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机に再度写真を並べ、似顔絵を作成していく。
聖はあれこれ言わず、ポイントポイントで「少女達」の解説をする。
「あ、その次女は偏食家で昔からアメとかガムとかばっかり食べてたから、奥歯が腐ってる。だから、頬はやせてる可能性が高い」
「なるほどなるほど……って、そんな情報書いてた? 小説に」
「書いて無い。今が初公開」
「うんうん。そういうの、もっと頂戴。それでより完成度があがるよ」
「あ、長女の趣味は高笑い、だから、口角は上がるはず」
「なに、その趣味」
「悪趣味」
部員達は笑った。
彼女の喜怒哀楽は、変化が激しい。だからと言って、人嫌いという分けでもない。話をすればこうした冗談も言えるし、先ほどのように怪談話もできる。
とにかく、話のレパートリーが多く、何を聞いていても飽きないものだ。
勇次を含め部員達は「天才病」と言っていた。天才に変人が多いのは世の常で、こうした気性の激しい天才談など、無数に存在している。
先日、正子も言っていた。
「どこかの天才みたいにお風呂に入らず悪臭漂わせてるわけでもないし、怒鳴りつけて即クビにするわけでもないし、夜遊び三昧でここに来ない分けでもない。そう考えれば、これくらいは『まだ、良い方』って思えるけど。何より、私は、好きだから。彼女」
このサークルの部員は、少なからず、彼女の事が好きだ。むしろ、大きすぎるほど愛している。
故に勇次は「後援会」と心の中で呼んでいるのだ。
この後援会の中にいるうちは、聖は気まぐれなお姫様であり、国を前に進める宰相でもある。
ただ……。
世の中には、王たる気品と気位を持つ存在も、当然に存在する。
彼女のように結果を出し、知識を持ち、行動力も持ち合わせる人間を、上から押しつぶすだけの圧倒的なカリスマが存在する。
概ねそれらの存在は、天才達と火花を散らす。
その情景は、この日も、この部室で行われた。
機嫌よく話している聖の耳が、ピクっと動いた。同時に、周囲に部員全員が察した。
今日も、アレが来る。
勇次の嘆息と共に、足音が聞こえる。わざとらしく奏でる重音は、一階から続く長い廊下を伝播して、既にここまで到達している。
仰々しく鉄扉が開いたのは、その数秒後だった。
「相武聖! いる?」
薄茶色の波打つボブカット。大きな目立ちに小ぎれいで高い鼻。ピンク色の唇は瑞々しく、瞳が異様に大きい。
スレンダーな体系で、腰位置がやけに高い。平均的な身長の割に大きく見えるのは、日本人離れした体躯からか? はたまた、しっかりと伸びた背筋からか?
一度拝顔すれば、一生忘れないであろう、絶世の美女。
演劇部所属のトップスター。学園祭美少女コンテストに一年で優勝。
女性でありながら物理学科の学年首席。
最近、雑誌で彼女が取り上げられ、その高すぎるステータスから人気に拍車が掛かっている。
おおよそこの大学、否、日本の大学生で聖と二分する知名度を持つ女性。
夏目
美紀は即座に聖を発見すると、作成中の似顔絵など無視して机に手をついた。
猛々しく置かれた手により、似顔絵はもみくしゃにされた。
「さぁ、答えを聞かせて!」
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