのね

それがきっと八木原やぎはらを…」



二宮 達也にのみやたつや

「その様子だと何か知っているようですね?

気になるところではありますが、今回の質問者はお二人ですから黙っておきましょう

それでは私はすぐ見つかるとは思えませんが畠中はたなかを探しにいきます

そうでした……最後に一つ

そら さん。裏表うらおもてのない人間などはいません。

どんな完璧な人間であっても内に秘めた闇は強い。その強さがあまりにも深い場合、それは具現化し、願いを食い尽くす…

では、失礼します」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

二宮にのみや はそう言い残すと立ち去っていく。

うなだれながら考え事をするそら にそっと飲み物を手渡した。



東郷 椎菜とうごうしいな

「水でも飲んで一旦落ち着きなさい。

考え事を沢山巡らせても絡まってほどけなくなるだけよ」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごうそら がベンチに座り、水を飲みながら休憩をする。

東郷 とうごうそら の顔を見ながら心配そうに声をかけた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「貴女。最近ろくに栄養のあるもの食べてないんじゃない?

目の下のクマを見ればわかるわ

喉を通らなくても食べれるときに食べないと頭も働かないわよ?」



夢野 天ゆめのそら

「あんなことがあって…ゆっくりご飯なんて食べられないよ

あの子達は………」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

そら の目から突然涙が溢れ出した。

口元を抑え、必死に泣き声を堪えようと俯いている。

自らの不甲斐なさを恨めしく思い、涙を止めることができなかった。

そんなそら の頭を東郷とうごう は自らの肩に抱き寄せる。

そして頭をゆっくりと撫でながらただ静かにそら が話すのを待った。



夢野 天ゆめのそら

「多分‥‥その妖刀を使って八木原やぎはらが皆を殺した

でもその刀…何かまた別の力を感じた………

あれは危ないものだって、なんとなくわかった」



東郷 椎菜とうごうしいな

「妖刀‥‥実在しているのね

でも今までの話を聞く限りは大して凄いものに思えない

何か特殊な力があるの?」



夢野 天ゆめのそら

「その刀で刺された人がまるで崩れるように消えたの…だから死体が残ってない

月夜つくよちゃんも定介じょうすけ君も……八木原やぎはらですら消えてしまった」



東郷 椎菜とうごうしいな

「消えた?その刀は今どこに?」



夢野 天ゆめのそら

「多分、生徒会の修也しゅうや君が持ってる」



東郷 椎菜とうごうしいな

神蔵 修也かぐらしゅうや…生徒会に新しく入った二年生よね?あの子が…ね……」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

そら が落ち着いたようで身体を起こす。

東郷とうごう がそんなそら を心配そうな様子で見つめている。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君に話を聞いてみる…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それもそうだけど

まずは食堂に行ってお腹いっぱい食べなさい」



夢野 天ゆめのそら

「うん…」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

二人は少しの休憩の後、食堂へと向かうことにした。

時刻はちょうど夕方頃になっていた。

一方その頃…



神蔵 修也かぐらしゅうや

城ヶ崎じょうがさき…会長の言ってた「離れる」ってのはどういう事?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「三つの学園機構の生徒会長は、国会の緊急会議に合わせ

数日前から召集されて出席する義務があります

月ノ都つきのみやこ学園の場合

会長不在の間は原則として副会長がその仕事を引き継ぐ決まりになっています」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なるほどな

それでその間に担当していたのがお前で

今回の企画を承認した…というわけか」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…悔しいですが、全く気がつきませんでした。

八木原やぎはらの異常性を認知できなかった

私が今回の事件を引き起こしたと言ってもいいでしょう」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そんな事を言っても仕方ない

過去に犯した罪を嘆くのは悪い事ではない

だがそれは同時に後悔という逃げ道を作る事にもなる

俯く事と同時に目を逸らすことになる

それは逃げる事と変わらない」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「一理ありますね

私が犯した失態は学園へのこれからの貢献で償うとしましょう」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そこまで学園にかける想いはなんだ?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「理由など…簡単なことですよ

高貴な学園の生徒会副会長として任を与えられた以上に、その名に恥じぬよう全身全霊を込めて勤めているだけです」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なるほどな

お前は堅物だと噂は聞いていたがここまでとはな」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「そんなつもりはないですがー」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

城ヶ崎じょうがさき が時計を確認する。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「この辺りで今日の調査は終了しましょう

