グローブ

「アタシ的にはグローブは、取りあえず3シーズン用でいいと思うな」

 洋子と私と宗則とヒロシ、四人で来たファミレスでバイク談議をしながらドリンクバーで長居。

 洋子のカフェレーサーが納車間近で、ヘルメットとグローブの選び方で盛り上がっている。


「とりあえず通学メインだよね、俺もキョウと同意見、冬寒ければインナーグローブ追加でとりあえずはしのげるし」

「ヒロシは冬と3シーズン以外も持ってたよね、確か?」以前学食で夏用にメッシュ素材の薄いのを持っていたのを見掛けたことがあり、それが凄く印象に残っている。

「うん、冬用と3シーズンと真夏用と雨用」さすがツーリンガー。


「バイクがバイクだし、クラシックな感じのが似合いそうだよね」と宗則。

「そんなに色々あるんですか?」と言う洋子に宗則がヘルメットの中から自分のグローブを出して見せる。孝子ほど派手な色使いではないが所々にパッドやカーボンのガードが目立つ。私もグローブを出して見せる。私のは拳の所だけ中にプラスチック製のガードがついているが全体的にはパッドも少なめ黒一色。ヒロシは今の季節は冬用で一応雨天も大丈夫というゴアテックス製の袖口までカバーできるやや長めのガントレットタイプグローブ。誰もクラシックな物もっていないね。


「そういえば洋子ちゃんって手大きいの?」とヒロシが自分の左手の手の平を開いて向ける。手を合わせて比べようって意図に悪気も下心もないんだろうけど、洋子がやや赤面し困っている。すかさずヒロシの左手に私の右手を合わせ、左手を洋子に向ける。赤面のまま自分の右手を私の手に当ててくる洋子。

「アタシの身長でもヒロシよりは小さいから洋子はもっと小さいよ」

「ユキも言ってたけど、やっぱりサイズで苦労しそうだねー」とヒロシ。

「変だって、その構図」と三人で手を合わせている私たちに、小声で宗則が突っ込む。


 私は女子としては背が高い方だと思うし、サークルの女子の中でももちろん一番背が高い。なんだったらトモくんより高い。それでも手袋はやっぱりサイズ選びに困る。サイズが良くてもデザインが限られるのだ。結局、外国メーカーのレディースモデルでサイズとデザインの面で納得できる物を見つけたが、バイク用品店に売られているレディースモデルは変に可愛さを意識したものばかりで辟易したのを思い出した。


 ヘルメットも含め、近いうちにみんなで大型バイク用品店にでも行こうかって話で落ち着いた。


 ファミレスの駐輪場でバイク部共用のジェットヘルメットを被った私に、宗則がお互いのメットがぶつかるくらいまで顔を近づけてきて、小声で

「キョウ、気持ちはわからんでもないけど、過保護だよ」と言った。


 いつもそうだけど、宗則は女ごころはわからないのに、私の考えていることはわかる。サークルで部長をやるとそういう才能もつくものなのかな?


「りょー解」と聞こえるか聞こえないかの声で返した。

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