機械の少女(1)

 研究所に着くと、少女をテーブルの上に載せて冷蔵庫から麦茶のペットボトルを取り出して、一気飲みする。そうして掛けてあったタオルで汗を拭うと早速少女についての調査に取り掛かった。

「少女型の機械人形か……」

 彼女の状態を注意深く観察したのち、それらをパソコンへと打ち込む。それから右腕の損傷や、彼女の動力源などを調べてはパソコンに打ち込んでいった。

「ひどい損傷ではあるが、案外直せるかもしれないな……」

 画面に出力された情報を見ながらそう呟いた。どうやら損傷がひどいのは外側のみで、大事なコアやメモリは無事であったようだ。

「これでしばらくは退屈しなさそうだな……」

 そう言って大きく伸びをすると、肩甲骨あたりからポキポキと音が鳴った。夜通し作業をやったところで誰にも迷惑は掛からない。もう彼を咎める人間さえここにはいなかった。




 あれから三日が過ぎたころ、少女の修復作業が終わった。無かった右腕も新しく取り付け、むき出しであった腹部も本物の人間と変わりない人工皮で覆われていた。

 そしてつい先ほど、少女を起動するための準備も終わったところである。

「あとはボタンを押すだけだが……」

 すべての用意が整ったところで僕は鏡を覗いた。

「久しぶりに機械ではあるが人に会うわけだが……」

 僕はまじまじと鏡に映る自身の姿を見た。油まみれの髪に、薄汚い白衣、生え散らっているあごひげをさすりながら考えた。

「まあ実際ロボットだし、気にしないよな」

 うんうんと目の前の自分に頷きながら、起動ボタンに指を当てた。

「では、起動するか」

 僕はそこでようやくボタンを押した。すると一瞬彼女の体に電撃が走ったが、彼女はピクリとも動かなかった。

「失敗か?」

 そう思い彼女の顔を覗き込んだその瞬間、彼女の瞼がそっと開いて彼女と目が合った。

「え?」

 彼女はそんな間抜けた声を出したかと思うと「ひぃ!」と言って後ずさりをして台から盛大に転げ落ちた。

 「バン!」というかなり大きな音を立てて落ちた彼女は「痛た……」と言いながらお尻をさすった後、思い出したようにこちらを指さしてこう言い放った。

「あなた誰ですか!」

 こちらの質問を先に取られてしまった。

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