血桜ハ還リ咲ク 零章

ミクロさん/kagura

前編 桜ハ芽ヲ咲カセズ 

登場人物名

八木原 旭やぎはらあさひ

17歳

同好会の創設者

普段は面倒見がいい男子生徒

成績は別段優秀というわけではなく、至って平凡な先輩




岩城 定介いわきじょうすけ

16歳

~っすといった特徴的な語尾の男子生徒

無神経なところもあるが素直な性格




夢野 天ゆめのそら

16歳

学園ではひっそりと人気な女子生徒

紅茶やお菓子作りが趣味




南雲 月夜 なぐもつくよ

15歳

自由気ままな女子生徒

定介とよく些細なケンカをする




神蔵 修也かぐらしゅうや

16歳

白髪、黄色の目をしている美少年の男子生徒

過去に何かがあったらしいが詳細は誰にも明かさない




Nは→後のキャラ演者が読む




役表

八木原 旭やぎはらあさひ♂:

岩城 定介いわきじょうすけ♂:

夢野 天ゆめのそら ♀:

南雲 月夜 なぐもつくよ♀:

神蔵 修也かぐらしゅうや 不問:






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       血桜ハ還リ咲ク 零章

      「桜ハ芽ヲ咲カセズ 」











N→神蔵 修也かぐらしゅうや

桜が散る前の鮮やかな日々

今は透き通り消えていったあの頃の情景

まだ笑顔が溢れていた頃の‥‥幸せな一時

窓から漏れ出す風は心地よく

空を眺める少女の髪を優しく揺らす



夢野 天ゆめのそら

「いい風、それに桜が綺麗ね」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

こぢんまりとした教室の窓から校庭を眺めている少女、夢野 天ゆめのそら はポツリと呟いた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「いい風なのは結構だけど、紙が飛ぶから閉めてほしいかな」



夢野 天ゆめのそら

「ごめんね、邪魔しちゃって

それよりあさひ君は何をしているの?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「せっかく同好会なんてやってるんだからさ

何か趣向を凝らした企画でもできないかって考えてるんだよ」



夢野 天ゆめのそら

「それいいアイデアだね!

確かにいつも集まって話すだけで時間が来たら解散って感じだもんね」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ちょうど桜も咲いてるし、花見とかどうかなって思って

生徒会に聞いてみたらやってもいいそうだからさ」



夢野 天ゆめのそら

「賛成!お弁当とかお菓子も持っていきたいわね」



八木原 旭やぎはらあさひ

「って言っても同好会のメンバーだけだったら普段と変わらないだろ?

だから同好会以外の生徒も参加ありにして

もっと多くの人と交流を図ろう!みたいな名目でさ」



夢野 天ゆめのそら

「うーん…それはすごくいいんだけど、人が集まるか心配ね

今の時期ってみんな進路とかで動き出してるだろうし

この学園って普通校と比べて特殊なのもあって

暇なのって私たちくらいなんじゃない?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「そうなんだよな。

俺らって別段、他クラスの子と交流が深いわけじゃないから急に新規では入りづらいと思うんだよな

なにかこう、インパクトのある企画というか興味を引くようなことがあればいいんだがーーー」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

突然、教室の扉が開く。

教室内に汗だくになった顔をタオルで拭きながら

ぐったりとした様子の男子生徒が入ってきた。



岩城 定介いわきじょうすけ

「おつかれっす~そらちゃんと八木原やぎはら先輩」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

岩城 定介いわきじょうすけはソファーにドサッと音を立てて

勢いよく座ると大きく深呼吸しながら天井を見上げていた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「今日は魔怪まかい対処の演習授業だったのか?だいぶ疲れてるな」



岩城 定介いわきじょうすけ

「疲れてるなんてもんじゃないっすよ!!

今日の講師が結構ハードなメニューをやらせるんでしんどかったっす!!」



夢野 天ゆめのそら

「お疲れ様。定介じょうすけ君、紅茶なられれるけど飲む?」



岩城 定介いわきじょうすけ

そら ちゃ~ん、それは勘弁してほしいっす、疲れて汗だくなのに熱いお茶なんて飲めないっすよ」



夢野 天ゆめのそら

「そう?じゃああさひ君は飲む?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ちょうど一息つこうと思ってたから頂こうかな」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら が机の上にあるポットに手を伸ばした瞬間

扉がバーンと勢いよく開いた。



南雲 月夜 なぐもつくよ

「つかれたー!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

扉を思いきり開けて中に入ってきたのは同好会メンバーの中で

最年少の女子生徒 南雲 月夜 なぐもつくよであった。

疲労しきった様子の月夜 つくよはフラフラとした足取りで教室へと入ってくる。



岩城 定介いわきじょうすけ

月夜 つくよちゃ~ん?開けっ放しにしないでほしいっす」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

定介じょうすけがソファーから立ち上がり扉を閉めにいく。

それと同時に後ろからドサッと音がする。

振り返ると月夜 つくよが手足を広げソファーに寝っ転がっていた。



岩城 定介いわきじょうすけ

「あ!ちょっとそこ俺が座ってたっすよ!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「立ち上がったのが悪いんじゃーーー!

