残された人類
「これから第六シェルターに向かう。その目的は残された人類の手掛かりを探すためだ」
「残された人類、か……。それでどうするつもりだ?どうせ会ったところで残り少ない物資をめぐって争いが起こるだけだぞ?」
「そうだな……それがこの荒れ果てた地上だったらな」
あえて含みのある言い方をする。
「地上ではない場所に残された人類がいるかのような発言だが?」
案の定アインは食いついてきた。
「そうだ。信じられないかもしれないが、彼らは宇宙空間にいるそうだ」
「何?宇宙空間に?」
「お姉さま!」
しかし彼女のとなりにいたツヴァイが黙っていなかった。
「先ほどから残った人類やら宇宙空間やら、バカバカしいのにも程があります。おそらくそこの者は私たちを騙し、この場をしのぐつもりです」
信じてもらえないのも当然だろう。いきなりこんな訳のわからないことを言われてしまっては、逆の立場であればきっと同じ反応をしていたに違いない。
「待て、そうとも限らん」
しかしアインの反応は彼女以外にとっては想定外のものであった。
「お姉さま、まさか信じるとでも?」
「そうではない」
動揺するツヴァイをよそにアインは続ける。
「そもそもこんな話をしたところでこの場を切り抜けられるハズがない。それは彼自身も分かっているはずだ。それに、先ほどの話が今しがた作ったでっち上げにしては面白かったからな。まあいい、貴様だけは逃がしてやらんこともない」
結局信じてもらえなかったようだし、さらには何の進展もなかった。
「だが貴様らの目的が何であれ、ここでドライを処分することに変わりはない。異論はないな?」
「クソっ……!どうすれば?」
彼女たちもおそらくマミと互角、またはそれ以上の力を持っているはずだ。だとしたらどう戦う?しかも相手は二人。二対二とはいえ分が悪すぎる!
「シゲルさん!」
マミがこちらに向かって叫ぶ。
「マミ、どうしたら……」
「逃げてください!」
困惑するこちらとは対照的に、彼女の表情には覚悟が見て取れた。さらに腰には刀まで差している。
「あなたはこの戦いに直接関係ありません!おそらく今でしたら彼女たちも見逃すはずです!」
「でも君は?」
「……さあ、生きて帰れる自信はありません。それでも最期まで抗ってみせます。短い間でしたが、ありがとうございました!」
彼女らしいと言えばそうなのかもしれない。しかし到底その提案は受け入れらない。
「バカ言うな!俺だって……」
突然の強風によって体が飛ばされそうになる。どこかに通気口が?しかしこれほどの風が吹くというのは……。
何とか体勢を立て直す。風の吹いてきた方、その先を見るとアインが立っていた。しかし先ほどとは違い、黒の禍々しいオーラを発している。
「貴様は初めて見るだろう?これが、古代ゲルマニアより復活した大いなる力、魔術だよ」
彼女はそう言いながら、このホールのどこからかライフルを引き寄せて右手で持ち上げて見せた。さらにそのライフルをこちらに構える。
「そしてこれが、攻撃魔術だ!」
目も開けられぬほどの閃光が辺りを包む。えらく時間がゆっくりと感じる。この感覚、ゲルシーの時と一緒だ。しかしその刹那、何者かに体を抱き抱えられると攻撃が届くよりも早くその場から遠ざけられた。
「一体……」
遅れて聞こえてきた炸裂音によって、一気に現実の感覚に戻される。それで誰があの場から自分を避難させてくれたのかにも気が付く。
「これでもまだここに残るって言うんですか?」
僕を肩に抱えたまま、彼女は話す。鼓動こそ感じられないが、心なしか息が上がっているように感じる。
「せめて、どこか安全な場所に……」
彼女は僕を降ろすと、刀を抜いてアインの方を向いた。
「分かった。でも、死ぬなよ!」
本当は何か力になりたいが、さすがにこれ以上いるのは彼女のお荷物だろう。ここは一旦離れるべく、大急ぎで近くの扉へと向かった。
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