リーゼント溶接工
冬休みの終わりと共に、わが家でトモくんのTWにトラッカーシートをつける作業が始まった。
まずは現状把握の為にTWのシート周りをできるだけ引ん剝く。前回駐輪場であてがってみた時よりキチンと備え付けてみて問題点を洗い出す。GPZに900SSのリアホイールを流用できるかどうかを画策していた夜を思い出す。
トモくんのTWのシート周りのフレームは購入時からすでにフラットシートを付けた後の処理のために後ろの辺りが溶接で繋げられていた。検証の結果、今回つけたいトラッカーシートを適当につけるだけなら多分簡単だけど、ツーリングでの使用も考えて荷物の積載を考えるとどうしても溶接は必要になるという結論になった。
「さて、ここからなんだけど。先に田村に確認しておきたいんだけど。前にも似たようなことでキョウにも聞いたんだけど、今回はちょっと意味が違って」宗則がトモくんに決意の程を確認する。
「こっからは、さすがに引き返せなくなる改造になると思うんだよ。まぁ元々このTWはフレームがいじってある車体だし、TWってバイクは改造で下取りが変わるとかそういうのはそれほど影響ないと思う。なのでデメリットはタンデム仕様に戻したり出来ないとか、何かの不具合で荷物積載時に後ろポッキリとかがあるかもっていう一応の覚悟が必要とかだね」と宗則。
「今のところ、先輩たちみたいに大型に乗り換えるのは考えてないし、もし大型欲しくなってもTWは持っていたいので。あとはタンデムしないって決意もあるんですけど、TWでの最初で最後のタンデムを思い出にとっておきたいというか、なんというか…」と最後はちょっと赤面しながらトモくんなりの決意を話してくれた。
「うん、ポッキリとかならないように目一杯協力するよ」と宗則。
3人でしっかりと検証した結果、シートの着座部分に溶接する為のステーは自分たちで作り、荷物部分はシート内に収まりそうな汎用の荷台を切って溶接でくっつけようという方針で固まった。それでステー類を溶接出来る所を近所で探して頼んでみようってことになった。
あと、それぞれにつけるゴムダンパーを適当な他車種のバイク部品から探す。
元通りTWのシートを組み、全員で町田にある大手中古バイクパーツショップに行ってみることにした。トラッカーシートは持っていく訳にも行かないので、事前にシートの荷物を置けそうな部分の平らな面に入りそうな型紙を作って持っていく。
中古パーツショップでトモくんTW用の部材は割とすぐに良さそうな物が見つかり、後半は私と宗則のウィンドウショッピングにトモくんが付き合わされる形になった。
帰り道に大和にあるホームセンターで適当な鉄板を購入し、その場で3センチ幅に切り出し加工をしてもらった。ホームセンターで加工待ちをしている間に洋子から今夜暇だったら一緒にお酒でもという誘いがあったので、宗則とトモくんと一緒ならと伝えて、この日は部材集めで一日が終わり、夜はみんなでプチ飲み会になった。酒の肴はトモくんの失恋話。
酔っぱらったトモくんが「話しているときに哲子さんが唇を触る仕草が色っぽくてメロメロでした」と話して、洋子が「あ、それ哲子機嫌悪い時の癖だよ」と教えてあげて、メロメロからメタメタになったのは面白かった。
トモくんが潰れた後、「そもそも良くタンデムに付き合ってくれたよね」とずっと疑問だったことを洋子に聞いてみた。洋子曰く「哲子ショタ入ってるから」と。だから初対面の時、トモくんが一緒にいるのに洋子に話しかけたのではないかというのが洋子の見解だった。
翌朝、みんな健康的な時間に目が覚めた。トモくんの話でしんみりした面々は、昼間の疲れもありいつもより早めに寝たからだろう。
とりあえず、溶接できそうな所を探す目的も兼ねてみんなで近くのマクドナルドへ朝食を食べに行きその後、途中で見つけた町工場っぽい怪しげな車屋さんに寄ってみた。
本当に小さい工場だが、作業着姿で昔やんちゃしてましたって感じのリーゼントのお兄さんがいて、店主はいないが溶接は数カ所まとめて3千円くらいでいいという丼勘定でオーケーしてくれた。
家からなんとかバイクを押して持って行ける範囲だったので、シート周りとガソリンタンクやキャブ、バッテリーやCDIユニットなどのカプラーを外したあと、万力で挟んで叩いて曲げたステーとトラッカーシートを持って宗則とトモくんで交代に押していき、現物合わせで溶接をお願いした。
最後に溶接した付近に庭先でウレタンブラックスプレーを吹いて今日の作業は終了した。あとは少しの煮詰め作業でシート装着だ。
この日もプチ飲み会。結局3日かかってしまったが、近場で溶接を頼める場所を確保出来たので今後の可能性が広がった。
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