生徒もそろそろ寮に戻り始めます

これ以上の聞き込みはあまり効率的ではないでしょう」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

城ヶ崎じょうがさき修也しゅうやに一礼をして立ち去っていく。

修也しゅうやはその場に残されると独り言を漏らした。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………有益な情報なんて出てきやしない

あと一つ………どこにあるんだ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

修也しゅうやは寮へ戻ろうとしたその時、二人組の足音のような音が聞こえた。

かなり小さな音であり、まるで隠密行動をしている際のような怪しい音だった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「この時間に生徒会棟の周りで…?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

その頃、そら東郷とうごう はC棟から少し離れた場所に位置する生徒会棟へと訪れていた。

日は既に沈み始めており、学園の生徒は一定の時刻までには校舎から外へ出なければならない校則が定められている。

そら東郷とうごう は生徒会棟の裏側に周り、人目のつかない場所でヒソヒソと会話していた。



夢野 天ゆめのそら

「生徒会棟に入るなんてダメだよ?

それにこんな時間じゃ…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「真面目ちゃんねー

そんなんじゃ潜入調査なんて出来ないわよ?」



夢野 天ゆめのそら

「でも、校則違反をしてまで何のために潜入するの?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「生徒会室よ

そっちの方が間違いなく情報はあるでしょ?

どんな生徒の噂より生徒会の持つデータの方が信用できるわ」



夢野 天ゆめのそら

「そうかもしれないけど…」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

突如、二人に向かって何者かが高速で接近してきた。

何者かはそら の首の数ミリ手前で刀を止める。



夢野 天ゆめのそら

「きゃっ!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…なぜここにいる?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「とりあえずその刀を下ろしてもらえる?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

そら へと刀を突きつけた者の正体は神蔵 修也かぐらしゅうやであった。

東郷とうごうそら へと刀を突き付ける修也しゅうやの頭に、学園の特別な生徒のみ所持することが許可される発射型ショックガンと呼ばれる

スタンガンの電気ショックを銃弾のように飛ばすことができる武器を向ける。



夢野 天ゆめのそら

「二人とも!一回落ち着いて!!

まずは武器を下ろして?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ならまずはお前が下ろせ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「わかったわ」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごう修也しゅうやから銃の焦点を外した。

それに合わせ修也しゅうやは刀をゆっくりと下ろす。

その瞬間、東郷とうごう は再度ショックガンを構え、修也しゅうやへと引き金を引いた。

銃口からは、はっきりと見える稲妻が発射される。

それを修也しゅうやは後方へと飛び下がり回避した。

着地すると再び足を踏み込み東郷とうごう へと斬撃を浴びせる。

東郷とうごう はその斬撃をショックガン本体で弾いていた。



夢野 天ゆめのそら

「待って!二人とも何で戦うの!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「コソコソと生徒会棟に入ろうとしてたのが生徒会にバレたら

ここで謝罪して無罪放免なんて行かないでしょ?

それとも、少年は私たちを見逃してくれたりする?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「先に構えたのはお前だ

攻撃をしなかったなら今この場では追及はしなかった」



東郷 椎菜とうごうしいな

「でも、他の生徒会の生徒に報告されたら結果的に私達が罰を食らうのは確定じゃない

どの道同じことよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうかもしれないな」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごう は再び銃口を修也しゅうやへと構えた。

対して修也しゅうやは刀を構え返す。

一瞬の睨み合いが行われる。そこに強い風が吹いた。

それを合図に二人は攻撃を開始した。



夢野 天ゆめのそら

「二人とも!!」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

そら の牽制を無視し二人は攻撃を繰り出し続けている。

東郷とうごう のショックガンの発射は完璧に見切られており

修也しゅうやに狙いを定められずにいた。

しかし修也しゅうやも無暗に近づくことはなく

近づいては距離を離すのを繰り返していた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「逃げてばかりじゃ終わらないわよ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それもそうだな…」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやが今まで以上に足を大きく踏み込んだ。

その速度は目で追うのがやっとの俊足であった。

校舎の真横に立つと校舎を蹴り身体を浮かせ、一瞬にして東郷とうごう の後ろへと回る。



夢野 天ゆめのそら

「危ないっ!!」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごう が振り返ると修也しゅうやは既に刀で斬りかかっていた。

その時、東郷とうごう はそっと呟く。



東郷 椎菜とうごうしいな

「やっと間合いに入ってくれた」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごう は懐からショックガンをもう一つ取り出す。

そして二発の銃弾を発射する。その二つの稲妻が重なり合い、大きくなると修也しゅうやへと襲い掛かった。

咄嗟に回避した修也しゅうやであったが、刀に稲妻が触れ、刃先から電気伝導で修也しゅうやへと電撃が走る。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは苦悶の表情を浮かべていた。

東郷とうごう は二丁のショックガンに新たなマガジンを装填し、間髪を入れずに追撃を入れる。



東郷 椎菜とうごうしいな

「……チェックメイト」

死銃乱射デス・ガトリング



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

ショックガンのトリガーを長押しした。

すると二丁の銃頭の先端が変形し、先端の銃口が収縮する。

そのまま東郷とうごう は壁を蹴り上がり空へと飛んだ。

そして銃を修也しゅうやへと構えるとトリガーを引き続ける指を離した。

銃口からは先ほどとは違い、細かくなった小さな電撃の弾丸が機関銃のように高速発射される。

雨のように降り注ぐ電撃は無残にも修也しゅうやに降り注いだ。



東郷 椎菜とうごうしいな

「やった…かしら?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天幻肖まてんげんしょう



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

先ほどまで地上で死銃乱射デス・ガトリングを受けていた修也しゅうやが、突如、空中に飛んだ東郷とうごう の後ろへと飛び上がっていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「なっ!!?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやはかかと落としを東郷とうごう へと繰り出す。

それを咄嗟に振り返り両腕で防御した東郷とうごう であったが

代わりに着地の際に蹴りの反動を受けたため腕を使えずに背中から地面に叩きつけられた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「がぁっ!!」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは倒れた東郷とうごう へと刃を向ける。

そして刀を振り下ろした。

カキンと辺りに鉄同士が勢いよくぶつかり合う甲高い音が響く。

倒れた東郷とうごう の前にそら が立ちふさがり、修也しゅうやの斬撃を抜刀した刀で受け止めていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…次はお前か?」



夢野 天ゆめのそら

「戦うつもりなんてないけど‥‥

引かないっていうなら反撃するわ」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやは静かな目でそら を見ていた。

その目はとても涼し気であり、敵を相手にしたときに向けるような敵意に満ちた視線ではなかった。



夢野 天ゆめのそら

「‥‥修也しゅうや君」



敷島 遥斗しきしまはると

「そこまでだ。お前ら」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

三人のもとに一人の生徒が歩いてきていた。

その顔は天も東郷とうごう も知っている。

月ノ都つきのみやこ学園生徒会長 敷島 遥斗しきしまはると

歴代会長の中でも有数の頭脳と戦闘センスを持ち、その非の打ちどころの無さから学園最強と謳われる存在であった。



敷島 遥斗しきしまはると

神蔵かぐら、下がれ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「しかしーーー」



敷島 遥斗しきしまはると (被せ)

「下がれと言っている」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

敷島しきしま修也しゅうやへと落ち着けと言うようにハンドサインを送る。

それを見ると修也しゅうやそら と重ね合う刀を引き鞘へと納刀のうとうする。

そら もそれに合わせ納刀のうとうする と東郷とうごう を庇うように前に立つ。



敷島 遥斗しきしまはると

「おいおい。これ以上、二人に危害を加えるつもりはない

それよりも三人とも怪我はないか?」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

東郷とうごうそら に肩を借りてゆっくりと立ち上がると、不敵な笑みを浮かべながら鼻で笑った。



東郷 椎菜とうごうしいな

「怪我って程でもないわ

刀で斬られてたら大怪我だったでしょうけどね

強いて言うなら制服が汚れたくらい?」



夢野 天ゆめのそら

「生徒会長‥‥ありがとうございます

会長が来なければ私たちはまだ戦っていたでしょうから」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前ら二人も逃げ場がなかったわけだ

戦わざるを得なかったのだろう

生徒自身に最善を判断させ行動させるよう学園が教えてきている

だが生徒会へと攻撃を仕掛けたお前ら二人の弁解など本来聞く義理はない

不良生徒を執行するのは生徒会の仕事だ

神蔵かぐらの判断は間違っていない

お前らもそれは理解してくれ

そもそも生徒会棟に忍び込む事自体、校則違反だ

ルールを守れない奴に言い訳をする資格はない

わかるな?」



夢野 天ゆめのそら

「…そうですね

すみませんでした」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前らの処分について…だが

今回は一方的に怪我をさせてしまった生徒会にも非がある

女性に手を出した事も恰好がつかない…

という事でお前ら二人は今から生徒会室でお説教だ。神蔵かぐらもそれでいいだろ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「任せます」