もうここは私の縄張りじゃあーーー!!」



岩城 定介いわきじょうすけ

「えぇ、ずるいっすよ!俺だってソファーで休みたいっす!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「レディファーストって言葉を知っておるか!」



岩城 定介いわきじょうすけ

「そんなこと言って月夜 つくよちゃん、いつも寝っ転がったらそこからどかないじゃないっすか!ボーイセカンドはいつ来るんすか!」



夢野 天ゆめのそら

「無駄よ定介じょうすけ君。

月夜 つくよちゃんがソファーに居座ったらそこは不落、不沈の強固な要塞となる

あれを攻略するにはそれ相応の戦力がいるわ」



八木原 旭やぎはらあさひ

「そこまで言うか!?ただソファーから離れないだけだよな?」



岩城 定介いわきじょうすけ

「くっ!!この教室ソファー1個しかないのにいつも月夜 つくよちゃんが使うじゃないっすか!しかも全体で寝転がるからスペース一人占めっすよ?」



夢野 天ゆめのそら

「そうね~どかせるか一回試してみるわね、月夜 つくよちゃーん?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

そら 先輩~なんですか~?」



夢野 天ゆめのそら

「あまーいお菓子が〜余ってるんだけど〜?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「何があるっすか!?」



夢野 天ゆめのそら

「クッキーよ。私が今朝作ったものだけど作りすぎちゃって」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「う~!もってきて~!!」



夢野 天ゆめのそら

「しょうがないわね~。はい、あーん」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「あ〜ん」



岩城 定介いわきじょうすけ(被せて)

「渡したら駄目じゃないっすか!てか結局動く気配ないっすけど?」



夢野 天ゆめのそら

「可愛かったから…ついね?

でもこれいつもより疲れてるわね。いつもお菓子に釣られて立ち上がるのに」



八木原 旭やぎはらあさひ

「見た目通り単純な奴だからな」



夢野 天ゆめのそら

月夜 つくよちゃんの完全防御の要塞モード…

こうなったら我々人類に成すすべはないわ。あきらめましょう」



岩城 定介いわきじょうすけ

「まじっすか~、じゃあ生徒会に頼んでソファーもう一個買ってもらおうっす!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「学校に何も貢献してない同好会にわざわざ学校の費用を割くわけないだろ

それにその辺の事を担当する副会長は結構な堅物だって聞くから大方無理だろうな」



夢野 天ゆめのそら

月夜 つくよちゃん?ほら、クッキーよ」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「ありがとおおおお!

(可愛くあざとく)そら 先輩大好きです♡」



岩城 定介いわきじょうすけ

「そういえば八木原やぎはら先輩なにしてるっすか?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あぁ、さっきそら にも話してたんだが花見でも企画しようかと思ってな

せっかく開いた同好会なのに俺らが今やってることと言ったらただのお茶会だろ?」



夢野 天ゆめのそら

「それでもいいじゃない」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あくまで俺が考えてたのは沢山の生徒と交流を図るための同好会なんだ

現状の身内だけの同好会なら生徒会に消されかねないだろ」



夢野 天ゆめのそら

「それもそうね」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「花見ってどこでやるんですかー?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「とりあえずこの校舎の中庭が候補かな

よし、ある程度の企画書はできたし一度生徒会に出してくるかな」



岩城 定介いわきじょうすけ

「そうっすね!善は急げっす!早く出しにいくっす!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「そうだな、定介じょうすけ着いてきてくれるか?

生徒会棟って一人で入るの勇気いるんだよな」



岩城 定介いわきじょうすけ

「わかるっす。あそこはちょっとおっかない感じがして棟の近く通るのも緊張するっすよね」



八木原 旭やぎはらあさひ

「じゃあ俺はこれを出しに行って、そのままここには戻ってこないから戸締り頼む」



夢野 天ゆめのそら

「わかったわ」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「任せてくださーい」



八木原 旭やぎはらあさひ

「お前には心配すぎて任せられん」



岩城 定介いわきじょうすけ

月夜 つくよちゃんだと忘れちゃいそうっすね」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「あー!!二人して馬鹿にしてるっすね!!そら 先輩何か言い返してやってくださいよ!」



夢野 天ゆめのそら

「えぇ。不安かもだけど、私がいるから安心してちょうだい?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「ん、先輩?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「じゃあ、頼んだぞ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはら定介じょうすけは教室から出ていく。

月夜 つくよは二人が見えなくなるまで舌を出していた。



夢野 天ゆめのそら

「この後月夜 つくよちゃんはどうするの?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「まだここでゴロゴロしてたいです~」



夢野 天ゆめのそら

「私この後資料室に行くのだけれどここで待ってる?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「待ってま~す」



夢野 天ゆめのそら

「そう?じゃあ行ってくるわね」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そら は教室を後にし、資料室へと向かう。

そうして資料室に着いたそら は棚を確認していた。

明日以降の授業で使う魔怪まかい出現の参考書を探し始める。



夢野 天ゆめのそら

「えっと…この列だから‥‥‥結構高い位置にあるわね」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

飛び上がれば届くだろうが、棚を倒すと危ないので脚立を探すことにする。

資料室を歩いていると脚立が動く重い音が近くから聞こえた。

隣の列に顔を覗かせると脚立に上り資料を読んでいる生徒がいる。

その生徒に向かってそら は声をかけた。



夢野 天ゆめのそら

「すみません~ちょっと後で脚立借りてもいいですか?」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

呼びかけると上にいた生徒がそら をちらりと見た。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「何があるか見てただけだから使っていいよ」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

白みがかった髪と宝石のように綺麗な黄色い瞳をした少年が脚立から降りてくる。

その姿は身長がもっと小さければ中学生と間違われるほど童顔の美少年であった。



夢野 天ゆめのそら

「かわいい…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに?」



夢野 天ゆめのそら

「え!?…なんでもない!ごめんね?とっさに口からでちゃって…!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…まぁなんでもいいよ」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そのままきびすを返し、立ち去ろうとした。



夢野 天ゆめのそら

「ねぇ名前なんて言うの?学年は?」



神蔵 修也かぐらしゅうや(被せて)

「…神蔵 修也かぐらしゅうや、第二学年」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そら は驚きの声をあげた。

目の前の美少年と同い年だとは思わなかったのである。



夢野 天ゆめのそら

「え?同学年!?クラスが違うからわからなかった」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そっか…それで?」



夢野 天ゆめのそら

「えっと~?呼び方は神蔵かぐら君でいい?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…名字呼びは嫌いだ。修也しゅうやでいい」



夢野 天ゆめのそら

「そう?わかった。えっと、修也しゅうや君は何してたの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…特になにも」



夢野 天ゆめのそら

「ふーん、そう…あっそうだ!

