双子の少女(2)
特別ゲルマニア語に詳しいわけではないのでその言葉がどのような意味を持っているのかは分からない。しかしアインはまるで聖書の一節を読むような、そんな厳かな雰囲気で書かれている内容を読み上げていく。するとどうだろうか。となりにいたマミが急にしゃがみこんだ。
「大丈夫か!」
「劣等人種、今話しかけると詠唱の邪魔になります。おすすめはしませんよ」
駆け寄ろうとしたところ、ツヴァイに肩を掴まれる。見た目は確かに少女の手だが、温かさが感じられない。
その手を振り払い、向かおうとしたところ声が止んだ。アインの詠唱が終了したのだ。
「これでおそらくは大丈夫だろう」
手帳を閉じ、再び懐にしまう彼女。しかしマミのほうはへたり込んだままビクともしない。
「案ずるな、じきに目を覚ますだろう」
「一体何をしたんだ!」
「彼女の記憶に掛かっていた
「思い出すって……」
マミに駆け寄り抱きかかえる。アインとツヴァイは背を向けて歩き始めた。
「彼女が目覚めれば分かるだろう」
「じゃあね、劣等人種」
今すぐにでも掴みかかって真相を知りたいがいが今はまずマミを連れてどこか安全な場所に移動しなければならない。マミを抱え再び第二シェルターへと戻ることとした。
扉を開けてあの広いホールへと戻る。そこでマミをそっと降ろすと、今度は僕がへたり込んだ。額の汗を拭い、息を整える。意識のない人は想像よりもはるかに重い。
「しっかし、一体全体何者なんだ?」
結局よく分からないまま双子たちはどこかへ消えてしまった。分かったことと言えばゲルマニア軍ということだけだろう。
しかし何故ゲルマニア軍がここに?しかも少女とはゲルマニアはそんなに兵力不足だったのだろうか?いや、そうとは考えにくい。それにマミのことについて知っていたのも引っかかる。
「ん……」
思考中の頭に彼女のうめき声が入ってきた。
「おい、大丈夫か?」
すぐさま傍に駆け寄り、顔を除く。
「ここは……」
「覚えているか?第二シェルターだ」
片手で頭を押さえながら彼女が起き上がる。そうして少し辺りを見渡してから、僕の方を向いた。
「第二シェルター……ああ、そっか」
「思い出したか?」
「うん、そうか。そういうことか」
どうやら思い出すことはできたようだ。彼女は指をゆっくりと動かしながら、自らの意思通りに動くか確認していた。そしてこちらを向いて苦笑いした。
「ねえ、南野……シゲルさん。私、思い出したよ」
どうやらあのアインの言ったことは本当らしい。彼女はそのまま表情を変えずに続けた。
「全部。そう、思い出したくないことも」
彼女の唇が動く。ここから先は知らない方が幸せかもしれない。今明かされようとしている真実を否定したい自分がいるのに気づく。
「あのね、私……」
「待った」
ありえない。まさか?それはあまりにも残酷すぎる。だが、可能性としては最も高い。
受け入れられない現実を前にその先を制止した僕を遮り、彼女は続けた。
「あなたの敵、ゲルマニア軍……だったみたい」
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