バーエンドミラー
バイク用品店で洋子がミラーを、私がGPZのマフラー交換に使うガスケット(あとこっそり洋子のカフェ用のも)と液体ガスケットを購入して明日の作業に備える。洋子は一度自分の家に帰ってから明日また来るといい、バイク用品店から流れ解散。
翌日、朝から作業。今回はバイク整備というよりは改造。
いつも通り私の家が作業場なので、申し訳ないがゆっくり朝寝坊させてもらい、宗則と洋子が来るのを待つ。
予想はしていたが、宗則より先に洋子が大荷物と共に到着。一昨日、お風呂を借してほしいと頼まれた際、少し着替えを持ってきてうちに置いておけばいいのに、と提案した。想像していたより量が多いが、一体何日分の着替えを持ってきたんだろうか。お洒落さんは服も多いのか、見習わなければ。
宗則が温め済みのジャーマンドッグ三つと唐揚げくん三つと共に到着し、いそいそと作業の準備をする。
洋子に私が部屋着にしているLeeのオーバーオールを貸す。そろそろ作業着に降ろしていい頃合いだしちょうどいい。それに私よりファッションにこだわりがありそうな洋子にガチ作業着を着させるのはちょっと申し訳ない。
宗則は最初から作業つなぎで来ている。私と洋子も着替え終えてみんなで作業を開始する。今日はマフラー交換二台分とミラーの撤去と設置。作業量的には午前中に終わるだろう。
外に出た瞬間に、洋子が宗則のバイクのタンデム席にくくりつけられている大荷物に気づく。
「宗則さん、何積んで来たんですか?」
「えーと、これは……」事前に宗則にはマフラーに対する洋子の好反応っぷりをLINEで伝えてはいる筈なのだが、それでもこのしどろもどろ。
助け舟を出してやるか。
「宗則、見せて」と言って荷物をほどく。
「え、これってバイクのマフラーですか? 宗則さんの?」まぁ、パーツ単体でわかるほどの女子はこの場で私以外にはいらないよね。
「これ」と言って、検索用に開いていた私のスマホ画面で同じ製品のマフラー装着写真を見せる。
「え? え?」と良くわかってない洋子。
「えーと、たまたま知り合いが出物で……」と宗則。あんたの知り合いは出物なのか。
「中古パーツ屋さんで宗則が格安で見つけたんだって、そんでTT-Wのロゴデザインのお礼にって買ってきてくれたんだよ」と船どころか浮き輪も投げる私。
「えーっ、でもそんな悪いです、私お金出します!」
「いや、ほんとに格安だから。それにお金出してもらったらお礼にならないし。気に入ってもらえたならそれで買ってきた甲斐があるよ」
「嬉しいです、凄く!」
「なので、今回は一緒にっていうか、洋子は宗則に色々教えて貰いながら一緒に作業するってのでどうかな。私は横で並行作業でGPZのマフラー交換やってるから。GPZ終わったらそっち手伝う!」
「宗則さん、お願いします!」と洋子。
さて、いつも手伝ってもらってはいるけど、さすがにマフラー交換ぐらいは一人でできる。ただ、こうやってみんなでバイクをいじる時間は、私の中で本当に本当に宝石のように輝いている大事な時間。私だってこう見えても女子、宝石はいくら持っていても足りない。
きっとこれから先、今日の宝石も今までの宝石同様に、何回も何回も見返して幸せな気持ちを反芻する。
ラジエター液を抜いてラジエターを外し、サイレンサー、センターパイプ、集合部、エキゾーストパイプと順番に外していき、元々ついていた銅の輪っか状のマフラーガスケットを細めのマイナスドライバーで周りを傷つけないように注意しながら取り除く。
タンクの塗装剥離の時に買って余っていたグリルのコゲ落とし用ブラシで古い液体ガスケットを落とす。
ここからは逆手順で組み付けをし、ラジエター液を補充。一度エンジンをかけて、軽くエンジンを吹かす動作を繰り返し、減ったラジエター液を再度補充してマフラー交換作業は終了だ。
各部ネジの締め忘れがないか確認をし、一歩下がって新しい(中古の)マフラーのついた愛車を眺める。
やはり自分のバイクが一番カコイイ……。
今までの正確に作られた工業製品のような集合管も悪くはないけど、人の手で作られた柔らかい曲線がGPZには似合っていると思う。私好みだ。
そして集合部と違う、海外製の洗剤みたいなメーカー名のサイレンサー。一昨年の転倒の傷が痛々しかったが、これでお別れと思うと感慨深い気持ちになる。
今回着けたサイレンサーはタンデムステップ辺りからステーで吊る形になるので転んで側溝に落とすことはなくなるだろう。
本当はカッコよく一人でテキパキと作業を終わらせて、洋子のカフェのマフラー交換を手伝いたかったが、途中横目でみていた進捗通り、向こうの作業もほぼこちらと同じタイミングで終了。洋子に教えながらでこれだ、さすが宗則。
「外したマフラーって取っといた方がいいですか?」と聞く洋子に、一応置く場所が確保出来るならとって置いた方が良いと宗則が答える。
「狭いけど、そこの脇から回ると裏にちょっとしたスペースあるから、そこに置いとけばいいよ」
「ありがとう、ちょっと見てくるね」と言いながら横ばいで進む洋子を見て、宗則には無理だなと思った。
「蜘蛛の巣すごい」と手で払いながら奥に進んで行く洋子。そういえばしばらく掃除をしていない。
裏庭に消えていった洋子を腕組みで眺める私と宗則。
「まぁ、ノーマルに戻すことってまずないんだけどね……」と宗則が呟く。
「激しく同意」
裏庭と呼ぶには抵抗がある小スペースを見て戻ってきた洋子が、ゴミ袋か何かに入れないとすぐに何かの住処になりそうと言ったので、私の外したマフラーや今回ゲットした潰れたエキパイとサイレンサーはそのまま放置し、その上に洋子のカフェについていたノーマルマフラーとバックミラーを丁重に梱包してから置いた。
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