ねぇこの後、暇?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…何もないけど」



夢野 天ゆめのそら

「じゃあちょっと資料探すの手伝ってほしいんだけどお願いしてもいい?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺が?」



夢野 天ゆめのそら

「目の前にいたから?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「勝手だな、暇だからいいけど」



夢野 天ゆめのそら

「ありがとう!修也しゅうや君」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

修也しゅうやは面倒そうに言われた資料を取っていく。

すべての資料を探し終わりファイルにまとめるとそら は脚立を片付けた。



夢野 天ゆめのそら

「本当にありがとう。助かったわ

ところで修也しゅうや君は同好会って興味ない?」



神蔵 修也かぐらしゅうや(即答して)

「興味ない」



夢野 天ゆめのそら

「そ、そう?

あのね、私が入っている同好会があるんだけど

人が少なくてさ?修也しゅうや君に入って欲しいな~?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺が?」



夢野 天ゆめのそら

「え~?顔が可愛いから?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「理解に苦しむ」



夢野 天ゆめのそら

「そうかな?結構、賛同してくれる人は多いと思うけど?

じゃあ早速、明日の昼休み。C棟の4階に空き教室が何個かあるんだけど

その扉に同好会の看板がある教室にいつも集まってるんだ。

良かったら来てくれないかな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「もう行くつもりで話を進めるな

俺が行く必要性を感じないしな」



夢野 天ゆめのそら

「そんなこと言わないでよ~修也しゅうや君」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺が行く義理があるんだ

てかそもそも俺はお前の名前も知らないんだぞ」



夢野 天ゆめのそら

「そういえば名乗ってなかったね!

私は夢野 天ゆめのそら よ。

そら って呼んでくれると嬉しいな?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんで俺があんたを呼ぶ必要があるんだ」



夢野 天ゆめのそら

「むー…つれないな〜!

あっ、そろそろ戻らないとだ!

修也しゅうや君!明日絶対に来てね!」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そら は手を振りながら走り気味に去っていく。

取り残された修也しゅうやは深くため息をついた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…まったく、台風みたいなやつだな

でも、なんか嫌悪感はねぇな

温かさまで感じるような

なんだあいつ……夢野 天ゆめのそら ね」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

次の日の昼休み

授業を終えたそら は同好会の教室で紅茶を淹れる準備をしていた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「それでその希望者はいつ来るんだ?全然来ないけど」



夢野 天ゆめのそら

「そろそろ来ると思うんだけどなー」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「本当にそんな人いるんですか~?そら 先輩?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「まさかだが、お前無理やり誘ってたりしないよな?

お前って結構強引なところがあるからな…」



夢野 天ゆめのそら

「そ、そんなことない…よね?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「はーい!

八木原やぎはら先輩!私、予想していいですかー?

多分見た目が好みの男の子だったんですよ!!」



夢野 天ゆめのそら

「待って!!?

どうしてそういうことになるの!!?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「どうせまた中性的な男子とかじゃないのか?お前好きだもんな」



夢野 天ゆめのそら

「そ、そんなことないよお!!ただ、偶然知り合ったってだけで!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「じゃあ、どんな顔だったんです?」



夢野 天ゆめのそら

「いや、その〜……………………

可愛い顔だったかな///」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「これはもう自白しましたね」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あぁ、そうだな」



夢野 天ゆめのそら

「違うの!ただ可愛い顔ってだけだから!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あれじゃないのか?どうせ静かそうな見た目だけど

案外口悪くて不愛想な奴だったんじゃないのか?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「そういう子に性格でギャップ萌えがあると余計に好きなんですよねー?」



夢野 天ゆめのそら

「なんで二人とも私の好みをしってるの!!?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

Rhineリーンのプロフィール画像ですね」



八木原 旭やぎはらあさひ

「よく読む少女漫画の好きなキャラクターの特徴が大体それだから」



夢野 天ゆめのそら

「う~!いいじゃない!!別に!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

八木原やぎはら先輩、そら 先輩が可愛いです」



八木原 旭やぎはらあさひ

南雲なぐもそら が単純なだけだ」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

突如ノックの音がする。



八木原 旭やぎはらあさひ

「おっと?ノックをするってことは定介じょうすけじゃないな、どうぞ」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

その声を合図に扉がゆっくりと開く。

そこに立っていたのは神蔵 修也かぐらしゅうやであった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…どうも?」



夢野 天ゆめのそら

「あ!ようこそ!!ここがーーー」



南雲 月夜 なぐもつくよ(被せ)

「えええ!!めちゃくちゃ美少年じゃないですかあ!!

うぇぇ〜まつ毛長っ!!肌白っ!!

ってか身体細っ!!?それに顔も整ってるなぁおい!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「こりゃ確かに美少年だな…同じ男の俺でもそう思う」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…帰っていいか?」



夢野 天ゆめのそら

「えっ…帰るの?」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

そら が悲しげな表情をする。

それを修也しゅうやは横目で見るとため息をついた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…来たばかりだからまだいるよ」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

それを聞きそら は途端にぱぁっと嬉しそうな表情を浮かべた。



南雲 月夜 なぐもつくよ(小声で)

「先輩…そら 先輩が可愛いです」



八木原 旭やぎはらあさひ(小声で)

南雲なぐも…今時こんなわかりやすい奴っているんだな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それで、ここは何をするところなんだ」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ここは元々全学年で交流を図るための同好会のつもりだったんだが…

思ったより人が来なくてただお茶会をするだけになったな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「こんな同好会やめたら?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「確かにあんまりやってる意味はないですよね」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ここがなくなったらこのソファーは間違いなく撤去だぞ?いいのか?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「それはだめ!!我が家を失うわけにはいかないっす!!」



夢野 天ゆめのそら

「そうだ!修也しゅうや君、紅茶飲む?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「紅茶………いただこうかな」



南雲 月夜 なぐもつくよ

そら 先輩紅茶淹れるのめっちゃ上手いよ!味も美味いんで二重にうまい!!」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

ドヤ顔をする月夜 つくよを周りが無視する中

ゆっくりと修也しゅうやが席に着く。

少ししてそら から紅茶の入ったティーカップを受け取った。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…いただきます」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

修也しゅうやは紅茶をゆっくりと飲み始める。

ティーカップを机に置き、そっと息をつくと感想を零した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「美味しいな」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

静かな時間が流れた後、月夜 つくよはソファーから動かずに修也しゅうやに話しかける。



南雲 月夜 なぐもつくよ

「名前はなんていうの?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あと学年を聞きたいかな」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「第二学年、神蔵 修也かぐらしゅうや



南雲 月夜 なぐもつくよ

「え?あ、先輩だったんですね!申し訳ないっす!!

えっと…先輩はそら 先輩とどこで知り合ったんですかー?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「昨日いきなり資料室で話しかけられた」



八木原 旭やぎはらあさひ

「それでここにどうして来たんだ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「来いって言われただけだ」



八木原 旭やぎはらあさひ

「やっぱ強引じゃねぇか」



夢野 天ゆめのそら

「え、え~っと?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「とりあえずそれはいいとしよう

修也しゅうや君だったっけ?この同好会に入りたいと思うか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「いや…」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

修也しゅうやそら の顔を再び見ると不安げな表情をしていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…まぁ、いつも暇だったから入ってもいいけど」



夢野 天ゆめのそら

「わぁぁ!入ってくれるの!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……あぁ

だがその代わり、たまには紅茶淹れてくれ」



夢野 天ゆめのそら

「うん!!!いつでも言ってね!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「うれしそうですねそら 先輩」



八木原 旭やぎはらあさひ

「…ここまで嬉しそうな顔は初めて見たな」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

こうして新たに神蔵 修也かぐらしゅうやが同好会に加わった。

修也しゅうやは愛想こそよくはないが

ほかのメンバーもすぐに溶け込んで行った。



岩城 定介いわきじょうすけ

修也しゅうやは花見来るんっすよね?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「行くつもりなかったけど、あそこまで強引に誘われたら仕方ない」



岩城 定介いわきじょうすけ

「なんていうか修也しゅうやは面倒見いいところあるっすよね

月夜 つくよちゃんの我儘わがままもなんだかんだ聞いてあげてるっすもんね」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

一週間ほど前に花見の日程が決定した。

生徒会からは学園の敷地利用は難しいとされ

学園外で開催されることになり、学園の備品使用はできず

レジャーシートなどの小物を準備をするために定介じょうすけ修也しゅうやは買い出しに来ていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前ってさ、月夜のことが好きなの?」



岩城 定介いわきじょうすけ

「え、ちょ!?ま、待ってほしいっす!?

なんで急にそんな話になるっすか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんとなく思っただけだ。答えなくてもいい」



岩城 定介いわきじょうすけ

「いや…………好きかどうかはわからないっすけど

話してて楽しいっていうか、可愛いから守ってあげたいって思うっていうか

う、うまく言えないっすね…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうか」



岩城 定介いわきじょうすけ

修也しゅうやこそそら ちゃんから好かれてるじゃないっすか

さすがに気づいてるんっすよね?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「気づくも何もあれは隠してないだろ」



岩城 定介いわきじょうすけ

「でも本人まだ気づかれてないと思ってるみたいっすけど?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「関係ない…俺はあいつの想いには応えられない」



岩城 定介いわきじょうすけ

「ほかに好きな相手が…修也しゅうやに限ってそんなわけないっすね

どうしてっすか?修也しゅうやそら ちゃん嫌いなんすか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…どうだろうな」



岩城 定介いわきじょうすけ

「あーっと、えっと~…

…ちょっと聞くのは野暮だったかもっすね

とりあえず皆待ってるっすから急いで帰るっす!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

一方、そら八木原やぎはら月夜 つくよは教室で参加人数を確認していた。



夢野 天ゆめのそら

「思ったよりも人が集まったわね!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「そうですねー!まさか参加者が合計で20人を超えるなんて思いもしなかったですよ」



八木原 旭やぎはらあさひ

「開催できてよかったよ。

参加者の比率が俺らを含めて男子生徒が8人で女子生徒が14人。

女子生徒の比率が高いな」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「女の子はそういう行事が好きなんですよー」



八木原 旭やぎはらあさひ

「あと修也しゅうやの人気もあるかもな

密かにファンクラブがあるくらい人気らしいからな」



夢野 天ゆめのそら

「え!?修也しゅうや君ってファンクラブがあるの?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「校内の美男・美女にはファンクラブができることがあるらしいな

ちなみにだがお前にもあるぞ?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「そうなんですね!私のもあったりー?」



八木原 旭やぎはらあさひ(被せ)

「お前のはないぞ

あくまで秘密裏で作成されたものだ

それに対象は密かにモテる美男美女

お前みたいに自分から言うような奴は対象外だろうな」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「ガーーーン!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「そうだ、ファンクラブがあるくらいだし

他の奴に先行かれる前に

さっさと修也しゅうやに言ったほうがいいんじゃないか?」



夢野 天ゆめのそら

「え…な、何を?ナンノコトカシラ?」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「せっかくの花見っていうイベントですよ?

