夜のない街

 夜のない街の住人はアイマスクを持っている。夜を知らせるベルが鳴るうちにつけると、よい夢が見れるのだとか。いくつかあるからと老婦人はアイマスクをひとつ分けてくれた。ベルの音を聞いて、宿の部屋でアイマスクをつけた。よくできた暗闇だ。私の知る夜よりもずっと黒い。そこで、がさごそと物音がする。この部屋に誰かいる。

「私の鞄では、君の夢は叶わないよ」

 ベルが鳴り終わるうちに、物音は遠ざかっていく。アイマスクを外して鞄の中身を見ると、満月みたいなキャンディがひとつ。

 アイマスクをつけ直したら、夢の続きは見れるだろうか。

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旅人 camel @rkdkwz

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