第6話ユウの場合

「リョウ! そっち行った!」

「ケンが追いかけてよぅ!」

「コウ早くあみ持ってきて!」



 3つの尻尾がピンと立つ。

 金魚を追って、いったり来たりの、

 カールな耳がピコピコしてる。

 キョロキョロ見上げた空のさき、

 出目金ちゃんが泳いでた。



 プックリ金魚に遊ばれて、

 三つ子達はもうヘトヘト。

 ひょっこり飛び出た出目金の目が、

『くやしかったらここまでおいで』

 と、ニンマリ笑っているように見えた。



「くやしいよぅ!」

「ぜったいに」

「捕まえたかったのに!」



 ぴょんぴょん跳ねる三匹たちは、

 あっというまに猫だんご。

 そんな三匹うしろで見ていて、

 私の尻尾もくねくね動く。



まったく、何をやってるの?」



 腰に手を当てため息ひとつ、

 私は三つ子を見下ろした。

 私の猫耳、カールをしてるの。

 おんなじカールの三つ子の耳も

 ピコピコ動いて声を聞く。



「ホラホラ、逃げて行っちゃうじゃない!」



 空を指差し上をあおぐと、

 出目金ちゃんがふよふよ、ふぅわり。

 クリクリ目玉がニンマリ笑って

 ぷいっとまわって空へゆく。



 それを見ていた三つ子の弟、

 悔しそうにこっちを見てる。



  「「「ユウねぇちゃ~ん!」」」



 何とまぁ、情けない声!

 三匹の猫娘達は私の方を見て訴える。

 かわいい弟達だけど、

 まだまだ修行がなっちゃいないわ!



「私だってあんた達と、

 いっこだけしか違わないんだけど?」



 しょうがないなと腰に手を当て、

 ランドセルから糸を出す。

 家庭科で作ったエプロンの残り。

 赤い糸がすらすらのびる。



 その先にあるのは、

 おいしそーな金魚のごはん。



 これで金魚を捕まえるのよ。

 たこあげをする手つきでくいくい。

 ホラホラ、おいしいごはんだよ♪



 三つ子はパチパチ目をみはる。

 おんなじ顔してお口もあんぐり。

 それを横目で見ている私。

 フフン、ねぇちゃんすごいでしょ?



 ふあふあただようおいしいごはんに、

 出目金ちゃんも興味津々きょーみしんしん

 も少ししたら、ぜったい食いつく!

 私もいいとこ見せちゃうし!



 あら? でも待って。



 くいくいさせてる手を止めて、

 ふっと三人の弟を見る。



「そういや、どうして出目金欲しいの?」

「うーん、それはね……」

「内緒のはなし!」

「ユウねぇちゃんには教えナーイ!」



 あちこち向き向き、

 三つ子の弟。

 なぁにをかくしてるのかしら?



「そんなに生意気ゆーのなら、たまきちゃんに言っちゃうかんね!」




 私の猫耳カールをしてる!

 それでも聞こえた、

「ねぇちゃんこえぇ」

 のいじわる発言!



 尻尾がむくむく、

 爪もシャキーン!

 むむ~っと怒って見せるため、

 思わず糸を離しちゃった!



「「「あ! 出目金逃げちゃった!」」」



 弟達は空を見る。

 糸の先には出目金が、

「ごちそうさま」と笑ってた。



 私はどうでも良かったけれど、

 しょんぼり猫耳弟達が、

 ポツリとつぶやき尻尾をいじいじ。



「もうすぐねぇちゃん誕生日でしょ?」

「だから僕たち買いたかったの」

「ねぇちゃんが好きな」


「「「プレゼント」」」


 全く私もダメなねえちゃん!

 思わずキュンキュンしちゃうじゃない!

 なんてかわいい弟達なの!?

 尻尾がピーンとたっちゃうわ!



「ありがと、かわいいあんた達!

 プレゼント無くてもいいじゃない!

優良健康ユウリョウケンコウ”いつも一緒なら、

 私はいつだってハッピーだよ!」




 私達は4人でひとつ。

 これからも尻尾をまじえていこう!



「ところでなにを買ってくれるよていだったの?」



 三匹顔を見合わせて、

 声をそろえて言ったとさ。



「「「うん○ドリル」」」

「あつもりの方がいい!」

 















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