異世界にいったら外国に10兆の借金がある国の宰相に任命されてしまった

黒井丸@旧穀潰

第1話 異世界にいったら外国に100兆借金のある国の宰相に任命されてしまった

 商業簿記2級と建設業経理士1級の資格を取得したけど経済についてはあまり詳しくない歴史好きが、お金と言うのはどう動くのか実際の歴史の事例を参考に手探りで書いているものです。

 この作品はフィクションなので実際の経済政策の結果や専門的な分析とは関係ありませんが、経済とはどんなものか理解できれば幸いです。読者の皆様では無く『作者が理解できれば、という意味で』ですが………


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なるほど、俺が異世界に召還されたのはわかった」

 朽ちた教会のような場所で俺は言った。

 高い天井に黄金の燭台が飾られ、かつては荘厳な場所だった事を思わせる広間。

 廃屋マニアならたまらないだろう。


 そこには二人の人間?が立っていた。

 一人は天使のような翼を持つ男、サンガ。執事の用な黒いタキシードに黒い翼を持つ男だ。

 もう一人は悪魔のような翼を持つ女、ウイルド。真っ白なドレスに真っ白な翼を持つ女である。

 長身で精巧な美術品のように美しい容貌の2人を前にして俺は冗談めかしてこう言った。


「で、俺は何をすればいいんだ?魔王でも退治するのか?」


 それに対する返答は意外なものだった。


「いえ、あなたには我が国の借金、10兆円を返済するお知恵をお借りしたいのです」


 …………魔王退治の方が楽じゃない?それ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


●異世界にいったら外国に10兆円分の借金がある国の宰相に任命されてしまった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺、佐藤大介。大分生まれの大学生。そしてこちらは召還されたナーロッパ風異世界。


 そう異世界転生である。

 別名 超法的拉致。


 このパターンはだいたい出尽くしただろう。

 召還方法も考えるのが面倒だったのか、急カーブをすごい勢いで曲がってきたトラックにはねられたら事前説明もなくここに飛ばされてきたようだ。


 見事なまでの様式美。


 もう少し創意工夫がほしいところである。

 コテコテのテンプレ展開だったが、要求は想定外のものだった。


「借金、10兆円を返済するお知恵をお借りしたい」


 こいつらは俺を石油王かネット長者と勘違いしているのだろうか?


 10兆円といえば10兆円である。

 数字にすれば 10,000,000,000,000。

 0が13個並ぶと言う不吉な数字だ。

 日本の国家予算と桁は同じ。つまりそれだけの借金を返したいと目の前の2人はぬかしているわけである。


 馬鹿じゃないの?


「…ごめん。もう一度言ってくれる?」

 俺は再確認するように言った。

「俺は何をすればいいんだ?魔王でも退治するのか?」

 ともう一度尋ねる。

「いえ、あなたには我が国の借金、10兆円を返済するお知恵をお借りしたいのです」

 どうやら言い間違いではないようだ。

 異世界召還と言ったら普通魔王退治だろ。

 チート能力で俺TUEEEEして、仲間と友情や恋愛や国家建設して最後はハッピーエンドかエター未完で終わるのが王道ではないだろうか?

「いいえ、魔王は存在しますが退治はできません。あなたが戦うのはもっとやっかいな相手です。」

 とサンガは答える。

 できない?もしかして魔王サイドでの出発か?

「いえ、魔王は隣国の国家元首ですが、不戦条約により手出しができないのです」 

 と、ウイルドが補足説明する。

 不戦条約?だったら平和な世の中じゃないか。なのに何で自分が呼ばれたんだ?

「それは、我々…人間の国と魔王の国に恐ろしい存在が立ちふさがったのです」

 おお、何か強敵を前にかつての敵と手を組む展開とかできそうじゃないか。

 で、その恐ろしい存在とは一体なんなんだ?超魔王か?それともドラゴンか何かか?

「エルフの国です」

 は?

 エルフ?あの耳が長くて長寿で、森に住みかを構えた、胸がペッタンコで有名なあの?

「……まあ、おおむね合っています」とサンガが肯定する。

 ファンタジー世界だと高慢で、大体森を焼かれているか奴隷にされている事が多い種族だ。

 それが何でまた人間だけでなく魔王の脅威にもなっているのだろうか?

 そう尋ねると、サンガはきまり悪そうに言った。


「実は我が国と魔王の国は、エルフの国に多くの借金がありまして…」

「そのお金を返さないと戦争も出来ない状態なのです」

 おい、誰だ。こんなふざけた世界に飛ばしやがった野郎は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る