走り納めないツー
今年最後のツーリングは宗則の発案で来年最初のツーリングを兼ねた、”TT-W走り納めないツーリング”となった。
大晦日、バイト先の飲み屋でカウントダウンパーティーがある孝子以外、全員都合をつけてフルメンバーで茨城に向かって走っている。孝子も明日の初詣には合流予定だ。
22時の出発時にスタートした1時間プレイリストが2週目後半。現在時刻、多分23時台後半、常磐道を爆走中。バイクの上で迎える新年年越しライド。
現在、守屋サービスエリアまでの自由走行区間、私が先頭を走っている。バックミラーには誰も映っていない。
――東名高速道路から首都高速3号線、さらに首都高速6号線を経由。三郷インターチェンジを過ぎてからは、常磐自動車道守屋SAまで各自自由走行。くれぐれも速度超過に注意、捕まった場合は自己責任でと事前に決めていた。
自由走行とはいえ、宗則はしんがりの役割として最後尾を流して走る。
三郷インターを過ぎた所で最初に飛び出したのはご隠居とヒロシ。少し出遅れてトマトが追走する形。
みんなの様子をみてから、ユキとトモくんも同時に加速を開始。私もこのタイミングで洋子に左手を軽く上げてからアクセルを全開にした。丁度ユキもトモくんに左手を軽く上げてトモくんから離れていく瞬間。その横をトモくん、ユキと、順番に追い抜いて行き、スクリーンに伏せてレッドゾーン手前の回転数でシフトペダルをかき上げる。
回転計の針は一瞬落ち込むが、美味しい所の始まり辺り。脳のトロけるような加速を味わいながらまたレッド手前まで引っ張る。
ヒロシをパスして、すぐにトマトをパス。さらに前方にいるご隠居をパスした。
それにしてもご隠居。スクリーンに伏せている私はともかく、あんな直立した姿勢でよくこの速度域で巡航できるな。折角の孝子とお揃いのトレーナーが風でめくれてG.B.のロゴが何も見えないよ――
プレイリストも2週目が終了した。走りながらの年越しは気分最高。ちょうど守屋SAの案内標識が出始めた。アクセルを緩め、徐々にシフトダウンしていく。
ウインカーを出して車線を変更していきサービスエリアに入る。二輪車用パーキングにGPZを停める。サイドスタンドを降ろしてバイクから降り、メットを脱ぐのと同時にGPZのエンジン下部から「ブッブブッビチャ」という音がして慌ててしゃがみ込むと緑色のクーラントがドレンホースから噴き出していた。
「あちゃー」思わず声が出る。回し過ぎたってのもあるだろうが、前回のマフラー交換時に冷却水のリザーバタンク量のチェックを怠っていた。おそらく多めに入れてしまっていたのだろう。エンジンが冷えた時に残量を確認しとかないと。
とりあえず、タバコを出して一服してみんなの到着を待つことにした。一服の途中くらいからご隠居、トマトといった感じで抜いて行った逆順で到着。最後に洋子とトモくんと宗則が一緒に到着。ここで一度休憩を挟む。
谷和原で高速を降り、ここからは宗則の先導で宗則の実家へ向かう。しんがりは私、永遠の最後尾はヒロシ。
宗則の実家は茨城県の筑波サーキットの近く。モータースポーツに身近な環境なのでバイクに対する偏見も少ない。近所の知り合いや友達などをたどっていくと、昔レースをしていたなんて人が必ずいるらしい。ただ、それは町の人全員が全員そうではないだろうなと思った。宗則の実家、久地家がそうなだけだろうきっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます