第13話 疑い
第13話 疑い
(なーんか気になるんだよなぁ…)
学校での昼休み、
「お前、それしゃぶり箸だぞ。行儀悪いからやめとけよ」
お弁当を持った
「あっごめんね、つい」
琴音は箸を口から離し、お弁当を食べ始めた。
「琴音、今日は一緒に帰れるか?」
弘人に聞かれ、また考え込んだ。卵焼きを箸でつまんだまま手が止まる。
「んー……」
気になることが少し増えてきた。最近はあまり弘人と帰れていないから、久しぶりに真っ直ぐ帰宅したいが
「ごめんっ!今日も無理かも」
琴音は箸を置いて顔の前で手を合わせた。
「了解」
弘人はそれだけ言って椅子に座った。
何気ない昼だった。
――――――――――――――――――――――
学校が終わり、琴音は
途中のコンビニで新聞を買い、軽く目を通した。
「あと1週間かぁ」
新聞をスクールバッグに入れ、後ろを振り返る。
ストーカー騒ぎがあってからしばらくは
(今日も誰もいない)
琴音の過剰反応だったのではないかとメンバーに言うが、「琴音さんがそんな勘違いするわけがない」の一点張りだった。だから、いざという時のためにリーダーに限らず、桜花のメンバーは皆、毎日ビルに集まるようにしている。
琴音はバッグを肩にかけ直し、再び歩き出した。
路地裏に入り、ビルに続く階段が見えた。しかし、そこには思いもしなかった人物がいた。
琴音は驚きで言葉を失った。やがて階段に近づき、声を絞り出した。
「なんで……ひろと…ここに……」
弘人はにっこり笑った。
「よぉ琴音。前に、お前がここに入って行くのを見たから何やってんだろうなって来てみたんだ。ここはなんだ?」
バッグを掴む手が震える。
「じゃあ、この前、私をつけていたのは…弘人、なの…?」
弘人が申し訳なさそうに頭をかいた。
「あぁ、あれはすまなかった。やっぱり気づいてたんだな。いつもどこに行ってるのかちょっと気になってたんだよ」
「…じらんない…信じらんないっ!!」
琴音は混乱して思わず叫んだ。その声の大きさに自分自身も驚いて、手で口を覆った。
その声を聞いた望月とリーダーたち5人が外に飛び出してきた。
弘人は階段の上を睨みつける。
「あんたら誰?琴音の知り合い?」
それを聞いて全てを察した5人は肩に入った力を抜いた。
「悪いことは言わない。帰りなさい」
望月が落ち着いた声で弘人に話しかける。
琴音が弘人の手を引いた。
「帰ろ、弘人」
「お前、こんなとこで何やってるんだよ。あの人たちは誰だよ」
「……私の知り合いだよ。遊びに行ってたの」
弘人は顔をしかめた。
「こんな路地裏にか?安全な人達なのかよあいつらは…!」
「うん、大丈夫だから」
「琴音!!」
琴音は弘人の手を強く引く。
弘人の身体が持っていかれた。弘人は琴音の力強さに目を丸くした。そしてそのまま、家まで引っ張られてしまった。
琴音は弘人の家の玄関前で手を離した。
「ばいばい。また明日ね」
それだけ言うと、自分の家へ走った。
弘人は呼びかけるものの追っては来なかった。さすがに、勘づいたのだろうか。
(明日からどうしよう)
琴音の頭は未だに混乱が収まっていなかった。
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