お茶漬け会議、聖地巡礼。

「ねーねー、お茶漬け食べるのに最高の景色ってどこだろー?」と学食で今昼食を食べ終わった筈のユキが食事の話をする。

「月並みだけど、やっぱ富士山の見えるところとか?」とヒロシ。


 私はそういうのはあまり詳しくないが、以前お茶漬けの商品になんかそんな景色の浮世絵とかが付いていたのを思い出した。

「なんか浮世絵の付録カードとか付いてるお茶漬けなかった? その絵が似合うってことじゃないの?」

「東海道五十三次じゃないですか?」とトマト。

「そうそう! なんかそんなの。それで出てくる富士山の景色なら合うんじゃない?」

「良さそうだねー、調べてみようかー」と言いながらスマホで検索を始めるユキ。あとトマト。


「なんかスゲーあるんですけど」と先にトマトが検索できた様子。どうやらほとんどの景色に富士山が描かれているようだ。

 大きく描かれているものに絞ると数点になるようで、調べているうちにバイク漫画で出てきた景色とかを聖地巡礼している人のページにたどり着いた。


 トマトに渡されてスマホの画面に表示されているページを閲覧する。

「これ、確かにいい景色だけど、かなり込むって書いてあるよ」


「聖地巡礼といえばラーメン屋さんよねー」とユキ。有名どころでは千葉の山奥とか新潟のタンメンとかあるらしい。


「ユキのお父さんに借りた古いバイク漫画とかの聖地って特定難しそうだよね。裏山に峠がある工科大学とか、すごいコーナーのある西湘バイパスとか」

「昔はその辺り読者も寛大だったんだろーねー。今はすーぐ突っ込まれちゃうから」

 調べられる環境が発達したっていうのもあるのかな? 私の家には父が買っていたGPZのサービスマニュアルが最初からあった。あれから気になってペラペラめくって眺めていたら、タペット調整値の載っているページだけオイル滲みが酷かった。父が乗っていた頃には、先日の洋子の時みたいにタペット調整の数値をスマホで調べたりとかは出来なかったのだろう。


 そんなことを話していると授業を終えた洋子が現れた。

「みんなスマホ見て盛り上がってるけど、どうしたの?」と洋子。


「究極のお茶漬けって何だろうーって話だよー」とユキ。あれ? そうだっけ?

「鮭とか?」と洋子。

「梅干しじゃない?」と私。

「鯛も捨てがたい」ヒロシ。

「いっそ全部乗せとか」とユキ。そろそろ目が泳いできた。

「俺は梅干しに一票です」とトマト。


「ねー、次のツーリングって究極のお茶漬けツーリングとかどう?」とユキ。

 いや、どうと言われても……、とユキ以外の全員がそんな顔をしていた。

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