第14話 秘密
第14話 秘密
あれから2日、
(なんなんだよ、あいつ…)
琴音とは幼い時からずっと一緒だった。いつの間にあんな大人たちと関わっていたのか、いつの間にあんなに力が強くなっていたのか。知らなかった。琴音のことは全部知っていたつもりだったのに。
(…納得いかねぇ)
HRが終わり弘人は教室を飛び出した。路地裏に行こう。琴音はそこにいるはずだと弘人は確信していた。
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「琴音は来ていない…?!」
弘人は扉の前で声を荒らげた。
「えぇ、今日は家で課題をやると連絡がありました」
長身で金髪の男は涼しい顔で答えた。
弘人は男の胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ、なんて名前だ…!琴音の、何だ!」
男はいきなり胸ぐらを掴まれたことに驚きつつも落ち着いて答えた。
「
……扉の向こうで少し、笑い声が聞こえた気がした。
「保護者だぁ?!」
弘人はさらに力を込める。
その時、弘人のスマホが鳴った。琴音からだった。
弘人は望月を掴んでいた手を離し、スマホをポケットから取り出した。
「おい琴音、今…」
「もしもし弘人…?これから私の家に来れないかな…。話したいことがあるの」
「お前、その前に…」
「全部、話すから」
琴音の力強い声に、弘人はうんとしか言えなかった。
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琴音の家。リビングで2人は向かい合うように座っていた。
「ごめんね、弘人。今まで黙っていて」
「そんなに話せないことだったのかよ」
「うん。話せないことだった」
「…」
時計の秒針の音だけが響いた。
「話すと長くなっちゃうんだ。でも、聞いて欲しい」
「…あぁ」
それから長い時間をかけて全てを話した。裏社会のこと、
「みんな、いい人たちなんだ。みんなで支え合って頑張ってるの。私も最近やっとボスとしてみんなを引っ張っていけるようになって…」
琴音の話はそこで止まった。こんなことを弘人に話すのは緊張したし不安もあった。しかし気づいたらまるで、自慢話をしているかのように自信たっぷりに話せていた。
(みんなの、おかげで)
一方弘人は、話が進むにつれて顔が険しくなっていった。腕を組み、ため息をついて琴音を見る。
「その『仕事』は、危ないんじゃないか?」
「そうだけどでも、みんながいるから」
「お前女だろ?鈍臭いしへなへなしてるし、いくら両親がやってた事だからって引き継がなくてもいいんじゃないか?」
弘人の口調がだんだん厳しくなっていく。
「私は、変わったの」
琴音も負けじと心を強く持つ。
「まだ16だし、そんな危険なことしなくったっていいじゃないか。他にも人はいるんだろ?」
「でも私がやりたかったから、みんなが支えてくれるから…」
「大体なんだよ裏社会って。警察だっているだろ?」
「警察だけじゃ手が回らないこともあるから…」
「そんなバカげたことやってねぇでもっと普通に生きろよ。俺は許さねぇからな」
その時ふと、琴音の中に疑問が浮かんだ。
「…なんで、弘人の許可をとらないといけないの?弘人は、私の何なの?」
弘人は言葉に詰まった。
「それは…」
「私の人生よ。好きにさせて。親じゃないんだし」
こんな強気の琴音を、弘人は知らない。
「ずっと黙っていたのは謝るわ。でも、仕方がなかったの。大勢に知られていては、秘密組織じゃなくなっちゃうでしょ?」
「…でも、俺には…」
「話さないよ。だって弘人はただの幼なじみだもん」
弘人は完全に言い返す言葉を見失ってしまった。
今まで琴音と喧嘩は何度もしたが、琴音がこんなにしっかりと言い返してきたことはなかった。いつも弘人が強く言うと縮こまってしまうからだ。
その変わりように、弘人は心底驚かされて何も考えられなくなっていた。
「…帰る」
そう言って立ち上がった。
帰り際に、弘人は言った。
「お前、本当に変わったな」
琴音は自慢げに笑った。
「うん。だって桜花のボスとしてみんなを引っ張らなきゃだからね!それと、みんながいてくれたから」
「…そうか」
弘人は家を出た。
(ただの幼なじみ、かぁ…)
すっかり暗くなった空には、星がまばらに見えていた。
がんばるボスが率いる組織は いつか世界を救うかもしれない 妃代 @hi_yoyo
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