スワッピング

 GPZのリアサスがおかしい。

 段差を超えた後に少しの間トランポリンの様にバインバインと跳ね続ける。これは間違いなくアレだと思ったが、念のため学食で宗則に相談したところ、やはり〝サス抜け〟だと言われる。年式を考えるとよく持ってた方だと慰めの言葉も頂く。

 なんとなく思い出したようにときどきオークションチェックをしてはいたが、いよいよ選択を迫られる時が来てしまった。

 中古を買うか、安めの新品を買うか。


 リアサスを交換するなら、18インチ用のサスではなく17インチ用を入手して、しばらく寝かしていた900SSのリアホイールへの換装作業もこのタイミングでやるべきだろう。

 幸い、経済的にも北海道ツーリング以降のバイト分の余力が少しはある。


「しかし、いざリアホイールの入れ替えとなるとまた宗則にNSR借りなきゃかも」と宗則に相談する。

「んー、俺は大丈夫だけど。この前キョウに貸した時って何月だっけ?」

「GPZ転倒後だから10月くらいじゃない?」

「あの時、一時的にキョウが入れた自賠責って1年だったよね?」

「あー、切れてるかさすがに」


 また1年入れるのも無駄感がある。今回はしっかりと準備しておけば長く見積もって1週間くらいで作業は終わるはず。うまくやれば土日で終わるかもなんだけど、終わらなかったときの保険が欲しい。前回NSR借りる時にもセカンドバイクが欲しいと思いつつも、やはり学生の身でバイク2台持ちはなかなか現実的でないので全く前向きに考えていなかった。

「あ! 洋子がアタシん家に泊まり込みでうちから一緒にタンデムで大学に通えば……」と良案を閃いた私の提案に「あ、それ楽しそう!」と洋子。

「洋子ちゃんのカフェってシングルシートじゃ……」と宗則。

「あっ」と私と洋子がハモる。

 というか、私と宗則と新入生の2人以外みんな1人乗りじゃん。トモくんもトラッカーシートつけちゃったし。


「まぁ、バイクは1人で乗る物よね……」と遠い目をしている私に

「どうせ作業の時は俺も手伝いに行くことになるんだろうし、もし長引いたらCBにキョウが洋子ちゃんとタンデムで乗って、んで洋子ちゃんが嫌じゃなければ俺がカフェに乗れば、それで一週間過ごして、また次の土日にGPZの作業するってのは?」と宗則が提案した。

「私は大丈夫です!」と洋子。

「なんか、アタシの事情に2人を付き合わせる形になっちゃうけど、もし良ければ助かります」

「でも、まずはしっかり準備して土日で一気に終わらせるつもりで頑張るよ」


 なるべく最速で用意したい。その位抜けたサスは乗り心地が悪かった。


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