これほどの告白タイミングはないですよ!

そら 先輩ファイトー!いっぱーつ!おー!」



夢野 天ゆめのそら

「えー///急に言われても…」



八木原 旭やぎはらあさひ

「今回の花見会場の敷地の中に小さな川があるらしい

その川の上にある橋の上で…とかロマンあるんじゃないか?」



夢野 天ゆめのそら

「橋の上…でも緊張する」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「でも修也しゅうや先輩の事好きなんですよね?」



夢野 天ゆめのそら

「う…うん///」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「じゃあ行くべきですよ!伝えられずにずっと隠してても意味ないですよ!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「イベント中にお前ら二人が抜けても大丈夫なようにしてやるから行ってこい」



夢野 天ゆめのそら

「二人ともありがとう…うん!」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

少しすると定介じょうすけ修也しゅうやが戻ってくる。

それから数時間をかけ、一同は最後の準備を終えた。




花見当日

校外にある大きな公園に生徒が集まり

花見企画が始まった。

接点のない生徒との交流という趣旨のため

最初にクイズやミニゲームなどの企画をグループで行い

生徒同士で親睦を深めたのち

最後のイベントを終え、昼食休憩となる予定であった。



八木原 旭やぎはらあさひ

「さてと…それじゃあ最後のイベントに移ります

最後は宝探しゲームになります!

我々実行委員の生徒が各地に散らばりますのでそこからキーワードを集めて、宝の場所を見つけてください、そしてその宝を私に持ってきたらクリアというゲームです!

そのお宝は…見つけた人のお楽しみです!!」



N→岩城 定介いわきじょうすけ

そうして生徒たちにメモ用紙を配ると修也しゅうやが説明をしている間に八木原やぎはらそら に近づいた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「ほら、修也しゅうやの場所はあっちの橋でそら はその奥だ。行く途中に二人きりになるぞ

企画開始はできる限り引き延ばしてやるから行ってこい」



岩城 定介いわきじょうすけ

「頑張るっす!応援してるっすよ!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

そら 先輩ファイトー!ファイト~!!ファイトォ!!!」



夢野 天ゆめのそら

「みんなありがとう…

緊張するけど、行ってくるね!」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そら修也しゅうやと共に橋の方へと歩いて向かっていた。

途中に会話がなく気まずい雰囲気になっていたが深呼吸をしてそら修也しゅうやへと話しかける。



夢野 天ゆめのそら

「……お花見盛り上がってるみたいでよかったね?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あんなに準備してたからな」



夢野 天ゆめのそら

「うん…そうだよね

あの橋が修也しゅうや君の待つ場所だよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あぁ、そうだな。お前はどこの配置なんだ?」



夢野 天ゆめのそら

「私はもう少し先の場所」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

沈黙の時間が訪れる。

チラチラとそら修也しゅうやの表情を伺うが

依然として修也しゅうやは遠くを眺めていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「行かないのか?」



夢野 天ゆめのそら

「う、うん。そうだね…行かないとだよね

…………………………あのね!」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そら が声をかけようとした瞬間

八木原やぎはらと参加生徒たちのいた場所から大きな声が聞こえてきた。



夢野 天ゆめのそら

「始まったのかな…?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「早く行ったほうがいいんじゃ……」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

そこで修也しゅうやが表情を曇らせながら声のする方向を睨んでいる。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「様子が変だ…誰もこっちに来る気配がない」



夢野 天ゆめのそら

「どうしたの修也しゅうや君?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「嫌な予感がする…声の数が少なくなってる」



N→八木原 旭やぎはらあさひ

修也しゅうやは突如走り出した。

そら は驚きながらも走って後を追いかける。

しかし途中修也しゅうやを見失ってしまい

一旦八木原やぎはらの元へ戻ろうとスタート地点へと向かう。

その途中、付近の木々に赤い血が付着しているのにそら は気がついた。



夢野 天ゆめのそら

「え、これは…血!?なんで…!!!?」



八木原 旭やぎはらあさひ

そら !大丈夫か!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはらそら に向かって呼びかける。

酷く焦った様子で息を切らしながらそら へと走って近づいた。



夢野 天ゆめのそら

「これって…!!何が起きてるの!?

他のみんなはどこなの!?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「わからない!あの後ゲームを始める開始の合図を出したんだ

少しして先行したグループの方から悲鳴が聞こえてきた…

何かあったのかと思って見に来てみたら誰もいないんだ

それで辺りを探していたら、この血の痕跡を見つけたんだ

そうだ!それよりそら 、武器を構えておけ!

何が起きているかわからない!もしかしたら何者かに襲われたのかもしれない…

最悪な場合、相手が人間とは限らない」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら は持ってきていた腰袋から刀を取り出す。

左手に鞘を右手を束に添え銀色の刀身をしならせるように抜刀し、構えた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「くそ…何が起きてるんだ!」



夢野 天ゆめのそら

「待って!あそこにいるの月夜 つくよちゃんじゃない?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら の視界の先に月夜 つくよがおり、怪我をしているのか痛そうに片腕を押さえながら立っていた。

焦りながら周りを確認している様子だったが、こちらに気づいたようで必死に何かを伝えようと叫んでいる。



夢野 天ゆめのそら

「月夜ちゃん!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「せ…ぱ…!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

月夜 つくよがこちらに走りながら焦った様子で何かを叫んでいる。



南雲 月夜 なぐもつくよ

「先輩っ!!そいつが!!!」



夢野 天ゆめのそら

「え…どうしたの!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら は背中に突如として激痛を感じる。

視界の端に鮮血が飛び散るのが見えた。



夢野 天ゆめのそら

「うっ…!!!なんで!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そら がゆっくりと振り返ると目の前の男は笑いながら腹部へと蹴りを入れた。



