カウチポテト

(注:本文中にネタバレを含みます)


 GPZのリアワイドホイール化に必要な全てのパーツの発注をし、ローンの審査も無事通った。納期の短縮化を考えて520チェーンにするなどの工夫もしたのだが、それでも全部の商品が揃うには二週間ほどかかった。トルクロッドは作成するよりも適当な長さの物をオークションで購入した方が手間賃を考えると安かったので既に落札入手済み。

 そしてパーツ待ちの二週間の間に、私は腰痛になってしまった、……といっても軽いものだけど。


 取り寄せパーツはバイク用品店からの入荷の連絡を受けた翌日にすぐに取りに行った。

 バイク用品店から帰ると、家に洋子のカフェが停まっている。今日は木曜日だから週明けまで泊まりかな。土日の作業要員一人ゲット。


 玄関を開けるとカレーの匂いがした。

 リビングに入るやいなや取りあえず腰を伸ばしたくて床に突っ伏した私の背中に洋子が悪ふざけして座ってきた。

「ぐえっ」というカエルが踏みつぶされたような私の声と「グキッ」という私の腰骨の音に驚き、洋子が一瞬で立ち上がる。

「ご、ごめんっ!」と慌てる洋子。

「う、うん。悪気が無いのはわかってるから大丈夫……。ちょっとGPZのサスがバインバインでダメージが累積しただけだから」

「マッサージしてあげるよ! こう見えて私の実家の隣のおじいちゃんの息子さんのお嫁さんがマッサージ師だから!」と洋子。

「いや、それ言いたかっただけでしょ」と一応突っ込んだが、結局マッサージしてもらった。それでもそこそこ上手だったから後で感想に困った。


 夕食は洋子が大量に作ってくれていたカレー。一週間は保つのではないかってぐらい大量に作ってくれていた。土日の作業時に食事の準備時間を考えなくて良いようにと気を遣ってくれたらしい。

「キョウ明日は何限から?」と洋子。

「二限からだけど?」

「そしたら夜更かししない?」「いいけど何で?」「バイク映画でも観ようよ!」


 そんな訳で、食後にネット検索をしていくつかの候補に当たりを付ける。

 最寄りから少し離れるが駐車場のあるツタヤを目指す。駅前店舗はバイク置けないからね。

 二人で一本ずつ借りることにした。

 ネット情報から洋子が観たいと思ったのは「モーターサイクルダイアリーズ」

 私が観たいと思ったのは「世界最速のインディアン」


 DVDを借りて、帰りにスーパーでポップコーンと冷凍ピザ、バドワイザーを買って帰る。あと、折角カレーがあるので冷凍うどんも買った。


 家に帰って早速DVD鑑賞の用意、と言っても小テーブルにお酒とポップコーンを広げるくらい。あとは各自クッションなりタオルケットなり今宵の相方を決める。


 今日は洋子の借りた「モーターサイクルダイアリーズ」を観る。


「でも、何で急にバイク映画?」と洋子に聞くと、私やユキの影響でバイクに乗り始めたけど、世間で良く言われているバイクに乗りたくなる映画みたいなのは果たしてどうなんだろうと思ったからとか。なので「イージーライダー」とも大いに迷ったとか。因みに私が迷ったのは「バイカーボーイズ」


 水のようなバドワイザーでポップコーンを流し込みながら観始める。

 基本的にロードムービーだ。しかし残り1時間以上もあるのに、バイクから降りてしまった。

 正直私は退屈な映画だと思ったが、熱心に観ている洋子の手前、素直な感想は控えたまま黙って最後まで観ることにした。


 ……結果、いい映画だとは思ったが、これバイク映画かぁ⁈

 これを観てバイクに乗りたくなるというのはないだろう。旅には行きたくなるかも知れないが。

「うーん、良くわからない映画だったね」と、洋子。

「あれ? 結構真剣に観てなかった?」

「いや、キョウが真面目に観てるから、退屈だなって言い出せなくて」って、何よそれー!


 やっぱバイクが出てくる映画とバイク映画は違うよね。

 明日は「世界最速のインディアン」だな。

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