カフェレーサー2

 ユキ、洋子、私の三人でバイク雑誌を見ながら学食でおしゃべり。トモくんもいるがいつもより静かだ。流石に女子ーズに圧倒されているのか。


 洋子のバイク免許の教習が無事終わり、あとは筆記と免許の発行の為に二俣川に出向けばオッケイ! となったので、捕れそうな狸の皮算用をしている。

 私にとって友達がバイクの免許を取ってバイクを買うというイベントは初めてなので、大いに楽しませてもらっている。

 こういう時、バイク乗りが集まるとみんな自分の乗っているバイクメーカーのバイクを勧めるバトルになるらしいが、今回はそもそも洋子の欲しいバイクの形が決まっているのでその心配はない。


 昔、洋子が見た映画で、パンクファッションに身を包んだ女性がカフェレーサーに乗っているのがカッコよくて、自分がもしバイクに乗るならカフェレーサーと決めていたらしい。雑誌をペラペラとめくりながら、「あ、コレいいかも」とかを三人でやっている。はたから見ると女子トークだが、実際はバイク談議。そしてそれを眺めるトモくん。

 宗則に「カフェレーサーってどんなバイク?」と聞いてみたときは、セパハンでシングルシートで、荷物載らなくてと、孝子のドカティ748Rとかその前に乗っていたアプリリアRS250じゃんって思ったけど、その場でスマホで画像を見せて貰い納得。街中であまり見た記憶はないスタイル。

 ファッションにしても描くイラストにしても独特のセンスのある洋子らしい選択だ。それにあの車体は細くて軽そうで、私たち女子には向いているのかもしれない。いつもスケッチブックや画材が入るサイズの大きなリュックを背負ってる洋子なら積載力が皆無なのも問題はない。


「お疲れー」と宗則がトモくんの向かいに座る。各々それぞれの挨拶を宗則に返す。

「あ、久地さんお邪魔してます」は洋子。宗則からサークル入ってくれてるんだから気にしないで、と。そもそもここ学生みんなの学食だしね、と私が心の中で補足。

「あ、同じ学年だし宗則で呼び捨てでオッケーよ」と宗則が言ったが、もう少し慣れてきたら自然に、と洋子。

 最近は洋子がサークルのみんなと過ごす時間が少しずつ増えてきて、ようやく男子にも慣れてきたかなと思う。洋子の見た目がボディピアスにパンク寄りの服装なので勘違いされがちだが、中身は普通の女の子よりも乙女だ。最近はそのギャップを見ているのが楽しい。


「車種選び絞れてきた?」と宗則。

 宗則の話では、カフェレーサーも色々あるけど、実際はほとんどが数種類の特定のベース車両からのカスタムで、それでもいくつかの車種には、メーカーからカフェレーサーコンセプトで発売されているものもあるとか。

 カスタムのベース車両に関しては、発祥の地とされている本場のイギリスだと、もうなんでもありでBMWのツアラーすらカフェになるのだとか。すごくセンスの問われる世界だ、とも。

「まずは最初からカスタムされてるやつでそこそこいいなと思う中古車を買って、そこから自分仕様にカスタムするのがいいんじゃない?」と宗則のアドバイス。

 やはりバイク馬鹿がいると話が早い。んで、関東近県ならみんなで車両見に行けるし、あまりにもまずい改造がされていないかどうかも、その時宗則がチェック出来る。


「あと順番としては絞りきる前に一度みんなでバイク屋行って跨ったりしてみるのがいいかもね」いざ決めてから実際見に行くとピンとこなかったら振り出しに戻っちゃうからねと宗則。


 第一印象が大事。だから男の人はバイクと恋愛を同一ラインで考えがちなのかも。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る