ロゴパッチ完成!

『もし、良かったら次に大学に来た時に、帰りに僕のバイクで出かけませんか? 哲子さんがバイク嫌いなことは知っています。だけど色んなバイクの楽しみ方があるって知ってもらいたいのと、聞いて欲しいお話があります。都合よい時間がわかったらLINEください。駐輪場で待ってます。』


 先輩たちにアドバイスを聞けたらと思っていたけど、僕なりの自分の言葉で哲子さんにLINEを送った。

「ブブブ」

「うわあ!」スマホのバイブが新規メッセージの着信を伝える。まさかすぐに返事が来ると思っていなくて、心の準備が追いつかなかった。学食の机の上にスマホを落とした。チラホラといる周りの人の視線が気になる。


『今週金曜日、午前中に教授に会う約束があります。午後は授業と言ってらしたから13時以降なら。学食テラスではダメなの?』


『駐輪場で待っていたいです。もしご都合悪いようでしたら来なくても大丈夫です。』


『断るにしても一応顔は出しますよ。それではごきげんよう。』


「はぁあああ~」極度の緊張と直後の弛緩でスマホを握りしめたまま突っ伏してしまう。誘ってしまった……。


「あれ何ですかねキョウさん?」

「課金ガチャでハズレが出たとかですかね? 洋子さん」

 わざとらしくひとつ開けた席でこちらに聞こえるように話をしているキョウさんと洋子さんが意地悪をしてくる。突っ伏したまま聞こえないフリをした。

 それにしても駐輪場は強引すぎたかなぁ。けど、告白するのにバイクのそばだと勇気が出る、絶対出る。今日は火曜日、あと3日間悶え死ぬ自信があるよ僕。


「なんでここ空けてるの? あとこの屍は?」と久地先輩の声。

「課金ガチャでハズレが出たみたいで」とすっかりキョウさんに毒されてきた洋子さんが勝手に答えている。最近の洋子さんは見た目通りのパンクな性格になりつつあると思う。絶対キョウさんの悪影響。


「あ、そうそうコレは二人に、これは田村に後で渡しといて」という久地先輩の声で頭を上げる。

「お、生きてたんだ。ガチャは基本外れるもんだよ」と久地先輩が差し出したのは僕たちのバイクサークル『TT-W』のロゴパッチ。

「え? 出来たんですか?」

「うん、お金は都合良い時でいいから、一応言い出しっぺだし立て替えとくから」と先輩。これはすごく嬉しいかも。これでさらに勇気が出せる気がする、絶対そうだ。

「ありがとうございます!」

「うん、うん。洋子ちゃんにもお礼をね」

「洋子さんありがとうございます!」

「いつも通り元気印のトモくんだね、頑張って」と洋子さん。

 向かいに座っているキョウさんも親指を立てて「玉砕覚悟で頑張りな」と応援してくれた。

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