Ein und Zwei.

 立て続けに起こる爆発に、飛び散る破片。戦場と化したホールの中心にアインはいた。

「どうしたぁ!避けてばっかりじゃつまらないだろう!」

 彼女が引き金を引くと、その分だけ戦場に爆発という名の華が咲く。命を刈り取る死の華である。その威力も並大抵ではない。魔術によって強化されたライフル弾は砲弾へと昇華する。

その咲き誇った華の合間をマミは疾風の如く駆け巡る。攻撃を避けるのはマミにとってそう難しくはない。しかしどうにも間合いを詰めることができないでいた。

「外であれば威力を抑えることなく攻撃ができたのだが……」

 アインがぼそっと呟く。このままでは先に弾切れとなるアインが不利になるのは明らかだった。

 するとアインは途端に撃つのをやめた。

 それと同時にマミも立ち止まる。相手の動きを読み、不意打ちを防がなければならない。

(攻撃を諦めた……わけじゃない。なら次の手は……)

 アインから放たれていたオーラがライフルにも伝わり、そして銃剣を包む。オーラはそのまま銃剣をかたどると、一気に刃渡りが倍以上になった。マミの刀と同じか、それ以上あるかもしれない。

「埒が明かないのでな、こちらも近接攻撃に移させてもらおう!」

 アインはその剣先をこちらに向けて突進してきた。しかし近接戦闘においてはマミに分がある。

 マミは攻撃の当たる寸前のところでアインの背後に移動する。ここまで近づいてしまえば、後は斬りかかるのみだ。

「冷静さを欠いたのが間違いだったわね!」

 抜刀し、刀を振り下ろすマミ。しかしその刃がアインに届くことはなかった。

「ねえ、いつから私がいないものだと勘違いして?」

「くっ……!」

 刃の下、そこにはツヴァイがいた。防御魔術によって構築された盾によって、斬撃は無力化されていた。

 そこにアインが銃口をこちらに向ける。彼女はこうなることを最初から知っていたのだろう。

「間違いを犯したのはドライ、お前の方だ」

 とっさに距離を置くマミ、しかし魔弾は逃げる隙を与えなかった。

 閃光に包まれる中、またここに一つ死の華が咲いた。


 南野シゲルはどうにかしてアインとツヴァイを無力化する方法を考えていたが、突然の轟音で完全に集中力が切れてしまった。

「こうしている間にもマミが……」

 このままでは負けるのは目に見えている。その状況を打開するために自分は今考えているのだが。

「しかしこの部屋は一体どんな部屋なんだ?」

 先ほどから聞こえてくる機械の動く音、それに感じる圧迫感。避難者にとって居心地がよいとは言い難いが。

 彼は立ち上がると手探りでスイッチを探した。冷たい壁が指先に当たり、それを這うように進んでいく。

「ん、これか」

 やっとそれらしきスイッチを発見し、電源を付ける。頼りのない蛍光灯の光が広がると同時に、部屋の全貌も明らかになった。

「ここは……」

 壁に並ぶ様々なボタンの付いた機械。赤、緑、黄色と無機質なライトのあるそれには『変電設備』と書かれていた。

 彼はその機械に近づきまじまじと見る。それぞれのボタンの上には『大部屋』や『食堂』など場所の名前が書かれており、それらと対応させるための地図が横に貼られている。

「なるほど。つまりここなら電源を操作できるか」

 なら話は早い。彼はおもむろにポケットから電撃弾を取り出すと、電源盤に叩きつけた。

 その瞬間、機械から青白い稲妻が走る。そうして黒い煙を出すと、部屋の電気は消えてしまった。

「これなら修復不可能だろう」

 少々やりすぎな気もしたがしょうがない。もっとも、南野シゲルが大雑把な性格であるからなのだが。

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