敷島 遥斗しきしまはると

「なら、神蔵かぐらはもう寮に戻れ

時間も遅い

今日は色々頼み事をしてしまったからな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「いえ、仕事ですから

それでは失礼します」



N→ 城ヶ崎 健じょうがさきたける

修也しゅうやそら東郷とうごう に目を向ける事なく敷島しきしま に一礼をすると去っていった。



敷島 遥斗しきしまはると

「着いてこい」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

三人は生徒会棟に入っていき、生徒会室へと通される。

生徒会室の中には全員が円状に座れるように机が配置されており、部屋の各所からいくつか扉のない部屋に繋がっており、そこには机と椅子、棚等が置いてあった。

その最奥に唯一扉のある部屋があり一同はその前に立つ。



敷島 遥斗しきしまはると

「ここが生徒会室だ。見た事ないだろ?

ここを見る事ができるのは生徒会役員や教員以外ではそこまで多くないだろうからな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

扉にはドアノブが付いておらず、本来ドアノブがある部分に黒い電子プレートがついていた。

敷島しきしま はそこに学園支給の携帯端末を翳すとロックが解除される電子音が鳴る。



敷島 遥斗しきしまはると

「ここが俺の部屋だ

生徒会役員以外の生徒を入れたのはお前らが初めてだ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしま は自室の席に着くと立っている二人を見た。



敷島 遥斗しきしまはると

「おっと、すまんな。立って聞けってのも酷だろう

適当な椅子ですまんが座ってくれ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしま は立ち上がり、自室の壁に立てかけてあるパイプ椅子を二人に渡す。



夢野 天ゆめのそら

「いえ、大丈夫ですよ!!

…申し訳ないでー」



敷島 遥斗しきしまはると (被せ)

「女性を立たせて話すなんて罪悪感が勝って話ができん

良いから座ってくれ。俺の顔を立てるってことでな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

二人は敷島 しきしま が席についたのを見計らい腰をかけた。



敷島 遥斗しきしまはると

「さてと…まず初めにこんな時間に立ち入り禁止の棟に侵入しようとした訳を聞こうか?

先に言っておくが嘘はつかない方が身のためだ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら敷島しきしま の表情が変わるのを察する。

生徒会長の貫禄を前に委縮してしまい、そら は言葉を出せずにいた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「侵入した目的はこの部屋に入る事よ」



敷島 遥斗しきしまはると

「ほう?それは何の為だ?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「学園一の権力者である生徒会長

一般教員や特別教師よりも地位が高く、学園全体では学園長の次に座している

…そんな人の部屋にはかなりの情報があるはずと思ったのよ」



敷島 遥斗しきしまはると

「なるほどな

なら少し質問してもいいだろうか?

お前らは何を調べようとしている?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「‥‥同好会の件についてよ

ここの方が生徒の噂よりも信憑性があると思ってね」



敷島 遥斗しきしまはると

「………なるほどな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「貴方はあの事件についてどう思ってるの?」



敷島 遥斗しきしまはると

「今回の事件は未然に防ぐことのできなかった我々生徒会の至らぬところが引き起こした惨劇だ

巧妙に仕組まれた作戦だったのだろうな

何も出来ぬまま最悪の事態を招いてしまった

早急に今回の犯人である八木原やぎはら を捕まえて事実を聞き出さねばならない」



夢野 天ゆめのそら

「……あの!」



敷島 遥斗しきしまはると

「なんだ?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしまそら の方を向き、静かに返答を待った。



夢野 天ゆめのそら

「あの事件…について

真実ではない事が多いんです…

隠している事があって」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どういうこと?隠しているってのは」



夢野 天ゆめのそら

「今回の事件の首謀者

八木原やぎはらは既に死んでいます…

あいつが持っていた刀には人智を超えた力がありました

その刀は殺した人をまるで飲み込むように消してしまうんです…

八木原やぎはらはそれで生徒たちを次々に殺していきました

定介じょうすけ 君も月夜つくよ ちゃんもその犠牲になって…

その後、私に刃を向けました…

助けに来た修也しゅうや君が八木原やぎはらを倒して、その刀で八木原やぎはらを殺しました

その刀はまだ修也しゅうや君が持っている…はずです」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どういうこと?