夢野 天ゆめのそら

「があっ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

強烈な一撃を受けてそら は地面に転がる。

その衝撃で自らの刀を吹き飛ばしてしまい、口から血を吐き出すとキッと八木原やぎはらを見上げた。



夢野 天ゆめのそら

「どうして!?なんで…あさひ君が!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「さぁーてと…馬鹿を罠に嵌めることにも成功したわけだな

どうせお前らは死ぬんだから説明するだけ面倒だ

さっさと死ぬ覚悟を決めな」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「なんで!先輩が私たちを襲うんですか!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ん~?そりゃ、端的に言えば餌だよ

本当に面白かったんだぜ

お前らはアホくさいほど典型的なリーダーを演じてた俺を

馬鹿みたいに信用しやがるからよ

いやいや助かってるんだぜ?

驚くほど愚図なお前らのおかげで俺のこの刀もより一層熟成されるってもんだ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはらは持っていた刀をそら に向ける。



八木原 旭やぎはらあさひ

「俺の持つ刀の名は御影ノ邪刀みかげのやつるぎと言ってな

この刀は人の命と絶望を食らい、その持ち主が本来持ちえぬ力を与える

お前らは信じていたリーダーの俺に裏切られ、これから訪れるはずだった幸せな日々が壊れ去ってしまった…な~んて

そんな深い絶望を味わったお前らを殺すことによってこの刀はより強くなる…」



夢野 天ゆめのそら

「狂ってる…!!まさか、ずっとこれを狙って…!?」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ああ、そうさ。全部前から仕組んでいたんだよ

そうでもしないと学園の監視を出し抜く事ができないからな

よーく思い出してみろ

同好会を作ったのは誰だったか?

企画の発案者は誰だったか?

学園から遠い場所を選んだのは誰だったか?

遠くにある橋へお前と修也しゅうやを誘導したのは誰だったか?

そうさ、外で武器を所持するのが認可された俺ら実行委員を分散させるために

企画の一端と称してお前らを離れさせた…

我ながら完璧な作戦だったよなああ、そうさ。全部前から仕組んでいたんだよ

そうでもしないと学園の監視を出し抜く事ができないからな

これで俺はお前らを守るために奮闘したが、不幸にも誰も救えなかった悲劇のヒーローになる

あーあー俺って可哀想な人…ってなるだろうな

…まぁそんなところだ

さ〜て、じゃあそろそろお前らを殺すとするかな」



岩城 定介いわきじょうすけ

「させないっすよ!はああぁっ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

横から槍を持った定介じょうすけが矛先を八木原やぎはらに突き刺すため宙へ飛び上がっていた

八木原やぎはらは後ろに数歩下がりその攻撃を回避する。

槍の一撃が地面に深く突き刺さった。

定介じょうすけは地面から槍を抜き、怒りに任せ激しい刺突を繰り出す。

その攻撃を刀で軽く往なしながら八木原やぎはらは不敵に笑う。



岩城 定介いわきじょうすけ(攻撃しながら)

「俺らを殺して強くなって…何をする気なんっすか!

学園を乗っ取るつもりっすか!

それとも…ただ人を殺したいだけっすかぁ!!」



八木原 旭やぎはらあさひ(攻撃を弾きながら)

「俺はな、この学園が気に入ってるんだ

良い養成所だよな。

実力を伸ばすのにも知識を深めるにも打ってつけだろ?

だけどな、一つだけ気に入らない要素があるんだ

この学園の生徒会の奴らがどうも気に入らない

あいつらが優秀なのはわかる…だけどな

それだけでこの学園生活だけでなくその後の将来まで補償されちまう

勝ち組な奴らだよな…理不尽な程にひいきされてイライラするよな?

だから俺が力を得て、奴らを越してやる

その糧とするためにお前らの命が必要ってわけだ」



夢野 天ゆめのそら

「そんな自分勝手な理由で!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「自分勝手で結構だ!その勝手に踊らされるお前らが不憫だよ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはら御影ノ邪刀みかげのやつるぎ定介じょうすけへと斬りかかった。

定介じょうすけの反撃に放った槍の攻撃が刀の素早い一撃で弾かれる。


斬撃武器と刺突武器の戦闘においては、前者が後者の突きの攻撃範囲を抜けるため

両者の間合いが近くなると槍先の攻撃は当てにくくなり、有効的ではなくなる。

そのため今のような至近距離での討ち合いでは不利になってしまうのは必然的。


もっとも八木原やぎはらの方が学年が上ということもあり

戦闘経験や知識量が定介じょうすけと差がついていた為

その状況に上手く持ち込まれたのであった。



八木原 旭やぎはらあさひ

「お前じゃ俺には勝てないんだよ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはらは深く足を踏み込み定介じょうすけの腹部へと鋭い斬撃を浴びせる。

