初詣
宗則の実家は和食屋さんをやっていて、地元商工会の集まりなどが行われることもあるとかで宴会場所やごろ寝で良ければ男女別々に部屋も用意でき、私たちのサークルメンバーでの宿泊と新年会に快く場所を提供してもらえることになった。
到着は深夜の1時を過ぎたが宗則が事前に説明してくれていたのと、そもそもご近所の家との距離もありバイクでそのまま乗り付けることができた。バイクを駐車場に詰めて停めて荷物を降ろして、すぐに部屋を案内してもらい各自眠りについた。
翌朝元旦。11時くらいにブランチを出していただき、15時くらいの出発を目指して用意する、のだけど、また夕食前にここに戻ってくるので特に用意といった用意もない。
14時頃、駐車場でみんなのバイクを眺めながら一服してると遠くから748Rの暴れ太鼓のような排気音が聞こえてくる。そして止まった。少しして宗則がヘルメットを持って登場し「ちょっと孝子迎えに行ってくる」と言って出て行った。
タバコの火がフィルターに到達する頃、孝子と宗則が到着した。
孝子はすぐに出発できると言っていたが、宗則の判断で一度休憩してから予定通り15時に出発にした。
今年の初詣は栃木県にあるバイク神社と呼ばれている安住神社。
混むことを予想しての夕方到着を目指した動きだったが、やはり混んでいた。といっても川崎大師ほどではないけど。
ヘリコプターも止めることができるという駐車場にバイクを並べて停めて、去年同様、まず参拝派ととりあえず食わせろ派に別れた。
私、ユキ、洋子、トモくん、トマトが参拝派、残りの孝子、宗則、ヒロシ、ご隠居は屋台に。ご隠居は孝子と一緒の方を選んだだけだろうなきっと。もちろんたこ焼きは頼んだ。
「トモくん何お願いしたの?」今年の御利益が気になるので聞いておく。
「今年は内緒です!あ、でもバイク関連のお願いにしました」とトモくん
「恋愛は懲りたのかなー?」とユキ。
「そういうキョウは?」と洋子にふいに振られて
「みんなといつまでもバイクに乗ってられますよーに」と答えた。
「トマトは?」と私。
「バイクで転けて怪我とかしませんようにと、……ご隠居が」とトマト。
「ユキさんは?」とトマトが続ける。
「……スリムになりますように」と下を向いて呟くユキ。
「洋子ちゃんは?」とユキが聞き
「夢が叶いますように」と洋子がきれいに締めくくった。
せっかくバイク神社に来たんだし、やはりバイク関係のお願いよね。
……だけど、洋子の夢ってなんだろう? ここ数カ月で一気に距離が近くなった私と洋子。だけど、やっぱりまだまだお互いに知らないことだらけなんだなと思う。少しだけ寂しくなった。
また一緒に、二人で買ったお酒を飲みたい。
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