地下避難所(2)

 カレーの入った段ボールを階段の下に置くと、僕たちは倉庫のドアよりもさらに奥の方へと進んでいった。

「忘れないでくださいね。化け物がいることを」

 後ろから小さな声で彼女が囁く。

「分かってる」

 僕はそう短く返すと、極力音を立てずに歩いた。

 少ししてまた新しいドアが見えてきた。しかも今回は先ほどのよりも入口が大きい。

 僕はまた彼女にサインを出すと、ドアをそおっと開けた。

 完全にドアを開ききると、そこには長い廊下があった。途中途中にはまたドアがあり、それぞれにまた部屋が存在しているのだろうと思わせる。

「まだあるのか……」

 心の声がダダ洩れな状態のまま、廊下へと入る。もちろん人の気配はないのだが、暗闇だからか本能的に何か嫌な感じがする。

 そんな気持ちから早く出したいという気持ちから、僕は一番近くにあったドアを急いで開けようとしたが、カギがかかっていて開かなかった。

「何だと?」

 もう一度確かめるために引っ張るがドアは開く気配がない。

「開かないんですか?」

 彼女が横に立って聞いてくる。

「うん。だからこれは後回しに……」

 僕がそう言うのが先だったか、彼女は行動するのが先だったかは分からないが、彼女は勢いよくドアを殴ると、大きな音を立ててドアは外れた。

「いったあ!」

 右こぶしを抑えて悶絶する彼女。何故そうなることを考えなかったのかと思いながらも声を掛ける。

「大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。ただ思ったよりも堅くて手を痛めただけですから」

 それは本当に大丈夫なのか?と思っていたが、数秒経つと彼女は痛めた右手で親指を立ててこちらに見せた。

「さあ、入りましょう」

「あ、ああ……」

 彼女のテンションに少し戸惑いながらも、僕は彼女に続いて部屋の中へと入っていった。

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