咄嗟に後方へと下がった定介じょうすけだが御影ノ邪刀みかげのやつるぎの一撃がいとも簡単に腹部を切り裂く。



岩城 定介いわきじょうすけ

「ぐがあああああああっつ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

斬撃を振った遠心力を利用し、身体を空中で一回転させ回し蹴りを定介じょうすけの顔面へと浴びせた。



岩城 定介いわきじょうすけ

「うぐっ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

地面に倒れ伏した定介じょうすけは苦痛の声をあげる。



岩城 定介いわきじょうすけ

「ぐうっ…がああああああっ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

定介じょうすけの腹部には深い斬撃痕ざんげきこんがあり

そこから血が激しく飛び散ると、傷口からおびただしい量の血が流れていた。



岩城 定介いわきじょうすけ

「ガハッ……ゴホゴホッ…」



夢野 天ゆめのそら

定介じょうすけ君!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

定介じょうすけ先輩っ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

月夜 つくよが駆け寄ってくる。

月夜 つくよは傷ついた定介じょうすけの姿を見ると八木原やぎはらに向け、憎悪に満ちた敵意を露に歩き出した。



夢野 天ゆめのそら

「だめ!待って月夜ちゃん!!」



岩城 定介いわきじょうすけ

「来ちゃ…だめっす!!だめだあああっ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

月夜 つくよは雄叫びをあげて走り出し、落ちていたそら の刀を拾うと八木原やぎはらへと斬りかかった。



南雲 月夜

「うりゃああああっ!!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「お前は戦闘向きじゃないだろ。そんなへっぴり腰の攻撃じゃあ俺には届かない!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その斬撃を八木原やぎはらは軽く上体を反らし回避する。

そして無慈悲にも月夜 つくよの肩から腰にかけて深い斬撃を浴びせた。

斬撃を受け鮮血を飛び散らせた月夜 つくよは驚愕の表情を浮かべ

フラフラと数歩、足を前に出しゆっくりと定介じょうすけの近くへと向かっていった。

しかし、八木原やぎはらはその姿を容赦なく追撃し、月夜つくよの背中に二度の斬撃を浴びせる。



南雲 月夜 なぐもつくよ

「うぅっ…ぐうぅつ‥‥ああああぁぁっ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

二発の斬撃を受け、月夜 つくよ定介じょうすけの元へと届く前に地に倒れた。

定介じょうすけは痛みに耐えながら這うように近づき、月夜 つくよの身体を自身の体へと抱きよせる。



岩城 定介いわきじょうすけ

「お、おい!!月夜 つくよちゃん…!!!月夜 つくよちゃん!!

目を開け、開けてくれ……開けろぉ!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

「ぁああ…定介じょうすけ先輩」



岩城 定介いわきじょうすけ

「もうしゃべらないで!!!月夜 つくよちゃん…」



南雲 月夜 なぐもつくよ

定介じょうすけ…先輩、こんな時に…すみません

言いたいことが……あるんです」



岩城 定介いわきじょうすけ

「後でいくらでも聞いてやるっす!!だから…!!」



南雲 月夜 なぐもつくよ

そら 先輩ばかりからかってたけど…

私も言えば良かった…な

本当は私…先輩のことが……す」



八木原 旭やぎはらあさひ(遮る)

「時間の無駄だ、お前らのつまらない話なんて興味ない」



岩城 定介いわきじょうすけ

月夜 つくよ…ちゃん……………あぁっ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはらは刀を月夜 つくよに突き刺した。

そして刀身を素早く抜くと同時に定介じょうすけの首を横に凪いだ。

定介じょうすけ月夜 つくよを抱きかかえたまま、二人の身体は糸の切れた人形のように地に倒れ、動かなくなった。



八木原 旭やぎはらあさひ

「さてと…アァ~いい絶望だ。これはとても美味そうだ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

八木原やぎはらは刀を二人に再度突き刺す。

すると二人の身体は徐々に色を失っていき

灰のようになると風に飛ばされ崩れていった。



八木原 旭やぎはらあさひ

「…あ~つまんねぇショーだったな

まぁいい、最後はお前と修也しゅうやだけか

先に修也しゅうやを殺してお前を絶望させるとするか

そっちの方がよりこの刀にとってはご馳走になるんだ

俺は美味しいものは熟成させてじっくりと後で一番美味い時に食べたいんでな」



夢野 天ゆめのそら

「最低…!人間じゃない!!悪魔!!

お前なんて地獄に落ちればいい!!!」



八木原 旭やぎはらあさひ

「地獄に…ね~?

いつかそこに行くことになるんだろうが

残念だったな。まだ行く気はない

お前には俺を断罪する権利はねぇんだよ

裁く権利があるのはいつだって強い者だ

ここで死ぬのは俺じゃなくお前だァ!

クックック…ハハハハハ!!」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

八木原やぎはらが狂気に満ちた笑いをあげていた。

しかしその瞬間、八木原やぎはらの腹部から勢いよく刀が飛び出す。



八木原 旭やぎはらあさひ

「ぐっ!!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「強者にはそんな権利があるのか

つまりお前を断罪する権利は俺が持っているということになるな

ならば言葉通りお前の生死は俺が決めよう」



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君!!」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

修也しゅうやは刀を素早く抜き、もう一撃を浴びせるも八木原やぎはらはとっさに御影ノ邪刀みかげのやつるぎの刀身をぶつけ、攻撃を弾いた。



八木原 旭やぎはらあさひ

「てめぇ…!!どこに潜んでやがった!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「その刀の力が不確定だったからな

様子をうかがっていた」



八木原 旭やぎはらあさひ

「くそいてええ…ぶっ殺してやる!!」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

八木原やぎはら御影ノ邪刀みかげのやつるぎの刃先を向ける。

対して修也しゅうやは見たことのない構えをとった。



八木原 旭やぎはらあさひ

「死ねえええ!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天楼まてんろう!!!』



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

修也しゅうやが刀を振り下ろした瞬間、離れたそら の周りに冷たい風が駆け巡る。

それは斬撃が生み出した衝撃波であった。

その一撃をまともに受けた八木原やぎはらの両腕は両腕が肘の近くで綺麗に断ち切れ

両手で握っていた御影ノ邪刀みかげのやつるぎごと腕を地に落とす。

目を大きく見開き、口と腕の切断面から勢いよく血が噴き出すと八木原やぎはらは倒れる。

地に伏した八木原やぎはらの腹部には深い斬撃が斬り込まれていた。

八木原やぎはらは自身が倒れていることに未だ気づけないようで

立ち上がろうとするも脚に力が入らず

上体を起こすだけで精一杯の様子であった。

そして斬られた事に時間差で気づいたのかワナワナと修也しゅうやを凝視する。



八木原 旭やぎはらあさひ

「え…………はぁ?何が起きたんだ!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……お前への断罪は、俺が執行しよう。」



