第23話

テレビ特番。


ざっくり日本書紀。


珍しく健全な内容でスタートしたこの特番。


聖帝の世(ひじのみかどのよ)


ナレーション。

「国民は大御宝(おおみたから)と呼ばれる。」

「我が国はいにしえから民主体の政治であり。」

「日本の民主主義は仁徳天皇の御意思を継承している。」

「いまこそ聖帝の世に習い。」

「真の民主主義を実現しよう。」


第十六代「仁徳天皇」古事記・下つ巻。


天皇は高い山にて。


四方の国土をご覧になりました。


しかしどこにも炊煙が立ち昇っていません。


国民は皆、貧しいのだろう。


そこで三年間。


献上品と奴隷を免除しました。


そのため。


宮殿は破損が多発し。


雨漏りが酷いものでしたが。


全く修理せず。


なんとか避け続けたのです。


やがて国中をご覧になりますと。


煙で満ちておりました。


人民が豊かになったので。


課(みつぎ)と役(えだち)を再開し。


国民は栄え。


人々の苦しみが取り除かれました。


その御世を称えて。


「聖帝の世」と言うのです。


今日。


せっかくの土曜日なんですが。


残念な事です。


昼間なのに不吉な空気で満ちています。


クレスケンスルーナ。

「なんか外は雰囲気悪いよ。」


リーリエ。

「門の周辺が未完成なのでは?」

「明らかに工事をしていません。」


葵ちゃん。

「完璧なものには魔が宿る。」

「知ってます?」

「逆柱がある日光東照宮の陽明門。」

「12本ある柱の内。」

「1本だけ彫刻の模様が逆向きになっている。」

「これは誤って逆向きにしたわけではなく。」

「建物は完成と同時に崩壊が始まる。」

「という言い伝えを逆手にとり。」

「わざと柱を未完成の状態にすることで。」

「災いを避けるという。」

「言わば魔除けのために逆柱にしたのです。」


リーリエ。

「それで。」

「門の周辺が工事中断となっている?」

「不思議です。」


クレスケンスルーナ。

「ん?」

「これは汚れ?不自然な。」


葵ちゃん。

「割と新品であった。」

「ラップトップPCに傷を入れておきました。」

「何か不吉だったからです。」

「わざと未完成の状態にすることで災いを避ける。」


クレスケンスルーナ。

「迷信?一度でも霊感に打たれたら分かるよ。」

「世の中不思議なものだから。」


葵ちゃん。

「ほんとみんな嘘つき!」

「一度でも霊感に打たれると。」

「初めて分かる!」

「みんな嘘ついてるよ!」


クレスケンスルーナ。

「そこら辺はむかしのトルコ式宗教観で。」

「同じ神様を信じていると思って相互理解でいいんじゃない?」

「わたしは主と共に。」

「ほんと同じ神様の事を言っているのです。」


リーリエ。

「宗教については。」

「1986年10月。」

「ローマ教皇。」

「世界の各宗教・宗派の代表者を招き。」

「祈祷会を開催。」

「この史実を読めば理解できるかと思われます。」


葵ちゃん。

「じゃあ日記の内容に書いておこう。」

「。」


満つれば欠ける。


月が満月になると後はだんだんと欠けていくように。


すべて物事は、完成の域に達すると後は欠けていく。


人間も栄華をきわめると。


次には衰えるばかりだというたとえ。



「。」


道化師。

「人間たちが同じ事。」

「繰り返しは世の中の。」

「悪へ寄り付く男ども。」

「道徳知らずの女ども。」

「現代諸悪の具合の悪さ。」

「社会も病気だ人間の。」

「意味の分からぬことさえ世の常と。」

「まかり通した愚者の世で。」

「こうして踊ればまだマシだ。」

「少しもまともなこともできずとも。」

「ロボット機械動物の。」

「どうして人間言えようか。」


魔女。

「衆愚だらけで足の踏み場も無いよ!」

「悪平等の暗黒面。」

「勝手気ままな人間の。」

「あんな顔も見飽きたわ!」


道化師。

「連中の仲間になるよりは。」

「端っこで踊る方がずっとか良いものです。」

「私も随分巻き込まれ。」

「どっちが阿呆と問われたら。」

「私の方がマシでしょう。」

「連中我を張り正しいと。」

「まだ自分が真実だと言い張っています。」


魔女。

「自由の結果があれなのよ。」

「連中に混ざる苦労も知ってけろ。」

「この世でもっとも苦労する。」

「連中に付き合うこの身でさ。」

「いっそ居なければ憂いはないさ。」


道化師。

「あの救いようがない連中よ。」

「どうも処世術が必須科目。」

「今日は冗談捗ります。」


魔女。

「世捨て人になっちまいな。」

「連中はやりたいようにするさ。」


道化師。

「この世でもっとも大きい苦労とは。」

「愚かな人間共との共存だ。」

「私はあんな暗い世の中。」

「一部になったり致しません。」


合唱。

「人間たちの腐敗ぶり。」

「人間たちの不道徳。」

「人間だけは煩いだ。」

「世間もなんにも馬鹿を見て。」

「正しい道を忘却だ。」


葵ちゃん。

「なんだろうこの歌。」

「随分な皮肉だなあ。」


怪しい雰囲気の12時。


今日は不吉で。


家にいます。


誓約を使って人の世を。


占いなんてしてみたら。


凶と出たのは内緒です。

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