人智を超える力を持つ刀…妖刀……?」



夢野 天ゆめのそら

「信じてもらえないと思いますが…全て事実です」



敷島 遥斗しきしまはると

「信じるよ

というより今の話で合点がいった部分もある

今回の件には不可解な事が多い

犠牲者と首謀者が消失した事件

生徒会が到着するまでの時間に両者が発見できなかったのは

まるで本当にそこから消えたとしか思えない

ただ虚偽の情報を告げたのは何故なんだ?」



夢野 天ゆめのそら

「信じてもらえないかと思いました」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうか…生徒会がそんなに信じられなかったのか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「その刀‥‥さっき二宮にのみやの話にあった妖刀とみてもいいかしらね

魔と怪を切り裂く刀

欲を切り裂く刀

のぞみ を切り裂く刀

この三つのうちの一つと見るべきね」



夢野 天ゆめのそら

「多分修也しゅうや 君はそれを探してて…同好会に潜入したと言ってました」



東郷 椎菜とうごうしいな

神蔵 修也かぐらしゅうやは何らかの目的を以て行動している

…となるとまだこの学園に目的があるのかしら?」



夢野 天ゆめのそら

「きっとまだ妖刀があるんじゃないかな…

って事は八木原やぎはらみたいに考えてる人が他にもいるかもしれない‥‥」



敷島 遥斗しきしまはると

「妖刀…」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そこで敷島しきしま はゆっくりと目を瞑った。



敷島 遥斗しきしまはると

「今から見せるものについては他言無用で頼む」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしま は本棚の横に手を置いた。

二人が覗き込むように手元を見ると

そこには隠すように黒い電子パネルが設置されてあった。

敷島 しきしま は自らの携帯端末を翳すと、壁の一部が引き出しのようになり

その中から横長のアタッシュケースを取り出す。

ケースの開口部には扉のものに似た黒い電子パネルが付いてあった。

敷島しきしま はポケットからもう一つの年季の入った携帯端末を取り出しその上に翳す。

するとアタッシュケースが自動で開いていく。

その中には一つの刀が入っていた。



夢野 天ゆめのそら

「刀…!?これって!!

八木原やぎはらの刀と同じ!!?」



敷島 遥斗しきしまはると

「この刀は代々この学園の生徒会長が所持を許される虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ

人智を超えた力を持つこの刀は才能を有する者に更なる力を与える

もしも刀に見合わぬ力の者がこの刀に触れるとそいつはまるで鏡が砕ける様に消滅する。

生徒会長は学園の長として例外なく実力ある者が選ばれる

故にこの刀は所持出来る事が多い。」



東郷 椎菜とうごうしいな

「これが…?」



夢野 天ゆめのそら

「触ったら消えちゃうんだよ!!気を付けて!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私に才能がないって言いたいの?」



夢野 天ゆめのそら

「えっと、そういうことじゃ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ちょっとからかっただけよ

つまり、神蔵 修也かぐらしゅうやはこれを狙っているのね」



敷島 遥斗しきしまはると

「これが目標となると…

みすみす生徒会へと入れてしまったわけだ

俺を狙う機会ならいつでも訪れるだろう

神蔵かぐらの強さはわかっている

奴を引き入れたのは俺だからな

俺よりも圧倒的に強いのはわかっている

普通に戦ったのならば勝ち目はない

この刀を使えば…あるいは勝てるだろう

だがこの刀は緊急時以外は使わないようにしているんだ

先ほども言ったが触れただけで人を消しかねない刀だ

恐ろしくもなる」



夢野 天ゆめのそら

八木原やぎはらの持っていたのは御影ノ邪刀みかげのやつるぎ って呼んでた

才能のない人間に力を与える…

人が絶望したときに殺すと力を増す

そんな事を言っていました」



東郷 椎菜とうごうしいな

「この刀は才能のある人間しか使えない

対照に八木原やぎはらの刀は才能のない人間に力を与えるのよね

彼はお世辞にも強いとは言えなかった

生徒会になんて入れる器ではないほどに

そこで妖刀の力を得て生徒会を超えようとしたのね」



敷島 遥斗しきしまはると

「生徒会への妬みが積まれていく中で

自らも強くなりたいと膨れ上がった欲望が奴を変えてしまったのだろう

元々どんなやつだったのか知らないが

もしかしたらその力に狂わされた被害者の1人なのかもしれないのかもしれないな

まぁ、今となってそれを言っても仕方ない

生徒会としてもあんな惨劇が再び起こるような事は防がねばならない」



夢野 天ゆめのそら

「でも修也しゅうや君はなんで妖刀を集めているんだろう…?」



敷島 遥斗しきしまはると

「それは本人に直接聞いてみるしかないだろう。今はそれしかできる事はない」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