八木原 旭やぎはらあさひ

「待て…待ってくれ!!たすけ…たすけてくれ!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……お前は幾度その言葉を聞き捨てた」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

修也しゅうや御影ノ邪刀みかげのやつるぎを拾い

八木原やぎはらのものであった腕を引きはがし乱雑に投げ捨てた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それを決めるのは俺だ

お前は甘んじて運命を受け入れろ」



八木原 旭やぎはらあさひ

「ま、まってくれ…そ…そんなつもりじゃ……なかったんだ…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「地獄行き…だ」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

八木原やぎはらの頭部に御影ノ邪刀みかげのやつるぎを突き刺した。



八木原 旭やぎはらあさひ

「あ…あっ‥‥ぁ‥ぁああぁぁああぁあぁああぁ!!!」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

八木原やぎはらの姿が灰のようになり、バラバラになっていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…絶望したか?自分が餌になった気分はどうだ?

何が楽しかったんだ?少なくとも俺は酷い気分だ」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

修也しゅうやは人であった残骸を眺めた後、そら に近づくと手を差し出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「立てるか?」



夢野 天ゆめのそら

「…修也しゅうや君」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…なんだ?」



夢野 天ゆめのそら

「なんですぐに助けにこなかったの!

先に向かった貴方の方が到着は早かったはず!

どうして見てたの…!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………あの刀の詳細が不明瞭すぎた。

不意を突いた一撃の際、奴の反撃で返された時も先に刀の力を見ていて警戒していたからその後の追撃を受けなかった

もし無知であったのならそのまま、まともに受けて斬られていたのは俺だった」



夢野 天ゆめのそら

「…あの刀を知ってたの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あぁ。

常軌を逸した力を持つというその存在はな」



夢野 天ゆめのそら

「ってことはあさひくんのことも知ってたの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…あぁ。以前から気づいていた

あいつの内に秘める異常性に」



夢野 天ゆめのそら

「気づいていた…の?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「最初から俺の目的はこの御影ノ邪刀みかげのやつるぎだ。

そのために八木原やぎはらの所属するこの同好会に入り、奴を調べていた。

全ては俺の為、身勝手な目的だ」



夢野 天ゆめのそら

「そんな…その刀を手に入れてどうする気なの?何がそこまで修也しゅうや君を動かしてるの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや(被せて)

「それはお前には関係ない…」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

修也しゅうやは今まで見せたことのない冷たい視線をそら に向ける。

その瞳は暗く、深く、そして寂しげであった。



夢野 天ゆめのそら

修也しゅうや君…」



N→南雲 月夜 なぐもつくよ

修也しゅうやきびすを返し立ち去っていく。

そら はその腕を掴もうと手を伸ばすも、一度離れたお互いの距離は遠くなるばかりであった。

そら はその場にただ茫然と立ちすくむ事しかできなかったのだ。

その後、何者かが学園に送った知らせを受け、生徒会の面々が到着する。

今回の事件は生徒会が処理することとなり、結果、同好会は解散。

神蔵 修也かぐらしゅうやは今回の一件を受け、その実力が認められ生徒会へと抜擢ばってきされた。



夢野 天ゆめのそら

「………」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

数日後の昼休み、そら は同好会が行われていた教室の前に立っていた。

生徒会役員及び関係者以外は立ち入り禁止になっており、室内に入る事は通常できないがそら は特別入室が許可された。

教室内はまだ整理されておらず、かつての仲間たちの私物がそのまま置かれていた。


しかしそこにいるのは夢野 天ゆめのそら

ただ一人だけであった。



夢野 天ゆめのそら

「何でこんな事になったの

どうして

あんまりだよ

私はどうしたらいいの

ねぇ、月夜 つくよちゃん……定介じょうすけ君……

………………修也しゅうや君」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

2000年をきっかけに世界各地で突如現れた異形の存在。

魔怪まかいと呼ばれているそれらは並みの兵器では倒すことができない。

対して|魔怪まかいは人類を容赦なく殺戮し、人類を脅かしていく。


人類は滅亡の危機に瀕し、その対策として、16~20歳の若者に限定し

魔怪まかいと戦える人材を育成する対|魔怪まかい用兵士育成学園機構が設立される。


通常の学園とは異なり、この機関は戦闘スキルを主に鍛え

短期間で若者たちを精鋭の兵士へと育成する。


複数ある学園の中でも特に優れているとされている月ノ都つきのみやこ学園に、そらたちは所属していた。






零章 桜ハ芽ヲ咲カセズ 完

中編へ続く


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・修也はかなり掴みづらいキャラなのでヒントを1つ言わせていただくと、自分を隠してひたすらに周りと一線を引いているように演じてみてください

・夢野天の天をてんで読む人続出してます

気をつけてね

・ナレやセリフに多少被せ気味に演じるの推奨に書いてます。かなり淡々とよりそっちの方が臨場感出るような気がします


※裏設定

・月夜は髪留めを付けています。これは定介に初めて貰ったプレゼントです。

・八木原は天に恋心を抱いていました。しかし‥‥現在は?

・RhineはLINEに似ていますが、偶然の一致です。深緑色のトークアプリです。

・企画のお宝とは天の作った菓子との引換券です

特にこの設定活かせなかったんで以後出てきません




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



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この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

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そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます


・特殊なものについて

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言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


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