第5話 メグの「おじさん」(2)

「俺の大学の友人に南雲ってのがいるんだけどなぁ」

 レンはそう切り出した。警視正の同級生ってことは……国立大学卒か……キャリアには国立大学卒が多い。もっとも、ルイは私立大卒だが。

「そいつ、今は会社経営してんだよ。結構凝り性というかミーハーな奴でな。骨董屋で妙なもん買うことがままある」

「それで、怪異買っちまったんですね」

 ナツがふんふんと頷きながら呟く。

「そう言うこった。何だと思う? 血の出る面だよ」

「どこから血が出るの? 目? 鼻? 耳? 毛穴?」

 メグが首を傾げると、レンはげんなりしたようにして首を横に振った。やや言いにくそうに、

「断面だ」

「裏ってことですか?」

「いや、断面だ。顎の下って言った方が良いか」

「切りたて生首みたいってこと?」

 ナツが魚の鮮度のように言う。警視正は苦い顔で頷いた。

「早い話がそう言うことだ。夜中になると、そんな感じで壁が血だらけになってる。壁を伝ってだらだら垂れてるんだが、不思議なことに床についた途端消えちまう」

「怪異、ですね」

 ルイが呟くと、レンは我が意を得たりとばかりに大きく頷く。

「そうだ、室長。正しく『怪異』だ。ということで、南雲にも了解を取り付けてある。ここに行ってくれ」

 差し出されたのは、今年の年賀状だった。

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