突如、扉がノックされる。

扉の外には城ヶ崎じょうがさき が立っているようで扉越しに声をかけた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長。もうこんな時間です。

続きは明日以降にして、そろそろ二人を帰さなければ生徒内で噂になるでしょう」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうだな…

お前ら、今日はもう帰れ

充分説教はしたからな

行け」



夢野 天ゆめのそら

「で、でも…!修也しゅうや君になんて聞くんですか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「それは俺に任せておけ

俺の質問ならば少なからず耳を傾けるだろう

城ヶ崎じょうがさき。二人を外まで送ってやってくれ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「かしこまりました」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そう言うとまだ何か言いたげなそら東郷とうごう を連れて城ヶ崎じょうがさきは生徒会室から出て行った。



敷島 遥斗しきしまはると

「…神蔵かぐら

何が狙いなんだ?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

数分後。城ヶ崎じょうがさきが生徒会室へと戻ってきた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長。もうお休みになっては?

一日中休まず職務をこなされています

休息を取ろうとも誰も文句は言わないでしょう

今回の事件を気に病んでいるのはわかりますが、会長が倒れては元も子もありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「すまないな」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「今回の一件は私の監督不行き届きが招いた結果です

会長には何の非もありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前に非を作ったのは間違いなく俺だ……

いずれお前は生徒会長を継ぐ人材だ

そんなお前の顔に泥を塗ってしまった

城ヶ崎じょうがさき…お前は歴代の会長、俺をも凌ぐ逸材になるとみている………

そんなお前に失態を犯させた事は一生悔いが残るだろう

すまない…」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「いえ、お気になさらず

私如きの顔、立てるまでもありません

それでは今日のところは私も失礼します

会長もご無理をなさらぬようお休みください」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

城ヶ崎じょうがさきはそのまま生徒会室を出て行く。

敷島しきしま は席に戻ると城ヶ崎じょうがさきが行った職務の完了書が置かれていた。

今日の仕事が終わっているだけではなく、会長がこの後、本来やるべき仕事を全て代わりに終えていたのだ。



敷島 遥斗しきしまはると

「ふっ…流石だな

本当にあいつは凄い奴だ

俺のような無能とは違う

まさしく学園を背負って立つ天才だ…

戦闘に置いても奢る事なく、鍛錬を極めている

…ハハッ。勝てないな

生徒会として…人として…

あいつが導く学園を早く見てみたい」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

敷島しきしま は部屋を後にしようと後ろを振り返ると急に酷い目眩に襲われる。

倒れそうになるも咄嗟に机に手をかけ、倒れるのを阻止した。



敷島 遥斗しきしまはると

「っ!!?…頭が痛い

…疲れているみたいだ

今日は休もう……」



N→夢野 天ゆめのそら

その頃、神蔵 修也かぐらしゅうやは寮への道を歩いていた。

空を見上げると既に日は落ち暗くなっており、街灯の明かりがないと道が見えにくくなっている。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…足音?」



N→夢野 天ゆめのそら

後ろから跡を付けるように足音が近づいてきていたのに修也しゅうやは気がつく。

振り返るも姿は見えなかったが確かに何者かが来ていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…いるのはわかってる

出てこい」



N→夢野 天ゆめのそら

何者かは修也しゅうやに向かい急速に近づいてきていた。



謎の男(敷島 遥斗しきしまはると 役兼任)

「…ミツケタ」



N→夢野 天ゆめのそら

謎の男は突如として修也しゅうやへと斬りかかった。

修也しゅうやは咄嗟に刀で受け止める。

しかしーーー



謎の男(敷島 遥斗しきしまはると 役兼任)

影斬かげきり



神蔵 修也かぐらしゅうや

「強いっ!?」



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうやは力を増した攻撃を抑えながらジリジリと後ずさりするように押されていった。

謎の男の重い攻撃に体勢を崩されぬようバランスを保ちながら下がっていく。

その刀は鈍く深い蒼色に輝いており、刀が黒い影を纏うように黒くなっていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……この刀、この影は一体…?

