第4話カホの場合
ぷくぷく。
ふるふる。
まぁるい体をちょこちょこ揺らして、
屋根の上の少し上、
黒い金魚が優雅に泳ぐ。
「ねぇ、マァマ。
あのおさかなさんは、どおしておそらをおよいでるの?」
私はホクホク、微笑んだ。
とうとうきたか。
この質問。
私も母に、聞いたっけ。
娘の顔をのぞきこむため、
私はそこへ、膝をついた。
「あのね、しほちゃん。
大事なお話、聞いてくれる?」
「うん。なあに?」
お空を泳ぐお魚さん。
あれは、人の夢なのよ。
人の夢だけお魚がいて、
そのお魚は見えない人は、
見えないものなの。
「あのくろいおさかなさん。なんておなまえ?」
「あれは
とってもいいこと見たときの夢よ」
眠った時に見た夢が、
空に自由を見いだして、
ふあん。
ふあんと、とんでくの。
それを知った娘の顔が、
ぱぁっと明るく輝いた。
「でもねしほちゃん、お約束。
このこと誰にも言わないで」
可愛い娘のクリクリおめめは、
三毛猫模様の耳のした。
私と母と同じ猫娘。
うーんと悩んだ娘は言った。
「パパにも?」
「パパにも」
「しぃ?」
「しぃ」
私と娘は耳をぴこぴこ。
尻尾をパタパタ。
内緒の合図は昔からこれ。
私の可愛いしほちゃんは。
生まれたときから猫娘。
三毛猫模様の耳や尻尾は、
誰にも見えて無かったけれど。
「これから色々教えてあげる」
「たくさんおべんきょするんでしょ?」
私と娘は、クスクス笑う。
彼女の明るい未来を感じる。
決して多くはないけれど、
時々見かける猫娘。
最近は男の子まで、猫娘。
時代は常に進化するのね。
最近は全然会わなかったけど。
若い学生カップルが、
仲良くシマシマ尻尾を振って、
金魚狩りに
昔は私も狩ってたわ。
近所のネコにご飯をあげたくて。
一生懸命、捕まえてたっけ。
恋の夢はピンポンパール。
美味しいご飯の夢は和金。
たまに美人の夢の
大きくなったしほちゃんが、
いつか立派な猫娘になったら、
一緒に金魚を狩りたいわ。
「ママー。ながぁいおさかな」
「まぁ、
私はビックリ、後ずさり。
鰻を見たらご用心。
見ること自体に害はない。
とっても美味しそうだしね。
でもね、あいつら危ないの。
シマシマ尻尾の二人が逃げる。
「あ、おねぇちゃんがころんじゃった」
私はあっ! と口に手をあて、
娘を背中にかばってかまえた。
時々、電気を放つんだから。
「待ってね、しほちゃん。危ないからね」
「たすけてあげないの?」
「鰻がとんでいったらね」
男の子の猫娘が、
ピョーンと金魚を投げ飛ばす。
さぁ、今のうち、今のうち。
私は娘の手を引き、近付く。
「あなた達、大丈夫?」
「あんた、も猫娘!?」
男の子猫娘はびっくり仰天。
当たり前よね。
だって私、おばさんだもの。
「早く逃げましょ。帰ってくるわよ」
「すまねぇな。三毛猫のお姉さん」
「あらいやだ。お姉さんなんて何年ぶりかしら」
金魚
ずっと昔に辞めちゃったけど。
うふふ。
なんだか面白そうね。
子育て一段落したら、
また現役に、戻ろうかしら?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます