第2話 老害エルフが経済を牛耳る世界
「この世界ではエルフが一番勢力を拡大しているのです」
とサンガは言う。
エルフ。
耳のとがった長命の一族で、作品によって傲慢だったりフレンドリーだったりする世界なのだが、長生きという長所を生かせず、ほとんどの作品では人間と同等か、それ以下の勢力であることが多い。
「そちらの世界のエルフは、まだその段階なのですね」とウイルドが言う。
いや、こちらには存在しないんだけどさ。なんだろう?その『害虫を殺虫剤で退治してたら耐性が出来て進化した』かのような言い方は…
「この世界のエルフはたちが悪いんですよ」とサンガがこちらのエルフについて説明を始める。
経済活動にしても戦争にしても、代替わりをしない安定経営というのは非常に強い。
日本の戦国時代でも激戦区は当主が死亡して代が変わると別の人間に滅ぼされる事が多い。
武田信玄、織田信長、豊臣秀吉。最終的に勝利したのは健康マニアで70歳以上という化け物のような長生きをした徳川家康だった。
経営者が変わるというのは組織が無理に変化する危険性をはらむのである。
「その点で言えば、今のエルフ社会の指導者は3000歳から4000歳ばかり。多くのライバルの中からのし上がってきた連中ですから、人脈に資金力、知識、それらのどれもが平均寿命50歳程度の人間よりも勝っているのです」
種族的なチートすぎる。
なんだよ4000歳とか、中国の歴史ができた位に生まれてるじゃないか。仙人よりも長生きしてるよ。
ファンタジー世界のエルフがそこまで勢力を伸ばせないのは、老いたエルフは戦闘で死ぬからなのかもしれない。または『森を敬い外の世界に出ないようにする』とか『鉄は使ってはいけない』などの変なしきたりで縛りプレイをしているからかもしれない。
ところが
「この世界では200年前に人間と魔王の国以外は戦乱の時代が終わりまして、話し合いと商売中心の世界となりました」
平和になって戦争で死ぬ恐れがなくなると、エルフの長寿は凶悪な武器になったという。
事業の成功者は豊富な資金力にものを言わせて土地を買いあさり、自分の一族を政治家として送り込んだ。
そして法律を自分たちに都合の良いように変更させ、若い起業家が生まれれば、合法的に会社を乗っ取り、アイデアをパクる。
自分たちの存在を脅かす存在がいれば合法的に潰せるように裁判所や警察にも一族が主権を握るようにして国家ぐるみで力を蓄えていったらしい。
「独占禁止法ってないの?」
「?よくわかりませんが、エルフ国では『特定の会社以外酒や野菜を作ってはいけない』という法律ならあります」
主要産業を独占されている…。
一般人は、底辺からはいあがるチャンスさえ無いのか…老害が長期間国を牛耳っている社会なんだな、恐ろしい。
「そのためエルフの国では0.01%の金持ちと99.99%の後から生まれた労働力で構成されていると言われております」
魔王以上に魔王すぎないか?この世界のエルフ。
そして労働を若者に押しつけた長老的エルフは、長い年月をかけて、他国の法律を調べ、法の穴を突いては多額の負債を背負わせたり、自分の子会社を設置して浸食していったという。
特に戦争をしていた人間と魔王の国へは最初、低利子でお金を貸出し、戦争を泥沼化させ、互いに引けなくなった所で高利子の借金を次から次へと追わされた。
「そして気が付いたら10兆の借金に膨れ上がっておりました」
「バカだろ。両方とも」
互いに『これだけお金を投資したのだから勝までは引くわけにはいかない』というサンクコスト(埋没費用(まいぼつひよう、英: sunk cost)事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと)を惜しんだ結果がこれである。
ギャンブルよりも酷い依存症である。
「魔王の国は土地の半分をエルフから買い取られてしまったというお話です」
世界の半分をくれてやろう(金と引き替えに)。となったわけか…
「なお現魔王は借金苦と経済的侵略で心労がたたり今年だけで3回も変わりました」
「一昔前の日本の首相みたいだな…」
魔王って交代制なんだ。
「ええ、今では誰もなり手がいなくて、現魔王はスライムがやっております」
大丈夫なのかそれ?
「脳も胃もないからストレス耐性だけは抜群だそうですよ。文字が読めないそうですし…」
…国家破綻してるじゃねぇか。
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つまり、富と権力を集中させたチート企業のせいで人間の国は多額の借金を背負わされどうにもいかなくなった。なので、その解決方法を探してほしいという訳なのだな。
「ええ、借金を返ず方法を探していまして、我が国に足りない物は何かを知りたいのです」
なるほど。
「話はよーく分かった」
こう言った展開の話は初めてだが、魔神英雄伝ワ●ルから異世界転生もののお話を見ている俺だ。こうした事には理解がある。
「つまり悪の老害エルフをぶっ殺せばいいんだな」
「「違います」」
二人からつっこみが入った。
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