まさか、これは…虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ !!?」



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうやは刀を思い切り横に弾き、飛び下がる。

辺りに街灯はひとつしかないため、非常に暗く、声と体格以外が判別できず、その謎の男の正体がわからなかった。



謎の男(敷島 遥斗しきしまはると 役兼任)

「オマエ……ナニモノ

ヤツルギ………ドコダ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前もこれをお探しだったようだな」



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうやは持っていたボロボロの刀を投げ捨て、もう一つ腰に下げて持っていた刀袋を両手に持つ。

中には御影ノ邪刀みかげのやつるぎ が納刀された状態で入っていた。

その柄に手を添え、抜刀する。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「この刀……あいつの後に使うのはお前が初めてになる

今の所有者は俺だ……さぁ、お前の力を見せてみろ」



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうやの言葉に呼応するように刀から深緑色の光が輝く。

辺りを照らしていた光はやがて刀に飲み込まれるように消えていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なるほど…才能の無い者に力を与える刀…

常人が使えば力に耐えられず溺れていく

だが俺は大丈夫なようだ

触れられる…力も問題なく使えそうだ…」



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや御影ノ邪刀みかげのやつるぎ を謎の男へと向ける。

そして正面から思い切り斬りかかった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……過度な欲は人を喰らうか

刀にそれを言われるとは何とも頭が痛いな」

朧雲おぼろぐも



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや御影ノ邪刀みかげのやつるぎ を背中に沿うように構えた。

そして思い切り真横を通り過ぎる。

その後、背面に立つ謎の男に向かって一閃、抜刀する。

その斬撃は謎の男を確実に捉えていた。

だがーーー



謎の男(敷島 遥斗しきしまはると 役兼任)

「…コレハ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「流石に慣れない技は成功しないか…案外難しいものだな」



N→夢野 天ゆめのそら

謎の男はその一撃を虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ で防いでいた。

そして刀身を修也しゅうやへと構える。

それを見ると修也しゅうやは先程捨てた刀を拾い、暗闇の中へ隠れた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…その刀は確か才能を有するものに更なる力を与える妖刀

相当な手練であるのはわかる

お前の構えは特殊だからな

ここで戦わずとも正体は掴める…」



N→夢野 天ゆめのそら

修也しゅうやはそのまま姿をくらませた。

謎の男は辺りを探し回ったが見つけることができなかった。



謎の男(敷島 遥斗しきしまはると 役兼任)

「ドコダ……ヤツルギ」



N→夢野 天ゆめのそら

その頃、生徒会棟付近では城ヶ崎じょうがさき が寮へと戻る道を歩いていた。

そこに後ろからこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえる。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……会長?」



N→夢野 天ゆめのそら

城ヶ崎じょうがさき はその足音が敷島しきしま のものであると判別し足を止める。

暗闇から敷島しきしま が頭を抑えながら苦痛の表情を浮かべて歩いてきていた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長!大丈夫ですか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「……大丈夫だ

っ…少し頭痛がする…だけだ

それよりお前はまだ帰っていなかったのか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「戸締りの確認をしていました

他の生徒会員が閉めていたのでしょう

問題はありませんでした」



敷島 遥斗しきしまはると

「そうか…なら良かった

すまないが…城ヶ崎じょうがさき

寮まで着いてきてくれ……

俺が大丈夫か監視しておいてくれ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…勿論、着いていきます

どうぞ、肩をお貸ししましょう」



N→夢野 天ゆめのそら

城ヶ崎じょうがさき の肩に掴まり敷島しきしま はゆっくりと寮へと向かっていた。



敷島 遥斗しきしまはると

城ヶ崎じょうがさき …少し話そう

黙って歩くのも暇だろ?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「お気になさらずとも…」



敷島 遥斗しきしまはると

「いや、その方が気が紛れる」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「ご無理をなさらぬようお願いします」



敷島 遥斗しきしまはると

「俺の仕事……代わりにやってくれたんだな…いつも悪いな

学園にいる時は俺がやらないといけないのに」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「不在時にやっているのと変わりません

他の仕事に差支えも無いので問題ありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「…………城ヶ崎 じょうがさき



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「はい」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前は間違いなく学園を…いや

世界を背負って立つ人間だ

お前はいずれ魔怪まかいをも滅ぼす事ができる

俺はそう確信している…

この長い人類絶滅の危機を……闇を払う英雄となる…………

そう、確信があるんだ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長は買い被りすぎです

私はそんな大層な人間ではありません」



敷島 遥斗しきしまはると

「俺はお前を信じている……

そんなお前に頼みたいことがある

この刀……わかるか?

虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ だ…」



N→夢野 天ゆめのそら

敷島しきしま はロックの外れたアタッシュケースから虚無ノ御刀うつなしのみつるぎ を取り出すと城ヶ崎じょうがさき へと見せた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「持ち歩いていたのですか?」



敷島 遥斗しきしまはると

「お前も知っているだろ?

この刀は人が持つにはあまりにも強大な力を秘めている

弱き者はこの刀を扱えない…

故に強き者が所持する事になる……

しかし、俺は…これを扱えるような精神力を持ち合わせていないんだ

怖いんだ……この力を持つ事が

これから何が起きるかわからない…

二つの妖刀が迫っている

それを狙う者…それを守る者…

今、両者は対立している……

決着が着く時……何かが起こる

事の重大さはわかっている…

だが…俺には責任が重すぎる……

こんな俺というちっぽけな器に収まるほどのものじゃない…

城ヶ崎じょうがさき ………お前にこれを持っていて欲しい

お前ならば力に溺れることはないだろう

この刀はお前の強力な武器となる

お前ならこの力の使い方を違えず世界を正しい方向へと導くことが出来る…

無理を承知で聞く…頼めないか…?」



N→夢野 天ゆめのそら

城ヶ崎じょうがさき は少し考えたのち、虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを差し出す敷島しきしま の手を押し返す。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「この刀は生徒会長以外の所持は禁止されています。

規則を破る訳には行きません」



敷島 遥斗しきしまはると

「ならば…城ヶ崎じょうがさき

お前が今から生徒会長になってくれないか?」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「それもお断りします

会長選挙は年に一度

年度内に緊急で変わる時は会長が退任、死亡等の場合のみ

不在時期から二ヶ月後に緊急生徒会長選挙が開始され

そこで決める。そう校則で定められております」



敷島 遥斗しきしまはると

「だが…俺はこの刀にいつ操られるかわからない。

正直、自信が無い…不安なんだ」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「…会長!」



N→夢野 天ゆめのそら

俯く敷島しきしま城ヶ崎じょうがさき は強く呼びかけた。



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「会長ならば大丈夫です

貴方が私を『世界を背負う人間』というならば

それを育てたのは紛うことなき会長ご自身です。

しかし、もしも会長が校則や人道に背く行為をしているのならば私が会長を斬ると約束しましょう」



敷島 遥斗しきしまはると

「励ましているんだか脅しているんだか…

ハハ……少し安心したよ

ありがとう」



城ヶ崎 健じょうがさきたける

「……会長。着きましたよ」



N→夢野 天ゆめのそら

敷島しきしま はゆっくりと寮へと入っていく。

城ヶ崎じょうがさき は寮の外から敷島しきしま が見えなくなるまで見送っていた。

その二人を遠くから隠れるように見る東郷 椎菜とうごうしいなはひっそりと呟いた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「そういう事ね…大体わかったわ

二宮にのみやへのいい手土産になるわね」



N→敷島 遥斗しきしまはると

その頃、寮へと戻った夢野 天ゆめのそら は椅子に腰をかけて考え事をしていた。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君が虚無ノ御刀うつなしのみつるぎを狙っている

生徒会長を狙うならどのタイミング…?

会長が一人になる時……生徒会室の中で?」



夢野 天ゆめのそら

「生徒会室にはもう入れる機会はない…

どうすれば……」



夢野 天ゆめのそら

「生徒会に入れれば……まだチャンスはある」



N→敷島 遥斗しきしまはると

そして二週間後

神蔵 修也かぐらしゅうやに続き新たに生徒会に人員が加わった。

その生徒は監査により実力を買われ、その力を試すべく行われた非公式戦において生徒会監査の二人を同時に相手にし、尚、圧倒し、勝利を収める。

その生徒の名は………夢野 天ゆめのそら

少女は刀を納刀し空を見上げる。

その目には決意が満ち満ちていた。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君……私は貴方を止める」




次回

桜ガ散ル頃ニ


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・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます


・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

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https://twitter.com/kaguratizakura

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