いつの日か
みんなが帰った後、わいわいと過ごした分の反動で寂しい気持ちになる。
ベッドにダイブし、天井を見ていると「ボボボボボッ」と洋子のカフェの排気音が聞こえた。
合い鍵を使ってカチャリと玄関を開けて洋子が部屋に入ってくる。
ライダースジャケットをハンガーにかけて無言でベッドにダイブして私に乗っかる。腕をついて私に覆いかぶさる姿勢で、髪をかき上げて耳にかける。そのまま目を閉じて私にキスしてきた。
舌を入れてこない気持ちのしっかりとこもった長いキス。私もそっと目を閉じる。どのくらいの時間唇を重ねていたのかわからない。10秒かも知れないし1分かも知れない。優しい唇が離れていったが洋子の顔はまだすぐ近くにある。洋子の吐く息が私の鼻をくすぐる。目を開けて洋子の目を見つめる。
「起きてるときに堂々とキスしてきたのって初めてじゃない?」と私。
「気づいてたの?」
「……さすがにね」
「いつから?」
「ユキと三人で飲んだ女子会? それが最初で合ってる? そっからは数えてはないけど」と言う私。「や、わっ」だんだんと顔が真っ赤になっていく洋子。
「嫌じゃなかったの?」
「嫌じゃないけど、起きてるときはちょっと遠慮して欲しいかなぁー。こういう気持ちにどうやって答えていいのかアタシはわからないよ」
腕の力を抜いて、ぼふっと私の隣にうつ伏せになりタオルケットを引っ張ってぐるぐる巻きになりながらベッドからドスンと床に転がり落ちる洋子。
「ふにゅぁあーっ、っ」と言ってうつ伏せのままタオルケットからはみ出ている足をバタバタさせている。
「言ってよー、もっと早くー!」
「言えないって、何て言うのよ」と私。
むくりと起き上がり、ぼさぼさの髪で「そりゃそうか……」と諦めた表情で呟く洋子。
「話があって戻ってきたんじゃないの?」
「もう半分以上話す必要なくなったなう」
「残りは?」
洋子が顎先を人差し指で押さえるポーズで「うーん、と」と言ってから、少し間を置いてゆっくりと話始めた。
「実は、みんなには話せなかったもうひとつの夢があるの。いつか二人で小さなライダーズカフェやらない?」
「いつかって?」
「目標は10年以内! まずはしっかり働いてお金貯めよ。あと二人で色んなカフェに行って勉強しよ」
色々と問題はある、一番は私と洋子の関係性。私がいつか誰かと恋をして結婚をしても、洋子の夢への気持ちは変わらないのか。
だけど出来ない理由より解決策を探したい。
やらない理由はないし、やりたい気持ちはある。
これだけで私には十分だった。
こちらも顎先を人差し指で押さえて、少し考えるポーズをしてから「いいよ」と微笑んだ。
―完―
G.B.2 笹岡悠起 @yv-ki_330ka
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