3年生最後の飲み会・後半
みんな随分と酔っぱらっている、最後の宗則のが効いた。
ここからはいつも通り『TT-W』の飲み会だ。
「前々から思ってたんですけどー、宗則さんいつもお金無い無いって言ってる割には革ジャンとかブーツって結構高そうですよね?」と洋子。
「宗則さんジーンズは破れてるけど……」と続ける。
「転倒で破れたリアルダメージジーンズ」宗則が答える。
「買い替えないんですか?」
「お金なくて」
「宗則さん、今日着てた革ジャンって?」
「自慢のバンソンスターのブラックモデル、特注品!」
「いくらですか?」と聞く洋子の目が座っている。
「じゅ、じゅうよんまんぐらい、、、」まさにゴニョゴニョ。
「キョウのその革ジャンだって高いんでしょっ!」と、急に私にも絡み始める洋子。うすうす気付いてはいたが、洋子は酒癖が悪い。ある程度以上飲むと性格が変わる。
「や、私のは中古で古着で……」
「いくらなの?」
「ハイ、自慢のショットワンスター。程度良かったので4万円です」
「お金、無くないじゃないですかー!」とエキサイトしている洋子。
「因みに洋子の革ジャンっていくらなの?」
「自慢のルイスレザーライトニング、タイトモデルで20万くらいです!」
「オィーッ!」と思わず宗則と突っ込みが被る。
「体守るんだから当然でしょ」という孝子は普段あまり革ジャンを着ていないが、皮ツナギの値段を聞くと「イタリア製で30万ぐらい」と話す。
「あの矢印みたいなのそんなに高いの?」と私。
「矢印じゃなくてダイネーゼっ!」と孝子。
「私も孝子さんも普段からお金無い無いって言ってないですよ、ある訳でも無い無いですけど」と洋子。
「私は小さい頃からずっとバイク一筋だったからね。どこにも旅行にも行かないし、バイク以外にほとんど趣味とかないし。普段着もほとんど持ってないっしょ」と孝子。そういえば孝子の化粧品は安めなものばかりでブランド品など持っていなかったな。
「キョウの革ジャンに比べたらゴアテックスのレインウェアなんか安いもんだぜ」とヒロシ。
「でも雨の日なんて年にそんなにないし、毎日着るわけじゃないのにその値段はちょっと悩むよ、やっぱり」
「いいやつなら晴れの日でも毎日着れるよ」とヒロシ。
「悪いけど、アタシはちょっとそのウェアはダサくて雨以外では着れないな……」
「なにー! キョウはこの機能美がわからないのかー」とヒロシ。ユキがいないので味方がいない。
いつもどおり、いつもどおりがずっと続けって思う。美しい夢をずっと見ていたい。
そして、気付いたら私と孝子以外みんな潰れている。これもいつも通りだ。しばらく孝子と話し込んだ。
「孝子、今日はありがとうね」
「いいって。正月以来さ、私もちょっと色々考えてはいたし」と孝子
「前も話したかもだけど、今のところアタシは特に思い浮かばないんだよね。なにかしら趣味に関わった仕事だといいなとは思うけど、それは自分でも甘い考えだろうなって」と私。孝子に話すのは通算何度目だろう。何度も同じことを話している自覚がある、酔っぱらっている。
だけど、今日みんなと話して少しだけ気持ちは動き始めた。
孝子がおぼろげ過ぎてみんなにはまだ話せなかったけど、実は少しだけ思ってることがある、と言って話し始める。
「私も業界まではピンと来てないけど、職種としては接客とか営業とか、そんな形で人と関わる仕事がしたいし、向いてると思うんだよね。ほら、私美人だし」といかにも孝子。そして私はそろそろ限界。
孝子と笑い合いながら、また勝てなかったか、と寝落ちする私。孝子の肩にもたれ掛かると甘い香りがした。
いい匂い。明日は夢見良さそう。
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