プロローグ4

(ん……?この子いまなんて言った?)




俺は森田さんの発言の意図がわからず困惑する。




「「…………」」


しばらく頭がまっしろでいると、その沈黙にしびれを切らした西野がやじってくる。




「おい高杉!せっかく後輩ちゃんが勇気だして話しかけてきてくれたんやから、なんとかいったらどうなんだ?」




西野の言葉ではっと我に返った俺はあわててスマホを取り出しQRを表示した画面を見せる。




すると森田さんは自分のスマホを取り出し、俺のスマホにかぶせてくる。


しばらくするとQRが読み込めたのかスマホが振動する。


「ありがとうございます!はい!登録できました!」




大したことはしていないのにもかかわらず森田さんは満面の笑みでお礼を言ってきた。




その笑顔にたじろいてしまった俺は


「お、おう」


とぶっきらぼうに返事をし、少し火照った顔を冷やすように手元にあったお酒をあおるのだった。




☆☆☆


‐side 千咲‐




私と連絡先を交換してしばらくすると先輩がものすごい勢いでお酒を飲み始めました。止めたほうがいいのではとおろおろしていると正面に座る西野先輩が口を開きます。




「ああ、今日はこうなったか」


「え?こうなったかってどういうことですか?」


「ああ、この状態の高杉みるのは初めてか。こいつ、恥ずかしいこととか照れることがあるとちょっと我を忘れる癖があってさ。普段はそんなことほとんどないから、うまく隠してるみたいやけどお酒が入って少し気が緩んじまったみたいやな。ま、そんなにお酒の強いほうではないからすぐに寝ると思うしほっといたらええよ」


とニヤニヤしながら話します。




私は先輩の新しい情報を知れて嬉しいなと思うと半面、お酒を飲む先輩をとめようかと考えていたのでほっと胸をなでおろします。




しばらくすると西野先輩の言った通り先輩はピタッと飲むのをやめ、ゆっくりとジョッキを机に置いたかと思えばそのままうつぶせに眠ってしまいました。




「スウ……スウ……」


先輩の規則正しい寝息が聞こえてきます。




(あ、意外と先輩ってまつげ長いんだ…しかも寝てるときは普段の疲れた目つきしてないからちょっとかわいいかも……)




先輩の普段見れない姿を見つめて癒されていると、唐突に西野さんが話しかけてきます。


「そういえば、森田さんってどのあたりに住んでんの?」




普段なら男性からのそんな質問には答えない私ですが、西野先輩から下心が感じられなかったので正直に答えます。


「えーっと。〇×区です!なのでそろそろ終電で帰らないといけなくて……」


「えっ!〇×区!?高杉と同じ区やん!それじゃあ申し訳ないんやけど、こいつのこと家まで送ってもらえへんかな?タクシー代は俺が出すし!あ、ちなみに高杉の家ここなんやけどどうかな?」




そう言ってスマホに表示された住所をみて驚きました。


なんと私の住んでいるマンションと同じだったのです。




まさか先輩と同じ区に住んでいただけでなく、住んでいるマンションまで同じだとは想像もしていなかった私は正直どう反応していいかいまいちわかりませんでしたが


(これは先輩のお部屋を知れるチャンスなのでは!?)


とそんなよこしまなことを考え


「わかりました!私の家からもそう遠くありませんのでお引き受けいたします」


家が同じであることは西野さんに伏せて快諾したのでした。

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